忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男   作:goldMg

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 大恩ある方の子孫を探している。

 それは、命を賭ける必要があることだ。

 仮に俺が同じような立場にあったなら、この身が砕けようとも最後の瞬間まで探し続けるだろう。

 

 師匠と兄君のご子息。

 そんな話は聞いたことがないが……仮にいたとして、御二方が亡くなって、遺された子らがいつの間にか行方不明になっていたら。

 俺は我慢できないに違いない。

 

 ならばこそ、俺は動かなければならない。

 彼女が真実として何を求めているかはともかく、それは俺のなすべきことの一つだ。

 

 ただ、彼女は永い眠りの影響からか記憶の多くが欠落していた。

 どうして眠っていたのか、どうして探さなければならないのか、具体的に誰を探しているのかすら。

 彼女は、最も大事なことを覚えていなかった。

 

 それでも、彼女の魂に刻まれた想いは……彼女に止まることを許さないだろう。それはもはや、妄執に近い。

 一度眠りについた彼女が、依代である氷見雪の意識を押し除けて活動している。健全とは言えない。本来ならば、即座に彼女を浄化して氷見雪に肉体を返納するべきだ。

 それでも、俺は雪女を助けてやりたかった。

 

「……少し、執着しすぎじゃないか?」

 

 ヒバリからも苦言を呈されてしまった。

 分かっている。

 俺がやっているのは代償行為だ。もう会えない師匠達と違って、間に合う彼女を助けることで、俺自身が救われようとしている。

 

 情けないな。

 ゲンジとしてあると決めたのに、自分の感情を殺し切れていない。

 だが……この気持ちを捨ててしまったなら……俺は、自分の過去を否定したことになってしまう気がする。

 

 ──そうか。

 これは、なすべきことじゃない。

 俺がやりたいことだ。

 

「まあ、貴方がやりたいならやればいい」

 

「…………すまないな」

 

「貴方の人間らしいところを初めて見た気がする」

 

 師匠達は人間の究極であり、あらゆる苦難を破滅させる世界の光だ。人類と邪悪を見張り、現れた敵のところに駆けつける。

 俺は猿真似をしているだけだが、ヒーローを人間らしくないと言うならば……そうなのかもしれない。

 

「アテはあるのか?」

 

「全くだ」

 

「お得意の潜入は?」

 

「そもそも、自分がその子孫だと自覚しているかすら分からない相手に対して、潜入も何もない」

 

 地道に探すことが近道だ。

 

「人海戦術で出来ればいいのだが……」

 

「お前がそんな事をする必要は無い」

 

 わざわざ天忍にやらせる必要もない。

 これは個人的なことだ。

 パトロールの合間にチマチマと続けるのが吉だ。

 

「そ、そういえば話は変わるんだが……」

 

「うん?」

 

「学校では随分とメイガス達と仲睦まじくしてるらしいな」

 

「旧知の間柄だからな」

 

「すき……なのか?」

 

「嫌いではない」

 

「ふ、ふーん……」

 

 何だこれは。

 俺は何を話しているんだ。

 

「高校生の色恋沙汰に興味があるのか?」

 

「──はぁっ!? ぜ、全然ないが!?」

 

「そうか」

 

「あ、あなたこそ高校生と同じところに通ってるんだろうが! 若い女に囲まれて鼻の下が伸びてるんじゃないか!?」

 

「…………ああ、そうだな」

 

「ほれみろ!」

 

 用件は終わったし帰るか。

 あまり長居するのも良くないだろう。

 変に勘繰られる。

 

 

 ──────

 

 

「おい、いい加減ユリちゃんたちのこと教えろ」

 

「……青木」

 

 眠りを邪魔したのは青木修栄だった。

 そんなにあいつらのことが気になるなら、自分で話しかければいいだろうに。

 

「ユリちゃん怖えんだよ」

 

「女にビビるな」

 

「お前のせいだろうが!」

 

「それはおかしいだろ、お前が叱責を受けるのはお前自身の行動の結果だ」

 

「いいから、教えろ」

 

 顔を近付けてくる青木修栄は、気付いているのだろうか。相変わらず後ろからウリエルが睨んでいることに。

 どうやら2人は相当に相性が悪いらしい。立ち上がったウリエルは近付いてきた。

 

「失せろ青木」

 

 殺気を当てられて以降、苦手意識が生まれてしまったのか。その一言で青木修栄はすごすごと自分の席に戻って行った。

 懲りないやつだ。

 

「ユリ、悪いな」

 

「…………」

 

「いたっ」

 

 感謝を告げたのにデコピンを喰らった。

 これはメイガス流のどういたしましてだろうか。今までにそんなことを聞いた記憶は無いのだが。

 

 放課後、サリエルが付き合って欲しいという。仕方ないので、化外が現れるまでの時間だけという約束をして、ショッピングモールに来た。

 もう秋だ。

 学校を終えれば日も傾いている。

 夜が早くやってくれば、志村氷雨達では対処できない敵が出てくるはずだ。少しずつ進歩してはいても、現れる敵はそれを考慮してくれない。

 

「本当に良かったのか?」

 

「いいんです」

 

「そうか」

 

「ふふっ、学生服でデートって楽しいですね」

 

「デート……そうだな」

 

「あらっ、否定しないんですか?」

 

「俺は客観視ができないわけでは無い」

 

「うふふ……あの、一つ気になっていたのですけど……」

 

「なんだ?」

 

「青木くんです」

 

「彼がどうした」

 

「あのまま、放っておくんですか?」

 

「放っておく……彼は何も悪事は働いていないぞ」

 

「もう!」

 

 軽めに肩を叩かれた。

 一体なんだというのか。

 ウリエルもそうだが……流行っているのか? いわゆる暴力というやつが。いけないぞ、そういうのは。

 

「ご自身がクラスでどう扱われてるか、全く客観視していないじゃないですか!」

 

「してるとも」

 

 うんこマンだろう。

 まあ、婦女子にそんなことを教える気もないが。

 それがどうしたのだろうか。

 

「根暗が女の子と関わっていてムカつくなんて言われていたんですよ!」

 

 サリエルは頬を膨らませ、まるで年頃の女の子のように怒っている。──いやそうか、彼女も年頃の女の子だった。

 

「それがどうした」

 

「なんとも思わないんですか!?」

 

「あのなあ……いや、いいか」

 

「言ってください!」

 

 その程度のことに気を割くぐらいなら、師匠の御姿を思い返してイメージトレーニングをするに決まっている。あまりこういうことを言いたくはないが、学生生活という些事に気を取られて本来の目的が疎かになってしまうなら、俺は退学した方がいい。

 

「──ウリエルが怒った理由、わかってますか?」

 

「昼間のか……サリエルはわかっているのか?」

 

「はぁ……」

 

「分かっているなら教えてくれると助かるな」

 

 コミュニケーション不足は不和を生む。オーバーウォッチ解体と同じ轍を踏みたくはない。

 

「ご自分で考えてくださいっ」

 

「君が怒っているじゃないか」

 

 腕組みをしてわざとらしく怒ったような態度をしているサリエルを宥めつつ、ショーケースを眺めるとサリエルの髪色と同じトパーズの指輪が売られていた。

 

「君の髪色と同じだな」

 

「──そ、そうですね」

 

「うむ」

 

 さて、次へ行くか。

 

「………………ていっ!」

 

「いたっ、なんだ?」

 

 何故か脚を蹴られた。

 彼女は意外と手癖足癖が悪いところがある。

 ウリエルの良くないところを吸収しているのかもしれない。一応注意しておいた。

 

「違います! これはウリエルの良いところですっ!」

 

「ううん……」

 

 1ヶ月、雪女の恩人の子孫探しは難航した。なにせ手掛かりがない。雪女にもその子孫の位置は全く分からないというし、俺も人類の気配は弱すぎてなかなか判別できない。

 弱った。

 

 そこで手を挙げてくれたのが穂高未来だった。

 

「私は、電子のプロでし!」

 

「ほう」

 

「……何をするかわかるでし?」

 

「うむ、頼もしい限りだ!」

 

「ゲ、ゲンジさんは忍者なんだよね? そういうのわかるでし?」

 

「俺は違うが、オーバーウォッチは電子戦においても超級の天才達の集まりだった。彼らと同等の腕なのであれば、安心できる」

 

「あ、あの……ちなみにどれくらい?」

 

「そのうちの1人は世界にシンギュラリティを引き起こし、救世主になりかけた」

 

「…………いや……あの……どういうこと……」

 

「プロなのだろう、期待しているぞ」

 

「…………ええーい、やってやるでしー!」

 

「はっはっは!」

 

 この世界の現状を鑑みて、彼女がそこまでの大天才であるとは考えていない。

 そもそもトール爺は人類の中において、科学者という枠組みの中ではある種の到達点だった。あの人が生まれる前と生まれた後では世界の形が明確に違ったのは間違いない。

 

 だが彼女も、この世界の枠組みで言えば十分な天才だ。天忍の電子防御を抜いて、その存在をゼロから知るに至ったのだから。

 きっと、彼女ならやってくれる。

 

 

 ──────

 

 

 まず、学校が終わると二人で街の中を無限パトロール。この段階で既におかしいけど、後ろからメイガスどもがコソコソ着いてきているんでし。バレてないと思っているのか、ヒソヒソと悪口を言うんでし。特にピンク髪の女は私のことを学校でもハイライトのなくなった目で見てくるし……怖いんでし! 

 

『ほら、やっぱりあれが天忍のやり口なんだよ……!』

 

『なんで俺たちじゃなくてあんな訳わかんないやつを……』

 

 お前らが部外者だからでし。そうやって言ってやりたい衝動を抑えつつ、ゲンジに抗議をした。当然、気付いていたのか額に手を当ててため息を付く。

 

「何をしているんだ本当に……」

 

「知り合いなら、ちゃーんと止めてくれでし」

 

「昨日注意したし、今日も注意したばかりだ」

 

「えっ」

 

「あいつらは本当に……全く言う事を聞かん……」

 

「そういえば……どういう関係なんでし?」

 

 聞いたことがなかった事を思い出す。これまで、ゲンジという個人の事情をあまり聞いたことがなかった。この際に一度聞いてみたかった。

 

「…………」

 

「あ、言いたくないなら別に……」

 

「いいや、そうだな。関わる以上はそこの説明は必須だったな」

 

「…………」

 

 パトロールをしながら、昔話を聞かされた。

 いや、それは昔話というには最近の話だった。つい3年前、例のオーバーウォッチから一人だけ取り残されたゲンジは、ユーロで目を覚ました。

 日銭を稼ぎつつ旅をした彼は、やがて一人の少女と出会った。アンチドート(確か、ユーロでの魔物の呼び方でし)に襲われていた珍妙な姿の彼女は、人類解放戦線のメイガス()を名乗った。

 

『ち、ちんみょっ……!?』

 

『リリエル、言われてんぞ』

 

 オーキス──人類解放戦線のリーダーに誘われてリリエルの旅に同行したゲンジ。最初は人類解放戦線のことを異常な組織ではないかと疑っていたそうだ。

 

『そう……だったんだ……』

 

『まあ、ゲンジさんからすれば確かにそうかも……』

 

 だけど、リリエルと同行するうちに少しずつ分かった。彼女は純朴で、素敵で、人類のために一生懸命戦っている可愛い女の子だった。

 ゲンジは、そんな彼女を見て昔を思い出し、そばで支えたくなったんだ。

 

『ゲンジさん……私も……』

 

『けっ』

 

『ぺっ』

 

『…………』

 

 彼女と共に歩むことを決めてユーロを周る。それはまさに、救世の旅路でもあった。トラブルに巻き込まれるリリエルと、その背中を支えるゲンジ。曰く、彼女はそういう星のもとに生まれたのだそうだ。

 襲われた人々のメンタル面を支えるのはリリエル。そして、戦闘面では自身が先頭に立ち、彼女にも経験を積ませた。やがてはいなくなることを決めていたから。

 

『あんな最初の頃から一人になろうって考えてたんだ……』

 

『まあリリエルは頼りないしな』

 

『う、ウリエルだってゲンジさんの前では頬っぺたプニプニのくせに!』

 

『な、なんだよそれ!』

 

『リリエル、それだけじゃないよ。コイツこの前、さりげなくおっぱんむむむ……むー!』

 

『な、ななななにいってんだよ! そんなわけないだろ!』

 

『ウ、ウリエル…………?』

 

『ウリエルあなた、そんなことしてたの……?』

 

『い、いや、ちがっ……そんなこと言ったらサリエルだって買い物のふりしてさりげなく手繋ごいでででで!? な、なにすんだよ! お前もアズラエルも、胸つねるんじゃねえ! 図星だからってよ!』

 

『ず、ず、図星じゃないです! 手なんか繋ごうとしてません!』

 

『どーだかな!』

 

 なんか、外野がうるさいでし……

 

「はっはっは! 可愛い奴らだ!」

 

「どんな感情なんでし……」

 

「ふふふ……あれが、彼女達が任務から解き放たれた姿なのだ。良いことじゃないか」

 

「…………ゲンジさんは、アイツらに戦ってほしくないんでし?」

 

「ううむ、そこは微妙だな……戦士として、彼女達のことは尊敬している。だが確かに、積極的に戦ってほしいのかと言われれば違う」

 

「ええと……」

 

「誰も戦わなくて良い世界、それこそが我らの願いなのだ」

 

「え……」

 

「彼と俺が目指した虹彩の果ては……そこにある」

 

「────」

 

 それは、果てのない話だった。

 争いのない世界、それは確かに理想の世界に違いなかった。まるで子供が語るようなそれを、この超人は大真面目に語っているのだ。

 

「青臭い願いだと分かってはいるが……笑うか?」

 

 それは──少しだけ恥ずかしそうな顔だった。

 叫ぶように答える。

 

「そ、そんなことないでし!」

 

「…………」

 

「その願いが叶ったらすごくすごいと思うでし! わ、私も応援するから!」

 

「──ありがとう、穂高未来」

 

 それは、なんというか晴れやかな笑顔だった。

 純粋な彼の一面。

 

「あ…………」

 

 知らずに声が漏れた。

 その日は結局、最後まで収穫はなかった。

 

 次の日、駅前での待ち合わせだった。

 ゲンジを待つ間、マフラーで口元を覆っていた。

 よく考えるとコレってデートなんじゃないかと思って、知り合いに見られたら恥ずかしかったからだ。

 

「──待たせた」

 

 ちょっとだけドキドキしながら、気配を探る。やはりメイガスたちは着いてきていた。

 

「……さて、続きだったか」

 

「う、うん」

 

 昨日の続き、メイガスたちとの馴れ初めの話を聞いた。

 アズラエルが最初、汚いおっさんたちに追いかけられていたこと。気付いたら手を掴まれて連れていかれそうになっていたこと。

 

『あ、あれはまだ、よく分かってなかったからで……』

 

『お前はまあ、うん』

 

「大変だったんでしね」

 

「本当に」

 

『…………ゲンジのバカ』

 

『ったく、そんなこと言ってっから──な、なんだよ! まだ何も言ってねえだろ! やめ──』

 

 サリエルはカマトトぶって男について行こうとしていたけど、腕が震えていた。試し行為をするタイプで、ちょっとめんどくさいと思っていること。

 

 ウリエルは喧嘩っ早いわりには、アンチドートに操られたやつだったり複数人で囲まれたりで、負けてすぐ襲われていたこと。

 

『『ゲンジさん!?』』

 

「なんか……どたばた珍道中って感じだね……」

 

「はは、そうだな。なかなか楽しかったよ」

 

「……それでも、別れようと思ってたんでし?」

 

「ゲンジの俺は私人じゃない。友人と観光をしているわけでもない。別れは必定だ」

 

「なんか…………寂しいでし……」

 

「そうだな、別れは寂しい」

 

 そう呟くゲンジの横顔は、それでも穏やかな笑みを湛えていた。別れを乗り越えてきた男の顔だった。

 

「さて、俺の話はどうでも良い。今後の話を──」

 

「「「「どうでも良いわけないでしょ! /ない! /ないです! /ありません!」」」」

 

「お前ら……せめて隠れようとしろよ」

 

 こんな感じで、ちょくちょく邪魔してくるんでし。本当に厄介でし。

 それに、パトロール中は結構強い魔物が出てくることもあるでし。

 

「ゲンジさん! これって!」

 

「ああ、囲まれているな』

 

 素早く忍装になり、ギアーズを構える。

 周りを囲んでいるのは、獅子の顔をした人間だった。

 

「こいつらいったい……わぁぁっ!?」

 

 股間から、まんま人間の男のアレがいきり立っていた。全く隠そうともしていない。

 

『この程度で狼狽えるな』

 

「セ、セクハラでし!」

 

『良くいる普通の魔物だろう』

 

「い、いないでし……ほ、本当にむ、む、むり……」

 

 目に焼き付いたあれが、思考から離れなかった。

 必死に魔物を見ようとしても、結局ソレがあるので集中できない。

 

『ふんむ……』

 

『ギイイッ!?』

 

『ギャッ──』

 

 バツンバツンと、水風船を断ち切るような音が聞こえた。

 

「………………」

 

『もう大丈夫だぞ』

 

 恐る恐る目を開けると、魔物たちがその場で縦横四分割されていた。

 ホッと一安心。寝られなくなるところだった。

 だけどゲンジさんは鎧を脱ぐと、呆れた顔をしていた。

 

『穂高未来、お前はもう少しああいう類の物に慣れたほうがいいな』

 

「…………サキ達だって変わんないでし」

 

『では、お前ら全員だな。戦いの場で敵の裸などに惑わされていては、お話にならん』

 

「………………」

 

『どうしたものか……ヒバリに何か用意でもさせるか?』

 

 戦いに関してはシビアで、厳しいこともズバズバ言ってくるんでし。しかも、正論だから反論もできない。私はコレでも一応、花咲く女子高生なのだ。あんな……あんなの見せられて平常心なんて保てないでし。

 天忍の修行で、一応座学ではああいうのを学んでいたけど、実際になんてことは無かったし。

 どうやって慣れろって言うんでし。

 

『まあ慣れると言えば実践か……あるいは書籍などで多くのサンプルに触れるか、だな』

 

「じ、じ、じ、実践!?」

 

『ああ、誰か好きな人はいないのか?』

 

「い、いるわけないじゃん!」

 

『そうなのか? ……いやいや、そんなわけはない。俺とて学生の時は好きな女子の一人や二人……』

 

「知らないでし!」

 

 たまに、とんでもなくデリカシーが無い。

 それもまた、このゲンジという男の特徴だった。

 だけど……すっごく楽しいこともあるんでし。

 

「こ、こうでし?」

 

「ああ、いいぞ。ベータグラフの数値と同じ電圧になったらナイフを差し込め」

 

「──えい! ……うわぁぁああ! すごい! すごいでし!」

 

 それは忍術では無かった。

 オーバーウォッチが使っていたという、エネルギーフィールドを発生させるためのガジェットだった。

 ゲンジが持っているクナイはトールビョーンという大天才が渡したものであり、防諜、ハッキング、電磁パルス、雷撃、投擲、そしてエネルギーフィールドを発生させる機能が組み込まれていた。ただのクナイにこれだけの仕掛けを組み込むなんて、一体どれだけの技術なのか。眉唾物だったゲンジの話が、急に身近になった気がした。

 

 そのクナイを借りて、壊さないか震えながら色々と実験を行った。

 実験の最中、何回かコチラの器具がショートしたりした。その度に、クナイが壊れていないか何回も見直した。

 

「気にしないで良い。トールじ──トールビョーンも君みたいな可愛い女の子に使ってもらえるのは嬉しいはずだ。存分に使い潰してくれ」

 

「む、む、むりでし! そんな事できないでし!」

 

 急に褒められたような気がした。だけど、それどころじゃなかった。クナイの扱い方を見て、彼がどれだけコレを大切にしているか分かってしまった。

 腕甲に仕込まれたクナイを取り出す時もソッと。まるで家宝でも扱うかのように丁寧に取り出し、恭しく渡してきた。

 クナイを見る目。遠き日を思い出しているのか、寂しげですらあった。

 

「だ、大事にするんでし! これはちゃんとお返しするでし!」

 

「そうか……それは嬉しいな」

 

「っ……!」

 

 嬉しそうな顔を見て、なぜか、息が詰まったような感覚になった。

 慌てて、エネルギーフィールドのことを話す。

 

「こ、これ!」

 

「うん?」

 

「これ! 実戦で使えるかな!?」

 

「もちろん、一定量までの攻撃なら防ぎ切れるだろう」

 

「じゃあ、もっと改良して持ち運びできるようにしなきゃ!」

 

「……それにしても大したものだ。ドーム上のバリアとは」

 

「守るというなら、コレくらいは前提でし! みんなを守れるように!」

 

「…………ふはははは!」

 

「!?」

 

 それは爆笑というやつだった。何がおかしいのか、呵々大笑。

 

「へ、変なこと言ったでし……?」

 

「──いいや? 何もおかしく無いさ」

 

「そ、そう?」

 

「ああ、そうだな! 皆を守るならばコレくらいが普通だよな! はーはっはっはっはっは!」

 

「????」

 

 

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