忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男   作:goldMg

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2_神

「はい、ではこの問題分かる人」

 

「…………」

 

「じゃあ志村さん」

 

「あ、はい……えーと4番です」

 

「正解。4番の、太郎がいなくなって寂しい、ですね」

 

 退屈な授業。

 こんな事なら身体を動かしていたい。

 天忍の仕事に全く関係ない現文なんか学んでも……いけないいけない、これも天忍の仕事なんだから。

 普通の人がどんな生活を送っているのか。

 何を思って生きているのか。

 自分たちが護る世界の形を知るという任務だ。

 

「──ごがあああああ」

 

 隣の席の島田くんは寝てる。

 頭がこっくりこっくりと船を漕いで、時々机を蹴り上げたりビクンッて身体が揺れたり。

 夜遅くまでゲームをしていたらしい。

 

「はい、じゃあ島田……島田!」

 

「ふがっ……」

 

 クラスのあちこちからクスクスと、小さく笑う声が聞こえる。対して島田くんは、黒板を見て教科書を捲った。

 

「この問題、解けるよな?」

 

「えーと……3番です」

 

「正解」

 

「ふぃー」

 

「ふぃー、じゃない」

 

「あっす……すいやっすん」

 

 ペコペコと頭を下げると椅子に座り直す。

 申し訳なさそうな顔をして、手刀を縦に切った。

 

「志村ごめん、もしかして机蹴ったりしてた?」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

「そか……もし邪魔だったら遠慮なく殴り飛ばしてくれて良いからな」

 

「分かった」

 

 放課後、友達とカラオケに行った。

 Reoff(リーフ)っていうグループの歌が最近のお気に入りで、3曲も歌っちゃった。

 昔は、カラオケなんて……ふんっ、みたいに食わず嫌いしていた。

 でも、誘われてやってみたら意外と──ストレスが発散できるし、何より上達すると点数に現れるから楽しい。

 

「いやー、相変わらずヒサメは歌が上手いねー」

 

「そうかな」

 

「なんか、こう……声が透き通ってて、クリアウォーター飲んでるみたい」

 

「声じゃないの……?」

 

 前は歌なんてあまり歌わなかったから最初は下手だった。でも、音を模倣する要領で音程を調整すれば良いことに気付いて、ドンドン楽しくなっていった。

 音楽ってこんなにも素晴らしいものなんだって、気付かされた! 

 ……あ、山本くん達だ。

 野球部の帰りっぽいな。

 手振っとこ。

 

「山本じゃん」

 

「ね、手振っとこうよ」

 

「……好きなの?」

 

「え? 好きって……恋愛的な意味で?」

 

「そりゃまあ」

 

「あはは! 違うよー!」

 

「あ、そうなの……」

 

「うん」

 

「…………」

 

「……ん? どうかしたの?」

 

「──あ、ごめん何でもない」

 

「変なの」

 

「なんだとーう!?」

 

「きゃー!」

 

「この! この!」

 

 こういう巫山戯たやり取りも、パートナーであるサキ達とはあんまりしない。

 仲は良いけど……誰が好きとか、誰が嫌いとか、そういう価値観はあんまり持ってこなかった。

 だから……すごい新鮮で、すっごい楽しい! 

 青春って、こういうのなんだね! 

 

 ──私たちだけが気付くことのできるサイン。端末に連絡が入った。

 

「……あ、やばい! そういえば今日予定あるんだった! ごめんレイちゃん! このとーり!」

 

「ったく、しょうがないなあ……ほら、いったいった!」

 

「ありがと! レイちゃん大好き!」

 

「はいはーい、アタシも愛してるよー」

 

 

 ──────

 

 

「サキ! ミク! 今どこ!?」

 

『家出たところ!』

 

『同じくでし!』

 

「ミク!」

 

『南東の倉庫街! 43体! 総合等級は第四等級でし!』

 

「──現地で!」

 

『『了解!』』

 

 あの一件以降、情報の裏取りはより一層緻密に行われるようになった。

 敵が私たちを欺くために魔力で偽装を行った可能性が示唆された為だ。

 

 その結果が43体。

 総合的に判断した等級は第四等級。

 第五から第一等級まである中で、下から2番目の第四等級。

 

 問題は、無い! 

 

 あれ以降、イレギュラーは無かった。

 私たちは任務を成功させ、天忍として順調にキャリアアップしている。

 ミクと私はサキ頼りの戦い方から少しだけ前進したし、サキもさらに技の冴えが鋭くなった。

 

 鞘におさまったマサムネに触れる。

 マサムネやハーケンはただの武器ではなく、天具だ。

 森羅万象、人が大事に扱えば神が宿る。

 天具とはそういったものの一種であると考えられている。

 今日も、どうか私と共に戦ってください。

 そんな念を込めて撫でた。

 

「──ありがとう」

 

 返答があった……ような気がした。

 

 

 ──────

 

 

 倉庫街は離れている為、少し時間がかかってしまった。

 そして到着した先に広がっていた光景は──

 

「何だよこりゃあ……」

 

「…………こ、これは……」

 

 サキの絶句の元。

 三人の視線の先。

 

 何もいない。

 魔物がどこにも。

 そんな筈はない。

 私たちは確かに、探知された結果をもとにここに来た筈だ。

 43体の魔物。

 絶対に、いる筈なんだ。

 

「ここから既に離れてしまったという可能性は!?」

 

「それはないでしよ? ほら、データはここを指し示している。魔力はここからきているんだから」

 

「でも、じゃあ……これは一体……なんなの?」

 

「ともかく本部に連絡するでし。もしかしたら向こうでは何かを把握してるかもしれないでし」

 

「そ、そうだね……!」

 

 直ぐに本部と繋がり、管制官が出た。

 例の事があるので、ヒバリさんに繋いでもらう。

 

『どうした、何かあったか』

 

「ヒバリさん、何もいません』

 

『──まさか!?』

 

「はい!」

 

 短いやり取り。

 しかしヒバリさんは、私が言いたかったことをちゃんと汲み取ってくれたようだ。

 

『………………最後の一体がやられたのは10分前のことだ』

 

「10分って……いやいやいやいや! そんな早く、誰が着けるの!?」

 

『お前らは現場で待て、今から調査班を向かわせる』

 

「は、はい」

 

 

 ──────

 

 

 調査班がやってき現場調査を始めた。

 魔力の痕跡、物理的な痕跡。

 その二つを追う作業だ。

 その作業を後ろで見ながら、どんな魔物だったかということを聞く。

 

「痕跡からして、魔物がここにいたのは間違いない。それに……どうやら爆発系の能力を持っていたようだね。街中でなくとも、ここで爆発されていたら大惨事になっていたのは確実だ」

 

「爆発……だから等級が低かったんだ」

 

 調査班はさらに続ける。

 

「こいつを爆発させないためには……起動のプロセスに差し込めるような速さか、強力な一撃のどちらかで倒す必要がある」

 

「つまり?」

 

「私のハーケンだな」

 

「その通りだね宵闇さん、ハーケンの一撃ならば可能だ。逆に、穂高さんと志村さんは相性不利というやつだ」

 

 その言葉に、少しだけ気持ちが暗くなる。

 やっぱり私たちはサキがいないとダメだ。

 

「……ただ、君たち二人にもできないわけじゃない。起爆装置のような役割を果たしている部分がある筈だ。そこを上手く攻撃できれば爆発させずに倒せる」

 

「起爆装置……」

 

「おそらく至難を極めた筈だが……まあ、過ぎた話はいいだろう」

 

 指先を擦り合わせ、小さな声で暫く呟いた後。

 調査班は結論を聞かせてくれた。

 

「やはり、この場に魔物がいたのは間違いない……その中の一体は、強力な個体だった。それが忽然と消えた。そして君たち三人が倒したわけでは無い……天忍に類する存在でなければこんな事はできない」

 

「私たちの……同業者……」

 

「あるいは敵対するべき存在の可能性もある。我々が尻尾すら掴めない相手だ、くれぐれも注意してほしい。──あ、それと今のはまだ仮説だから、結論として広めないでくれたまえよ?」

 

「分かりました」

 

「全く……魔物の性質さえなければもっと楽なんだけどね」

 

 魔物の性質。

 それは、電子機器の機能を妨害する性質だ。

 魔力によるものであると考えられており、これによって周辺の監視カメラなどは意味を為さなくなる。

 一般人に対しての電子的な隠蔽工作をしなくていいから普段は都合が良いけど、今回ばかりは恨めしい。

 

 

 ──────

 

 

「ちっ」

 

 落ちていた空き缶を蹴っ飛ばしてゴミ箱に叩き込んだサキ。

 露骨に機嫌が悪い。

 

「コソコソしやがって……」

 

「……確かに、なんで隠れてやるんだろう」

 

「そりゃあ腑抜けだから──」

 

「そうじゃなくて、私達って一応正義の味方でしょ?」

 

「……お前……言ってて恥ずかしくないのか?」

 

「でし……」

 

「そ、そこはいいでしょ! ……ともかく! 魔物を倒すって事は、人類の味方って事でしょ? なら、私たちと協力した方が絶対効率良いじゃん!」

 

「あのな、やましい事があるからに決まってんだろ?」

 

「で、でもそれなら私達だって同じじゃない! みんなにバレないようにコッソリ戦ってるんだから!」

 

「……確かに」

 

 あーでもないこーでもないと、サキと話す。

 これから先もこんなんだと、マトモに任務ができなくなる可能性がある。

 そうなると、より上位の天忍にこの町の任務を引き継いで私たちは別の街へと行くことになる。

 ……甘ったれたことを言うならば、この街は居心地が良くて、離れたく無い。

 何とかしないと。

 そんな、若干の焦りを湛えながら話していたら。

 

「──変でし」

 

 ミクがポツリとこぼした。

 

「何がだよ」

 

「何でこの街なんでし」

 

「ん?」

 

「他の街だとこんなことは無いでし」

 

「他の街って……」

 

「アキハのいる街でも、ハルカのいる街でも、イレギュラーは無いでし。それとなく確認したから間違い無いでし」

 

「抜け目ないな」

 

「だから、なんで竜胆市だけこんな事が起こるか分からないでし」

 

「…………本部があるからとか?」

 

「お話にならないでし」

 

「なんだと!?」

 

「天忍や人類の利益になる事をしつつ、身分を隠す。それなら本部がある竜胆以外のところでやる方が理に適ってるでし」

 

「……お前は何でだと思うんだよ」

 

「少なくとも、機械的な思考で動いてる相手ではないでし」

 

「機械的?」

 

「論理に基づいて、ガチガチに固められた組織ではないということでし」

 

「柔軟ってことか?」

 

「というより、やりたい事を優先しているって感じ?」

 

「なんかフワッとしてんな」

 

「情報が少ないんでし…………ヒサメはどう思う?」

 

「うーん……難しいことは分からないけど、きっと良い人たちなんだろうなって」

 

「…………」

 

「だって、私たちと同じで世界を守るために戦ってるんでしょ? なら、姿は見えなくてもきっと、志は同じはずだから」

 

「……そうでしね、だと良いでしね」

 

「そうじゃなかったら全面戦争だからな」

 

「サキはちょっと黙ってろでし」

 

 

 ──────

 

 

「はぁ……」

 

「すぴいいいい」

 

「うーん……」

 

「ぐごおおおおおおお!!」

 

「呑気で良いなあ」

 

 私はこんなに悩んでるのに、島田くんは昨日もゲームして夜更かししてたらしい。体力測定の時間、体操の途中で大爆睡を始めてしまった。

 ……というか島田くん、暑くないのかな。

 初夏で日差しも強いのにダボダボのジャージを完全に着込んでる。

 学生服もダボダボの長袖長ズボンしか見たことないし。

 お兄さんのお下がりとかなのかな。

 

 先生が島田くんを爪先でちょんちょんと突く。

 

「島田、起きろ」

 

「んげっ……あ、はい」

 

「マラソンの準備しろ」

 

「えーと……200kmでしたっけ」

 

「アホか」

 

「ああそうか、フルマラソンなら42.195kmか」

 

「1.5kmだ」

 

「え? …………マラソン?」

 

「なんだ?」

 

「……あぁ! 体力測定だもんな!」

 

「お前……大丈夫か?」

 

「大丈夫です! 走るのは得意なんで!」

 

 走るのが得意かぁ……私も、走るのは少しだけ得意かも。

 だって……修行で吐くまで走った回数、数えきれないし。

 

「──よーい」

 

 ピッ、という笛の音と一緒にみんながスタートした。

 サッカー部と陸上部が一番前。その次が野球部。次がテニス部、その次が吹奏楽部、そして他の運動部。最後に文化部や帰宅部が続く。

 男女混合なので割とグチャグチャだけど、大体こんな感じだね。

 速度は、どの子もあまり変わらないと思う。

 正直、天忍の修行に比べたらお散歩みたいなもの。

 楽ちん楽ちん。

 私は一応帰宅部なので、他の帰宅部の子に混じって走っている。

 

「ちょーめんどーい」

 

「ねー」

 

「ヒサメぇ、もうちょっとゆっくりいこー」

 

「うんー」

 

 おじいちゃんのジョギングぐらい。

 もはや走っているのかすら分からないくらいの速さで一緒に走った。

 でも、こういうのも悪くないかも。

 

「…………」

 

 島田くんは、なぜか私たちの前ぐらいを走っていた。

 

「島田おっそ、走るの得意ってなんだったの?」

 

「さぁ……厨二病ってやつなんじゃない? ほっといたげようよ」

 

 生暖かい目で見られていることには気付いてるみたいだった。

 

「ん〜?」

 

 

 ──────

 

 

 放課後、ヒバリさんに呼び出された。

 今後の方針で話があるって。

 

「お前達はこれまで通り、通信が入ったら現場に向かうのは変わらない」

 

「はい」

 

「だが、正体不明の存在の介入を考慮して先行隊を向かわせる」

 

「……それは、竜胆市だけですか?」

 

「今のところはな」

 

 つまり、監視の人員が大量に配備されるということだ。

 その決定に不満を漏らすことはできない。

 私たちの能力不足が原因なのだから。

 

「ヒバリさん、そいつと出会したらどうすりゃ良いんだ?」

 

「そうだな……まずは対話を試みろ。くれぐれも戦闘を仕掛けるなよ、宵闇」

 

「そんな事しねえよ! じゃあ、仮に向こうから攻撃してきたら?」

 

「当然、応戦しろ」

 

「逃げなくても良いんだな?」

 

「ああ」

 

「よしっ!」

 

「なんでそんなに嬉しそうなんだ」

 

「一発ぶん殴ってやりたいからだ!」

 

 

 ──────

 

 宮本怜(ミヤモトレイ)15歳

 

 一般家庭の子供

 志村氷雨の友達

 明るく、志村氷雨を引っ張るような言動が目立つ。

 志村氷雨は世俗に疎いため、こうした人物から情報を得る事が大事。特に学校という閉鎖空間では、彼女のようなあっけらかんとした人間と関係を持つというのは意外と重要。

 

 

 山本広大(ヤマモトコウダイ)16歳

 

 一般家庭の子供。

 野球部所属

 一年ながら、レギュラー一歩手前の実力を持っている。

 だが、年功序列に阻まれて今はベンチ。これからの伸び代が楽しみ。

 志村氷雨に好意を抱いていたが、玉砕。

 今は野球に力を入れることに決めた。

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