忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男 作:goldMg
「──ナマズ!?」
『なるほど』
「ゲンジさん! アイツ知ってるのか!?」
そこにいたのは巨大なナマズだった。体長100mほど、怪獣映画に出て来そうな巨体だ。ただ、妙なことに地面を泳いでいる。比喩表現ではなく、地面をまるで水中であるかのように進んでいたのだ。
『ナマズとは古来、地震の化身だった。きっと、そういう伝承の元になった妖怪なのだろう』
冷静に考察するが、無惨な惨状である。
揺れ動く巨体が通った後には半壊した家屋が残るのみ。結界の中とはいえ、異常な存在感だ。
「でも、あんなの倒せないぞ!」
『何を言っている』
「え?」
『倒せるか倒せないかなどという生ぬるい話はしていない』
「生ぬるいって……でも、地面に……」
『なんとかするのだ』
「…………」
少しだけ、サキを突き放すような物言い。
ただ、正論だった。出来るか出来ないかじゃなくて、するかしないかだ。
対話できるものならするけど、既に街を破壊し、幾らかの被害が出ている。ならば最早、倒すしかない。
そしてそのために私も色々準備して来た。
ゲンジも……私のことを見ている。
「わ、私がなんとかするでし!」
「ミク……できるの?」
「やるんでし!」
『……そうだ、それでいい』
「二人とも、これをセットしてくれでし!」
「これは……」
「なに……?」
「指向性の音響兵器でし。ナマズは音に敏感でし」
「何でそんなピンポイントで!?」
「違うでし、色々持ってきてるんでし」
「……そもそも機械は魔物の近くじゃ使えないだろ!」
「できるようにするのが科学者でし!」
このためだけに備えていたわけじゃない。音、光、熱、魔力、爆発。色々な敵に対処できるように、常に一個は持ち歩いていた。それこそ、ヒサメやサキみたいに忍具の力をうまく引き出せない私は、それ以外で補わなきゃいけない。
ギアーズの力はまだ引き出せないけど、科学なら私だって!
ゲンジの力を借りて、自分なりにガジェットってやつを作ったんだ。……自分は科学者じゃないなんて言いながら、理論的な部分も組み立ての部分も結構手伝ってもらった。あれで得意じゃ無いなら、一体どんなレベルの場所にいたのか。
──オーバーウォッチの話を参考にして機械をいじるのがとても楽しかったのは内緒だ。この国で、オーバーウォッチの人たちは除いてきっと自分しか触れていない、オーバーテクノロジーの裏側。私とゲンジ、2人だけの秘密だ。
「三人であのナマズを囲むようにこれを地面にセットするでし。それで、合図が言ったらスイッチを入れて、ナマズが地上に出て来たら攻撃して!」
「だけど、指向性っつっても向きはどうすんだよ」
「ごちゃごちゃ言ってないで、早く行け!」
「……わーったよ! あとでちゃんと説明しろよな!」
「ミク! 頼んだよ!」
二人は大ナマズを囲むように散っていった。
ただ……
「あの……えっと……ゲンジさんは……」
『案ずるな、それを使っている間のことは任せろ』
「──はい!」
この武装は使用している間、親機の持ち主の魔力をガイドにして音波を対象へと放つ。逆に言うと、常に魔力を意識していなければ操作が出来ない。魔力操作が三人の中で最も苦手な私がそれをするという皮肉。
しかも、練習したけどこんなに大きくて動く相手は初めてだ。
実戦投入に、少しふわふわした気持ちになる。
「ふぅ……」
胸を鳴らす心臓を抑えるのはとても難しくて、何度も深呼吸をした。二人はちゃんとやってくれるか、ちゃんと魔力を操作できるか、タイミングは合うか、色々な不安が胸に湧いて──
「穂高未来」
「──は、はいっ!?」
肩に置かれた手が、一気に現実へと引き戻した。
彼は鎧を脱いだ普段の姿のまま、力強く頷く。
「失敗なんて恐れずにやってみろ、お前ならできる」
「あっ…………はい!」
「いい返事だ』
前に向き直って二人とナマズを見る。
二人は冷静に距離を取り、ハーケンやマサムネでナマズを軽く刺激して私との位置調整を行っていた。ナマズは、攻撃された方に反応して泥の塊を飛ばしている。あんまり知能は高くないのかもしれない。
誘導自体はあの2人なら簡単にやってくれるだろう。
正三角形で結ぶ。
幾何学模様には忍術的な意味というのが生まれてくる。魔力が均一な距離から注がれる事で、印──メイガス達がいうところの魔法陣──になる。すると、効果が大幅に増幅されるのだ。
「はっ!」
「やっ!」
やがて、2人の努力の結果が現れた。どちらを攻撃するべきか分からなくなったのか、その場で動かなくなったのだ。
その隙は、見逃さない。
「「「ーー今っ!」」」
『グギャアア!?』
鹵獲成功。
地中から引き摺り出した!
私は魔力をパスにするだけ! あとは頼んだよ! 二人とも!
──────
「天爪ムラマサ!」
空を飛ぶ真空の三日月がナマズに直撃した。
音に悶え苦しむナマズは、きっと攻撃には気付いているだろうが反応できない。ミクの作ったガジェットは相当な効果をもたらしているようだ
「ふぅぅぅ……」
サキはちょうど、天具の力を引き出そうとしているところだった。莫大な量の魔力をかき集めて維持するのには体力を使う。玉のような汗が額に生じ、集中を高めているのがわかる。
阿吽の呼吸。2人は全てを説明されずとも、この布陣に持ってきた時点でミクのやりたいことを理解していた。
ミクが捕え、ヒサメがダメージの通るところを調べ、サキが天弓ハーケンの一撃で穿つ。
オオナマズは極めて大きな肉体を持っている。ワールドイーターほどでは無いが、それは気休めにもならない。
リリエルが全力全開であっても、一撃では墜とせないだろう。
しかしメイガス達と違い、天忍は天具というチート級の武器を有している。素の魔力操作ならばメイガスの方が上でも、天具込みの瞬間的な最大攻撃力を考えると──
「──志村ちゃん達には荷が重くないですか?」
『重いだけならば問題無い』
「ちぇっ、全然驚かないや」
『これでも一応、師匠の弟子だからな』
かつて、彼は師匠達と所謂隠れんぼを行ったことがあった。当然、初めの頃に見つかったのは体の大きなエージェント達。ラインハルトやウィンストンはめちゃくちゃ頑張ったが開始1分で全員見つかった。ウィンストンはバナナの山に隠れようとしていた。
次に、体格が普通の者達やハムスターのように小さな者が見つけられた。
最後に近付くにつれ、上手く隠れていたキリコやアナ達が見つかり、残すはエコーとシマダ兄弟。気を感じ取り、光学迷彩で背後を無音で飛行していたズル一歩手前のエコーが見つかったが、結局兄弟は見つからなかった。
ちなみに、1番最初に見つかったのはゼニヤッタだ。
それはもう堂々と座禅を行なっていた。
何が言いたいかというと、生半可な隠密では彼から逃れることはできない。
「師匠の弟子って何か当たり前のような……」
『ハク、今は──』
「分かってます! 真面目にやります!」
はたから見て、明らかに前よりも距離が近くなっていた。真面目にやります!と言っている間も腕にしがみついている。戦闘の場とは思えないくらいに楽しそうだった。
しかし、仕方がない。真面目にやると言っても今回は彼女の出番は無い。主役はヒサメ達なのだ。
ーー状況が動いた。
「!」
地中を揺らし、飛び出してきた影。
「……子供?」
それは、大ナマズを小さくしたような姿だった。小さいとは言っても、大ナマズと比較した際の話であり、人と比べれば十分に大きい。
「はぁああ!」
現れた子ナマズ──体長5mほどで群れをなしている。今は、ヒサメが街中を移動し続けながら相手をしていた。大ナマズの危機に反応して地中から大量に現れたのだ。
「し、志村ちゃん大丈夫かな……」
『最終的には敵わないだろう』
今はかなり優勢に見える。本体は抑えられ、子ナマズに関しても大群ではあるがヒサメは上手く避けている。
「──はああ!」
今も、10匹近くを切って捨てた。
しかし人間というのはスタミナが少ない。物量をぶつけられると削られて崩されるのが常だ。ヒサメを間近で見るとわかるが、全くもって余裕な顔はしていなかった。
「キリがない! …………だけど! ミクが頑張ってるんだ! 私も!」
「────」
穂高未来と宵闇咲の二人は動けない。
それ故に、ヘイトがその2人に向かないようにワザと大きく立ち回っていることもあるだろう。もはや黒波のようになったナマズ達は、飛び退る志村氷雨を追い詰めていく。
「くっ……!」
あわや、というところで。
「アケノホムラ!」
爆炎が起こった。ナマズ達が吹き飛び、波の中に隠れそうになっていた志村氷雨の姿が再び視界に入る。
ナマズ達は突然の焔に少々怯んだか、追いかける勢いが弱まっている。
「志村ちゃん……今のはマサムネの力? …………おっ」
「──」
大きな気を立ち上らせる宵闇咲。髪が逆巻くほどの魔力がハーケンに集まっていた。
ナマズを鋭く睨み付けると、引き絞った弓を解放。
魔力の塊が放たれた。
「よしっ! …………え?」
放たれたのは矢ではなく、巨大な槍。一直線にナマズへと向かったそれを、小ナマズ達が必死に留めていた。
触れた途端に消滅して、それでも無数のナマズが寄り集まって必死に一撃を押し留める。
必死さすら感じるそれを見て何故か、ヒサメの心に思い描かれたのは。必死に親を守ろうとする子供達の姿だった。
咄嗟に、制止の言葉をかける。
「──サ、サキ! 待って!」
「はああああああああ!」
魔力を練り上げ、必死に一撃を押し進めるサキにその声は届かない。何か、間違いを犯している。自分たちは大きな勘違いを──
『はぁっ!』
「──んなっ!?」
光り輝く巨大な柱が真っ二つに切り裂かれた。
霧散していく魔力。サキは当然抗議を行う。
「な、何すんだよ! もう少しで──」
『リリエ…………志村氷雨が言いたいことがあるようだ』
「い、今、私のこと、リリちゃんと間違えました!?」
『気のせいだ』
「絶対間違えてたよ……」
「ヒサメ! 何だよ言いたいことって! もう少しで倒せたんだぞ!」
「違うのサキ」
「なにがだよ!」
「このナマズは、きっと悪い子じゃない」
「はあ? もう街も壊してるし、悪い奴以外の何者でもないだろ」
「きっと、それが間違ってたんだよ。ほら…………」
ノシノシと這ってきた一匹の子ナマズ、どうやら先ほどの大量の群れは分身だったようだ。群れは霧のように消えていっている。
触覚をゆらゆらとヒサメに纏わり付かせると、それに触れたヒサメの脳裏に、ダイレクトな感情が伝わってきた。明るく、楽しげな感情だ。
「きっと、ありがとうって言ってる」
触角の一本を握り、笑う。
「ふふ、くすぐったい」
「ヒサメ……お前、そいつらの声が聞こえるのか?」
「ううん、でも何となくわかるよ」
「────い! 二人ともー!」
そこにやってきたミクは触手を見た途端──
「う、うわわあああー!?」
仰天してすっ転んだ。
「ヒ、ヒサメ! 早く離れるでし!」
「ええ? どうして?」
「そ、そいつ、お礼にき、きもち…………って言ってるよ!?」
「え? なに? …………うわっ」
触手に持ち上げられたヒサメ。何をするのかと受け身の彼女の忍装の隙間にスルスルと触手が入っていく。
「えっ」
脚を絡め取り、動けないようにしたかと思えばまず、履いていたスパッツを脱がした。
「ひゃ、ひゃあああああ!?」
まだ下にショーツがあるとはいえ、いきなり脱がされたのだ。絹を裂くような声が上がっても仕方ない。
しかも、ここには仲間やゲンジがいる。
もがくヒサメはしかし、単純な膂力では敵わない。ガッチリと触手に掴まれた脚をM字に固定されて、とても人様にはお見せできない体勢になってしまった。
「み、見ないで! 見ないでええ!」
「おいてめえ! やめろ!」
「…………サキ! あいつ全然話通じてないでし!……た、たねづけするとかいってるよお!」
触手はスリスリと、際どいところを撫でさする。
「んっ……あ」
「え」
「い、今の声……」
あまりにも艶やかな声。
サキとミクは赤面した。
「ち、ちがうの! くすぐったかっただけだから! ──ねえ! お願いおろして! ……あっ……やっ……」
触手はやがて最終防衛ラインにたどり着くと、うねうねと動き、『触れた』
「ひゃああああ!?」
あとはもう可愛い蕾を晒すだけ。
恥ずかしさに泣き喚く少女のショーツをめくって──
『──狼藉は赦さぬ』
『!』
立ち上る圧。
幻想の頂点に立つ緑の鱗が、ナマズを睨みつけていた。
いつの間に引き抜かれたのか、彼の刀が突きつけられている。
子ナマズは大慌てで触手を引き戻し、ヒサメはいきなり解放された。
「え? ──きゃあああ!?」
『おっと』
受け身も何もなく叩きつけられるところだったヒサメの体を空中で捉え、着地する。
「あ、ありがとうございます……」
『気にするな』
ヒサメを背後に隠すと、子ナマズではなく大ナマズへと声をかけた。
『正気に戻ったか?』
『──龍の御方』
『何故街を襲った』
『言い訳のしようもありませぬが……いきなり、身体の自由を奪われたのです』
『誰にだ』
『それは…………』
『…………』
『私の命は差し上げます。ですが、何卒この子の命だけは……』
『では、今の狼藉は何と言い訳する? それは其奴の仕業だ』
『…………純粋なのです』
『純粋──理性がない、ということか?』
『まだ、幼い故……』
「ゲンジさん、私なら大丈夫で──」
『そのセリフは自分で何とかした者しか言えないぞ。もしも俺がこの場にいなかったら、どうなっていた?』
「っ!」
身体をサッと抱きしめる。完全に貞操の危機だった。というかさっき、パンツを見られた? もしかしたら捲られた拍子にアソコも……
目をぐるぐると回すヒサメの頭を撫でながら続ける。
『これからもそいつが少女を襲うなら、俺はこの場でお前ら二匹をもろとも始末する』
『…………』
完全に場を支配していた。
『貴様には選択肢をくれてやる。その者の名を教えるか、二匹まとめて消滅するかだ』
ゲンジの中で、この妖怪は敵に寄っているものだった。そして敵は滅されなければならない。子供がいるとか、大切な人を残しているからとか、そんな理由で剣を引く理由にはならない。
相手の事情では無く、現在の行動こそが敵味方の区別において必要なのだ。
『名は……知りませぬ』
『風貌を言え』
『短髪の人間の男です』
『他には』
『口調や気質が荒々しかった』
『他には』
『…………誰かに教えられた、と言っておりました』
『何をだ?』
『力の使い方です』
『ふむ』
大ナマズは地中深くに帰って行った。次、不埒な前をしようとしたら目の前で子ナマズの刺し盛りを食べると脅した後で。
ヒサメとナマズ。どちらを守るべきかというのははっきりと決まっているのだ。その上で、彼女に対しても少々の怒りを見せる。
『志村氷雨。対話は大事だが、対話できる相手かどうかを見極めるのも大切だ』
「……はい」
『しかし、一度始めた戦闘を収めようとするのは誰にでもできるものではない』
「?」
『あれこそが君の性質……リリエルと似ていると思ってしまう所以なのだろうな』
「……」
『争いを嫌う気持ちを忘れるな』
「はい」
『さて、大きな情報が手に入った」
鎧を解き、ミクの元へ行く。
「肝を冷やしたでし」
「脇が甘いリーダーを支えるのは君たちの役目だぞ」
「うっ……」
「だけど、慣れない操作をよく頑張ったな」
「…………」
「今度、また一緒にガジェットを作ろう」
「──うんっ!」
十分だった。最後だけは詰めが甘くなってしまったが、彼女達は十分に役目をこなしていた。
街を守るために結界を張り、元凶を断つために必死に戦ったのだ。お小言は一言だけでも過ぎるくらいだ。
三人の背中を1回ずつ叩くと、帰宅を促した。
「ハク、お前も帰るんだぞ」
「はーい」