忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男   作:goldMg

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6_ーにー誉ー、死ーーーを

 

『なんのつもりだ、貴様!』

 

『ガ……ア……』

 

『これは……操られている!?』

 

 背後の壁を打ち破って急襲を行った不埒者。

 急激に膨れ上がった強烈な殺気と圧力に、ゲンジは刹那の間に鎧を纏った。

 

「う……? …………なに、これ……」

 

『──宮本怜! 逃げろ!』

 

「…………だ……だ、れ?」

 

『チッ……志村氷雨! 今すぐにコイツを連れて逃げろ!』

 

「…………」

 

「ヒサメ! ……っ……」

 

 志村氷雨は気絶していた。壁をぶち破った際のアレは、おそらく魔力を込めた強力な攻撃だった。一般人が触れたら霞すら残さず消滅するため龍で相殺したが、志村氷雨は余波を喰らってしまったようだ。

 そして、壁を崩して現れたのは鬼。

 龍と鬼。

 最強の幻想である両者が取っ組み合っている。

 

『宮本怜! 動けるか!』

 

「あ、脚が……」

 

『痛くても動け!』

 

「っ! ひ、氷雨! しっかりして!」

 

『リリエル! 無事か!』

 

「無事です! だけど……」

 

『──2体目か!』

 

「御免なさい! 余裕がないです!」

 

『すぐにそちらへ行く! 持ち堪えろ!』

 

「はい!」

 

 龍と鬼は、拮抗していた。完全なパワータイプの鬼を繋ぎ止めるのは龍であっても容易ではない。初手で殺すのであればともかく、急襲をかけられたのはゲンジ側だった。無論、簡単に振り解けるものではないとはいえ、このままではリリエル達の加勢にすぐに駆けつけるのは厳しいだろう。

 

『ちっ……』

 

 龍を一旦消滅させ、向き合う。自由になった鬼は、鼻から煙を漏らし、炎を天へ噴いた。

 

『──ゴアアアアアア!!!』

 

「きゃあああああ!」

 

『大丈夫だ、安心しろ』

 

 ヒサメとレイ。二人を抱きしめ、音と衝撃から庇う。特にヒサメは無防備だ。この状態で攻撃を喰らったら、ひとたまりもない。まずは安全なところへ連れて行くために、クナイを鬼の背中に突き刺した。

 

『グオアアアアア!!!!』

 

 筋骨隆々の鬼は、刺さったクナイになかなか手が届かない。クナイからは強烈な電撃が流れており、継続的に鬼の体を痺れさせている。

 今が好機と、ゲンジは二人を背負って場を離れた。

 

「あ、あなたは誰なんですか!」

 

『…………俺はゲンジ、とある事情でこの街へやってきた』

 

「なんで私の名前を知っているんですか!」

 

『忍者だからだ』

 

「にんじゃ!?」

 

『まずは君たちを安全なところへ運ぶ』

 

「……あなたはどうするんですか!?」

 

『俺はアレと戦う』

 

「し、死んじゃいます! 警察とか……あ……」

 

 半ばパニック状態だが、淡々と説明を受けたレイは脳裏に浮かぶ点と点が繋がったやうな気がした。

 新聞やニュースでは、謎の大災害により倭の国の各地が滅びたことになっている。不安に包まれた市民の中でレイはここに至って、その正体を掴んだのだ。

 

『──―アアアアア!!』

 

 遠くから聞こえてくる雄叫び。

 レイの身体が震える。

 

『まずいな……』

 

 鬼が出現した。つまり、このタイミングでミクやハクの元へ強敵が現れても駆け付けられないということだ。その強敵が鬼であればマシだが。

 

『よし、ここで良いだろう』

 

「うわっ!」

 

 地上を超高速で駆けていたゲンジは、レイとヒサメを地面に下ろした。

 

「────」

 

『頼んだぞ!』

 

 半ば状況を飲み込めていないレイの様子。しかし、のんびりしている時間はない。影に目配せをしてゲンジはその場を離れた。

 

『──ゴオアアアアアアア!!!』

 

『参ったな……まさかこんな白昼堂々とは』

 

 いまだに背から抜けぬクナイ。苛立ちからか、辺りに雷を撒き散らす姿は、まさに暴の化身と呼んで差し支えない。

 

『!』

 

 鬼は肩で荒く息をし、背後に現れた気配を察知してグリンと首を回す。

 

『来い、相手になってや──』

 

『ガアアアアア!!』

 

『言葉の途中でとは不粋な』

 

 振り抜かれた右腕を躱し、斬りつけた。

 

『ガアッ!?』

 

『ふむ、刃は通るようだな』

 

 痛みによろめく。

 今の一振りで小指を取られていた。

 

『ドゥームフィストに匹敵するかと思ったが……操られているのが残念だ。あの時と同じく、話せばわかる相手だったかもしれないのにな』

 

『…………!』

 

 強く緑に輝く鎧。

 鬼は、理性を奪われているにも関わらずたじろいだ。

 否。

 本能のみだからこそ拒絶反応が出たのだ。理性があれば恐れを抑える事ができた。しかし、今の鬼にはそれがない。

 眼前に存在する鎧を着込んだ人間。

 見た目は全く違うが……かつて鬼が若かった頃、一族の長を討ち滅ぼした無双の武士を無意識に思い出させた。

 

『恨みも怒りもない』 

 

『!』

 

『だが……世を護るものとして、貴様を見逃すわけにはいかない!』

 

 正面に構えた刀。

 真正面から斬り殺すという強烈な剣気が、鬼の体を刺していた。

 一つ、瞬きをした。

 

『!?』

 

 確かに視界内にいたはずの忍者は消え、右端で吹き出す赤だけが目立っていた。

 

『ゴッ──』

 

 もう一つ瞬きをすれば、視界がぐるぐると回った。

 己の身体が踊っている姿を尻目に、男の声が聞こえた。

 

『そう……これは、人類の存亡を賭けた戦いなのだ……』

 

『──尻拭い……感謝……す…………る……』

 

『礼には及ばない』

 

 男は踵を返し、視界から消え去った。

 

 

 ──────

 

 

『ゴアアアアアア!』

 

「マテリアルプレイス! ──キャアッ!」

 

 多面体のバリアがリリエルの周囲を覆う。しかし、鬼が振り下ろした拳は容易くヒビを入れ、一撃でバリアを突き破った。

 これはたまらないと浮遊する。

 

「大丈夫かリリエル!」

 

「うん! だけどあいつ……凄い力だよ!」

 

「──私がやる」

 

 アズラエル──純白のメイガスは飛び交う岩弾を避けながら接近し、鬼へと手を翳した。

 

「グレイトメテオ」

 

『────!』

 

「うあっ…………エアイジェクト!」

 

 しかし、その一撃は拳圧でかき消された。その上、風の爆弾を浴びせられて体勢を崩しかける。なんとか阻害を放ち、風を相殺した。

 三人の元へ戻ったアズラエルは憮然と言い放つ。

 

「無理」

 

「おおい!」

 

「あれ以上威力上げると被害が大きい」

 

 ここは完全な市街地。しかも、彼女達は天忍のように結界を張ることはできない。この時ばかりは、普段馬鹿にしている天忍たちが羨ましかった。

 

「どうすんだよ!」

 

「…………サーチしたら斬撃耐性が低いみたいだった。風魔法の使い手ならもしかしたら」

 

「そんなのいねえよ!」

 

「──いるよ」

 

「「「「!」」」」

 

 そこにいたのは、見た事がない少女だった。

 いつの間にいたのか。

 緑色の髪を風にたなびかせる。

 

「どなたですか?」

 

 サキエルは礼儀正しく尋ねた。

 敵か、味方か。いずれにせよ、この場に現れた以上は無関係ではあるまい。

 しかし少女はため息をついた。

 

「この格好を見てわかんないかなあ」

 

「……天忍」

 

 それは忍装だった。

 緑基調の、F1を思わせるような流麗な線形。どこか、彼を思い出させるような見た目に、サキエルはハッと口に手を当てる。

 

「まさか、ゲンジさんのお弟子様とかですか!?」

 

「マジで!?」

 

「──は?」

 

「リリエル、ステイ」

 

 アズラエルがリリエルを抑えるという異常事態。剣呑な目の色に、即座に捕縛呪文を唱えた。

 何がそんなにリリエルの頭に来ているのかとアズラエルは一瞬だけ考え、面倒くさくなって思考を放棄した。全部ゲンジに投げよう。

 しかし、目の前の少女も──

 

「っざけんな! 誰がアイツの弟子だ!」

 

 地団駄を踏んでいた。

 サキエルに言われた事が、よほど腹に据えかねたらしい。

 

「私は! アイツの! 弟子じゃ! ない!」

 

「そ、そうですか……私はサキエル、メイガスです」

 

「三浦綾乃! 天忍! だけど、そんじょそこらの天忍と一緒にしないでね! ファーストだから!」

 

「ファースト……確か、戦闘力においてはゲンジさんに匹敵するという……」

 

「──あぁ〜もう! 腹立つ! どこに行ってもゲンジゲンジゲンジゲンジゲンジゲンジ! うざったいなあ!」

 

「……あ、あぶないっ!」

 

「風神招来!」

 

『!?』

 

 跳躍してきた鬼が吹き飛ばされ、空中に巻き上げられた。何が起きているのか、アヤノ以外の誰にも分かっていない。洗濯槽の衣服のようにぐるぐると空中を飛び回る鬼。

 それを見上げてアヤノは頷いた。

 

「通用する……やっぱアイツがおかしいんだ! 私は弱くない!」

 

「すっご……」

 

 ウリエルは空を見上げ、鬼がなすすべなく空中でもがく様を見て感嘆の声を漏らす。

 それを聞いて、アヤノの瞳が光った。

 

「──そうでしょ!? 私、凄いでしょ!?」

 

「お、おう」

 

「それなのに雛菓子(ヒナゲシ)のジジイどもは出来損ないとか言うし、セカンドの奴らも私の悪口とか言うし……ぐすっ……」

 

「た、大変だったんだな……?」

 

 若干引きながらも、目の前で泣かれたら慰めざるを得ない。

 

「大変だったんだよ! ゲンジとかいうやつのせいで!」

 

「…………ちなみに、なんで?」

 

「上の命令で模擬戦やったらボコされたの! それでみんな、私のこと雑魚だって……」

 

「あ、ああ〜…………本当に大変だったんだな──うおっ」

 

「分かってくれる!?」

 

 ウリエルの手を掴んだアヤノは、ウルウルと瞳に涙を溜めていた。

 

「あなたもきっと、アイツのせいで苦労してたのね!」

 

「…………」

 

 少しだけウリエル達の顔に影が差しているのに気が付かずに、機嫌を良くして風を操る。

 

「なんか、調子上がってきた!」

 

 風。

 それは大気を構成する分子の動きである。

 普段はそこに物質を感じることはないが、彼女が操る風は質が違う。一点に収束し、ドリルのように全てを打ち貫く矛に変わっていくのをリリエルは見た。

 

「凪の槍!」

 

 鬼目掛け、風の槍が一直線に突き進んだ。

 どこが凪なのか。風に巻き込まれぬようにリリエル達がバリアを貼るほどの暴風。

 もう、確実に鬼は死んだとその場の誰もが思っていた。

 

『──水天一撃』

 

「!?」

 

 直撃する寸前、瞳に光が宿った鬼はまたも一発。槍も風も消し去り、そのまま地面まで落下した。

 

『危うく、千枚に下ろされるところだったな』

 

「喋った!? ……まさか魔人!?」

 

『否、我は鬼』

 

「鬼……まあ誰でもいいや、敵なのは間違いないしね」

 

 アヤノは獣のように身を屈め、今にも飛び出しそうな体勢を取る。

 

『…………仕方ないか』

 

『いや、待て』

 

 やむを得ずとゆっくり瞬きをし、拳を引き絞る構えをとった鬼。一触即発の両者の間にゲンジが割って入った。

 

『正気に戻っているのであれば、闘う必要はあるまい』

 

『……そうか、あやつは戻れなかったか』

 

『悪いが、俺にはそういう器用なことはできなくてな』

 

『気にしていない。あくまで我が戻れたのも偶然だろう』

 

 もう、鬼は構えを解いていた。

 あくまで泰然と話をするのみ。

 

「ちょっと! どいてよ!」

 

『アヤノ、こいつにはもう闘う意思は無い』

 

「いいからどけ! ──あーっ! 掴むな! おろせー!」

 

 首根っこを掴まれ持ち上げられたアヤノはジタバタと空中で抗う。子猫のような扱いだった。

 微笑ましい物を見る目の鬼、そしてサキエル、リリエル、アズラエル。

 

『血気の強い女子だ、いい胎になるだろう』

 

「昔のウリエルみたいね」

 

「そうだね」

 

「うん」

 

 鬼から事情聴取を行い、二度と接触しないことと賠償の財貨を約束させた上でその場は不問とした。

 

「やはり今回も短髪の男か」

 

「ごめんなさいゲンジさん。私たち、全然役に立たなくて……」

 

「気にするな、街への被害を最小限に抑えてくれただけで大助かりだ」

 

 少し凹んでいる様子のリリエル。

 アホ毛がへたっていた。

 しかしそんなアホ毛も、頭を撫でり撫でりとしてやればグン→グン⤴︎グン↑と屹立していく。

 

「えへへ」

 

「怪我はしてないな?」

 

「はい!」

 

 二人の間に、桜の花びらが飛んでいるのを幻視した綾乃は、震える指先を伸ばした。

 

「ど、どういうご関係……?」

 

「えーと──ゲンジさんのパートナーです!」

 

「!?」

 

 目玉をひん剥いた。先ほどゲンジのことを悪し様に罵ったばかりだ、しかも彼女の目の前で。

 恐る恐る他三人を見ると……

 

「「「!?」」」

 

「え」

 

 何故か同じように驚愕していた。

 

「あの……?」

 

「ゆ、ゆるさーん!」

 

「リリエル! 調子乗っちゃダメですよ!」

 

「……!」

 

 三人がドカドカと走っていく。

 2人きりの空気へ殴り込みをかけていた。

 それを見てアヤノも気付く。

 そういうあれか、と。

 

「くっだらね〜…………」

 

 三浦綾乃。

 19歳。

 恋愛経験、無し! 

 

「帰ろ」

 

 鬼もいなくなった。すでにこの場にいる意味は無くなっていた。何が楽しくて憎き男のイチャイチャを見続けなければならないのか。

 

 なお、4人は目隠し稽古を受けて泣きを見る羽目になった。

 上げてから落とすのが得意な男なのだ。

 

 

 ──────

 

 

「ぐごおおおおお」

 

「聞いてよヒサメェ〜」

 

「なになに?」

 

 甘ったるい、と評するに足るような声で話しかけてきた親友レイ。こんな声色で話されるのは初めてかもしれないと思い、ヒサメも興味が強く湧く。

 身体ごと向き直って話を聞く体勢をとった。

 

「私、白馬の王子様に会っちゃってぇ〜」

 

「?」

 

「がっ……ふしゅるるるるる……すぴぃぃぃ」

 

 この時点では、親友の頭がおかしくなったことを半ば確信していた。

 

「昨日、ガスの爆発事故に巻き込まれたって話あったじゃん?」

 

「うん」

 

「あれ、実は違くてさぁ〜」

 

「ーーえ?」

 

「すぅ……すぅ……」

 

 妙だ。

 確かに昨日、影達の記憶処理を受けたところを見たはずなのに。

 

「鬼っていう怪物に襲われたんだよ私たち!」

 

 ドッキリ大成功〜! というような感じで両手を開く。

 違う意味でドッキリだった。

 

「いきなり、こーんなおっきな鬼がやってきて、カラオケごとこうやって! ぶっこわしたの!」

 

「んごごごごごご」

 

 シュ、シュ、シュ、とシャドーを放つ。

 

「それでさ、どうやって助かったか知りたい?」

 

「…………」

 

 呆気に取られたヒサメが反応するよりも前に、続ける。

 

「なんとね!ゲンジ様が助けてくれたのぉ〜! あ、ゲンジ様はとある事情でこの街にやってきたお方でね? 忍者なの! すっごいかっこいいんだから! 白い鎧に緑の線が走ってて、声も雰囲気もミステリアスな感じでね! 絶対ちょーイケメン! キャー!」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「あ、信じてないでしょ? ヒサメだって昨日助けられたんだからね? ゲンジ様がいなかったらあそこで死んでたかもしれないんだよ? あぁ〜……今、どこにいるのかな〜」

 

「──面白そうな話してんじゃん」

 

「うわ出た」

 

 青木修栄。

 宮本怜の天敵。

 楽しく話をしていたレイの顔が、一気に渋いものに変わった。ここはヒサメの席だし、隣はその氷雨に執着を見せるシュウエイだ。聞かれてもおかしくはないだろう。

 

「忍者がなんだって?」

 

「あんたには教えない」

 

「おいおいツれねえなあ」

 

「ヒサメ、あっち行こ」

 

「あ、うん……青木くんごめんね?」

 

「………………」

 

 場を後にするヒサメ。

 その背中をジッと、目を細めて見つめていた。

 

「──もー! マジきもいアイツ! せっかく気分よく話してたのに!」

 

「あはは……」

 

 誰もいない校庭のベンチまでやってきた2人。

 レイはウゲェッと嫌そうな顔をしていた。

 

「早くクラス替えしたいわマジで! アイツと二度と同じクラスになりたくない! 先生にも絶対やめてって言ってあるし!」

 

「…………と、ところでさっきのその……ゲンジ? って人のことなんだけど……昨日あった事ってそれだけだったの?」

 

 確かに自分も最初の一撃で気絶してしまったようだった。だけど目覚めた時には救護されていたし、レイが記憶処理を行われているところもしっかりと確認した。罪悪感を抱きつつも、これが正解なんだと飲み込んで。昨日の夕方は2人でカラオケに行き、ガス爆発に巻き込まれたけど無事に帰ったことになっていたはずだ。

 少なくともそういう記憶処理を行うと聞かされていた。

 

「え? カラオケ行って……そういえばシマダとかユリちゃん達はなんで無事なの!? 思い返すとどこにもいなかったんだけど!?」

 

「え」

 

 やはり消えていない。

 記憶処理を……行わなかった? 

 そんなバカな、しかし実際に忘れていない。であるならば、自分の友達といえども──友達だからこそ、巻き込まないためにも記憶処理は必須だ。これは雲雀に報告しなければ。

 

「シマダの野郎を呼んでくるね! 待ってて姫!」

 

「あ、ちょっと……一体どうなってるの?」

 

 連れてこられたゲンジはとんでもなく嬉しそうな顔をしていた。ヒサメがこれまでに一度も見たことがないくらいの満面の笑みだ。

 

「──で、あんた達はどこにいたの?」

 

「俺たちはひと足先に目を覚まして治療を受けてたんだよ。でもレイ……そのゲンジとやらは本当に、そんなにかっこよかったのか?」

 

「もうマジで! 声も立ち振る舞いも鎧も剣も全部が最高だった! 見られなかったのが残念だね! ……って、さっきまで苗字だったのにいきなり呼び捨て!? 距離感バグってない!?」

 

「何言ってんだ! カラオケに行った仲じゃないか! ハッハッハ!」

 

「テンション高っ……でも、街の外ではきっと鬼が壊したあの店みたいな光景がずっと広がってるんだよね……」

 

「……そうだな」

 

「知ってたの?」

 

「その鬼? とやらが竜胆以外にも現れているならば、きっと酷いことになっているのだろう」

 

「…………?」

 

「レイ?」

 

「あ、なんでもない。なんかちょっとデジャヴを感じて……というか、呼び方はレイで固定なんだ」

 

「ああ!」

 

「うっ……顔が良いヤツの笑顔はなんでこんな眩しいの……!」

 

「はっはっは! ……取り敢えず、その話は俺たちだけの秘密にしようか」

 

「うわあ! いきなり冷静になるな!」

 

「ゲンジとやらは秘密に動いているのだろう、それを邪魔するのはお前にとっても良くないんじゃないか?」

 

「──そうだね!」

 

 2人が話す光景を、ヒサメは微妙な気持ちで見ていた。

 突っ込みたいところがあまりにも多すぎたからだ。

 あと、忍者云々の話は置いておくとしても、いつまでもフルネームか苗字呼びの自分と違って、何故カラオケに行っただけのレイが名前呼びなのか。

 

「むぅ……」

 

 少しだけ、心に澱が溜まった気がした。

 レイがいなくなったら絶対に問い詰めよう。そう、心に決めた。

 

「島田……あんた昨日のカラオケでも思ったけど、意外と面白いヤツだね!」

 

「そうか?」

 

「うん! いつも寝てばっかりだから良くわかんないって感じだったけど……話してみたらちょっとだけわかったかも!」

 

「…………そうか」

 

 そして、レイの言葉を聞いてまた嬉しそうに微笑んでいた。

 

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