忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男 作:goldMg
『うふふ……うふふふふ……ふふふふふふ!』
甲高い声で笑う。
心底から楽しげに。
そう、彼女は女だった。
『ああ、本当に面白いなあ! 2つ混ざるとこうなるんだ!』
その手には3つのディスク。
それぞれには何かが印字されている。
『天獄大戦〜絶望の行き着く先〜』
『天獄大戦2〜普く希望はやがて墜つ〜』
『天獄大戦3〜滅びゆく古の盟約〜』
携えたそれは、いわゆるエロゲーだった。
『くぅー! やっぱり絶望と希望をひっくり返すのは快感だよね! …………だけど──』
しかし視線を逸らした先、一つの球を見るとつまらなさそうにため息をつく。
『元のまま行かせた方が良かったかなあ…………常人には刺激が強過ぎるって、全然気が付かなかったよ……』
その球の中では、多くの火花が散っていた。
剣、槍、槌、盾、銃、拳。
彼らの戦いだ。
『まさかそこまで脳みそが焼き尽くされていたなんて……』
声の主が本来想定していたモノ。
それは、見目麗しい少女たちに誘惑された男が最初の意欲など忘れて欲望のままに生きる姿だった。
──少女たちは、ぐつぐつと煮えたぎる「性欲」を押し隠している。彼が純粋だと信じる桃色の髪を持つメイガスも、天の弓を持つサードも、風を操るファーストも。
彼は預かり知らぬことだが、魔力を子宮で練ると胎内が熱くなる。すると、彼女たちのホトが自然と疼き出すのだ。加えてそんな彼女たちから散った魔力を浴びた男は興奮する。人間がそういう性質の生き物なのか、魔力がそういう性質を帯びているのか、彼女たちにとっても定かでは無いが──原作にはそういう設定があった。
彼女達の限界は割と近いだろう。当然、近くにいれば相応に溜まるものがあるはずだ。
だというのに。
『まだ一回も押し倒してないなんて……もしかして、勃たなくなっちゃったのかなあ……いやいや、そんなわけないから! だってあっちの世界では散々っぱら遊んでたじゃん!』
彼とて若き男。日々体を動かしていても溜まるものは溜まる。むしろ肉体が極めて健全な分、常人よりも元気だ。そんな熱を覚ます為、ラインハルトらと遊びに行くことも多かった。
だから、彼女たちのことも食い散らかすと思っていたのだ。というか、彼以外の男ならそうなるはずだった。
『……なーにが偉大なる師匠だよ! くっだらねー!』
過去のことなど、すぐに忘れるはずだった。
強大な魔物やアンチドートとの戦い、そして快楽を享受して、辛い修行の日々などすぐに忘れる。
「彼ら」もそうだったのだから。与えられた力を振るい、現地の人間を好きにし、嬲る。チートなどとはしゃぎ、磨くことすらせず──磨いたとしても、女への欲には勝てない。
同じ人間だと思っていたのだ。
何せ、呼び寄せる前の彼など最後以外は何の良いところもないクズ。生きる価値のないゴミだった。魅力などなく、彼に振り返る女などいなかっただろう。
それが化けた。
『英雄どもめ……』
彼は初めに出会った彼女と退廃的に堕落し、滅びていく世界へと憎しみを向けながら、正義の味方達が嬲られるのを見る為の舞台装置だった。ウリエルも、サリエルも、アズラエルも、ヒサメも、ハクも、レイも、ヒバリも、誰もかもが魔の手に収まるのが予定調和だったのだ。
それこそが、この壮大な十数年にも及ぶ彼の努力の果て。
『私のモノに良くもここまで干渉してくれたな……』
しかし、恨み節を吐く割にはその顔に張り付いているのは笑みだった。
彼女にとってはただの人形でしかないが、しかし、その人形に対して干渉することはほぼしない。
彼女はマリオネッターではない。
あくまで、力を与えた人間がどうなるかを愉しむだけ。
望まぬ方向に行けば文句は言うが、最終的にはそれすらも興奮材料とする。
そういう存在だった。
『あっ、ほら! そこだ! 寝てるんだから襲え! …………はぁあ、何でそこで普通に手を握るんだよ……』
銀髪の少女──アズラエルが彼の家に赴いた日も、出歯亀。何をしているかと言えば──寝ている少女の手を握り、魘されていれば頭を撫でる男に辟易としていた。
『何なのこいつ……性欲、どこ行ったの?』
何も無いように見える部屋の中にも、彼女から見れば魔力がある。アズラエルという少女がいる以上は、こんな狭い部屋ならば魔力に満ちるのは当然。普段は押さえているが、寝ている間や精神が乱れていると魔力は制御できないのだ。
そして、朝も夜も犯される。泣き喚こうが、乞い願おうが、届かぬ思いが煮凝りのように溜まっていくのが流れなのだ。
原作ではそうであったように。
『魔王の因子──全然覚醒しないよねえ』
犯され、尊厳を破壊され、助けはなく、声は届かず、太陽を拝むこともない。
自らの末路を理解した彼女の中にあった因子が覚醒し、誰のかも分からぬ孕んだ忌み子を媒介に、魔王と成り果てるはずだった。
そして──リリエルら主人公パーティに討ち果たされる。
それこそが、原作における彼女の立ち位置。
当然ながら……その時期はすでに過ぎている。時系列的にはワールドイーターを討伐した数週間後の話だ。本来ならばワールドイーター討伐作戦にアズラエルが味方として参戦することはないし、こうして、彼の部屋で穏やかな顔をして眠っていることもない。
それはアズラエルに限ったことではなく、サキエル達もそうだ。敗北すれば凌辱は必然。ストーリー上、避けられないものまであった。しかし、それら全てを回避してここまで来ている。
『出来るなら絶望して欲しかったけど……まあ、こういうのもたまには良いか』
結局のところ、満足できるような内容ならば何でも良いのだ。先ほどまでのは何だったのか、恍惚と、愛しい人を見つめるように口元が弧を描いている。
少女の額を撫でる彼の手が、自分のことを愛撫しているかのような。そんな表情だった。
そんな表情のままに、イタズラに唱える。
『で、も、少しはスパイス効かせちゃうもんねー!』
掲げたのは、シリーズの3つ目のタイトル。
『天獄大戦3〜滅びゆく古の盟約〜』
『さあて……どうなるのかなあ! こんなに混ぜたら、凄いことになるぞー!』
──────
「ときに穂高未来」
「はい」
「君は獣と話すことができるのか?」
「?」
「この間は、子ナマズの言っていることが分かっていた素振りだったが」
「え?」
「どうなんだ?」
「……ゲンジさんは分からなかったでし?」
「全くだ」
「そうなんでし……?」
この男なら獣と会話くらいできそうだけどな……と見つめる。口笛でネズミの群れを操れると言われても信じてしまいそうだった。
「俺はただの人間だ、そういった特殊能力は持っていない」
「わ、私もそうでしよ!?」
「ではアレは一体?」
「…………ギアーズの力、かなあ」
思い当たる節があるとしたらソレしかなかった。
狼槍ギアーズには、肉体の力を引き出す力があると言われている。もしかしたらあの時、ソレが発動していたのかもしれない。
「なるほどな。そうなるとハモンドのとんでも無い悪口とやらも君なら正確に聞き取れたかもしれないということか」
「ハモンド? 誰でし?」
「ハムスターだ」
「ハムスターって……あのハムスター?」
「普通の茶色い……ああ、少し太っているハムスターだ」
「ハムスターがどうしたんですか?」
「かなり口が悪くてね。機械を通じて翻訳してはいるんだが、翻訳できないレベルの暴言とやらもあるらしい」
「へ、へぇえ……?」
ハムスターの脳みそで、そんな明確な暴言なんて吐けるのかという疑問が浮かぶ。
「おや、疑っているな」
「へへ……」
「彼らは月で生まれた生命体だ」
「…………はへ?」
「個人のプライバシーにも関わるから詳細は省くが、月での実験の影響で知能が大きく向上していた」
「ええと……月?」
指差す先には満点の月。
「そう、あの月だ」
「………………?」
彼女の理解の範疇を超えた。
今、この男は大真面目にこう言っているのだ。
『人類は宇宙への安定的な航路を確保し、月で研究を行えるほどに物資を輸送している』
「ゲンジさんは未来人なんでし?」
「いや、違う」
「じゃあ私にはよく分からないや……」
「ははは! 俺にもよく分からん!」
「もう良いから、そっちの5mmを取ってくれでし」
ネジを取り、ミクに渡す。
ミクは新しいガジェット作りに励んでいた。
何かといえば、魔力をお手軽に図るためのガジェットだ。天忍が作ったものも、天具も、性能がいちいちピーキーすぎて使い辛い。雪の目当ての人間を探す為にも、もう少しだけ改良したかった。
「でも……本当にいいんでし?」
パトロールを休んで、ガジェットをいじる。
これまでは毎日やっていたパトロールを休むことに不安があった。それも、週の始まりの月曜日から。
「足で稼ぐよりも、機械を用いたほうが後々の効率につながるだろう」
子ナマズとの戦闘を経て、ミクのガジェットの実践における効力を認めた結果だった。
しかし、熱中したところに邪魔が入るのか世の常。
「な、なんでし……?」
今いる場所は、ミクが天忍名義で借りている元工場のテナント。そんなところに、知らぬ気配がやってきた。
天忍という組織を通じて借りているのに、一般人がやって来られるはずもない。なにせ結界を張っているのだ。
つまりは……それを抜けられる何者か。
「……」
「穂高未来、忍装に着替える時間は──無さそうだな」
背後に隠れるように言い、鎧を纏う。
せめてもと、クナイを持たせた。
「だからこんなの持たせんなよ……! 使えないでし……!」
『…………出て来い!』
ゲンジが、工場内に響くような声で呼びかける。位置は気配からすでに把握していた。あとはその姿を目に収めるだけだ。
「どんなやつが……」
『来るぞ』
「………………え?」
『やはりな』
そこにいたのは、二人組だった。
見目の整った少年少女。
少女は数珠を手に持ち、少年は刀を佩いている。
真剣な表情ながら、しかし、どこかオドオドしているように見える。一生懸命に威嚇する子猫のような雰囲気で、ゲンジへ向けて叫んだ。
「──そ、その人を解放してください!」
「ぼ、僕たちにはわかってるんだぞ!」
『…………』
背後のミクを見る。
ブンブンと首を横に振った。
「────」
「うおおおお!」
少女が何かを唱えると、少年の体が輝き出した。
途端に刀を鞘から抜き放ち、駆け出す。
『速いな』
「うん」
それは、ゲンジはおろかファーストにも届かない速度だった。しかし、常人と比べてはるかに早い。ミクから見ても、自分より速いと判断するに足る速度だ。
「はあっ!」
袈裟の切り上げ。
ゲンジを鎧ごと真っ二つにしようと振り抜いた。
しかし。
「──あ、あれっ!?」
手元に刀が無い。
慌ててどこに行ったかを探る。
『ふむ……どうやら妖刀の類のようだな』
「あっ! ──か、返せ!」
少年の背後。ゲンジは刀を手に取り、繁々と見つめている。刀が振り切られるより前に盗み取っていたのだ。
『良い刀だが……何かを感じる』
「それは邪を断つ為に先祖様が鍛え上げたものだ! お前みたいなやつが触って良いものじゃない!」
『説明ありがとう』
くるりと手の中で回し、柄を握る。
二人に緊張が走った。
「ミカゲ! 気を付けて!」
「うん!」
「────────!」
また、少女が何事かを唱える。
ミカゲと呼ばれた少年は、無手で接近した。
「はぁっ! やぁっ! とうっ!」
『…………危ないからやめなさい』
刀を観察している途中に繰り出される拳を片手で弾く。もう、敵として認識してはいなかった。子供の遊びの域を出ないと判断したのだ。刀をじっと見つめながら、相手するだけ。
しかしその相手をしている間に、少女がミクに近付く。
腕をとって、囁いた。
「もう大丈夫ですからね! ここから逃げましょう!」
「──いや、あの人は私の仲間なんでしけど」
「………………え?」
──────
「ほんっとーにごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
「まさかただの人間だったなんて思わなくて……ごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
二人は、頭をぺこりと下げていた。
「気にしなくて良いでしよ」
ミクはそれに応じる。
実際に何かをされたわけでも無いし、会話の端々から善良な雰囲気は漂っていた。しかし、気になることが一つだけ。
「結界はどうやって抜けてきたの?」
「僕たちにはこれがあるんです」
「……なにこれ?」
それは、小さな木の札。
何かが刻まれたものを一つずつ持っていた。
「これがあれば、魔力の探知や影響を軽減することができるんです。天忍……で合ってますよね? 天忍の結界だとすり抜けられますし」
「セツナの家に伝わるものなんです!」
どうやら、少女はセツナと言うらしい。
「君たちはどういうアレなの?」
「ええと…………」
どうしよう、話すべきかな……というような雰囲気を二人揃って漂わせている。
しかし事情はともかくとして、襲撃してきたとなれば報告しなければならない。
ミクとしては今後のためにも何か情報を知りたかった。
それに、また襲撃されてはたまらない。
「いきなり言われても驚いちゃうと思うんですけど…………私たち、実は妖怪退治が仕事でして……」
『……』
「メインは妖怪大事なんですけど、古の主って人が目覚めたって言われて、その人を探しにきたんです……」
「探してどうするんでし?」
「で、でし……?」
「く、癖でし……」
そこは突っ込まないでくれと赤面するミク。
元々は引きこもりで、あんまり話さないから変な喋り方になってしまった。今ではヒサメやサキという得難い仲間を手に入れ、高校にも通っている。つまりは普通に喋れるが語尾だけは残ってしまったのだ。
「僕たちは、この大惨事を止めたいんです」
「大惨事…………はっ!」
ミクの脳裏によぎる光景。
悍ましく蹂躙された街。
「倭の国を襲った魔物たち…………今は消えてしまったけど、アイツらはまたやってくる」
「だから、古の主の力が必要なんです」
『ふむ』
「っ!」
「な、なんですか……?」
ゲンジが呟いただけで、二人の間に緊張が走った。
油断なく姿を目に収める。
先ほど、子供を相手にするようにあしらわれた故の当然の警戒と言えた。
『古の主とは何者だ?』
「……かつて妖怪達と盟約を結んだ、伝承の主です」
『ほう』
「古の主の力を使えば……すべての妖怪の力を使って、あのバケモノ達を倒すことができるはずなんです!」
『そうなのか?』
「…………た、たぶん」
『今も生きているのか?』
「あ、いえ、古の主は死んでいて、その子孫に力が……でも子孫達も散逸してしまって、誰に受け継がれているのかさっぱり──」
『風貌は?』
「分かりません。でも……古の主は男だったって」
『…………そうか』
「──あ、あの!」
『うん?』
「あなたは何者なんですか!?」
セツナが、半ば叫ぶように問う。
その目には明確に怯えがあった。
ミカゲはそんな彼女を庇うように立っている。
「その気配……最初は妖怪の力だと思ったけど、こうしてちゃんと話していると妖怪なのかよく分からなくて……」
『──どうやら、師匠の力は妖怪に類似するもののようだな……ルーツとしてはキリコと連なるのだからそれも当然か?』
「や、やっぱり怪人なの!?」
『怪人……また知らぬ単語が出てきた』
腕組みをして、あくまで自分のペースで考えるゲンジ。セツナの質問は二の次だった。しかし、そんな態度にイラッときたのか、ミカゲがぶっきらぼうに言い放つ。
「どうなんだよ」
『君たちが言っているのは、コレの事だろう』
「────!?」
「りゅ……龍……!?」
二人は、信じられないとばかりに目を丸くした。
「龍なんて……妖怪ですら無いよ!?」
「ミ、ミカゲ…………」
そこで、ミクがはたと気づく。
「二人は、どこから来たんでし?」
「…………キョートから」
「キョート……」
それは、西にある都市の名前だった。
だが、先の大襲撃でどうなったかはサキも知らされていない。あくまで彼女達の守護はこの地なのだ。
「私たちは、天忍と一緒にキョートを守ったんです」
「…………何かの組織に入ってるんでし?」
「妖野連っていう組織に一応」
「一応?」
「部下とかそういう感じじゃなくて、個人個人で活動しつつ報告とかあげると報酬がもらえるんです」
『メイガスと似ているんだな』
「メイガスって……海外のですよね」
「ゲンジさんは、以前は海外で活動してたんでし」
「一応お聞きしたいんですけど……人間なんですよね?」
『そうだ』
「「…………」」
いや、これロボットだよね……どう見てもかなりロボットだ……サイバネティックなロボット忍者だ。そんな内心で顔を見合わせる二人。しかし、同時にこの人は龍を操っていた。
仮に人間だとして、どんな相手か想像がつかないのだ。
「ああ……その反応懐かしいでし……だけど、中を見たらもっと驚くよね絶対……」
しみじみと呟くミクは、サイバネティクス忍者を初めて見る時の反応にとても強く共感を示していた。
──────
「もう……またかよ……!」
『ははは!』
「わらうな!」
『妖野連とやらの存在は知っていたのか?』
「知らん! おおかたキョート支部の奴らが隠していたのだろうな!」
『知っていたら妖怪の話でいちいち驚くはずも無いからな』
「そうだ!」
四人で雲雀の元へ。
当然頭を抱える。
次から次へと、彼女のキャパを越えるような速度でもの事が押し寄せてくる。神様は私のことをいじめているんじゃ無いかと疑いたくなるほどの頻度だ。
「は、初めまして、ミカゲです」
「えと、セツナです」
「…………妖野連とか言ったな、それならばこの町で起きている事が何か分かるのか?」
「はい! 順を追って説明します!」
それは天忍よりも規模が小さく、個々で好き勝手やっているからこそ逆に知り得た情報だった。そして、相手に情報を渡すことに躊躇が無い。
場慣れしていないのは明らかだった。
しかし、わざわざそれを指摘してやる必要もない。
1:きっかけはユーロにて、魔物の同位体であるアンチドート達が暴れたこと。
2:超巨大な魔力反応が現れ、世界の均衡が大きく乱れた。
3:超巨大な魔力反応は既に消えた。
4:均衡の乱れが倭の国へも影響を及ぼし、魔物達が異常活性化した。
5:大侵攻と撃退
6:新大陸の出現
7:古の主の復活
8:妖怪達の復活
「ユーロからだったのか……ゲンジ、何か知っているか?」
『…………』
何故か、ゲンジはむっつりと黙り込んでいた。
雲雀の問いに答えず、腕組みのままに考え込む。
そのまま1分ほど、バイザーの光が消失したまま。
「ゲンジ?」
『…………その超巨大な魔力反応というのは、恐らくワールドイーターのことだろう』
「「「「ワールドイーター?」」」」
なんだその物騒な名前は。
世界を喰らうのか。
『異界を広げ、世界を侵食する大怪獣。俺がユーロで最後にした仕事がヤツの討伐だ』
「ど、どういうやつだったんだ?」
『メイガスや周辺の住民を吸収して、異常な自己増殖を起こしていた。本体は数百mほどの肉塊で、主に触手や光線を用いて攻撃を行ってくる』
「す、すうひゃ……!?」
『無論、一人では無い。周囲の掃討も含めて数千人規模でメイガスが討伐を行った際、本丸であるワールドイーター討伐に俺も参加しただけだ』
「──」
絶句。
その場の四人は、話の大きさについて行く事ができなかった。辛うじて、雲雀は口を開く。
「で、では……その後にお前は倭の国に戻ってきたというわけか?」
『そうだ』
「…………あの四人は、なんだったんだ?」
『それは前から言っている通り、同行者だ』
「…………」
あんまり信用していない目を向けつつ、ミカゲ達に別の質問を投げる。
「貴様達は、この地で何をするつもりだ?」
「僕たちは古の主の力を持った人を見つけ出します」
「…………ゲンジ」
『そうだな』
ヒバリのつぶやき。何を言いたいかは理解していた。
一つ頷くと、ゲンジは雲雀の隣で口をひらく。
『改めて名乗ろう。我が名はゲンジ、平和維持部隊オーバーウォッチのエージェントだ』
「……おーばーおっち?」
『俺は、雪女が転生した存在に協力して、とある人物を探している』
「雪女!?」
「セツナ! まさかそんな事って!?」
二人は、顔を見合わせた。
『彼女は、大恩ある御方の子孫を探していると言っていた。もしや、君たちの言う古の主とはその者なのでは無いか?』
「ま、間違い無いです!」
『何故分かる?』
「セツナのご先祖さまは、雪女なんです!」
『なんだと……?』
「あ、会わせてください! その人に!」
『……むぅ』
どうやら、状況が混沌としてきたようだった。