忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男 作:goldMg
「おーほっほっほ! 大仰な話を聞いて来てみれば! こんな質の低い連中を相手にしていたらセカンドオーダーになど一生なれませんわぁ!」
「くるくるーっと……いやー、よわっちいねー」
切り刻まれた魔物だったもの。
リッカはブンブンとサクラフブキを振り回し、残心を行う。ハクも鉄火線を空中から解き、胸元にしまった。
「す、すごい……」
流れるような連携。
鉄糸によって相手の領域を狭め、水流で行き先を制限するのを基本戦術とする二人。
ライオン獣人型の魔物はサクラフブキの刀身によって片腕を切り落とされ、最後は鉄火線が全身をぶつ切りにした。
第三等級の魔物を相手に、わずか30秒で戦闘を終わらせた。
私たちではこんな風にはいかない。
……これが、セカンドオーダーとの距離……!
「ふんっ、私だってあんくらい……」
「無理でし……」
「ああんっ!? 情けねえこと言ってんなよ! 気概はねーのむぎゅっ──」
「鬱陶しいでし」
ミクは、詰め寄るサキの顔を暑苦しいと言わんばかりに押し除けた。
でも……私たちもあんな風になりたいなっ!
「あ、あのあのっ!」
「なにー? ……あ、邪魔しなかったのは偉かったねー」
「どうやったらあんなに連携がうまくできるんですか!?」
「え? ……いま私、イヤミ言ったんだけど?」
「はい!」
「うーん……」
「お願いします! 教えてください!」
顔を渋そうに歪め、頭を掻いて、やがてダルそうにサキを指差した。
「…………そこの牙剥いてる弓っ子を主軸にする戦法は合ってると思うよ」
「はい! それで!?」
「………………あーもう……まず、そっちのちびっ子」
「私でし?」
「そう、キミは魔力の扱いが下手すぎるからもっと練習しな」
「うげぇ……教官と同じこと言うじゃん……」
「そうじゃないと、弓っ子と連携するなんて夢のまた夢だよ。そもそも忍具の力もあんまり引き出せてないでしょ」
「へーい……」
「で、キミ」
「はい! 志村氷雨です!」
「キミは「志村氷雨です!」」
「……志村ちゃんはオールマイティだけど、能力がちょい低いから全般的に伸ばせばいいんじゃない?」
「ありがとうございます!」
「調子狂うな……で、弓っ子」
「んだよ」
「……ムカつくから良いや」
サキ! めっ!
ちゃんと態度を改めて!
今、わたしたちの伸び代チャンスなんだから!
「ちっ……」
「はいはい、弓っ子は近接戦を鍛えな。上に上がれば上がるほど、要求されるものの質も量も上がるんだから」
「ってるよ……」
──────
「おーっほっほ! ファミレスはやっぱり良いですわぁ!」
甲高い声がファミレスに響く。お客さんたちがなんだなんだと見てくるけど、意に介さずに店員さんに対応する西条さん。
「四名ですわぁ!」
「意外と庶民派なんだ……」
「最初に連れて行った時にえらく気に入っちゃってねー」
「ハクさんのおかげでファミレスの良さに気付けたのですわぁ! おっほっほ!」
「へー! お二人は仲良しなんですねっ!」
「腐れ縁ってやつだよ、一応同期だからね」
「ハクさんであれば、我が家のメイドとして仕えて頂くのもやぶさかではありませんわぁ!」
西条さんは声が大きい。
直江さんは声が小さめだ。
一方、サキはぶつぶつ言っていた。
「なんで私がこいつらと……」
「サキッ」
「わーってるよっ! ったく、カーチャンかオメーは……」
「四名でお越しの西条様、ご案内いたしまーす」
「お願いしますわぁ!」
席に2対2で座る。
ミクはやりたい事があるとかで先に帰った。もしかしたら魔力制御の練習かもしれない。
今回は、せっかくということで夕ご飯に誘ったんだ!
仲が悪いより、仲が良い方が全然良いしね!
まさか西条さんがファミレスに私より慣れているとは思わなかったけど……私も、もっと色んなことをしなきゃ!
「では──」
すっくと、西条さんが立ち上がる。
いきなりどうしたのかな。
「まずはドリンクバーですわぁ!」
そう言って早歩きで行ってしまった。
走らないあたりに育ちの良さが出ている。
「リッカはね、ただのバカだから」
「何年ぐらい組んでるんですか?」
「教練の時からずっとだよ」
つまり──
「私たちと一緒だ! ねっ、サキ!」
「そうだなー」
「もうっ! 子供じゃ無いんだから不貞腐れないでよね!」
「不貞腐れてねーって、ただ……この集まりになんの意味があるのか分からねえだけだ」
「またそんな事言って……そんなんじゃ、友達出来ないよ?」
「うぐっ」
「え?」
何故か直江さんが胸を抑えた。
「ど、どうしたんですか?」
「なんでもないよ……うん……なんでもない……」
なんでだろう、直江さんの頭からキノコが生えて来たような気がする。
そんな直江さんや私たちの目の前に、ドカンとプラスチックのカップが置かれた。
形容し難い色をしている。
……ドブ色?
「──オレンジジュースのコーヒー割りですわぁ!」
「まーたバカみたいな組み合わせ持って来たね……」
「食事とはチャレンジだと教えてくれたのはハクさんですわぁ!」
「こういう事じゃ無いんだけどなあ」
そんな事を言いながら、チューチューとストローで飲み物を吸い始めた。
え……いけるの?
「まずっ」
「まずいんだ……」
「そりゃまずいけどさ、水たまりの泥水に比べたら全然いけるよ」
「それはそうですけど」
あれは飲み物じゃ無い。
生命維持のための緊急措置だ。
あれと比べたら……確かにいける。
「お前ら……わざわざまずいもの飲む必要無いだろ……」
「でも、せっかく西条さんが持って来てくれたんだから飲まなきゃ」
「おーっほっほ! あなた! 確か志村さんでしたわね! 中々見込みがありますわぁ!」
「あ、ありがとうございます?」
「アホらし……」
サキは冷たく切り捨てると、新しくオレンジジュースを持って来た。
「ほら、これが知性ある人間が飲むべき飲み物だ」
「ありがとっ」
「ふんっ」
改めて本題に入る。
直江さんから聞きたい事があるらしい。
「まぁ交流も良いけど真面目な話をするとさ、その不審者? の情報がもう少し詳しく知りたいわけよ」
「そうですわね」
「もしかしたらソイツは下水道に潜んでいるかもしれないし、警察官だったりするかもしれない。あるいはこのファミレスにいるかもしれないし、人じゃ無いかもしれない。なるべくなら私は不意を突かれたくないの」
「ふぉうですわね」
「どう? 志村ちゃんと弓っ子ちゃんは本部に言ってない情報とかは無い?」
「「うーん……」」
「ダメそうだねこりゃ」
私だって、できるならばこの一連の出来事を引き起こしたのがどんな人・存在なのか知りたいよ。
でも、本当に何の痕跡も無いんだ。
状況証拠しか残さないんだから。
「私たちが知りたいくらいで……あはは……」
「そうだそうだ」
「──あれ、志村じゃん」
「え?」
そこにいたのは島田くんだった。
まさかのタイミングでクラスメイトに出会ってしまった。
「こんばんは」
「うん、こんばんは」
「そっちの子は宵闇だよな」
「……誰?」
「クラスメイトの島田くんだよ」
「俺はA組、宵闇はC組だよな」
「そうだけど……」
「──で、こちらの二人は?」
「アサダですわぁ!」
「ヤマグチでーす……」
当然のように偽名を名乗る二人。
まあ、当然といえば当然だよね。
「アサダさんとヤマグチさんか……」
偽名を反芻したっきり、何故か直江さんの事をじっと見つめ始めた。
見られている当の本人である直江さんは、少し居心地が悪そうだ。
「……あの……なんですか……?」
「あぁ、ごめん見惚れちゃった」
「──へっ?」
「……うん、素敵な髪飾りだ」
「髪飾り……そ、そう?」
「ああ、とても似合っている。それに可愛らしいな」
「や、やめてよ……可愛いとか……そもそも初対面です、よね?」
そこで西条さんが軽くブロック。
「ヤマグチさんは殿方と関わった事がほぼ無いので、ナンパはやめていただきたいですわぁ!」
「いやいや、ナンパじゃ無いんだ。綺麗だから純粋に見惚れてた」
「そうなんですのね! ナンパじゃないなら良いですわぁ!」
「いや、納得すんなよ」
「そもそも、こんなボサボサ髪の女子に魅力はありませんわあ!」
「おいコラ」
サキの鋭いツッコミが入ったタイミングで島田くんも見るのをやめた。
「ごめんごめん邪魔しちゃったな、じゃあ皆さんおやすみ。直江さんも夜道には気をつけてな」
背中を見送って、聞こえなくなったタイミングでサキがボソッと呟いた。
「ナンパな野郎だな」
「普段は全然違うんだけどね……」
「は? 嘘だろ」
「本当だよ。隣の席なんだけど、いつも寝てるもん」
「どういう事だ?」
「夜遅くまでゲームしてるから授業中は眠いんだってさ。それに、夏休みもバイトで一度もクラスの人と遊びに行ってないみたいだし」
「ボッチじゃねえか!」
「あはは……」
視線を前に戻すと、直江さんが口元に腕を当てて目を逸らしていた。さっきまでは私のことまっすぐ見てくれたのに。
どうかしたのかな。
「照れてるんですわぁ! 殿方ともごご……このサラダ、美味しいですわぁ!」
「2回も余計なこと言うなっ……!」
「ああ、それは本当なんだ」
「や、やめてよそんな目で見るの……ずっと修行して来たんだからしょうがないじゃん……」
「それは私たちもそうですけど……」
「い、良いんだよ! この話終わりっ! ……とにかく、なんの情報も無いなら今日は解散ね!」
直江さんは意外と可愛い人なのかもしれない。
そう思いました。
──────
「んごごごご……すぴぃぃぃぃぃ……ごがががががが」
「えぇっ!? ナンパァ!?」
「ちょっ……声が大きいって……!」
お昼休み、
昨日の事(もちろん天忍のことは伏せて)をレイに伝えたら、予想外の大声で反応されてしまった。
「だって、えぇ……? こいつが? 島田だよ?」
「なになに? 志村、ナンパされたの?」
そ、そんなつもり無かったのに……どんどん広がってく……
「いや、島田が女の子をナンパしてたんだって」
「えっ……マジ?」
「しかもヒサメの前で」
「マジで!? ……おい島d──うおっ」
「あ?」
仲田くんが島田くんの肩に手を置こうとした瞬間、島田くんがその手を掴んだ。
本当は寝てないのかもしれない。
驚いた仲田くんを見てパッと手を離すと、笑いかける。
「おお、仲田か……どうした?」
「……ああいや、ナンパしたってマジ?」
「…………ああ〜……」
「うっ」
凄いジト目だよぉ……
ごめんなさいぃ><
「……マジだぞ」
「マジで!? どんな子だった!?」
「え? ……あー……」
ま、まずい……このままだと直江さんの外見がどんどん広まって……!
「……いや、悪いけど教えらんねえな」
「は!? なんでだよ!」
「独り占めさせてもらうから」
「うわっ! ずっる!」
「あーあ、可愛かったなぁ〜」
「くっそぉ〜、俺も見たかった!」
「良いじゃんお前らには志村がいるんだから」
「ちょっ、やめろよばかっ!」
「姫なんだろ?」
……私って島田くんからそんな風に思われてたの?
なんかちょっとショックだな……
でも……直江さんのことが広まらなくてよかった。もしそんな事になったら、私……この街にはいられなくなってただろうなあ。
──────
放課後、島田くんを屋上に呼び出した。
なんでかっていうと、お昼のことを謝らないといけないからだ。
「──お昼のこと、ほんとーにごめん!」
「なんだそんなことか……気にしなくて良いよ、じゃあの」
来た瞬間謝ったら、ひらひら〜って手を振りながら踵を返した。
「え……ちょ、ちょ、ちょ、ほんとーにいいの!?」
「大丈夫だよ、やる事あるから帰って良い?」
「あと、その……厚かましくてほんとーに悪いんだけど、ヤマグチさんは色々複雑で……見た目とかもなるべくなら他の人には秘密に……」
「俺は話さないよ、どこかのおしゃべりさんが口に出さない限りね」
「うっ……そ、そうだよね……」
「──また会えたら良いな」
「…………そんなにヤマグチさんのこと好きなの? 昨日初めて会ったのに」
「ああ、気に入った」
「そーなんだ!」
これが恋ってやつなんだ……良いなあ、私も恋してみたいなあ……
「ど、どんな気持ちなの? その、ヤマグチさんの事を考えてる時って」
「…………想像しただけで胸がドキドキして、今すぐにでも会いたくて、出来るならば日々を一緒に過ごしたい、そんな感じだ」
「ふわぁぁぁぁぁ……! 素敵だぁぁ! 良いなぁ!」
「志村は恋した事ない感じか?」
「あはは……お恥ずかしながら……」
「恥ずかしい事ないだろ」
「そうかな……」
「家のことで色々大変なんだろ? 恋だって人と関わらなきゃ始まらないぜ」
「そ、それを島田くんが言うかなぁ!? 誘っても遊びに来ないくせに! すぴーっ、くかーって!」
「ヤマグチさんと会えたけどな」
「ぐぬぬ……」
こ、この余裕そうな顔!
憎たらしい!
私だって……私だって……!
「とにかく、学生生活を楽しめよ」
「言われなくても楽しんでますぅ!」
「──宮本のおかげか?」
「うん! ……って、なんで知ってるの!?」
「見てりゃあ分かる」
「寝てるじゃん!」
「起きてる時もある」
「嘘つけ!」
「昼飯は起きて食ってるだろ、トイレも行ってる」
「そ、それもそっか……」
その時、カンカンと金属音が鳴った。
不意の音に思わず身構える。
音源は……屋上に設置されている貯水槽からだ。
今まで気付かなかったけど、この気配は──
「お前ら、漫才でもやってんのか?」
「サキ!?」
「──よっと」
サキは貯水槽の上から飛び降りると、腰に手を当てた。
「よぉ」
「高さ4mくらいか……ん、おお」
島田くんはサキという個人よりもむしろ、サキが何mの高さから飛び降りたのかが気になっているようだった。
挨拶はすごく適当に返して、貯水槽を見上げている。
「4mくらいなら誰だって降りられる」
「そうか……で、なんでお前は貯水槽の上でニヒル決め込んでたんだ?」
「っせえな、私はいつもここで時間潰してんだよ」
「昭和かよ」
「しょ……?」
「いや、なんでもない」
島田くんは、用事を思い出したと言って帰ってしまった。
残ったサキがギロっと厳しい視線を向けてくる。
「ヒサメ、天忍に関するは一般人には秘匿しなければならない! そんなことも忘れたのか!?」
「き、気をつけます」
「島田が口外する気が無いみたいだから良かったけど、口の軽い奴だったら酷いことになってたかもしれないんだぞ」
「本当に反省してます……」
──────
情報更新
直江白(ナオエハク)17歳
髪飾りには何かしらの細工がある。
おそらく直江家で受け継がれてきたものが髪飾りであると考えられる。
髪飾り自体には何も無いが、魔力を通すことによって起動する可能性が高い。
奥に何かしらがあるような気配を撒き散らしている。
つまり、鉄火線──ひいては彼女に比べると価値は二段ほど落ちる。