忍者になりたいと願ったら陵辱モノのエロゲ世界に飛ばされた男 作:goldMg
「ぷひぃぃぃぃ……ぷしゅぅぅぅぅ……ぷふるぅぅぅぅ……」
こんな事を思うのは不謹慎だけど、魔物の出現が待ちきれなかった。
「んごぉぉぉぉ……んぎっ………………ふすぅぅぅぅ……」
この数ヶ月、わたしたちを散々振り回したアンノウン。
その正体に近付くためのアクションを、やっと起こせるかもしれないんだから。
逸る気持ちを心臓の奥に隠して、授業を受ける。
時計型端末をチラチラと気にしていると、島田くんが起き上がった。
ああ、いつものだね。
「ふごっ…………先生、うんこ行ってきます」
「おう……」
先生は、島田くんがトイレに行ったのをわざわざ廊下に顔を出して見届けた後、ニヤリと口を歪ませる。
「あいつ、授業中にうんこ行くの多くね?」
ドッ、と教室内が笑いに包まれた。
確かに島田くんは、休み時間すらほとんど寝てる。
トイレに行く時とご飯を食べるときだけ起きるけど、それ以外は朝から夕方まで。
「志村も、あいつがトイレ行くときだけは静かで良いな!」
「あはは……」
正直、あの程度の音なんて戦闘音に比べたらなんでも無い。だから、気にしてもいない。
でも……私たち天忍と違って普通の人生を送れるのに、勿体無いとは思ってるけど。
もっと友達を作って、カラオケとか行って、ボーリングやプールに行って──
「席替えでもするか?」
…………セキガエって何?
単語的には……席替え?
だとすると、今とは違う席に座るってことかな?
「えー!」
「いやだよアレの隣!」
「じゃあお前ら、志村にずっと耐えろってのか?」
「俺たちは席替え賛成です!」
「そーだそーだ! そろそろ変わっても良いだろ!」
「どうする志村」
「そ、それはみんなの気持ち次第かなって……」
「じゃあ、折角だし席替えしますか!」
島田くんはトイレに行っちゃったけど良いのかな……
「あの……島田くんの荷物とかは?」
「あー? じゃあ島田の席に行くやつが動かしてやれ」
かくして、私たちのクラスでは席替え? が行われることになった。
クラスの総務係が紙を折って、そこに数字を書く。
加えて椅子に数字を割り付けると、それを黒板に写した。
なるほど、それで一対一の関係を作るんだね。
そこからどうするのかと思えば、たまたま先生が持ってきていた透明なビニール袋に紙を入れ、わっさわっさと振り出した。
いや、意味ないよねこれ。
どれがどれかわかっちゃうじゃん。
自分で引くの決めなきゃいけないってことだよね?
クジの意味あるのかな。
みんな、自分が引きたいの引けちゃうじゃん……いや、普通は出来ないのかも?
「えぇー! また島田ぁ!?」
位置を覚えてるから意味は無いけど、敢えて袋を見ないようにして紙を取り出したら、窓際の風がよく通る場所になった。
どんな席でも文句を言うつもりはなかったけど、良い席取れてラッキーだ。
島田くんは最後に残った紙が割り当てられて、結局また隣だった。
……なんか、くじ引きって結構面白いかも。
そしたら、青木くんが男子にある提案をした。
「どうせいねえんだし、ジャンケンで勝ったやつが島田の席もらうってどうよ」
ノリノリで男子はじゃんけんを始めた。
「よかったじゃんヒサメ! 島田から解放されるよ!」
「か、解放って……レイは島田くんのこと嫌いなの?」
「嫌いっていうか、何しにきてんだかよくわかんないからちょっと不気味だよね」
「ぶ、ぶきみって、ひどいよ……」
「朝から夕方までずっと寝てるし、会話だってほとんどしたことないし、不気味以外に言えることないでしょ」
「…………」
「もう〜! 姫は繊細だなあ!」
レイは、覆い被さるように抱きしめてくれた。
でも、なんだか……いつもよりも少しだけ嬉しくなかった。
「アイツも学校のことなんてどうでも良いんだよ! 姫は気にしなくていーの!」
そのあとは、どこに遊びに行こうかとか、誰を誘おうとか、そんな話をしていた。
「っしゃあ!」
「おっ、決まったらしいね! ……って、青木じゃん……」
どうやらジャンケンで勝ち抜けたのは青木くんだったみたい。
逆に、青木くんの隣が怜とかじゃなくてよかったのかも。
ニコニコと嬉しそうに島田くんの荷物を自分の席に移していく。
「うぃーっす」
「よろしくね、青木くん」
「おう、隣が黙ってるやつだと寂しかっただろ」
「え? そんな事ないよ? みんなが話しかけてくれたから」
「でも、近い奴とは話せないだろ」
「?」
そこから、青木くんが言っていた意味がわかった。
青木くんはよく話しかけてくる。
「この前、駅前に新しくできたカフェに行ったんだけど──」
「今度のテスト、一緒に勉強──」
「練習試合見にきて──」
…………
「うはぁ…………」
放課後、レイと帰宅している時、思わずため息が漏れてきた。
「災難だったね〜」
「そんな事はないけど……ちょっと疲れちゃった」
「喋らない奴の次は喋るのをやめない奴。落差で風邪ひいちゃうんじゃない?」
「人と喋るのがこんなに疲れるなんて……」
「あいつ、人の話聞かないもんね」
「でも……こういうのも学校だよね」
「そうだけどさ……姫、あんまり無理しないで良いからね?」
「うん、ありがと! でも、大丈夫だよレイ」
こういうのも、みんなが体験してる事だもんね。
任務ではあっても、貴重な学生生活。
いろいろな事を体験しなきゃ!
「姫は強いなあ」
「強くなんかないよ、私なんて」
「ううん、強いよ」
まだまだ未熟で、もっと精進しないといけない。
わたしは、もっと強くなりたい。
こんな状態を強いなんて言ってられないんだ。
時たま休みたくなるけど、こうして言ってくれる相手が1人はいるしね。
じゅうぶん!
──────
「それにしても志村め……アンノウンに見つけ出してもらう……ふふ、考えたな」
志村家の長女として、色々と背負ってきたおかげか?
言われてみれば当たり前のことではあったが、言われないと気付かれない逆転の発想。
かつては落ちこぼれの烙印を押されたあのボンクラが、サードオーダーとはいえ今やチームのリーダー。
育ててみなければ中々分からないものだ。
しかしアイツにも話した通り、相手の善意に頼った策でしかない。
志村の策とは別に、我々は引き続きアンノウンの探索を続けなければならない。
厄介な相手だ。
長年に亘り倭の国の守護を担ってきた我々を出し抜いて、剰え探知すらされず、姿すら見られずに事を成し遂げる。
まるで……理想の忍者そのものではないか。
天忍という組織としてはともかく、潮目雲雀という個人としては高い評価を与えたい。
是非とも一度、会ってみたいものだ。
「いずれにせよ、そろそろだな」
上からのお小言を聞くのにも飽きたところだ。
どんな相手なのか、是非とも見させてもらおうではないか。
……などと偉ぶってみても、結局私たちの方が後手に回っている。
「うああ! もどかしい! 私たちは一体どうすれば──」
──ノックの音が聞こえた。
掻きむしっていた髪を整え、返事をする。
「はいれ」
「失礼します、報告したいことがありまして」
「どうした」
入ってきたのは山江蓬(ヤマエヨモギ)。
元セカンドオーダーだ。
今は裏方に回っている。
「レーダーの様子が変なんです」
「変ってなんだ、正確に報告してくれ」
「その……魔物の反応が現れては消えていくんです」
「どういうことだ? …………実際に見た方が早そうだな」
「お願いします」
監視室に向かった。
「──なんだこれは」
魔力レーダーで竜胆市の様子を見てみると、確かに変だ。
魔物の反応──即ち巨大な魔力反応が、現れたかと思えば数秒後には消えている。
反応の大きさから見て、第三等級から第二等級と考えられるが……こんな反応、今までに見たことがない。
総本部ですらだ。
「指示をお願いします」
「うむ…………いや待て、魔力反応がすぐに消えるだと?」
「はい」
「アンノウンに決まってるではないか!」
この町で起きる異常現象にアンノウンが関わっていないわけがない。
「すぐにセカンドオーダー……はまだ療養中だから、サードオーダーを向かわせろ!」
「分かりました、直ちに向かわせます」
──────
席替えから少し経った、ある日のこと。
昼休み時間中に指令が入った。
指定された場所に緊急で迎えとのことだ。
魔物の出現以外でどこかに向かわされるのは珍しい。
急がなきゃ。
「なあ志村、今度2人でカラオケに──」
「ごめん青木くん! 家の用事を思い出しちゃった! 話の続きはまたね!」
「待てよ!」
「うっ……」
まさか腕を掴まれるとは思わなかったから、変な声が出ちゃった。
「せめて話だけは聞いてけよ、態度悪くね?」
「ごめん、本当に急いでて……」
「少しだけなんだからいいじゃん」
「……おい青木、ヒサメの邪魔すんなって言ってんだろ」
レイが間に入ってくれた。
その隙にするっと抜け出して、ピューッて逃げるように学校をでた。
「ありがとうレイ! 青木くんもごめんねー!」
少しして、サキとミクも合流した。
いつもの流れだ。
「ミク、どういう話か聞いてる?」
「反応がどうとか言ってたけど、要はアンノウンがいるかもしれないらしいでし」
「え? でも連絡来てないよね」
「私だってよく分かってないでし!」
何が何やら。
何も分からないままに向かうと、何もない。
「なんなんだよ、も〜……昼休み中だったのにさぁ」
サキが愚痴を言うのもわかる。
なんだか理由はよく分からないけどアンノウンがいるかもしれなくて、向かってみたら実際はいない。
私たち、なんのためにここに来たんだろう。
『そうか……お前らがそこに到着する前には反応が全く無くなったから、そうなんじゃないかとは思っていたが……』
「ヒバリさん、何でここにいると思ったんですか? 魔物の反応は無かったですよ」
『それなんだがな──』
事情を聞いて、納得はした。
ただ、それが本当ならアンノウンは魔物が現れる瞬間を完全に把握して、そこに襲撃をかけていることになる。
「そんなのありえんのか? 向こうからしてみりゃ反則だろ」
『実際に起こった事と推測を伝えているだけだ』
「何にせよ、急いで学校に帰るでし! 午後の授業があるんでし!」
結局、午後の授業には間に合わなかったよ。
ひぃーん。
また怒られちゃった。
──────
「志村ってたまに学校抜け出して、どこ行ってんの?」
「あはは、家の事情だから話せないんだ……ごめんね」
「えー、絶対今度聞き出してやるからな!」
「……あはは」
あれ以降も青木くんは特にギクシャクする事なく話してくれてホッとした。
ただ、深く突っ込まれると弱いのでやめてください。
家の場所とかも聞かないでほしいなあ……
「志村、お前って意外と秘密主義なんだな」
「うん、家の方針なんだ」
「…………そんなの破っちゃえよ」
「む、無理無理! そんな事したら大変だから!」
私がとんでもない僻地に飛ばされるかもしれないし、内勤で一生日の目を見られなくなるかもしれない!
それに青木くんも記憶処理されて別の地域に飛ばされるか、強制的に影にされちゃう!
「大変って、具体的には?」
「そ、それは言えないよぉ……」
「ちょっと!」
バンッと机が叩かれた。
──レ、レイ!
「あのさ、良い加減にしなよ?」
「は?」
「相手が困ってるってこともわかんないの?」
「困ってないだろ、なあ?」
「あんたが決めることじゃ無い、ヒサメ、困ってるでしょ?」
「…………ちょ、ちょっとだけ」
「はぁ?」
……何で私が凄まれてるんだろう。
ここで威嚇なんかしても意味無いのに、どういう意図なのかな。
「何が困るんだよ」
「その……家のこととか」
「…………ちっ」
ダァン! と椅子を後ろに飛ばしながら立ち上がり、怒り肩で去っていった。
助け舟を出してくれたレイの顔を見ると、完全に萎縮していた。
「レイ……本当にありがとう」
「ひ、ひめぇ〜! ごわがっだよぉぉぉ!」
「うん、ごめんね」
「なんでぞんな澄まじだ顔じでられんのざぁぁ!」
「あはは……」
──────
病室で、ベッドの側に立ってグルグルと肩を回す人影。
直江白だ。
未だに巻かれていた包帯を解くと、玉のような肌が見えてくる。
「うーん、1週間以上使っちゃうなんて年取ったなあ」
「ハクさん? 思ってもないことを言うものではありませんわ」
「……うるさいなあ、分かってるよ」
それだけ、あの魔物にやられた時のダメージは深刻だったということ。
彼女たちが真の意味で死に掛けたのは初めて。これだけ回復に時間がかかるのだということを、思い知らされたのだ。
「これで……」
「ええ、これでやっと」
「「アンノウンと接触できる!」」
感謝をしたい。
彼女らの心にあったのはそれだ。
接触の結果、アンノウンが敵であったとしても──とても悲しいだろうが──感謝だけは伝えたい。
アンノウンのおかげで生きる事ができた。
それを、言葉に表したかった。
「まずは、可愛い後輩たちに会いに行こうか」
「おーほっほっほ! 変わりましたわね! ハクさん!」
「……うるさい」
彼女らが通っているという高校で出待ちをしていると、チラホラと声を掛けてくる奴らがいる。
リッカは言わずもがな、ハクも顔自体はそれなりに整っているのだ。
「君達、違う高校の子?」
「そうですわ!」
「スマホ持ってる?」
「あなたと交換するようなものは無いですわあ!」
「あっ、そ、そう……君は?」
「暇してないんだよね、どっか行って?」
「……」
こんな輩が先ほどから10人ほど。
全員、2人の圧に負けて去っていった。
しかし、1人の男子を見かけると反応が変わる。
「あら、あの方は確か……」
「島田くん、だよね。そっか、志村ちゃんと同じクラスって言ってたもんね」
しまったな、と2人は顔を見合わせる。
彼女の友達であれば邪険にするわけにもいかない。
どうしようかと思っていたら、こちらに歩いてはきたものの、特に話しかけてこなかった。
気付いてないというわけでは無い。
チラッと目線を寄越しはしたのだから。
「……あの」
逆に、ハクが声をかける始末。
髪飾りを褒められたという強烈な印象がいまだに脳みそに残っていた。
「ヤマグチさん……!」
リッカが小声で抑えた。
「あ、う、うん」
通り過ぎてくれたのだからコレで良いんだとは思うけど──あの時の言葉は何だったんだよ、とハクは内心で毒吐いた。
「──先輩達、なんでわざわざ高校の前で待ってたんだ? 少し離れたところで待ち合わせりゃよかっただろ」
「おーほっほっほ! 通常の市民の生活に興味があったからですわ!」
「それで顔とかが広まったらめんどくせえ事ぐらい分かんだろ……」
「申し訳ないですわ!」
「直江さんごめんなさい! 島田くんに、お二人のことをみんなに黙っておくように言ったのは私なんです! だから無反応だったんだと思います!」
「え、な、何で謝るの?」
「だって、話したかったんですよね?」
「はぁ!? そんなこと言ってないじゃん!」
「え? でも……」
まるで私が恋しているみたいな言い方はやめてほしい。
ハクは憤慨した。
あのナンパは何だったのかと釈然としない気持ちがあっただけだ。
それはそれとして、今の話は先に教えておいて欲しかった。
「──改めて3人とも、私たちが不在の間を繋いでくれて助かったよー……いや、本当に」
「2週間も経ってませんから」
「第二等級は出なかったんだね?」
「はい! 結構な強敵は出ましたけど……」
たはは……と頭に手をやるヒサメは、それでも強敵を倒したのだ。
やるじゃん、と内心で褒める。
「そしたら、次の呼び出しの時にでも、あれをどうにかして伝えるとしますかねー」
──端末が鳴った。
学校にいる時以外は、こうして音声で知らせるように設定してある。
全員が一斉に確かめると、まさに駅で魔物が出現したようだった。
「いくよっ!」
5人は駆け出した。
──────
情報更新
宮本怜(ミヤモトレイ)16歳
天忍では無いにも関わらず、逸脱した勇気の持ち主。
友人の為に、暴力の空気を纏わせる男に立ち向かえる。
天忍では無い、志村氷雨という一個人の日常のパーツとして、極めて重要なファクターになっている。