魔眼で壊れ行く学園生活。 作:デカ女推奨委員会
こうして僕の無駄な足掻きも徒労に終わり、まんまと事件現場をグレモリーに見られた結果。何なら当初の想定より悪化した事態を目の当たりにした結果、僕は人生一番の命の危機に晒されていた。
「────祐斗!!」
「……了解です部長。卯月くん、投降するなら早めにね?」
「今から入れる保険があるとでも?」
先ずは魅了の心配が無い唯一男子、木場祐斗が僕にぶつけられる訳だが。投降してこの場が収まるようならそうしたいんだが、グレモリーが殺意剥き出しだからな。どの道捕まれば僕もアーシアも危ない気がするんだ。
だからと言って木場を僕が下せるかって話だが。何ならあいつ、空中に無数の魔剣を生成してこっちに発射する準備してんだが。あんな王の財宝みたいな事できんのかよ。
「それなら悪いけど部長がお冠だからね。腕の一本くらいは、覚悟してもらうよ!!」
「っ。」
しかも傍から見れば僕が一誠痛めつけた絵面だからか、木場も内心お怒りらしい。案外躊躇なく掲げた右手を僕に向けて振り下ろした。それに呼応するよう、生成された無数の魔剣が僕に目掛けて降り注ぐ。僕が神器以外は唯の人間だって忘れてないか?オーバーキルだろどうみても。
腕一本どころじゃ絶対済まない剣の弾幕。魅了の魔眼以外は唯の人間だって事をまるで考慮しないその殺意は、無抵抗ならそのまま全身串刺しだ。
「ゆ、遊太郎さま!!!」
迫る死に対し時が妙に遅く感じる中、アーシアの悲鳴だけが鮮明に聞こえる。このまま僕が倒れれば次に矛先が向くのは彼女だろう。
故にその中から真っ先に迫る一振りを、僕はどうにか
そして次に迫る魔剣を一瞬前に奪った魔剣を振るって叩き落とす。
「………っ!?」
「アーシア、僕のことは気にせず一誠を。時間はどうにかして稼ぐ。」
なんて啖呵は切ったものの、続けて迫る魔剣を同様に叩き落とした時点で僕が奪った魔剣は刃が砕ける。まあそうなれば次に飛来する魔剣を回避と同時に奪い取って同じ工程を繰り返すだけだが。
「………ッ、流石だね。なら………!!」
「おっと直に来るか。」
そうして降り注ぐ剣の弾幕を徒手から頑張って捌き切れば、飛び道具は意味が無いと悟ったらしい。木場は自らの手に魔剣を創造し、
が。
「ッッッ!??」
「軌跡さえ分かりゃ案外どうにかなるってな。」
木場が下段から刃を振り上げるより先。更に言うなら力が乗り切るより前に僕は木場の魔剣の刃を踏み付ける。そうして刃を木製のフローリングに食い込ませれば、剣を握る本人の動きごと封じられる。
そして一瞬でも動きを封じ込めれば隙としては十分。僕は床に刺さった魔剣の一つを振り抜きざまに、木場の首に峰打ちを叩き込もうと振るった。
「………解除っ!!」
だが刃が木場の首を捉えたその刹那、僕が手にした魔剣が霧散する。木場の神器こと【
まあ徒手になったら卯月ックで狩るまでだが。
「ぐっ!?」
「………祐斗!?」
「………………これ以上やらせない。」
跳躍からの上段回し蹴りで木場の身体を大きく吹き飛ばした矢先。追撃を咎めんとばかりに次はロリ
こんなか弱い小動物みたいな見た目してるがそこは戦車。その拳は胴体に当たれば内臓が破裂するレベルの剛腕だ。何ならグレモリー眷属随一の怪力と言ってもいい。受け止めようものならまず骨折する。
ならどうするか?
「……ちょこまかと。いい加減に────ッ!?」
ひらひらと拳を交わす僕に苛立ち小猫が踏み込む矢先。僕は大きく脚を開いて這いつくばる勢いで身を屈めると、小猫の視界からその姿を消した。
そうして一瞬の困惑という隙を生むと同時。僕は片足を軸に、踏み込んだ小猫の足を爪先で一閃する。そんな低姿勢からの体重を乗せた足払いは小猫の軽い身体を容易く浮かせた。
「きゃっ……!?」
「無愛想と思いきや案外可愛い声出すな。大丈夫か?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
あとは小猫の浮いた身体をお姫様抱っこする形でキャッチするだけ。こういうロリ体型は魅了する心配が無いから安心して顔を見れる。小猫は目に涙溜めてめっちゃ膨れてたが。僕にお姫様抱っこされるのそんなに嫌か。
「小猫ちゃん!!くそっ………!!」
「まあそれならあっちの王子様に抱っこしてもらえ。そおらっ。」
「うわっ!??」
そんな本人の意向を組んだ結果、僕は今まさに再び僕に距離を詰めようとする木場に抱いた小猫を投げて渡す。不意を突いて行ったキラーパスに、木場は魔剣を消すと同時に慌てて小猫をキャッチした。これで木場の腕と剣は封じた。
こうなれば一先ずグレモリー眷属の前衛は捌いたと思いたいが。
「………部長。準備出来ましたわ。」
「私もよ朱乃。……もう容赦は無しよ。」
「おいおいおいおい。」
「なんか静かだな」と思いきや、今の隙に朱乃とグレモリーは各々にとんでもない規模の雷と滅びの魔力を充填してやがった。どう見ても僕にトドメ刺す用じゃねえか。何なら朱乃とグレモリーが一回ずつ僕を殺せる出力に見えるが、死体も残さず消し飛ばす気なんじゃないか?
こうなっては捌くか死ぬかの綱渡りだが、生憎と手がない訳ではない。僕は未だ床に刺さったままの木場の魔剣を一本引き抜く。それを見るや否や、先に仕掛けたのは朱乃だった。
「無駄な足掻きですわ遊太郎くん。その距離では私達に斬り掛かるより先に黒焦げですわよ。」
「!!?……待って朱乃、あれは────」
「斬り掛かる?んな酷い真似するかっての。」
僕の頭上に雷鳴が轟くと同時。僕は手にした魔剣を頭上に放り投げる。そうすれば魔剣が避雷針となる形で朱乃の雷を防ぐことに成功した。
「!!!……そうでした、遊太郎くんは………」
「朱乃!!下がってなさい!!!」
その上で僕は跳躍すると、頭上で帯電した魔剣をキャッチ。グレモリー目掛けて一閃する。そうすれば刃に纏わりついた雷が、まるで雷光の矢のようにグレモリー目掛けて撃ち出された。
まあ流石に滅びの魔力で相殺できると見越しての暴挙だが。僕の見立て通りにグレモリーは、幾分か収束が定まらない滅びの魔力を撃ち出す。
だが剣閃に乗せる形で撃ち出した雷光にグレモリーが半ばギリギリ反応する形になった結果。滅びの魔力と雷光の矢の衝突は、グレモリーのほぼ目の前で引き起こされる事となった。
「これが「雷返し」ってね。僕の勝ちだ。」
「────────きゃあっ!??」
純粋な力の衝突により、部屋の窓を内から吹き飛ばすほどの衝撃が走る。そのせいで服でも破けたのか、グレモリーの悲鳴が土煙の中に響く。そうして怯ませた隙に僕は、一瞬でグレモリーに距離を詰めた。
「はい
「「「………………………ッッッ!!!」」」
半ば露出したグレモリーのデカ乳の合間────即ち心臓に、魔剣の鋒を向けた上でそう告げる。案外こういうのは手の内を知っていればどうにかなるもので、半ば一方的に翻弄する形でグレモリー眷属の視線を僕に向けさせた。
………と言ってもまあ、こんな人質取るような真似したら「敵対した」って公言してるようなものだから?僕は直ぐに魔剣を投げ捨てて呆然としてるグレモリーに背中から寄り掛かるけど。ちょうど後頭部に胸当たるからいい体格差なんだよな。直に見てないから魅了もしてないし。
「………は!?………〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
「そう身構えるなよ。僕はお前らをどうこうする気は無いし、ましてや
「遊太郎さま、終わりました!!」
「早かったなアーシア。ありがとう。」
そうやって半ば翻弄しているうちに、アーシアから終了の報せが届く。そうなれば完治した実物を見せた方が早そうだと踏み、僕は一誠の元へと移動する。完治はしているがまだ意識は戻ってない。
「おい一誠起きろ。僕の命が危ねーんだ、さっさとお前のご主人様に弁明しやがれ。」
「コ°ッ!??????」
「一誠さあん!??」
のでタマ狙った卯月ックにより強制蘇生。後ろからなんか木場が息を呑む音がしたが、今はアーシアも居るのでな。もう一度股間に聖母の微笑みを使わせる形で事なきを得る。
まあその代わりに一誠はアーシアに股間触られるわけだが。何なら触るアーシアも赤面してるんだが。あの教会で余計な知識身につけおってからに。一重に僕とレイナーレが悪いんだが。
「────いや、ていうかアーシア!?ちょ、何やって……アーシアにナニやらせてんだ卯月てめえ!??」
「『卯月様ありがとうございます』の間違いだろバカヤロー。僕差し置いて木っ端神父にのされやがって。僕があのプッツン女にぶち殺される前に状況説明しやがれ。」
「って、部長!?みんなまで………!!」
何にしろ無事に蘇生は成功したため、状況に置き去りを食らってるグレモリー眷属に事のあらましを一誠に吐かせる。その間に僕は未だ伸びてるフリードに「こいつが犯人」「私がやりました」という看板を首にぶら下げさせる。
「………なるほど。つまり遊太郎はあくまでそこのフリードって神父に無理やり連れて来られただけ。それどころかイッセーがやられた後、そこの聖女様共々守ってくれたと。」
「まあそういうこった。感謝しろ?」
「すみません部長……!!俺が未熟なばっかりに……」
そう洗いざらい一誠に吐かせたところ、どうにかグレモリー眷属の面々に矛を収めさせる事には成功した。一応悪魔の敵に位置するアーシアは未だ、困ったように僕と一誠の顔を交互に見ているが。
それもそのはず。臨戦態勢こそ解除されたものの、未だになんか漂う空気が剣呑なんだよな。正確にはまるでグレモリーの怒りが収まってる気配がない。
「……遊太郎。一つ聞くけど、なんでイッセーがあんな痛めつけられる前に助けに入らなかったのかしら?」
「そ、それはですね部長。こいつフリードって神父に脅されて俺に襲い掛かってきたから、思いっきりぶっ飛ばしちまったんですよ。そのせいで伸びて────」
「それは無いわイッセー。こいつが今の貴方に負けるなんて有り得ないもの。現に貴方の勝てなかったフリードを、こいつは倒して貴方を救ってるのよ。」
「………………………ッ!!!」
はい。気付いて欲しくない矛盾点に全部気付きやがって。乳デカいくせに頭にまで栄養行ってて厄介なことこの上ないですね。んで一誠も何かを思い出したみたいに僕の方見てきたけど概ね予想通りってのが実情だ。
実際僕は一誠に殴られる瞬間、ほぼ同時に後ろに跳ぶ事で衝撃を躱しつつ壁へと叩き付けられた。背中こそ痛いには痛いが、ダメージはほぼ無かった。一誠も一誠で殴った手応え無かったの思い出したんだろうな。すげえ僕の方見てきてる。
「答えなさい遊太郎。……何故貴方は狸寝入りして、フリードの相手をイッセーに押し付けたの?」
「そりゃ僕は面と向かって堕天使陣営を裏切れないからな。一誠がそこのクソを片付けてくれるならそっちの方が都合が良かったんだよ。以上。閉廷。」
「………………そう。やっぱりそうなのね。」
グレモリーの指先が再び深紅の魔力を帯びて僕を捉える。明確な殺意の籠ったその構えはある種の決別の意思表示か。自分の眷属を良いように使って保身を図った蝙蝠野郎をグレモリーは自ら処刑しようと動く。
「ちょ、部長!?待ってください!!確かにこいつは俺の事を囮にしましたけど!!こいつとアーシアのお陰で俺は助かったんです!!そこの外道神父とは違います!!」
「どきなさいイッセー。……遊太郎は監禁なんてされていなかった。自らの意思で堕天使の勢力……つまり私達に仇なす組織に身を置いてるの。私達の敵に変わりは無いわ。」
「そうだぞ一誠。グレモリーは間違ったことは言ってない。」
そもそも一誠が助かったから流れてるけど、既にグレモリーの契約者はすぐそこで殺されてるし。その上でその幇助を行ったって時点で僕は明確にグレモリーに喧嘩を売っている。
それにグレモリーの察しの通り、僕があの堕天使の教会に身を置くのは僕の意思だ。そもそもグレモリーの味方ヅラしたいならさっさとあんな場所から逃げて匿われるのが本来は最善。それをしない時点で僕はグレモリーが差し伸べる手をずっと振り払ってるに近しいんだ。
その挙句に実害を齎した以上、然るべき処分を下すのが眷属率いる長というもの。そしてこいつは魔王様の妹だけあって流石にそういう部分の線引きはちゃんとしてる。
………ただまあそうだな。一誠が庇ってくれてる手前、一つ弁明するならだ。
「けどなグレモリー。今の僕はあの教会を離れるわけには行かないんだ。前にあそこの堕天使が魅了漬けになって相当不安定になってるって話したのは覚えてるか?」
「そんなの貴方が離れて一週間もすれば魔眼の魔力は抜け切るのでしょう?そんな言い訳が今さら────」
「その原因が分かったんだけどよ。どうもそこの堕天使の長、妊娠してるっぽいんだわ。」
そう、この際グレモリーの怒りを買ってる僕は火種そのものでしかない言い訳を宣った。告白するタイミングとしてはある意味今がベストかなって思ったので。どうせ怒らせてもこれ以上状況が悪化しないって意味では。
グレモリーが助走つけて全力で殴りかかって来ましたよええ。至極真っ当な反応なんだが、悪魔の全力パンチは首もげるから避けた。拳に滅びの魔力纏わせやがって。ガチの殺意で草も生えない。
「こん……ッのバカうさぎ……!!ほんっとバカが……このっ、避けんな!!何発か殴らせなさい!!!」
「ちなみにデキたのバイサーより早いから多分明日くらいには生まれる。その上で僕が教会から逃げたと知れりゃどうなるやら。」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!」
正直かつ詳細に情報を与えたところ、頭が限界を迎えたグレモリーはその場で発狂してしまった。あまりに普段は晒し得ない醜態なのか、クール寄りの木場や小猫までもが唖然とした様子で蹲るグレモリーを見つめている。朱乃?養豚場の豚を見るような目でこっち見てるよ。そうだろうな。
で、そんなグレモリーを他所に一誠は………
『Boost!!』『Boost!!』
『Boost!!』『Boost!!』
『Boost!!』『Boost!!』
『Boost!!』『Boost!!』
「卯ゥ月くぅん?その堕天使って、夕麻ちゃんの事ですかァ………???」
「ひっ……!?」
……もう少し頑張ったら禁手化できるレベルの倍加魔力を纏って赤龍帝の篭手を構えてた。顔面血管塗れなせいでアーシアが悲鳴上げてるじゃねーか。元カノ魅了して寝取った挙句に孕ませただけなのに何故こんなキレられるのか。いや字面にしたら二、三度ブチ殺された方がいい案件だけども。一誠視点だとクソ女もクソ女だろ。未練捨てろって。
「じゃかあしいッ!!!あんッッッな可愛い娘と孕むまで濃厚エッチしやがってお前……ッ、お前お前お前………!!!俺はチューすら出来なかったのに………ッ!!!」
「そーゆーのはお前のご主人様としろって。乳も性格も明らかにあっちのが優良物件だろ。(乳は今のレイナーレのがデカいけど)」
「「!!!!!!!!!!!」」
マジで殺されかねん勢いで胸ぐら掴まれるから、一誠とグレモリーに纏めて被弾させる形で二人とも黙らせる。意外にもそういう意識する程度には関係できてんのか、二人して赤面して沈黙した。もう付き合っちゃえよ。
ただこれで僕が相当切羽詰まった実情なのも、堕天使陣営を離れたくても離れられないのもよく分かっただろう。僕がこの場にいるのは半ば不可抗力。抱えた火種を起爆しないためにも僕は暫く堕天使勢力に身を置くしかない。
その上で今回グレモリー眷属に与えた損害……即ち殺害した契約者の損害分落とし前を付けろって言うならだ。実のところ僕も宛が無い訳では無い。ていうかもうそれで今回の一件は手打ちにして貰えるとありがたい。
「はぁ……何かしら。言っておくけど私の契約者の命は高く付くわよ。」
「彼女をお前に譲渡する。それで今回の件はチャラにしてくれないか?」
「………………………………えっ。」
そう提案を持ちかけつつ、僕は両手でアーシアの背をグレモリー達に向けて押す。当のアーシアは当然困惑したような声を漏らしたが。いきなり売り飛ばされたらそうなるわな。
何しろ彼女は希少な回復能力の神器持ち。手元に置いて回復要員にするのは勿論、眷属の枠が空いているグレモリーは僧侶辺りの枠にも捻じ込める。無条件に手に入るというのなら喉から手が出るほど欲しい人材の筈だ。
「ま、待ってください遊太郎さま!!私が一誠さん達のところに!?そんな、どうして………」
「だって今回ので分かっただろ。今アーシアが居るこの教会は、君が思ってるような綺麗な場所じゃない。」
「それは………………」
毎日毎日神様の見てるであろう礼拝堂で性行為起こるのは当たり前。これから敷地内にははぐれ悪魔も住み着く予定だし、挙句に殺人なんかの汚れ仕事も辞さないと来た。そんな罰当たりの総本山、敬虔な信徒たるアーシアが居ていい場所じゃないんだよ。何なら人の住める環境ではない。
その点グレモリー眷属はその辺の倫理観ちゃんとしてるし人間並みの生活は送れる。というか生活環境自体は間違いなく悪魔陣営の中でも上澄みだ。それは僕が保証できる。
「けど、私が居なくなったら……誰が遊太郎さまを治すんですか?遊太郎さま、いつもボロボロなのに………」
「なに。そうなったら時たま会いに行くさ。何ももう会えなくなるわけじゃない。だろ?グレモリー。」
「それは……まあ、勿論会いに来るくらいなら全然いいけど。本当にいいの?彼女、貴方を随分と慕ってるようだけど。」
僕の提案に当のグレモリーすら困惑してるが、実際アーシアの扱いとしては元から一つの選択肢として考えてはいた。何しろアーシアは元がアザゼルへの提出用の戦果。僕の治療役と言うのはそれに付随した建前に過ぎない。
そしてその本質が神器の標本である以上、いずれアーシアは神器を摘出されて死に至る。僕の場合はそれを避けるべく実績作りとして今回の契約者殺しを押し付けられたけど。アーシアの場合はそれすらない。ましてやうちの実態を知って疑念を抱いた以上、帰れば即解剖されてもおかしくない。
「………………………ッ!!!そんな……!!」
「当然僕もアーシアには死んで欲しくない。……こんな魅了の魔眼が意味を成さないような清い娘は僕も初めてだったから。」
「遊太郎さま………」
それに何より決して口に出せないが、このまま堕天使陣営に居てはアーシアは絶対にいつか穢れる。というか僕が穢す自信しかない。今度もし何かの拍子にアーシアを魅了すれば、それこそ間違いなくアーシアは僕を襲う。何しろレイナーレ経由で僕の襲い方は理解しちまったから。
その挙句にレイナーレやバイサーみたいに産むのも悍ましい化け物を孕ませてみろ。流石の僕でも罪悪感で首吊るぞ?聖処女魅了して化け物孕ませたとか。
そういう意味合いでも僕の手の届かない場所にアーシアは置いておきたい。兼ねてより僕は密かにそう願っていた。
「最もアーシアが嫌って言うなら無理強いは出来ないが。死ぬまであそこで汚れ仕事に従事したいって言うなら止めないが、どうする?」
「………………それは。」
「一誠達の元で幸せに暮らすか、罪を重ねて迫る最期を待つか。一応選べるぞ。」
「無理強いしない」などと言っておきながら、半ば選択肢の存在しない二択を押し付けてアーシアの頬を撫でる。……そもそも提出用の戦果としての神器持ちって、要はレイナーレが用意した身代わりだからな。度重なる魅了によって僕に妄執したレイナーレが、僕の代わりに死なせるために用意した代替品。それがアーシアの実情だ。
だが僕は自分の身代わりにガチ聖女様を生贄に出来るほど生き汚くない。かと言ってこの事を明かせば絶対にアーシアは僕のそばに残るから、こう言うより他なかった。
そしてそんな僕の心情を汲んでか、それとも単なる実益を優先したか。一応は加害者の一派の一名でありながら、グレモリーは表面上は歓迎の姿勢を取ってくれた。
「アーシアさん。貴方が望むならこの私、リアス・グレモリーは貴方を歓迎するわ。………本当にいいのね?遊太郎。」
「構わんよ。これで僕も肩の力を抜いて暮らせる。」
「………貴方のそう言うところ、本っ当に大嫌い。」
何やら悪態が聞こえた気がしたが、流石に選択肢は無かったらしい。幸い「それでも僕の傍に居たい」とか悪足掻きする事もなく、アーシアは僕の手元を離れた。それでも何度も名残惜しそうにこっちに振り向いては僕の顔を見つめてきたが。誤爆で魅了しかねないからやめろって言ってんだろうが。
「では遊太郎さま……ごめんなさい。やはり私、誰かを傷つけるのは嫌なので……もし遊太郎さまが許してくれるなら、一誠さん達の所の方がいいです。出来れば遊太郎さまも………」
「もう「様」付けはやめろって。……僕にもそっち来て欲しいんだろ。善処はするよ。ただ厄介事が全部片付いたらな。」
「あっ………」
最も厄介事が片付く傍から厄介事が生える手前、決してそんな時は来ないんだが。未だどこか縋るような目線を向けるアーシアを他所に、僕はさっさと伸びたままのフリードを回収する。
「僕のために」と
まあそれだけレイナーレも僕が大切だって事だろうし、アーシアが居なくなったと知れれば怒り狂うだろうが。それをどうにか宥めるのは、それこそ僕の仕事だ。
「グレモリー。今日は悪かったな。アーシアは本人が了承するようならさっさと眷属にしちまいな。奪還作戦とかなると互いに面倒だからな。」
「………………ええ。彼女の待遇とかまた話したい事があるから、明日もオカ研に来なさい。絶対よ。」
「うーい。」
アーシアを任せたグレモリーに振り返ることなく手を振り、僕は無人の民家を先に後にする。結果としてだがここにグレモリーの連中が来たのは僥倖だった。兼ねてより対処を悩んでいたアーシアをどうにか出来るとは。
………ただ問題は、だ。これからレイナーレやバイサーとした後、誰に身体(主に腰)を治癒して貰うかって話だが。
「……なんか整体師とか探すか。」
未だ気を失ったままのフリードを引きずり帰る傍ら呟いてしまう。……やっぱりアーシア手放したのは痛かったかもしれない。
ちなみにアーシアが卯月を慕っていたのは初めに卯月がアーシアを魅了したせいです。その際にアーシアが無垢なせいで性行為にまで及ばなかったため、魅了の魔眼の残存魔力が微細ながら悪さしてました。それを卯月も薄ら分かってます。
なのでグレモリー眷属入りした後のアーシアは無事に卯月の魅了が抜け、正規ルート通りに一誠のハーレム入りします。歴史は収束する。