悪食お嬢様と変態メイドによる現代ダンジョン攻略記 作:リィン(界の軌跡割と面白いから買って♡)
化け物、解放されちゃったんですけど
今日も牢の中で目が覚める。
座敷牢に入れられて自由もないまま過ごすのが私の日常。
起きてごくごく少量の食事を食べて、寝ていくだけの、地獄の様な監禁生活が始まったのは5年前になる。
名家の一人娘として産まれた私は慎ましく毎日を過ごしていたのに、突然お父様の手によって座敷牢に閉じ込められてしまった。
今考えても理由は分からない、私を閉じ込める際にもお父様は泣いていたけれどその理由もさっぱりわからない
お父様もテレビやら本やら電子機器やらは頼めばすぐくれるのに私の本当に望む物は全然くれない。
今日も明日もきっと私が朽ちるまでこの生活は続くのだろう
「私、なんの為に産まれてきたの……」
ぐぅとお腹が鳴る
「お腹空いたな……」
そう思うと物凄い揺れが襲い掛かってきた
何? 地震?
揺れる中必死で頭を守り倒れ込む
[■■■■地方にダンジョンが出現しました]
[これにより紲月縁は新たに探索者となります]
[覚醒ボーナスとして固有スキル【悪食】習得]
揺れが収まると目の前に変な文字が出てきた。
何、これ、食べられるの?
思わず掴もうとするも伸ばした手は宙を切る。
クソクソクソクソ。
そう思いつつ格闘していると揺れで牢の鍵が少し歪んでいるのが目に入った。
これ脱出チャンスなんじゃない?
思わず何回か檻へ体当たりすると鍵が外れて体当たりの勢いのまま私は座敷牢の外へ倒れ込んだ。
ええと、これ、もう外に出られたということで良いのかしら。
座敷牢から出た景色は牢の中から見ていた景色と全く同じ。それでも不自由なまま檻の中で見る景色と自由を得て外から見る景色では見え方が全く違う。
そう、自由!
もう私は自由! 駆け出した。顔に吹き寄せる風も、ふわりと髪の浮く感覚も、冬の冷気も全てが気持ち良い
「あははははは! 自由だわ! やった! 苦しかった! ひもじかった! でも生きてて良かった!」
喜びのまま牢のある地下室を出て光差す方へ向かう、そうすると懐かしき我が家の一階へと上がれた。
このまま自由を満喫するのも良いけど速くお父様に会いに行きたいわ、私はお父様の書斎へ向かった。
書斎に入ると目に入ったのはお父様
ただしあたりにはおびただしい血が広がり、緑だったカーペットは赤く染まっている。そしてピクリとも動かない
どうやら地震でテーブルの角に頭をぶつけてしまったらしい。
ああ……お父様。
私はおもむろに彼の手を取る
そして大口を開けてかぶりついた。
手首から先を食い千切る
お父様との思い出を思い出すと涙が止まらない、何故か口から出ているけれど。
哀しみながらも最初は腕、次は足、四肢をもいで上品にいただいていく。
味が濃くて本当に美味しい。
加齢臭がキツかったからお味がちょっと心配だったけど杞憂だったわね
咀嚼し、嚥下し、噛みちぎり、噛み潰し、飲み込み、齧り付き、飲みこみ、咀嚼する。
骨だけは硬くて噛みちぎれなかったものの脳も、内臓も、脂も、筋肉も、一切余さずお腹へと収めていく。
最後に肋骨の周りについた肉片を噛みちぎってまとめて飲み込むとお父様の肉はこの世から消え去った。
「ごちそうさまでした」
加齢臭強めのおっさんでもちゃーんと残さず食べてあげるだなんて本当私は孝行娘だわ、ウフフ
[人間男 完食!]
目の前に現れたのはまたしてもあの不快な文字。
また掴もうとしたけど空を切るばかり
ふざけんなっての、食べられないなら出てくるんじゃないわよ
せめて叩き割ってやろうと拳を振り上げた。
そうするとまたぐぅとお腹が鳴った。
貧相なお腹を撫で回すが気休めにもならない。
今日はまだ人間一つしか食べていないからお腹がぺこぺこだわ。
何処かに食べモノないかしら
そう思って徘徊しているとお母様がタンスの下敷きになっているのが目に入った。首があらぬ方向に首がねじまがっていてピクリとも動かない。
再び催促するかの様にお腹がぐうぅぅぅ……と鳴った
あらら残念。とっても可愛そうなお母様。でも安心して、ちゃーんと
舌舐めずりと共に私は
■■■■
あれから出口を探しているけど見つからない。
門は地震でひしゃげて開かず、非常口も埋まってしまっていた
出口を探して庭園をうろつくうちに何度目だか分からないお腹の音が鳴り響く
はぁ、それにしてもお腹が減ってどうしようもないわね。
もっとも監禁生活中は朝、おやつ、昼、おやつ、夕食、夜食、全部ひっくるめても毎日50kgくらいしか食べられなかったからひもじいのは当然だけれど
そして使用人が一人も見つからない。
高い給料を払ってやっていたのに肝心要の時に逃げ出すなんて人の心が無いのかしら。
「縁お嬢様!」
突然かけられた声の方向へ振り向くとメイドが駆け寄って来ているのが見えた。
その女の顔は覚えている。
私と同じくらいの年齢で、背はあまり高く無いものの、柔らかそうな全身から良い匂いが漂っていてとても美味しそうだったから。料理人としてとっても優秀だったから。
地震でめちゃくちゃに崩れた家の中でもまだ仕える主を探すなんて真の忠義を持った使用人ね。
失ってしまうだなんて本当残念。
隠し持ったナイフを見えない様強く握りしめ溢れてきた涎をペロリと舐める
この使用人、何故かいつも妙な視線を向けてくるし辟易していたけれど、こうなった今は本当ありがたいわ
でもこの空腹を癒すためには殺さないといけないのよね
ああ遺憾、本当に遺憾だわ。
でもやる事は変わらない
「ねぇ、ちょっと頼みたい事があるんだけど」
ニコニコと笑いながらゆっくりと笑顔で接近する
「お父様もお母様も死んでしまったわ、私なりにちゃんと
「そんな……御主人様と奥様が……」
悲痛な表情を浮かべる。
「でもね、泣いて悲しんでいても未来は変わらない、こんなときでも……いえ、こんなときだからこそお互い協力しましょう」
具体的にはあなたが私の食料になって、だけれど。
「分かりました、お嬢様、改めて誠心誠意仕えさせていただきます」
「あなたの名前は?」
「私の名前は明里です」
「あっそう、覚えたわ。ねぇ、明里、少しの間だけで良いから後ろを向いて目をつぶっていてくれないかしら」
「あ、はいはいそういう事ですね! 良いですよ」
何故か物凄く嬉しそうにしながら後ろで手を組みながらくるりと回った。
抵抗されるよりマシだけどなんだか不気味ね、普通こんな訳の分からない命令すんなり聞くかしら。
そんな考えも目の前に鎮座した、きれいなうなじを見ていたら吹っ飛んだ。
美味しそう
涎も笑みも止まらない。
本能に任せて後ろから羽交い締めにして喰らいついた。
首筋を裂いたかと思うと口内に溢れる肉片、血。
いつもならそれは固形化した幸せ。
しかし今回飛び込んできたのは真逆の感覚
なに?! これ!? まっずっっっっっ!
明らかな異物が口内を満たす
胃袋もろともゲロになって吐き戻しそうな不快感が押し寄せてくる
「おえっ!」
床へへたり込んで産まれてから一度もしたことの無い嘔吐の苦しみでのたうち回る。不味い! クソ不味い!
こ、このクソ女、御主人様にこんなクソ不味い物を食わせるなんて最低のクズね!
どうやら怒りが一周すると逆に冷静になるらしい
少し落ち着くと氷の様な殺意が湧いてきた。
ああ、お前そんな奴だったのね。
本当最悪、たーっぷりたーっぷり痛めつけて殺してやる。でも不味すぎて死体にしても食べられなさそう……
そう思って顔を上げると使用人は
恍惚とした表情を浮かべていた