悪食お嬢様と変態メイドによる現代ダンジョン攻略記 作:リィン(界の軌跡割と面白いから買って♡)
「この先がボス部屋です」
「ボス? なにそれ? 食べられるの?」
前回の私の性癖暴露は正直キモすぎたのでマイルドに一言で私の性癖をまとめます。
【いっぱい食べる君が好き】です
なのでこういうなんでも食い物か確認する発言は萌えますね、凄く。
「まああいつら基本的に有機物なんで多分食べられますね、巨大ゴキブリとかゴーレムとか出てきた場合は知りませんが」
「分かったわ。で? 美味しいの?」
「どうでしょうか。私は食べた事ないので分かりませんが、バトルとグルメが合体している作品だと大体強い程旨いので、多分美味しいんじゃ無いでしょうかが」
「それだけ聞ければ良いわ。じゃ、さっさと行きましょう」
そう言ったお嬢様に手を引っ張られながら扉の中へ進むと頭の中に文字が浮かびました
【C級ダンジョン【子鬼王の迷宮】ボス【ゴブリンキング】が出現します】
そして扉の中にいたのは雑魚の代名詞たるゴブリン、その特徴を持った魔物でした。しかし、ゴブリンとは別物とよべる程の覇気を放っていました。
顔以外を覆うプレートアーマーは安物なりによく手入れされ、好奇心の強そうなギョロ目には通常のゴブリンにはない理性と知性が見て取れ、何より2メートル近い鍛え上げられたその体躯は決して【王】という称号の重みに負けていませんでした。
付き従うのは、これまた理性の色が見える小型のゴブリン✕2
「おお、メイド服着たボインのねーちゃんとなんか血塗れのねーちゃんか。大抵ガチムチのおっさんが来ると聞いていたから嬉しいねえ。ほら、お前らも歓迎してやれ」
「御心のままに」
その言葉と共に子鬼二匹が突っ込んできました。
「あはっ! 肉が揃って自分から来てくれるだなんて! こちらもちゃーんと……」
次の瞬間子鬼についていた爆弾が破裂し、私も、お嬢様も爆散して死にました。
時が巻き戻ります。
子鬼二匹が走り出したところまで。
舐めてました、ゴブリンなんざ近づけても問題ないと、早く殺さなくては
「お嬢様、右のゴブリンを早く射抜いて下さい」
そう言った直後にお嬢様が弓を構えました。私もスリングを構えます。ほぼ同時にゴブリンの頭が爆散し爆弾も起爆、ゴブリン二匹は消し飛びました。
「ゴブリンの分際で妙な事思いつきますね」
「お前らもガキに爆弾巻いて特攻させる事あるだろ、あれ真似したんだ」
「人間から真似するなら愛とか勇気とかにして下さいよ、なんで最低な戦術パクるんですか
ね」
「あ……あ……あ」
ふと横を見るとお嬢様がぷるぷると震えていました
「ゆ、許せないわ、こんな手を使うなんて」
おや、この人も正義感とかあったんですか
「若くて、新鮮で、柔らかくて、味が濁っていないであろう貴重な貴重な貴重な貴重なお肉を食べずにばら撒くなんてもったいない、食べモノは粗末にするなって親に習わなかったのかしら。食べモノに敬意を払えない馬鹿なんて丸焼きにして頭から喰ってやるわ」
やっぱりお嬢様はお嬢様でした。
「ええ……そいつマジで人間か? グールとかじゃねえの?」
「一応、とりあえず、多分、人間だったはずですけど……」
「失礼ね、ちゃんとどっからどう見ても人間じゃない」
ドヤ顔をしながら貧相な胸を張るお嬢様。
なんともいえない空気が漂って一分くらい経った後、お嬢様の目線が子鬼王の元へ向かったかと思うと大きくだらっと涎が垂れました。ぐううと聞き慣れた騒音も聞こえてきました
ビクりと子鬼王が怯みます
「もしかして俺負けたらあの姉ちゃんに喰われる感じか?」
「ええ、間違いなく」
「なら」
ゴブリンキングから殺意が張り詰めます
「頑張んないとなっ!」
自分に振るわれているのでなければ小気味よいと思える風切り音と共に青龍刀の様な剣が振るわれました。
一撃目はなんとか短剣でいなしたのですが
二撃目が炸裂したかと思うと受け流しきれず態勢が
崩れ三撃目で私は死亡しました。
やっぱり身長と筋肉によるアドバンテージはデカいです、探索者は身体能力ブーストとスキルで体のデカさによるアドバンテージをある程度ひっくり返せますがそれはある程度です。ブーストも、スキルも同レベルなら迷宮内でもデカい奴が強いという摂理は変わりません。
そして時が巻き戻ります。
「なら頑張んないとなっ!」
今度は三撃目までなんとか凌ぎます
軌道が分かっていれば一応は特定の角度でナイフを当てることで受け流す事はできます。が、あくまでも一応です。殺しきれなかった衝撃、受け流すのに使った体力の消耗、武器へのダメージは蓄積します。
膨大な戦闘経験でかろうじて喰らいついているもののかなり辛いです。
繰り返しになってしまいますがダンジョンでは、いえ、この世界ではデカい=強いです。
見せ筋は実戦では意味ないだのマッチョでも技術が無いと弱いだの言う意見もたまに見かけますがそれらは迷宮潜ればすぐに喧嘩もやったことの無いボケナスの戯言だと分かります。
どんな格闘家も格闘技も何もやってない象には勝てないように、熊殺しとか言ってイキっている格闘家が人間とそう体格差の無い熊しか倒せていないように、こちらを轢き殺そうとするトラックに対して人間側が取れる技術での対抗策がないように、圧倒的な身体能力の差は技術では埋まりません。
それでも身長150ちょいしか無い私では力で同格を打ちのめすのは不可能なので、不意打ち、死に戻りによるコンティニュー、死に戻りによって実質十年以上にわたり鍛え上げられた技術、それらを使いなんとかごまかすしかありません。
じゃあ目の前の子鬼王のように圧倒的な身体能力を持った相手が技術を持っていたらどうすれば良いと思いますか? 答えはどうしようもないです。
案の定死ぬ、戻る、死ぬ、戻るを繰り返す羽目になりました。たまに乱入してきたお嬢様が首ちょんぱされたり頭から唐竹割りにされ真っ二つになったり上半身と下半身を泣き別れにされて死ぬので、その度に私自身の喉元に短剣を突き刺して死に戻りを発動させお嬢様が死ぬ前に時を戻しました。
関係無いですが上半身下半身泣き別れの時には「肉……肉……」とか言いながら子鬼王に向かって這いずっているのをみた時には思わずこいつ本当キャラブレねえなと思いました。
そしてたった20秒凌ぐだけで30回も死ぬ羽目になりました
それでも子鬼王から見れば圧倒的な身体能力差があるのに20秒間致命傷を避け続けた驚異的な技術を持った人間に見えるようでほんの僅かながら焦りの色が見て取れました。
バックステップで私達から距離をとると子鬼王は叫びました。
「お前ら! やれ!」
「了解! 我等が主!」
いつの間にか取り囲んでいたゴブリン達がクロスボウらしき武器を構えます。
なんか変ですね、ゴブリンは基本的に無能無知無力かつ自尊心と三大欲求だけは一丁前という虐待用のおもちゃにしか役に立たない蛆虫を超えた蛆虫ですが、こちらのゴブリンには知性の色がみえ、忠誠心という元々のゴブリンには間違いなく存在しないであろう感情まで芽生えているようです。
戦闘中にそんな事を考えていたのが悪かったのか三本以上の矢が私に突き刺さりました。
「悪く思うなよ、俺は戦士じゃなくて王なんだ、あんたらみたいな怪物と正々堂々戦うなんてごめんだね」
野生の勘で全部矢を躱したお嬢が仕掛けた不意打ちを彼はあっさりと躱し反撃の蹴りでお嬢様を吹き飛ばし、距離を詰め、インファイトでお嬢様を殺しにかかりました。
お嬢様も金槌と棒を上手く生かして粘っているもののやられるのは時間の問題……あ、死にました。子鬼王の刀で四分割されて見事にバラバラの死体となりました。多分世のため人のためにはこのままにしておくべきなのでしょうが……私のドチャシコ計画のため死に戻りに巻き込んで生き返しましょう。
そう思って短剣を喉に突き刺そうとするとだらりと手が垂れ下がりました。
ああ、これ毒ですね、矢に塗られていたのでしょう。身動きが取れません。
動くのは口だけです。
……殺してもらうのを何もせず待つのももったいないのでちょっと情報を仕入れて戻りましょうか
「私達の負けです。冥土の土産に最後にお聞きしたい事があるのですが良いでしょうか?」
「メイドさんが冥土の土産……ククッ……ああ、すまん。こんなくだらない事言っている場合じゃ無かったな、なんだ」
「あなたのスキルを教えて欲しいのですが」
「ああ、良いぜ。俺のスキルは二つ。
1つ目は【身体強化】、単純に身体能力をあげるスキルだ。技術でアンタよりはるかに技術面で劣る俺が、アンタらと互角に戦える様になるあたり普通に強いスキルだと思うぜ。
2つ目は【子鬼統率】ゴブリン種の知能を上げて自身に対する強い忠誠心を持たせるスキルだ。
無知無能無力傲慢大食好色怠惰のゴミが一瞬で忠実な兵士に早変わり。地味だがかなり恐ろしいスキルだ。
向こうの世界でもこれ使って何回か国を滅ぼしたしな。
本格的に
特に有利になるような情報はありませんでした、クソですね
「……まあアンタは頑張ったよ」
「楽に殺してやるから、恨まないでくれ」
そう言われ私は首を刎ねられ死亡しました。
死に戻りが発動。
矢の飛んでくる位置は全て把握しているので回避と短剣による防御で全弾回避します。
「あの不意打ちをよく防いだな! もしかしてアンタ斥候とかそういうクラスなのか?」
「さあ? どうでしょうか」
前のループでみたゴブリンの位置を記憶していたので指差してお嬢様に指示します。
「あいつらを仕留めて来てください!」
「了解」
彼女は凄まじい勢いで突撃し茂みに突撃しました。
「獣みたいな動きだな……うおっと」
お嬢様に視線が向いていたので不意打ちで心臓を貫いてやろうと思ったのですが失敗しました。
そしてまた切り合いに持ち込まれます。
何回か撃ち合う内に隙を見て小指と親指に輪ゴムをかけてパチンコの要領でさっき拾ったあるものを飛ばしました。
あるものとは毒矢。不意を突いたお陰か見事に命中。これで多少は楽に……
「まあ、毒を使うなら解毒剤くらい用意するわな」
小鬼王は懐から薬を取り出しました。
私の必死の猛攻を凌ぎつつ薬を使うゴブリンキング
唯一の策だった毒が凌がれた以上最後の手段を使うしかありません。ハァ……使いたくないなぁ……
そう思った次の瞬間、茂みからお嬢様が飛び出してきました。
姿勢を低くしてタックルの様な構えで小鬼王へと突進していきます。
それを小鬼王は顔面膝蹴りで迎撃しようとしました
プレートアーマーを装備していることもあってその一撃がまともに決まればお嬢様の首から上は肉塊になっていたでしょう。
まともに決まればですが。
ぬらぬらと、お嬢様の血塗れの伸びた犬歯が、光の反射でかがやいたかと思うと膝に向かって大きく口が開かれました。【牙強化】の乗ったその噛みつきはゴブリンキングの全身を覆っていたフルアーマー、それごと豆腐かのように噛み砕き脚も膝から引きちぎってしまいました。
「あ、ああああああぁあああああ!」
脚を失った子鬼王の叫びを尻目に食いちぎられた脚を持った彼女は案の定大きく口を開けました。
くちゃくちゃくちゃくちゃ……ゴクン!
「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
バキン! ゴクン! ボキン! ゴクン! バキン! ゴクン!
あっという間に彼女のお腹よりも太い脚を食べ終えたかと思うとにっこりとした笑顔を浮かべて言いました。
「ねぇゴブリンキングさん。あなたは自信をもっともって良いと思うわ。だってあの緑人間という臭くて苦くて不味い種族なのにとっても美味しいんだもの。普通の緑人間だとあれだけ不味かった脚でもこんな美味しいんだから、唯一まともに楽しめた脳味噌は一体どれほど美味しいのかしら! でもあんなに力強かった筋肉も美味しそう! 使用人に頼んで料理してもらっても良いし生で食べても絶対美味しいわ! ねえ! 食べさせてよ! この際量がこれっぽちも足りないのは許してあげるから! ねえ! ねえねえねえねえ!」
「うお……こいつイカれてんのか……なあ、アンタも付き合う友達は選んだ方が良いぜ」
「いいえ友達ではありません」
「じゃあなんだよ」
「御主人様兼、義理の姉妹兼、私にとって最高の■■■■です」
「ああ……アンタもそっち側かよ、まともなのは俺だけか」
「早く、早く食べられてよ! もうお腹が限界なんだから! 私の胃も、細胞も、身体も、すぐにあなたの栄養をよこせと叫んでいるの! なのに食べられずにのうのうと生きるとか許されるの? 許されるはず無いわよねえ!」
「私も正直あなたの事は嫌いでは無いんですが」
口角が耳のあたりまで吊り上がります。
「ちゃんと会話をして、そこそこ好感を持った相手が、イカれた捕食者に成すすべもなく、喰われて死ぬ。そう言うシチュエーション、大好きなんですよね、私。」