誰もが、幻想を求めている
…遥か彼方の世界、その昔話でもしましょうか。
ええ、覚えていますとも
はじまり。それは、誘惑と裏切りだった。
豊穣はそうして生まれ
また、それは更なる渇望を生んだ。
豊穣は渇望を消し去るために、5人の使者を遣わした。
そして、その使者によって世界は焼かれた。
愚かな野心に焼かれたが故に、人々は自由を奪われた。
やがて、人々は土地を追われ、その生き残りは小さな島へと流れ着き、そんな憐れな人間の流刑地となった。
島は霧に覆われ、豊穣が築いた土地と黄金の大樹と、朽ちぬ竜のみがあった。
だが、再び渇望が人々を育み
いつか偉大な英雄たちが名を馳せ始めた。
王樹の英雄、サミュエル
大賢者、オルレアン
そして、裏切り者の巨人、ユーグ
それらは力を得、古の竜、その率いる竜の騎士に戦いを挑んだ。
サミュエルの一閃は瘴気となり、相手の精気を奪い
オルレアンの魔法は、固い竜のウロコを貫き
ユーグのかつて世界を焼いた炎が嵐を呼び
そして、遂に竜の軍勢は敗れ、巨人ユーグを筆頭に三人の英雄は連盟を築いた。
だが、その後も暗がりばかりだった。
やがて、豊穣は廃れ、それは再び渇望を生み
また新たな戦いを生んだ。
決して謳われぬ、戦いが。
世界の統制をする巨人ユーグ率いる大国の連盟。
そして、新たに竜の王に成り代わった反逆者。金獅子のクレイ、その軍勢。
最も強かった軍勢が、最後に戦った。
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数多の戦火と金属、そして腐臭のにおいが立ち上る。ここは竜の帝国、その戦場。
騎士団は海辺に佇んだ城壁にて、臨戦態勢をとっていた。そして、遠眼鏡で見張りをしていたものが、敵の姿を捉えた。
高台から少数の軍勢が移動をしている様が伺えた、と。そう報告した。
「ハルム、奴らは船で門を破壊する気だ!全ての重矢を持ってくるよう、指揮を取れ!
狙撃体制に入るぞ!」
「はっ、承知しました」
「バルデ!お前は部下を率いて、門の側へ!
一人たりとも入れるな!降伏しないのであれば、切り捨てて構わん!容赦するな!」
「分かっている。誰であろうと、門は死守するさ」
貴人の羽根帽子を被った金髪の女騎士”金獅子のクレイ”
彼女は側近に引き連れた騎士団を支持するよう命令を下した。
そして、嘴を模した仮面の側近や騎士団はそんな彼女の指揮に、躊躇なく従い、次々と人間と同等の大きさをした矢を運搬した。
そして、大勢が大弓を構え、一斉に射撃体勢に入る。
だが、その有望な一面とは裏腹に顔は青ざめており、その様は恐怖に支配されていた。
そして、それは指揮を執る金獅子含め、全員同じだった。
「何としても門を死守しろ!
失敗すれば、帝国は血の海に沈む!死力を尽くせ!
”嵐”を巻き起こせ!!!!」
防衛作戦による戦いは二時間程及んだ。
戦いは攻めに転じるほうが難しい。
それを理解していた金獅子は、大弓部隊による包囲網を敷き、狙撃による連携攻撃を繰り返した。
「撃てぇ!」
金獅子自身は高所から敵を見張り、大弓部隊に的確に指示を下し、確実に遠距離攻撃を叩き込んだ。
大量の矢による驟雨は的確に連盟の軍勢を捉えていた。
少数の軍勢である連盟の軍勢はその圧倒的な数を誇る矢雨に、成すすべもなく串刺しにされ、
辛うじて、近づいてきた者たちはその見事な剣捌きの前に血の花を咲かせた。
騎士団は近接戦においても無類の強さを誇った。
個人の実力は、火を見るよりも明らかであり、徐々に屍の山を築いた。
やがて人員に押され、連盟の軍勢は包囲網の前に屈していき、身動きを封じることに成功した。
そして捉え、尋問に掛けた。
「あの巨人はどこだ!言え!
まだ、この近くにいるはずだ!」
このまま押せば勝利は近い。
そう、誰もが確信できる状況まで、騎士団は連盟の軍勢を追い込んでいたのだ。
あの曲刀を持った巨人が”空”から現れるまでは。
突如として空から巨人が姿を現した。今まで何処にいたか。どうやって来たのか誰にも分からなかった。
だが、そんなことを気にしている余裕は誰にもなかった。巨人は巨体を生かし、空中攻撃を仕掛けた。
人三人よりも大きい曲刀を両手で持ち、振り下ろした。
その一撃は城壁を真っ二つに割り、騎士団をまとめて壊滅させるには十分すぎる威力を誇った。
騎士団はまるで羽虫をはたくかのように、一瞬にして無残にも潰された。
城壁は瞬く間に崩れ去り、先程まで優先だった
そして、その血で戦場は一気に地獄絵図と化した。
余りの悲惨すぎる状況へと移り変わり、騎士団は動揺を隠せなかった。
「うわあああああああああああああッ!!!!」
一人の騎士が発狂した。
そして、それは伝染病の如く、周りへと伝播していき、辺りは更なる恐怖に包み込むには充分であった。
指揮が乱れた
金獅子は最悪の展開を予期した。だが、もう手遅れだった。
「奴らの連携が崩れた!」
「今しか、…ない!」
連盟軍が騎士団の不意を突き、攻撃に転じる。二人の騎士が武器により腹を貫かれ、発砲により銃弾でに頭部を吹き飛ばされた。
騎士団は完全に不意を突かれた。
連盟軍は帝国軍より、一枚上手だった。
そして、その不意討ちを合図に海のほうから次々と戦艦が現れた。連盟が誇る、最高戦力がここに集結したのである。
そして、やってきた巨人が立ち上がり、大振りの曲刀を振り回した。建物と共に残りの騎士を巻き込み、薙ぎ払われた。
騎士団の血が辺り一面に飛び散り、遺体は無造作に投げ捨てられる。
オオオォォォォォ…!!
巨人は獣を彷彿とさせる咆哮を叫びながら、全身の熱を高騰させ、力の底上げを行った。そしてその赤く光る眼光をこちらに向ける。
作戦もない。騎士団は完全に一掃され、完全に前線は崩壊した。
金獅子は、後がなかった。
金獅子は今までにないほど悔しさと憎しみ、そして屈辱に包まれた表情を浮かべ、
ぎりぎりと歯ぎしりした。そして
「…畜生ォォォォッ!!!!!!!!」
金獅子は焦燥にかられ、背中の大剣を抜刀し、巨人に向かって突っ込んだ。
「金獅子を止めろ!」
軍勢はそれをさせまいと刃を持って殺しにかかった。
反射的に大剣を構え防御し、そのまま刃を振り払う。刃の一部が目下を切りつけた。
そして、相手を瞬時に蹴り飛ばし、再び屋根を走った。そして、飛び移った後に巨人が曲刀を振り下ろしてきた。
一撃は間一髪で回避。
二撃目。大剣を軸に宙返りをし、大振りによる攻撃で発生した強風を捉え、空中に躍り出た。
金獅子は空中で大剣を両手で構えた。
剣先から風を巻き起こし、力をためる。
金獅子は一撃に掛けた。
己の技量ならばあの艦隊を一薙ぎで全滅させることなど他愛もないことであった。
この機を逃せば、確実に全滅すること相違ないと考え、金獅子は斬撃を放った。
「この国を救うのは、私だァァァァァッ!!!!!!!!」
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荒れ果てた戦場。そこに名誉も栄誉もない。
争いは起こり、得たものはなかった。
戦い、そして死ぬ。それは終わりが見えぬ呪い。
だが英雄は、王は
そこからしか生まれない。
人々は何のために、戦ったのか?
何故、空はこんなに
朱く燃えているのか?
だから、私は棄てていく。
豊穣も渇望も、すべてを
そうして、我らはこの地を目指す。
この、隠された楽園に。
誰もが幻想に安らぎを求めて
いつか、この地に導かれる。
…きっと、貴方もそうなのでしょう?
クレイモア
一回り大きな大剣
重量があり、両手使用が基本となる
振り回す攻撃に加え、刺突攻撃もできるため
状況対応能力の高い武器となっている
重い刃の前には
鎧を着た兵士でも地に叩き伏せられ
その破壊力は大いに恐れられた。
ユーグの大曲刀
巨人ユーグが持つ大型の曲剣
膂力を活かすための重武器
角を模した刀身には獣毛が混じり、
僅かにだが生を帯びる
叩き潰すような独特の剣技はむしろ、大鉈に近く
それは凄まじい戦いの語り草となった