東方原罪録   作:はるばーど

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とりあえず先行として一話だけ投稿いたしました、まだ話が纏まっていないので、投稿ペースはゆっくりになると思われます。

気になると思ってくれた方はお気に入り登録をして、気長にお待ちください。

では、どうぞ



第一章 道化

幻想郷。それはヒト、異形、滅びゆく生命たち。そのすべてが暮らしている楽園。

 

それは“普通”という概念が覆された場所であり、地球のとある島国の中に位置し、隔離されている。そして、それを視認し、証明できたものは誰もいない。

 

そんな楽園に今宵の夜は夜桜が吹いていた。まるで桜の花弁が泣くように散る中、神社の縁側に座る女が一人。緑茶を熱そうに啜っていた。

 

 

「あ~あ、お金でも降ってこないかしら~」

 

 

女は欲望にまみれたぼやきを零した。今日も参拝客はなし。毎日が退屈な日々だ。

 

何か事件や異変でも起きないだろうかとふと女は考えていたが、自身に託された使命のことを思い出す。そのたびに邪念はかき消された。

毎日が同じ日々。妖精が騒ぎ、魔法使いの友が忙しそうに飛び回り、鬱陶しい烏天狗が取材のネタを探し回っている。幻想的でそんな風景をぼぅっと眺めることを繰り返していた。

 

女は自分は何をやっているのだろうと思いつつも、考えることをやめてお茶を再び啜りだした。

 

 

「あ、洗濯物たたむの忘れてた」

 

 

気まぐれな思い付きのままに、重い腰をよっこらせと上げて干していた自身の服を取り込み出す。夜風がひらひらとそよぐ中、神社の大階段のほうから桜の花弁と共に誰かがやってきた。

女はその影絵を見た瞬間、ため息をついて目の前の仕事に戻った。親の顔より見た客が来訪したからだ。

 

 

「よっ、霊夢。相変わらず暇そうで何よりだぜ」

 

 

「何よ。こんな夜更けに。お賽銭を入れる気がないならとっとと帰って」

 

 

霊夢はこの魔女帽子を被った金髪の少女をよく知っていた。霧雨 魔理沙。それが彼女の名前であり、霊夢の悪友であった。

 

 

「冷たいなぁ。そんなこと言ってると、あっという間に冬が来て桜も一瞬で枯れちまうぜ」

 

「ほんとに何も用なくきたわけ?」

 

「噓、噓。ほらこれ」

 

 

魔理沙は手元に持った酒瓶を霊夢に差し出した。いつも邪魔ばかりしてるやつではあるが、たまには気の利いた事をするものだ。霊夢はそう思って受け取ったが、しかし。その酒瓶に印刷されたラベルには霊夢に見覚えのない絵が描かれていた。

 

 

「…見たことないものね。どこから持ってきたの」

 

「だろ?竹林の前で拾ったんだが、多分、外から偶々幻想入りしてきたものなんじゃないかな、と思って持ってきたってわけ」

 

 

ラベルには異国の文字で「STORM」と大きく赤い文字で書かれており、酒口からほんのり甘い香りが漂っていた。最近、麓の里で流行っている「珈琲」という豆と似た香り漂わせたそれは、アルコールの香りをほのかに含んでいるようだった。

 

 

「ふーん…。まぁ、ちょうどいいわ。どうせあんたも飲むんでしょ?上がりなさいよ」

 

 

魔理沙はよっしゃといわんばかりにぐっと拳を握りしめ、神社に上がり込もうとした。けれど、突如、強風がふいて花吹雪が二人を横切った。嵐に近い突風は桜の木から花弁を奪い、あらゆる枝を揺らし、榊の葉をきらきらと輝かせた。そして、風は砂を少しだけ巻き込んで、美しい星々が輝く夜空に消えていった。

 

 

「…なんか、寂しい風だぜ」

 

「春にしては変ね。明日、雨でも降るのかしら」

 

「そういう意味じゃねぇよ!…なんというか」

 

「何よ」

 

「…」

 

 

珍しいこともあるもんだと霊夢は思った。あの魔理沙が珍しく、風景にふけっている。幻想的とは無縁な彼女が、黙って風景を眺めるなどは霊夢もなかなか見たことがなかったのだった。

ところが、その幻想をかき消すかのように再び突風が吹き荒れ、静寂は打ち砕かれた。

 

 

「うわっ」

 

「さっさと入るわよ。風邪でも引いたら困るんだから」

 

 

二人は神社の中にそそくさと非難していきました。そして、卓袱台を間に挟んで、その異国からの酒を回し飲みして会話を楽しんでいました。

 

今日も氷の妖精が勝負を挑んできた、紅魔の館に魔法の本を借りに行った、魔理沙の親友のアリスのもとに新しい人形を見に行ったなど、とたわいもない話であった。

 

けれど、そんな会話でも退屈しのぎにはなる。そんなことを考えながら、霊夢は縁側の外を眺めだした。いつもの魔理沙に戻った。そんなことをぼんやり考えながら。

 

 

「で、それでだな~、アリスのやつがよ…______________________」

 

 

完全に酔いが回った彼女の話を横流しで聞いているとき、霊夢は視線に気が付きました。霊夢は魔理沙の肩をちょいちょいと指でつつき、視線の存在に気付かせようとした。

 

 

「ん、どうした」

 

「ちょっと、あれ」

 

「えぇ~どれどれ…あっ」

 

 

林の奥にぼんやりと。それは朧げに光る赤い眼光。桜の花弁、それとも違う。花と見間違いそうになるがそれは生物の眼光で間違いありませんでした。そして、その姿はなんとも不自然だった。

 

 

「ねぇ、あれ本当に人間?」

 

「あぁ…人間にしては…デカすぎるよな」

 

 

それは少女たちの視線に気が付いたのか、ズシン、ズシンと、大きな音を立てて去っていった。

 

 

「ちょ、待て!」

 

「追いかけるわよ、魔理沙」

 

「お、おう!」

 

 

霊夢たちはすぐに能力で空へ浮かび、その存在を確認しようとした。そして、その影はすぐに見つかった。

 

 

「…は!?」

 

「思ってたよりもデカいわね…って、え」

 

 

 

が、巨大な人影は霧のように忽然と消えており、影も形もなくなっていた。ぼんやりと暗闇からその形状が分かったが、少なくとも人が十人近く縦に重なってやっとその大きさになるほど、巨大な人間であるのは間違いなさそうだった。

 

 

「あんなデカいの野放しにしたら、里がめちゃくちゃになっちゃうわね。何とかしなきゃ」

 

「しかし、なんであんなデカブツがすぐそばにいることに気づけなかったんだ?あんなデカいなら足音とかで分かるだろ、普通」

 

「そんなの私が知るわけないでしょ。明日からあれがどこに行ったか調査するわよ。下手したら妖怪たちにも影響を与えかねないし」

 

「んなもん、言われなくてもやるつもりだぜ!」

 

 

その後、幻想郷のあちこちから巨大な妖怪が徘徊している、という噂が後を絶たなくなった。

 

そして、それは人里だけに収まらず、妖怪たちの間でも話題となり、「ダイダラボッチ」と呼ばれるようになり瞬く間に幻想郷中に広まっていった。けれど、その姿はまだ誰も見たことがなく、その真相は謎に包まれている。

 

 

 

 

今宵、幻想郷に新たな異変が起ころうとしていた。





STORM

カルーアが入った酒瓶

外界で女性や甘党に人気の高い酒であり
甘口のためか量を飲んでしまい、
悪酔いすることも少なくない

酒瓶の底には、血がこびり付いており
落ちぬ腐臭が少しばかり臭っている


滅びの火

もっとも不吉な預言に由来する伝承
かつて地上を焼いた粛清の火。

それは天から降り注ぎ
大国の戦火を飲み込むように燃え上がり
炎は人々のみを焼き尽くした

焼け残った大地には美しい大樹と
巨人だけが残されたという
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