「ダイダラボッチ」の噂から数日が経った後の人里。
実際に誰もその妖怪を見たというものが現れることがなかったからか、里は以外にも平和だった。
何人かの村人、また少数の妖怪はその存在を危惧し、今すぐにでも対策を練るべきと提案する者もいた。
次第にその声は大きくなっていき、ついには里全体での会議にまで発展することになった。
だが、大半はその存在も数日で何事もなかったように忘れていった。
「ダイダラボッチ」________
そんな巨大な妖怪が、本当にこの幻想郷に来ているのならば、博麗の巫女が黙っていないことを里の住民は熟知していたからに相違ない。
里では、そんな幻想的な噂よりもある変化が訪れていた。
スズメがさえずり、暖かい春の朝が訪れる早朝のことであった。里は、朝市にで店を開いたりし、野菜などで繁盛していた。その中でも飛び切り人気な商品が爆発的に売れていた。何やら妙な金属が流れ着き、一時の流行となっているらしい。
「はい、いらっしゃい、いらっしゃい!世にも珍しい”軽鉄”の家具がそろってるよ!さぁ、買った買った!」
里の雑貨屋がその金属らしき物質を加工して作った家具を売っていた。そこにメイド姿をした銀髪の少女が立ち寄った。
そして、少女はその珍しい家具に興味を持ったのか、嬉しそうに店主に話しかけた。
「あの、これはどうしたのですか?」
「あ、咲夜さん!そうなんですよ、また外の世界から珍しい金属が入ってきてですね。これが軽くて丈夫で使いやすいんですよ。おひとつどうです?」
店主は何かないか、と探していると丁度いいものが見つかったようで、店主はニコニコと笑顔で商品を持ってきた。
持ってきたのはピカピカに磨かれたフォーク。それは凝った作りをしており、彼女が仕える館に置いてあっても遜色ないものであった。そして、それが格安であるものですから、経理も任されている彼女は大いに悩みました。
フォークを興味深そうに眺めるメイド姿の少女。彼女の名は「十六夜咲夜」
吸血鬼が住む悪名高い「紅魔館」に住む唯一の人間であり、館の主を主人とし、仕えている。
咲夜は店主からを受け取ったフォークを、じっくりと眺めていた。
彼女が仕える主とその館に相応しいものか見定めるために、見た目の美しさやその強度や重量などを見極めているのだろう。さらには刻まれた装飾など、細かい作りまで目を通していた。
しばらく悩んだ様子を見せた後に、咲夜は店主に言った。
「すみません。このフォークと同じ金属でできた他の食器などありませんか?」
店主は待ってたと言わんばかりに、軽はずみな素振りを見せた後、笑顔で答えた。
「ありますよ~。少々お待ちくださいね」
数分後だろうか。店主は木の容器に山盛りに積まれた食器を在庫から持ってきた。
流石の冷静な咲夜も少しギョッとした。
そして、深呼吸をして川魚のように強張った表情を落ち着かせた後。咳払いをして質問を返した。
「そんな沢山の金属が外から入ってきたのですか?」
「何やら、湖のほうで外の世界の金属が流れ着いたらしくてね。
なんでも、処理しきれないほど沢山あるらしくて、山の工房のほうで引き取ったということらしい。
それを家が買い取って商売してるってわけでさぁ」
「あぁ…なるほど」
咲夜にはその話に、心当たりがあった。
だが彼女は、あえてそれを口にすることはなく、主が待つ館に戻ることに決めた。
「ありがとうございます。また来ますね」
「まいどあり!」
咲夜は一片の紙切れに書かれた買い物の記録を確認しながら、咲夜は館に戻っていった。
白銀の食器
ぴかぴかと光沢のある食器
その金属は鉄や銀と似た合金で作られ
丈夫でとても軽く、扱いやすい
古来より鉄や銀は、魔除けの効果があるとされ
陰者たちに忌み嫌われてきたが
それは、愚者の妄想に過ぎないのだろう