【悲報】人類最強のダンジョン配信者、最強過ぎて仲間が出来ない【ボッチ】   作:土ノ子

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第十九話 ダンジョンボス

 

 巨大な地底湖を湛えた広大な地下空間。

 それが《地下世界の入り口》の14階層最深奧、いわゆるボス部屋だった。

 

「グ、ググググ……グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ――――!!

 

 そして湖面を割り、飛沫とともに現れたのはダンジョンボス・水魔グレンデル。濡れた長髪で隠れた顔の影から爛々と輝く瞳が覗き、その巨体のところどころに頑強な鱗を備える巨人だ。

 だがグレンデル最大の特徴はそのいずれでもなく、

 

「ベオ、ウルフ……ベオウルフゥゥゥーー!!」

 

 †《狂獣》†

 

 ビリビリと凄まじい音圧が恋華の身体を揺さぶる。

 狂奔とともに叫ぶのは彼の宿敵の名。素手で真っ向グレンデルを相手取り、その片腕を捥ぎ取ったと叙事詩『ベオウルフ』に謳われる英雄その人の名だ。

 地底湖から上がってきたグレンデルが地響きを鳴らしながら恋華達目掛けて一直線に歩み寄ってくる。

 

「ッ、すごい咆哮(コエ)――ベルーガさん、ミルちゃん」

「グルル……」

『うん、強いね。二人とも、警戒して』

 

 その目に宿るのは狂気。

 グレンデルの目に眼前の敵は映らず、ただひたすらに存在しない仇敵を探して暴れ回り、壊し尽くす。最早狂戦士(バーサーカー)と呼ぶしかないモンスターだ。

 強敵と対峙する蓮華達の空気が否応なく引き締まる。いよいよダンジョン攻略の大詰め、ボスとの戦いが始まる。

 

 ◆

 

 恋華達の初手はまず解析から始まった。

 霞ミルが機械式アナライズによってグレンデルをサーチ。蓄積されたデータからそのステータスを同定、表示した。

 

『データを開示します』

 

 【基礎データ】

 種族:グレンデル

 位階:22

 【スキル】

 《迷宮の主》

 《水底の魔》

 《狂獣》

 《鎧鱗》

 【耐性】

 耐性:物理、水、火

 弱点:光

 

:強い(真顔)

:耐性が優秀過ぎる。

:Lv.だけなら同格だがここにボス補正が乗るのか。

:近接戦闘に限れば実質Lv.30オーバーでは?

:殴り合いはマジで止めろよ、フリじゃないからな!?

 

「――みなさま、参ります!」

「バウッ!」

「サポートは任せて!」

 

:三対一。数は有利だが。

:あまりアテにはできんだろ。相手が強い。

:眷属の夜魔もいるけど囮や賑やかし以上には使えなさそう。

:ミルちゃんはサポート専門だしな、戦闘メンバーの相性も良くない。

 

「まずは小手調べ……!」

 

 †《魔弾》†

 

「グラァッ!」

 

 †《硫黄の吐息》†

 

:呪詛とファイアブレス、連続命中。

:オークなら150%確殺級の攻撃だが……(1度殺して乱数50%でもう一度殺害ラインに届くの意)

 

「あ、あああぁ……ガアアアアアアアアァァァァァァッ――――!! ベオウルフゥゥゥ――――!!」

 

 †《鎧鱗》†

 

:効いてねえ! あの鱗で弾かれたのか!?

:それどころか元気いっぱいに突っ込んで来た!?

:いや、ダメージはあるだろ。死ぬまであと何十発か叩き込む必要があるだけだ。

:その『だけ』が問題なんだよなぁ。

 

 †《水底の魔》†《狂獣》†《大暴れ》†

 

「グルゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオォォォ――――!!」

 

:めちゃくちゃに暴れまくり!

:振り回した手足が雑に石柱とか砕いてる……。

:狙いはデタラメだが威力ヤベえな!

:巻き込まれた夜魔が掠っただけで消し飛んでて渇いた笑いが……。

:あいつら雑魚に見えるけどガチ一般冒険者 (Lv.3)くらいには強いんだぜ?

:理不尽過ぎる才能格差に泣きそう。

 

「避けて!」

 

:散会。で、距離を空けて回避。

:幸い攻撃は大振りだし足は速くない。距離を取れば凌ぐのは難しくないが。

:足は速くない(壁越え(Lv.30)冒険者並み感) 

:一般冒険者基準では絶望的に速いんだよなぁ。

:だがそれ以上にタフ。とにかくタフ。対してこっちは一発食らったら大ダメージ。

:クソボスがよ……。

:ダンジョンは些か以上に人類に対して厳しすぎる……。

 

「ベオ、ウルフゥ……!!」

 

:性懲りもなくれんれんちゃん目掛けて頭から突撃!

:それしかないんかい!?

:冷静に考えろ、暴走ダンプカーが自分目掛けて突っ込んでくるのはめちゃくちゃ怖いし普通に致命傷だぞ。

 

「ベルーガさん、牽制を!」

「ッ、ガアアアアアァァァ――!!」

 

 †《硫黄の吐息》†

 

:アホめ! れんれんちゃんに集中しすぎだ。

:回り込んだベルーガくんの攻撃が背中に直撃、だが――

 

「あああ、ベオウルフ……貴様かああぁぁッ――!!」

 

:ファイアブレス、やっぱ効果は薄いな。

:耐性あるんだ。当たり前。

:【悲報】ベルーガ君、サポートに転落。

 

 †《水底の魔》†《属性権限:水》†《水飛礫》†

 

:魔法攻撃か!?

:振り向いて水の散弾を撃ちまくり。やられて一番嫌なことをやってきやがる。

:ブラックドッグは水弱点……。

:ベルーガ君避けろ!

 

「ギャンッ、ギィィッ……」

「ベルーガさん!?」

 

:遅かったか。

:ベルーガ君喰らった! 直撃じゃないが効いてる!?

:格上からの弱点攻撃だ、そりゃ痛いわ。

:これは大和君助っ人のチョイスをミスったんじゃね?

 

「まだ戦いはこれからですよ」

 

:大和君冷静だな。

:後方腕組み師匠面院! 頼もしいような腹立たしいような。

:ここから勝ち目はあるってことか?

 

「回復します、こちらへ!」

 

:ベルーガくん足取りはふらついてるがまだ動けてる!

:合流完了。回復するっつってるが……。

:回復魔法?

:いや、闇属性はそういうの苦手だから違う。

:なんか飲ませてる。

:ヒールポーション、多分中級かな。

:大和君のガバ援助GJ。

 

「殺す、コロスゥゥゥ――! ベオウルフゥゥゥ――!!」

 

:追撃で突っ込んでくる! そりゃそうだな!?

:回復で手番譲ったからな、残当。

:グレンデルニキ、大人しく横綱相撲しててくれてええんやで(震え声)

 

「こっちです!」

 

:!?

:れんれんちゃん単独で前に出たっ!

:囮になるつもりか!?

:やる気は買うが無謀だぞ!

 

「死ィネエエエェェェッ!!」

 

 †《狂獣》†《怪力》†《強打》

 

「逃げ場のないまま囲まれた時に比べればこの程度……!」

 

 †《逃げ足》†《ポジショニング》†

 

:躱した!?

:グレンデルの懐に踏み込み、上から降ってくる打ち下ろしの右(チョッピングライト)を凌いでから前方に飛び込んでくるくる回りながら股抜き!?

 

「お見事! 技術と身体能力、それを支える度胸が為した大技です」

 

:大和君も大絶賛。いやマジですげえよ。

:利き腕から遠い位置に身体を置いて大振りを誘い、間一髪を見極めて前へ思い切り踏み込みからの股抜き……か?

:いや、理屈は分かる……ギリ、なんとかギリ分かるが。

:なんというクソ度胸。

:それな。

:普通ビビって硬直しない?

:冒険者あるある(見えてる攻撃にビビって避けられない)

 

「Lv.21までソロで戦い続けた経験値は伊達じゃないですね。素晴らしいの一言です」

 

:Q.つまり? A.慣れ

:冒険者ヤベェな。

:いや、れんれんちゃんもかなりの特殊ケースなので一緒にしないで?(一般冒険者並感)

 

「ッ! 貴様、ベオウルフゥゥゥ――!!」

 

:振り向いてすぐに追撃。単純馬鹿は立ち直りも早い。

:とはいえこんな曲芸何度も続かんぞ。

:いや、元々数秒時間を稼げれば十分なんだ。

 

『ベルーガくん、グレンデルの気を惹いて』

「バウッ!」

 

 †《硫黄の吐息》†

 

:背中にファイアブレス命中! 

:ベルーガくん復活! ミルちゃんナイス判断!

:グレンデルの意識が逸れた。今度はベルーガくんの方向いたな。

 

「私をお忘れですかっ!」

 

 †《魔弾》†

 

:上手く挟んだ!

:片方が気を惹いてる間にもう片方が攻撃。囮と攻撃役を適時スイッチ。

:パターン入りました!

:っし! このまま距離を取って撃ち続ければ削れる!

:このままハメ殺せるか!?

 

「――――ッアアアアアアアアアアアアァァァ!! 死ィネエエエェェェッ!!」

 

 †《水底の魔》†《狂獣》†《怪力》†《憤怒》†《巨人の拳》

 

:!? 発狂した!?

:れんれんちゃん逃げろ!

:なんだそれ、()()()()()()()!?

:ただでさえデカいのにもっとデカくなりやがった!

:デカいやつは何故強いのか。それはデカいからだ。

 

「!? みんなっ、お願い!」

 

:夜魔が、集まって。

:グレンデルの視界を塞いだ!

:ナイス攪乱!!

 

 ――――鈍鋼(ドゴォ)ッ!

 

:軌道がズレたところを紙一重で避けた、はいいけど……。

:!? 洞窟の壁が拳で叩き割られた!?

:視界が揺れてる……これドローンじゃなくて洞窟が揺れてる方だな???

:地震(震源地直下0M)

:受けたら死ぬ(確信)

 

「昔の人は地震を大地を支える巨人の仕業と語ったそうですが……御伽話と馬鹿にできないのがダンジョンの怖いところですね」

 

:ギリシャ神話の巨人アトラスの逸話か。

:まあ流石にあちらほどデタラメじゃないだろうが……いやこれだけでも十分デタラメだわ。頭おかしい。

:なお一番デタラメなのはこのショタ。

 

「だからショタ(チビ)じゃないとあれほど――」

 

:折角だからこのまま解説頼むぜショタ。

 

「……まあいいでしょう。僕もただ立ってるだけなのは飽きましたし」

 

:このショタ呼びに飲み下せないモヤッと感溢れる表情よ。

:実に味わい深い(深々と頷く)

:隙あらば業の深い性癖を晒すライバーズさぁ……。

 

「スルーしますよ? 現状の形勢は僕の見立てだと五分五分。どちらが勝ってもおかしくありません」

 

:五分五分?

:食らえば死ぬアレ見てその形勢判断はどうよ。

 

「あの巨大化攻撃は向こうにとっても大技みたいです。乱発は出来ないようですね」

 

:なるほど、腕が元に戻ってる。

:だけじゃない。動き回ってたのがやけに大人しい。

:息を整えてるのか?

 

「この時間をれんれんさんがどう使うかですね。ここで日和れば一気に苦しくなります」

 

:積極攻勢? 危険だろ。

:正直れんれんちゃん側は突破口なくない?

 

「いえ、手はあります」

 

:手?

:それって一体、

 

「おっと、動くみたいですよ」

 

:む。

:どうする?

 

「正面衝突で分が悪いなら――!」

 

 †《血霧の黒》†

 

:赤黒い霧……あの状態異常か!?

:なるほど、デバフかけて長期戦に持ち込めば……。

 

「ッ、ガァッ!」

 

:いや、弾かれた!?

:ボス補正には状態異常耐性アップもある。そのままじゃ十中八九通らんぞ!

:ンンンンンッ、お排泄物!

 

「はい、このままではデバフは通りません」

 

:このままでは……?

:つまり、何か策があるのか!?

 

「グルゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォ――!!」

 

 †《黒妖犬》†《魔女の愛し仔》†《不吉を告げる遠吠え》†

 

:なんだ、遠吠え?

:聞いてるこっちもめっちゃ背筋がゾワゾワする。ただの遠吠えじゃねーなこれ!?

:ブラックドッグはイギリスじゃ不吉の代名詞。その遠吠えを聞いた奴は不幸な目に遭うとか。

:つまり状態異常耐性を下げるスキルか!?

 

「今度は本気です。魔女の足引き……お一つどうぞ!」

 

 †《黒の左手》†《属性権限:闇》†《黒魔術(初級)》†《血霧の黒》†

 

:耐性を下げた上から属性権限でブーストした渾身のデバフ。流石に通れ!

:グレンデルが赤黒い霧に包まれて……。

:どうだ!?

 

「ガ、ア……ァァァアアアアアアッ!!」

 

:元気いっぱいで吼えてる。

:弾かれたか!?

:いや……。

 

「ベオ、ウルフゥ……ガァ、ァァァ……ァァァ……」

 

:耐性抜いた! 見るからに弱ってる!

:っしゃあ!

:見た感じ衰弱系統の状態異常か!

:衰弱ってどんなデバフだっけ?

:体力減少と速度低下。食らった知り合い曰く、39度超えの風邪引いたまま無理やり動いてる気分になれるらしい。

:例えが嫌にリアルすぎる。

:戦えない訳じゃないが普通にキツイ。というか死ぬ。

:寝てろ(真顔)

:寝たら死ぬぞ。グレンデルが。

:寝てていいぞ。死ね(直球)

 

「……決まりましたかね。形勢はれんれんさんの方に傾きました」

 

:決まった?

:まだ早くない?

:いや、デバフかけた上に距離取って挟み撃ちできる状況整えた時点でもうグレンデルの詰みだろ。後は王手かけるだけ。

:事故の可能性はあるが、このままいけば十中八九れんれんちゃんが勝つ。

:魔力切れは?

:確かに。削り殺すまでに魔力が尽きれば死ぬ。

 

「ポーション類は山ほど用意してますから補給切れだけは心配しなくていいですよ。そこまで織り込んで作戦を立てたので」

 

:そういやアイテム係いたじゃん。

:この財力チート手出しはしないと見せかけて意外とアマアマだな?

:グレンデル君はこのモンペに泣いていいよ。

:なるほど、つまり?

:フルボッコの時間じゃああああああああああああぁぁぁぁぁッ――――!! 残弾を気にせず撃ちまくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッーーーー!!

 

 この後無茶苦茶グレンデルをフルボッコした。

 

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