透き通るような世界観に混じる逸般不純物! ネイビーアーカイブ 私のミスですか? 作:ゴジマツリ=ユーリエフ
次は能面かコトリバコ辺りが来そう。
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超スピード♂でミレニアムに到着し、どこぞのうな重が好物の十円ハゲのように「すっげぇ〜」と小さく叫ぶゴリラを尻目にトキを肩から降ろして、リオへ適当な挨拶ついでにオモチャの作成を依頼してしばらく。
「すっげぇ〜!」
現在、D.Uへ向かう電車の中、横のゴリラは相も変わらず人の目など気にすることなく窓に顔を貼付かせ、通り過ぎるビルや巨大建造物に対して十円ハゲの様に騒いでいた。
「"俺の話、信じる気になったか?"」
「誰が信じるか、偶々私の知らんミレニアムっちゅ〜とこがトリニティより栄えとっただけじゃ。」
「"既にミレニアム出てんだわ。お前トリニティから出たことねぇのか?"」
「ない!」
「"ああそう。珍しいのは分かったから恥ずかしい奴だと思われたくないなら少し黙っとけ。"」
「半裸の奴に言われとうないわ!」
天を仰ぐ半裸の色々な意味で無敵の男と人目も憚らず騒ぐ少女、オマケに若干ドブ臭い二人の座席に近づこうと思う物好きはそう多くない。
正面に元々座っていたスケバンはプライドもありその席を立つことはなく、ブライの乳首が光を放ち視界に居座るが、それもまたプライド問題で反らさずにいる。
「"仕方ねぇだろ、服ないんだから。後あまり騒いでるとトリニティが田舎だと思われんぞ。"」
「トリニティが田舎ならキヴォトスに都会は存在せん。」
「"はいはい。"」
顔も相まってこいつは将来「地元最高!」とかほざきながらバイク吹かしてそうだ。
「"そういやお前、よくあの自販機の妄言にキレなかったな。"」
「妄言は妄言じゃ。そんに機械なんぞそう言う様に作られただけ、人工知能でも同じ、目的にそぐわん行動は勝手にできん。」
「"宗教も妄言だろ。妄言言ったアホに信じたアホが真面目にアホやってるアホ祭り。"」
質問への回答への唐突な煽り。バルバラ座席に座り直しはゆっくりとブライの顔を覗き込む。
「喋れんように顎砕いたろか?」
般若の面と見紛うような形相から放たれる圧が凄まじく、車両に漂う空気が重く沈んだような息苦しさと恐怖に支配され、背も見えぬ車両の端から別の車両へ移って行く。
プライド高きスケバン達は顔を見合わせるとは行かない角度で互い「お前移りたいなら仕方ない」「移りたいのはお前の方だろ」と目線を送る。
「"さっすが、妄言を変に解釈した結果身内で潰し合う奴等は野蛮だなぁ。"」
「………ここじゃあ物が壊れる……降りたら覚えとれ、久しぶりにキレちまった………」
「"デケェ図体だから狭所じゃ勝てねぇって正直に言えよ。"」
「ほぉ…………」
背にじんわりと汗が滲む。赤子の手を握るような、優しい手付きで心臓を圧迫される。鷹は今目の前のカラスを睨んでいる。雀である自分達には今何が出来るか……考えるまでもない。
「「にげっぞ!」」
緩く締め付けられる胸元を押さえながら危うい足取りを持ち前のバランス感覚で持ち堪えながら扉を目指す。
「"俺なら相手の足を引っ掛けるな。"」
「何処までもクソじゃな。」
「"んで、俺等の行き先は取り敢えずアリウスだ。実際に変わり様を見りゃ手っ取り早いだろ。だからまあ一度トリニティに寄る。"」
「おい。」
「"シャーレはその後。安心しろ俺が信用ならんのは分かってるからとりま写真の奴1人待たせてる。"」
「おい。」
「"んだよ、不満は受け付けんぞワガママゴリラ。あ、それと、写真の奴とは別に監視役が………何人かいるはずだがそいつらのいる内はお前は名を名乗るなよ。"」
「取り消せ。」
「"ん?どれをだ?………まあどれでもいいけど、俺が発言を取り消したところで事実は変わらんぞ?"」
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「"ハスミだったか、忙しい中申し訳ねぇな。"」
「こち……いえ…………あの、すみません、何処から伺えば良いのか…………」
駅から程なく歩いた場所、監視対象のアツコの少し後ろに立つハスミは片手で頭を押さえ困惑する。
見知った顔が風呂上がりのように首からハンドタオルをかけた半裸の状態で見知らぬ翼を携えて現れれば誰だってこうなるものだ。
正義実現委員会としてはまず公序良俗に反する服装から正すことが先決か………
微かに吹く風に役割を果たしているか定かではないスカートを靡かせながらハスミは考えた。
そんな戸惑うハスミの声を聞きながら共に暮らしている自分にすら知らされていなかった体の変化にアツコは閃いた。
「羽、急に大きくなったんだね。昨日の夜まではあんなに小さくて可愛いかったのに。」
爆撃は突然に。イタズラっぽく微笑み「私は昨日まで服に隠れるほど小さな羽を見る機会が何度もありました。」と誤解を招きかねない発言をするアツコ。
当然、次代のロイヤルブラッドが誕生する可能性は今のところない。羽の成長具合に関してはブライがY●uTubeの金の盾を獲得するため、取り敢えずで毎日ドラゴンフラッグをする様子を配信しているためそこで確認できる。
両者にこれと言った恨みはないが、アツコはハスミがその配信を知らない可能性に賭けたのだ。
どういう反応をするのだろう。微笑みからニヤつきへと変わろうとしたその瞬間、アツコの顔から表情が消え去った。
「………そりゃあどういうことじゃ?」
死神が鎌を掛けるようにブライ首元に細腕が掛かる。
「!!」
アツコは腕の間合いから外れるため、ハスミにぶつからないよう視線をそのままに右後へ後退し、両者とも銃を腕の主へと向ける。
「えっ…………」
ハスミが誰かを見上げたのは遠い昔の記憶。平地の至近距離で顔を上げる機会が訪れたこと、それを少し背を曲げての状態で。そしてその顔が見知った顔に類似していたことに困惑し思わず声を漏らす。
「"こいつが例の奴だ。俺にガチムチ♂アームレスリングに勝てなかったから気が立ってんだよ。"」
「………そうなんだ。」
ブライの言葉を聞き、腕が回されている状況に関わらずアツコは銃を降ろす。
「会話の流れを考えるとそうではないと…………いえ………その…………」
「負けちょらんが!?電車が止まったからノーゲームじゃバカタレ!」
「"お前の体格であそこまで長引けばそれはもうお前の負けみたいなもんだろ。"」
「挑んでおきながら体格を理由にハンデを求めるか!身も心も小さい奴じゃのぉ!」
アツコの対応にそれでいいのか?私はどうするべきかとハスミは頭を捻る。
調印式以降に存在を周知されたアリウスの印象はあまり良いものではない。
一件以降、トリニティの歴史を学び直し、「先代達の行動が自分達に返ってきた」「トリニティもアリウスも共に被害者であり加害者であった」と考えるトリニティ生も存在するのは確かだが、それも少数。
故に、ブライはアツコ達をトリニティに立ち入らせるを極力避け、どうしてもという今の様な時は自分の同行の有無に関わらずティーパーティーへの通達を行うことにしている。
そして今回、ブライからの通達を受け何処其処から揶揄されないため、ブライが合流するまでの間の監視としてハスミ1人が送られた。
そしてハスミの今の現状がこれだ。
監視の仕事は終えたがブライがピンチ、その原因はお偉いさんに似た第三者、即座に射撃の姿勢に入ったアツコを見るに関係性は良好と伺えるにも関わらず、「例の奴」の一言でブライの状況はそのままに銃を降ろす。
シャーレの仕事なのだろうがこのまま撃たずに良いのだろうか?仕事は終えた今、深入りせず軽い挨拶の後に即刻立ち去るべきか、迷い所さんである。
そんなハスミを見兼ねたブライはクソガキの喧嘩を中断し偽りの事情を説明する。
「"こいつはアレだ。記憶喪失だ。"」
「記憶喪失?」
「"そう。んで、こいつの知識の偏り的にトリニティの奴じゃないかと。だからこの前みたいにヒヨリが本に載っける写真をアツコが代わりに撮るついでに色々巡ろうかと思ってな。"」
「そういう………ことでしたか………」
未だブライの首に手が回った状況に納得はいっていないが取り敢えず理解を示し自分が正義実現委員であることに徹することにした。
「私はトリニティ総合学園正義実現委員会所属、副委員長の羽川ハスミと申します。何かお困りのことがあれば私達にお声かけ下さい。」
「正義実現委員会………ですか……お気遣いありがとうございます、覚えておきます。」
「"お前敬語使ったり頭下げたり出来たのかよw───っ!"」
バルバラが背筋を正すと同時にブライは魔術も無しにバルバラの頭と同じ高さまで浮上する。そこでブライは汚らしい粘液を散らすクラーケンの触手を模した玩具を取り出した。
にゅるりと蠢き粘液を飛び散る。バルバラは粘液がかからぬ様に解放からのバックステップをかまし粘液の発生源に拳を構える。
振り返り突き出された触手………さて、どう出たものか……
「"ハスミも仕事があるんだ、さっさと行くぞ。"」
「……………おう。」
特にどうともならなかった。
ブライは玩具はGOKへ、バルバラが構えを解いたのを見てハスミへと向き直る。
「"改めて、忙しい中面倒かけたな。また何かあったら頼む。"」
「はい。それではお気を付けて。」
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「"どうだ?お前の記憶とはかなり違うだろ。"」
自分の真横に広がる景色を見ながら最後尾を歩くバルバラをGOKから出した手鏡越しに話かける。
あの家からパクった正真正銘の異世界産の物ではあるが、別段特殊な機能はなく、ただ古めかしいデザインで麦茶の様にワクワクしない代物だ。
そんな物をわざわざ取り出したのは単に振り返るのが面倒というだけの理由だ。
「…………確かに私の記憶にあるトリニティとは別もんじゃ………」
ようやく状況が理解できたのかバルバラは腹のところ布を掴みながら少し悲しげに肯定した。
「私達が一つになったあん時、それまでの内戦や紛争のせいでかなり荒れとった………」
「"だろうな。"」
駅や電車内とは違い落ち着いた様子で返事を返す。
トリニティの少し外れの道の舗装が怪しいこの通りですら紛争後より4.50倍はマシだろう。
差し掛かった路地へと入る。
十字路を3度突き進み4度目で左へ。
その先に現れたのは石橋と黒緑に濁った川。3人は橋を渡らず河川敷の緑と薄茶が入り混じるなだらかな傾斜を下る。
一見何処にでもある汚い河川敷だが向かう先はアリウス自治区。傾斜の途中で左を見ると戦火を逃れるための防空壕らしき横穴が一つ。言うまでもなくアリウス自治区へと繋がるカタコンベだ。治安の悪いキヴォトスらしく封鎖のために使われたであろうコンクリートや金網の残骸はそこらに散らばっている。
「"もうすぐだな。"」
「もうすぐだね。」
「"お前の状況は理解出来たかもしれんがアリウスには一度着いてきてもらう。"」
死者蘇生をやらかしブライ。複製されたバルバラの同胞を戦力として利用したアツコ。前触れもなく数百年後の世界に飛ばされたバルバラ。各々内に抱えるもので空気が重くなる。
重い空気に漂うカビと埃の臭い。慣れたその臭いに反応する者は誰もいない。
ブライは魔術で光の玉を自身の前に生成しカタコンベへと足を踏み入れる。
カタコンベ、キヴォトスには縁遠い「死」の集合地。左右に並ぶ石棺に壁際の石棚に並ぶ黒ずんだ頭蓋。確固たる意志が無ければ入ったことを後悔すること間違い無しなこの不気味な空間、オマケに今は無いが不定期で変化する構造。
アリウスを守りたかったユスティナとアリウスを利用したかったベアトリーチェになんと都合の良いことか。
「アツコさん、と言いましたか………貴方が元アリウスという話は……?事実であれば貴方は………」
人目が完全に消え不都合な事を聞く者が居ない今、バルバラは内心とある人物の面影を感じていたアツコに一番の疑問を投げかける。
「そうだよ。でも、詳しい話はアリウスに着いてから。」
「………わかった。…………ブライ、さっきの正義実現委員会言うんはユスティナの後継か?」
「"いや、あれはトリニティ生徒会の駒みたいなもんで後継はシスターフッドって組織だ。その辺についても後でまとめて話す。"」
「調印式の襲撃は事実か?」
バルバラの問いにブライは唐突に足を止め振り返る。
唐突であったため後を歩いていた二者との距離がやや詰まる。
「"事実だ。襲撃が起こった理由はしっかりと語るし希望があれば爆破された古聖堂を後で見に行ってもいい。"」
恩を仇で返されたと知ってバルバラはどう出るか………
「そうか………わかった。」
全てはアリウスに着いてから。何らかの思惑を隠すつもりのない二人。
先程急に振り返り、視界に収め後を歩くアツコ急に止まれなくても不思議ではないシチュエーションで自然と距離を詰めいつでも守れる位置へ。
自分のトリニティへの忠誠心による敵対を危惧した警戒。
それを考えればわざわざアリウスへ誘導する理由も酷く単純なもので然るべき。
今のところ敵対の意思ももしそうなったとて負ける気もないバルバラはブライから渡されていたハンドガンのマガジンから弾丸を抜きつつ二人の後を歩く。
「"何やってんだ?"」
「それはアリウスに着いてのお前次第だ。」
「"なるほどな。"」
一言残し背を向ける。背を向けるが油断はしない。バルバラの動きを探るため聴覚に意識を割き進む。互いに抱く警戒心。何も知らぬ第三者がこの場に放り込まれれば、カタコンベのジメッとしたカビ臭い空気やおどろおどろしい雰囲気よりも二人の放つ重圧に逃げたくなることだろう。
ブライがバルバラにまず合わせる相手にアツコを選んだのには理由がある。
マエストロ曰く、秤アツコは「戒律を守護せし者の血統」である。ベアトリーチェ曰く、秤アツコは「アリウス生徒会長の血を引く正当な後継」を引く存在である。
どちらが本当でどちらが嘘か、あるいはどちらも嘘かそれともどちらも本当か。
真実がどれであれ、ユスティナ聖徒会に所属していたバルバラが反応を示した相手である可能性が最も高い。
そして戦闘に発展してしまった場合、アツコなら逃げてくれる。
無語でカタコンベを進む中、不意にバルバラが足を止める。それを聞き逃さなかったブライは即座に振り返り、片翼でアツコを引き寄せ短剣を握りバルバラに向ける。
「先に誰ぞおる。」
「"数は?"」
「1人。」
「"…………ベアトリーチェか?なら───"」
恐らく敵。予定外の乱入者をそれぞれ敵と仮定しているとブライの羽に包まれたアツコが謝罪の言葉を口にする。
「ごめん、先生。実はバレちゃって…………」
「"おいおいおいおい…………もしかしてサオリか?"」
「うん…………」
「"マジかよ…………"」
空いた手が自然と額に乗る。控えめに言って最悪だ。
「"あの黒髪ロングの内側が青い女が居ただろ?あいつだ。"」
「覚えとる。」
「"この際だから言っとくが、お前の動きによっては俺はお前を殺す。"」
「わっかり易い奴じゃのぉ。」
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通路の先、ブライの光球よりも柔らかな斜陽が風化した砂が薄く積み上がった階段を照らす。
「"重ね重ねで悪いが現状を知る前にお前には俺に介錯される選択肢がある訳だがどうする?"」
淡い光に進みながら一切の悪意はなく「ベイクドモチョチョ買うけど粒餡と抹茶クリームどっちが良い?」くらいのテンションで問い掛ける。
「ここで死を選ぶは自殺も同じ。介錯なぞ求める訳なかろう。」
死が択に入る提案に待ち受ける真実に不安を覚えざるを得ないがそもバルバラに自から死を選ぶという択は存在しない。
「"気が変わったら言え。"」
変わらぬ調子で返し、さくりと心地よい音の鳴る階段を登る。
視界に映るのはブライとバルバラが今日飽きるほど見た廃墟達。
アリウスの安住の地であったはずの場所の荒れようにバルバラは顔を顰め服の裾を掴む。
そんな失楽園にはバルバラの気取った少女が秋の日暮れには随分と心許無い格好で佇んでいた。
「"サオリンよぉ、お前等だけでのトリニティ訪問は禁じたはずだぜ?"」
羽へチラリと視線を向けいつも通り辛気臭い顔をするサオリ。
女が自分の胸への視線に気づいた時の感覚が何となく少し分かった気がした。
「すまない先生。それでもこれはアリウススクワッドのリーダーである私の罪だ。」
「"違げぇよアホ。"」
「……後の奴が例の」
「トリニティ総合学園ユスティナ聖徒会所属、バルバラです。」
サオリの顔の辛気臭さが3倍増す。
「連邦捜査部シャーレ所属の錠前サオリだ。そこにいる秤アツコと同じく元アリウス分校に所属していた。」
「またよう分からん組織が………ブライ。」
「"安心しろ、言ってた通りここで全部話す。……が、その前に理解しておくべきことが幾つかある。まず、アリウスはここ十数年前まで内戦が行われていた。つっても十数年前に産まれたこいつらの知ってる限りだから平気で数十年やってた可能性もある。"」
「そんだばユスティナかシスターフッドが仲裁に入ったはずじゃろ。」
紛争や弾圧から逃れるための地で起き続いた内戦。ユスティナが許さないと否定してまもなく、バルバラの頭に容認しがたい可能性が浮かぶ。
「"入れたら調印式も正常に行われてただろうなぁ。"」
「……………」
「"話を戻そう。その内戦を終わらせたのはユスティナでもシスターフッドでもなくキヴォトス外部から来た大人。けどそいつが碌でもねぇ奴でな、明らか四十路過ぎたババアのクセに「アリウスの生徒会長」としてアリウスを統治し、生徒達を少年兵として洗脳してちょい前にゲヘナとトリニティ間の条約の調印式にカチコミをかけた訳よ。"」
「なんじゃあ…そりゃ……」
事実であればユスティナ聖徒会がアリウスを見捨てていた事になる。容認しがたいそれを否定するため矛先を反らし、最もらしいツッコミどころを挙げる。
「外んもんが何の恨みがあってそげなこと………」
「"あったのは復讐心じゃなくて向上心。ま、それは後でいいとして、とりまアリウスは洗脳を受けていた被害者だってことを頭に入れてこいつらの昔話を聞き給え。"」
サオリとアツコは思い出したくもないアリウスの過去を語った。
「"ここはアレだ。宇宙飛行士とかがやる光と音がない部屋に閉じ込める訓練的なアレ。"」
ミサキが狭所恐怖症を発症した許されざる部屋だ。
「宇宙飛行士?」
「"んでもうちょい奥に拷問に耐える訓練をやってた場所があるらしいが…………ま、ユスティナ的に大して珍しくもねぇわな。"」
「まぁの。」
「"コワ〜"」
アリウスの地を巡りながら。
丁寧に丁寧にユスティナの影も感じさせないアリウスの過去を。
「アリウスの過去について、私が知っているのはこのくらいだ。」
「はぁ〜〜……………そうですか………」
呼吸、声色、目線、何処をとっても二人に嘘を感じられず、思わずその場にしゃがみクソデカいタメ息を吐く。
「"ユスティナかシスフか知らんけど、別にアリウスはお前等の全てって訳じゃねぇんだろ?支援打ち切って荒れた事にそんな罪悪感感じる理由なくね?ましてやったのは多分お前等の後世の奴等の決断だろうし。………まあ、罪悪感感じまくってた方が俺は有難いんだけどな。"」
これまでの話は同情と罪悪感を誘うための序章の序章でしかない。目の前に広がる道の先、お久しぶりのあの建物を指差す。
「"あの建物が何か分かるか?"」
「…………バシリカ……酷い有様じゃ。」
コンビニ前に屯するチンピラが如きウ●コ座りでバルバラは力なく答える。
「"じゃあその手前は?"」
バシリカから少し下を指す。
「…………なんもないただの道。」
「"本当にそうか?本当に何も思い出さねぇのか?"」
特に考える素振りも見せず「は?」の一言。
「"エデン条約を襲撃した際アリウスは敗北した。その理由は分かるか?"」
どうせ付いててくるだろうとウ●コ座り聖女を気に留めずバシリカの方へ歩きながらシッテムを弄る。
「単純に考えると戦力差。外部の手助けがあろうと2大校相手にアリウスでは数が足りん。そがんことよりベアトリーチェとやらは何の目的があってそがいなことした?そんでどうなったんじゃ。」
「"崇高とやらになりたかったそうだ。それになる条件は知らん。行く方もな。俺の武器に付着したもんで破傷風やらで野垂れ死んでるかもしれないが見かけたら教えてくれ、殺しとくから。"」
良く分からないFXとやらで金を溶かさない限り2度目の命乞いには応じないだろう………多分、恐らく。
「………あの襲撃において数も戦況もアリウスが勝っていた………始めの内は……」
「生徒会長の血統、ロイヤルブラッドである私の血を媒介に複製されたユスティナ聖徒会がいたから。」
ファンタジーなのかマッドなサイエンスなのか分からぬ設定に戸惑うバルバラ。浮いて股間が光るのはセーフなのに基準が分からん。
「"これがそれだ。分からねぇだろうがな。"」
振り返ると共にこちらに向けられた画面に目を向ける。
知らぬ少女等と共に瓦礫の山に立つ見慣れた礼装に身を包む少女達。しかしその肌はバルバラの同世代と言うよりも今際の際の老人の様な青白さであり、加えて彼女等は例外なくマスクを被り顔すら見えない状態である。
「………な…んだ……」
それでも理解出来てしまう。
「"まだあるぞ。当事者だってのにこいつら野次馬根性極まれりだな。"」
追い打ちをかける様にスライドする。
隊列を組むソレ等の一部の、体付きに立ち方や構え、黒子の位置や髪の癖。その全てが戦友達だと物語る。
「大規模破壊兵器で先手を打ち、戒律を書き変えた後にベアトリーチェの協力者との契約を果たし、複製され傀儡と化したユスティナ聖徒会を従えた私達はゲヘナとトリニティへの攻撃を行った。お前が本当にユスティナ聖徒会の一員ならば私はお前に償わなければならない。」
「私も、ね。私の血とあの状況がユスティナ聖徒会のミメシスを権限させるトリガーだったから。」
拳を握りしめるサオリと目を伏せるアツコ。そして空気の読めない音が1人。
「"さっきの答えだが、戦いを変えるのは数じゃねぇ、1人の猛者なのよ。つまり俺!アリウスの敗因は俺がアリウス側に居なかったことにある。幽霊なんぞを殺したところで誰も文句言わねぇから加減の必要もなくて楽だったわ。"」
人の気も知らずバルバラの視界の外で楽しそうな声がする。
「"ま、そっからはアリウスが普通に負けて何やかんや色々あって現シャーレメンバーでアツコ救出兼革命兼ベアトリーチェ殲滅戦が始まった。そんで「アリウス生徒会長」としてお前等の指揮権を独占したババアを集団リンチした訳。ついでにすぐそこが複製されたお前が俺に殺された場所だ。"」
「さっきの質問はそういう訳か………」
「"意外、素直に信じるのか?さっきも言ったが指揮権は向こう持ち。事実だがお前目線俺等に都合の良い話しか出て来ないぞ。"」
「んだば私に調べさせぇ。」
バルバラは鋭い目つきでこちらを見上げる。
「"ほ〜ん。"」
映像資料とか普通に発狂物だと思うんだが?
「ここが私の居た時代より遥か先なのは事実。だがアリウスの統治者や私達の複製についてお前とお前の身内の話だけでは判断しかねる。」
「まあ……当然だな。」
「"あまりにも異能力バトル物過ぎるお話しが受け入れ難いのは分かるが俺目線で嘘を吐くことに何の得もなくないか?度々提示する介錯、殺すことが目的ならあの廃墟で俺があの短剣を一振りすれば済んだことだ。"」
「さっきの今でお前言うとること無茶苦茶やぞ………単純に私が納得するためじゃ。嘘じゃねぇなは問題なか話やろ?」
「"嘘じゃないと理解すればお前はどうする?介錯を求めるか?錯乱して暴れ回ったりされたらこっちも迷惑なんだけど?"」
他者の迷惑を考えないバルバラは俺の言葉を鼻で笑う。
「何度言うとる。私に主から賜った命を粗末にするつもりはない。話が事実であればそれは私に与えられた試練であるというだけのこと。」
「"試練?何言ってんだお前。"」
「全ての事に意味がある。私が時を越えここにおる理由は主が私に課せた試練故じゃ。我等の魂を弄し、主を冒涜せしゴミクズを掃討せよというな。」
天啓得たりと言った顔で拳を握りしめるアホ。
「"これだから聖職者共は………"」
何でもかんでも神神神、決まってこいつらは計画だの試練だの教えだの言って自分達に都合良く解釈し善悪すらも捻じ曲げる。
全て神の計画なら知恵の実も蛇も、背信者も悪もこの世全ての不幸も全てあいつのせいだ。
それで愛だの試練だの救済だの盛大なマッチポンプが過ぎるだろ。
そんな事すら理解出来ずクソなろうよりもガバガバな設定を持ち上げるアホ共のアホで始まるのがアホの飼い主と権力者の結託による略奪と迫害と戦争だ。
火のない所に煙を立て獣人種を根絶やしにしてそれのとばっちりを受けた身としては反吐が出るほどキショい自己解釈と言わざるを得ない。
「"事実だったらアリウスをどうするつもりだ?こいつらはベアトリーチェに従い冒涜とやらに加担した事になる。"」
「理由は分からん。理由は分からんがアリウスを投げ出し碌でもない大人に付け入る隙を作ったユスティナにも咎はある。」
「"だから責られない、裁けないと?随分上からじゃねぇか?あ?"」
「支離滅裂じゃ。お前はアリウスへの加害を望んでいないはずじゃろ?」
キモイわ〜無自覚って超キモイわ〜。
「"ああその通りだ。ただお前が神を理由に自分の行いに正当性を求めてんのが気に入らねぇってだけ。"」
「ハッ!それはまた随分と信心深い。」
「"そりゃ将来的にブチ殺す相手だ、存在してもらわないと困る。ま、俺の将来の夢は置いといて。これ以上ここで俺達から何か聞きたい事はないってことでいいんだな?"」
「ああ。」
神の教えとやらでしか自己を確立出来ないアホのゴミクズは何を言ってもその腐った支柱を自覚する事はない。話を続けるだけ時間の無駄だ。
「"んじゃ帰るぞシャーレに。面倒くせぇから今日はしないが明後日以降に連邦生徒会にお前の事を報告する。面倒臭いことにならねぇためにもそいつらに会う事があっても正体は明かさず今の設定守れよ。"」
まあ守らなくても今のバルバラの存在がトリニティに大混乱が巻き起こす事を理解すればリンも何も聞かなかった事にするだろうけど。
「またそのよう分からん組織か。」
「シャーレというのは連邦生徒会……キヴォトスの行政、学園都市の運営を担う組織のトップである連邦生徒会長により作られた組織だ。先生は連邦生徒会長直々に呼び寄せられたそうだが…………」
「"記憶にねぇし拉致った本人は失踪中だがな。"」
「んなアホな。」
「"そう思うんなら適当な場所で連邦生徒会長の失踪について街頭インタビューでもしてみろ。そうでなくともエデン条約に関して調べるなら発起人のそいつの失踪は確実に出てくる。"」
アホなことであるのは否定しないが。
「となると犯人はゲヘナ上層か条約反対派のトリニティの奴か。」
「"マジかよマコト最低だな。"」
マジでやりそうな奴ではあるが同盟(笑)を結んでいたアリウススクワッドからの情報提供がなかったあたりその可能性はない………はず。
「"シャーレについても勝手に調べろ。説明してもマジで理解し難いほどにイカれた組織だから。"」
「お前なんぞを外からわざわざ呼び寄せるアホな組織の作った組織なんぞそういうもんじゃろ。」
連邦生徒会は独裁国家を目指す碌でもない組織である可能性が朧気に浮かんで来たバルバラ。
後にシャーレの詳細を知りたまげるのは言うまでもない。
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良く考えなくてもカタコンベを爆破しまくってたブライ君倫理的にも状況的にもヤバいことやってんなと思いました(小並感)
バルバラの心が弱かった場合「お前と先輩後輩は魂弄られてトリニティに牙剥いくための兵や、自分等の長の子孫の娘を生贄に捧げる儀式の護衛のために戦ってもう一回死んだよ。」
と聞いた結果、「神なんぞおらんかった」的な感じでテラーしてエデン条約編で式してたサオリとアツコが眼前の復讐対象として映りどちらかが死ぬ展開になるよ。
(ブライ君がいるので二人が殺されずともバルバラは確定死)
けどバルバラは心の強え奴なので
ブライ君の言う「全てのことに神の計画があるよ」というマッチポンプ宣言に救われました。
ここでも作中でもマッチポンプとは書きましたが自分はブライ君の様な反神論者ではなく無神論者(ほぼ理神論)なので「偉大に見せようとするあまりガバッたんだなぁ」くらいの認識なので怒らないで下さいね?
↓こっから聖書の疑問点とただの自分語り↓
でも割とマジで全能の神が全てを創造した世界に悪魔が存在するところとか、それを即座に根絶やしにしてないところとか、善悪の知識の実を滅茶苦茶普通に手の届く位置に生やして、自由意志があるのに計画通りに動いて「食うな」と言われた実を食って原初の追放系をした所とか個人的に凄く気になるところです。
その計画回りくどくない?それ以降悪魔とバトっても傍迷惑な人形遊びか御遊戯としか見られなくない?って。
盛り過ぎた結果のガバではないならその辺の話を信者の方には是非とも詳しく聞いてみたいです。
友人が信者ですけど信仰の薄い二世だから「天井30連前でピックアップが出たのも神の計画かよ!許せんなマジで!凸するためにもう30引くけど。」とか何のゲームか分かりませんがそいつの親に聞かせてやりたいことほざいてましたしそいつは当てにならない。
まあそれでも洗礼名を明かさないレベルの申し訳程度の信仰心はありましたけど。
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