透き通るような世界観に混じる逸般不純物! ネイビーアーカイブ 私のミスですか?   作:ゴジマツリ=ユーリエフ

29 / 129
28.アクアリウムは周れない

 

ウェ~イ次回からエデン条約だぜ!

 

──────────────────────────

 

[ホシノ]

先生!

 

[ブライ]

なんだい、石抱きのホシノさん?

 

[ホシノ]

あの時の事まだ根に持ってるの?

 

[ホシノ]

あの時の続きやる?

 

[ブライ]

海よりも広い心を持つ俺だぞ?そんな訳ないだろ?

 

[ブライ]

それで要件は何だ?

 

[ホシノ]

仕事は終わった?

 

[ブライ]

終わった。

 

[ホシノ]

それなら今からアビドスに来てくれない?

 

[ブライ]

すぐ行く。

 

 

 

 

夜にいきなり呼び出されるとは…何か緊急で対処しないといけない何かが発生したのだろうか?

 

 

 

──────────────────────────

アビドス市内

 

 

 

 

スカイハイブライさんは空を行く。春とはいえ砂漠の近くなので夜中に飛び回るのは少し寒い。

寒さに耐えながらアビドスへ向かう途中、見慣れたピンク頭が目に入る。…しかし、慌ただしい様子は無い。緊急というのは俺の早とちりかも知れない。

 

「うへ?先生、早いね。」

 

「"夜にいきなり呼び出されたんでな、緊急の何かかなーって急いで来た。"」

もはやツッコミすらない。

 

「勘違いさせてごめん、おじさんは先生をトレジャーハントに誘おうと思って連絡したんだー。」

 

「"トレジャーハント?"」

借金返済の為にカイザーが探していた例のお宝でも探すのだろうか?

 

「あ、ここにいましたか!」

 

背後から見知らぬブルドッグ?パグ?か何かが声をかけ小走りで来た。

 

「え、えっと、ええ?」

 

疑問では無く焦りの表情を見せるホシノ…弱みを握れるチャンスか?

 

「先程不良から助けてくれた方!…お礼を申し上げようと思っていたのに急に居なくなったもので。ありがとうございます、もし貴方がいなかったら今月の家賃を全部取られる所でした。」

 

深々と頭を下げる獣人。改めて治安終わってんなキヴォトス…なんて事は割と毎日思ってる気がする。

 

「い、いや…わ、私はただ…」

 

「あ、アビドスの生徒さんなんですね。毎晩パトロールされていると噂で聞いていましたが、実際に会う事になるとは。ありがとうございます。」

 

再度お礼を告げ去って行く。

 

「"おんやぁ?ホシノさぁん、夜中にパトロールとは随分ご立派じゃあ〜りませんかぁ?"」

 

「いや、これはただの偶然の出来事っていうか…うーん…。結構恥ずかしいから知らないフリをしてくれると助かるな〜。」

 

顔が紅潮する程では無いが、恥ずかしがってるホシノは割とレアな気がする。からかいたい所だが…

 

「"ま、俺の秘密も黙って貰ってるしな。けど、寝る時間まで削るなよ。"」

 

「えへへ、心配しなくてもおじさんは学校で盛大に寝てるよ〜。」

 

「"そうならない為に言ってんだよ!…まあ良い、さっさとトレジャーハントに行くぞ。"」

もしかしてホシノは昼夜逆転してんのか?

 

「先生やる気だね。トレジャーハンター魂に目覚めたのかな?」

 

「"死に設定だけど一応本職だったからね?"」

 

「何の話?」

 

 

 

──────────────────────────

アビドス旧校舎

 

 

俺の見当が外れたようで、カイザーがお宝があると言ったアビドスの……砂漠では無く、案内されたのは埃と砂まみれのアビドスの旧校舎。まあ、クソ寒い砂漠よりは全然マシだが。

 

「"何故に旧校舎?"」

 

「アビドスは歴史が古いからあちこちに隠れた空間があって、それを探し出すのが結構楽しいんだよ!」

 

後輩が居なければ意外と子供っぽい事を口にするらしい。

 

「"それで、お宝はありそうか?"」

 

「あちこちガラクタだらけで使えそうな物は無さそうだね。先生、足を引っ掛け無いように気を付けて。」

 

「"足元危ういなら昼で良くないかい?"」

 

「うへ、まさか先生怖いの?このおじさんの後ろをピタッとくっついて来て。」

 

それは答えになってねぇぜホシノさん。

 

「良いものを見つけたらすぐに拾わないとダメだよ。宝探しは見つけた人の物ってルールなんだから。」

 

「"はいはい。"」

 

それから暫く旧校舎を歩き回ったが特にめぼしい物は無かった。取り敢えず飲食物を置き去りにしたアホは万死に値する。

 

「やっぱり良さそうな物はとっくに持って行かれちゃったか…」

 

そんな事を言いつつもホシノは目の前の教室の扉に手を伸ばす。

 

ガラガラ

 

案の定、中はガラクタだらけ。

 

「ここは…随分昔の先輩達が使ってた場所みたいだね。おじさんも来たことないから分からないけど。」

 

がさっ

 

「うん?何か音が聞こえなかった?あっちの方だったけど…。」

 

ホシノは音のする方へ歩き出す。

 

「"やめろホシノ!多分ゴキ──"」

 

チュウチュウ

 

「う、うわああぁぁっ!?」

 

ガシャン

 

ネズミに驚いたホシノが背後の机にぶつかり、中身のガラクタが落ちてきた。

 

「う、うあ……。びっくりしたぁ…。ネズミかぁ…全く、人をびっくりさせてー。」

 

「"びっくりし過ぎてまだ足震えてんぞ。"」

 

「嘘!?」

 

「"嘘だよ。"」

 

「全く、先生までおじさんをからかって!」

 

「"すまんすまん、珍しい表情が見れたからつい……あっ、お札だ!"」

欲を言えば万札、別に1000円でも構わないぜ!

 

そう思い目の前の紙を拾い上げたが、何かちょっと硬い…それに良く見れば裏面がぼんやりと光っている。

 

「これ…夜光ステッカー?しかも魚の!これは熱帯魚で…こっちはサザエ、イカ、マンボウ…うへ、クラゲもある!凄いお宝じゃん、先生!」

 

年相応…というより見た目相応にはしゃいでいて可愛らしい。本人に言うと馬鹿にされるか、しばかれるので絶対に言うつもりはないけど。

 

「"魚が好きならやるよ。"」

 

「うん?お、わ、私にくれるの?でも拾ったのは先生なんだか、先生の物ってルールだし……」

 

「"俺の物をお前に譲渡する事は禁止されてないからセーフ。"」

ルールの穴を突く男、スパイ◯ーマッ

 

「う、うん…ありがとう、先生。へへ…可愛い魚達が大量だ!家の天井に貼っておこ!電気消して眺めたら凄いかも!」

 

可愛いのはお前じゃい!

 

「"そんなに魚が好きならアクアリウムのチケットも今度持って来てやるよ。"」

 

「いや…流石にそこまでは悪いよ。」

 

人の金でラーメンを食べようとした人間の言葉とは思えないぜ。

 

「"この前福引でペアチケットを当てたんだよ。行く相手もいねぇし、俺が狙ってた高級肉は出てくれ無かったし…"」

それに休日は家でゲームやってた方が楽しめるタイプの人間だ。

 

「じゃあさ先生、私と行こうよ!」

 

「"今誘われると俺が誘われ待ヘタレ男みたいだろ!アビドスの誰かと行って来いよ。"」

 

「そんな事をしたらおじさんを巡った争いが起きちゃうでしょ?おじさんは可愛い後輩達が争う姿なんて見たくないな〜。」

 

とんでもねぇナルシストだな。

 

「"俺なぁ、小さい頃に触れ合いコーナーでナマコから水が出るのが面白くて、ナマコを雑巾絞りしたら滅茶苦茶怒られてな、水族館が怖いんだよ。だから行きたくないなぁ。"」

 

「…流石に今はそんな事しなよね?」

 

ギリギリ年齢が一桁の頃の思い出だ…流石に今やってたらヤバい。

 

「"当たり前だろ。それに水ならナマコより出せるわ!"」

ウォータージェットで化物共を真っ二つにしていた頃が何かもう懐かしい。

 

「はい、じゃあ決定!いつ行く?」

 

「"何がじゃあなんだ。俺は行くつもり無いぞ。"」

俺は魚は見るより食べる派なんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

水族館前

 

 

 

 

結局あの後、押し切られてしまった……にしてもこの水族館マジでクソでかい。ここからは私の推理になってしまうのですが…おそらくクソでかい魚が住んでいたのではないでしょうか…

 

「やっほー。先生待った?」

 

ホシノが手を振りながら歩いて来る…人目があるので普通に止めて欲しい。

 

「"3分くらいだ。気にするな。"」

俺はムスカ大佐よりも寛大だからな。

 

「先生、こういう時は「今来た所」って返すんだよ。それよりこれ見て!さっきパンフレット貰ったんだー。熱帯魚コーナーに深海魚コーナー、触れ合いに餌やり体験もあるみたい!」

 

パンフレットだけでここまで楽しそうにできるのは何かの才能だと思う。

 

「イルカショーもあるし…ペンギン館もある。ここはきっと寒いんだよね?」

 

「"一応、暖かい地域に生息するペンギンもいるぞ。"」

 

「へぇーそうなんだ。…あっ、先生これ見て!海のトンネルだって!今日1日で全部見れるかな?」

 

「"このままだとパンフレットだけで半日潰れそうだし、そろそろ行こう。実際に見た方が何倍も面白いと思うぞ。"」

 

「うん!」

 

 

魚は逃げないが時間は逃げる。手当たり次第に回って行った。

 

 

 

──────────────────────────

 

熱帯魚コーナー

 

「うへ、見て見て、熱帯魚。」

 

「"暖かい所の魚って美味しくないし熱帯魚もやっぱ不味いんかな?"」

 

「えぇ…」

 

 

深海魚コーナー

 

「"すげぇ!シーラカンスもリュウグウノツカイもいる!初めて実物見た!"」

 

「先生、何だかんだ言って、おじさんより楽しそうじゃん。」

 

「"当たり前だ。進化の必要が無い程完璧な肉体を持ち「生きた化石」と称されるシーラカンスとシーサーペント疑惑があるリュウグウノツカイだぞ!誰でもテンション上がるわ!"」

 

「先生も楽しそうで何よりだよ。」

 

「"餌やり体験でのお前には負けるよ。"」

 

ホシノが制服でなければ、10人中10人が女児と答える程にホシノはしゃいでいた。

 

 

ペンギン館

 

「本当だ!このペンギンは暖かい所に生息してるんだって!」

 

説明をチラッと読んだ後、ペンギンの前まで短い距離を駆けて行く。

 

「"ガラスにくっつき過ぎだろ…どんだけ好きなんだよ。"」

 

ホシノはその場にしゃがみ込んでガラスに顔を押し当てたまま、ペンギンを凝視している。

ペンギンが右に移動すれば、ホシノもしゃがんた姿勢のまま、追従し、左に移動した場合も同様。…ペンギンの一生のトラウマになりそうだ。

 

ブピュッ

 

背を向けペンギンがいきなり、ホシノの顔をめがけて液状の便を排泄する。最後に一矢報いたか…まあ、全部ガラスに阻まれるんだが…

 

「うわっ!……イテテ…びっくりしたぁー。」

 

「"ハハハハハハハハハ!"」

 

「不幸なおじさんがそんなに面白いかー!?」

 

「"ごめん、昔に似たような事があって、つい笑ってしまった。そろそろトンネルの方に行こうぜ、イルカショーに間に合わなくなる。"」

 

 

 

 

──────────────────────────

海のトンネル

 

 

今まで見て来た中で一番大きなエリア、巨大な水槽の中にアクリル製のトンネルがあり、そこから魚達を眺められるエリアだ。ここまで魚が多いと餌やりが大変そうだ。

 

「うへぇー、すごい…あれが鯨ってやつかな?」

 

「"細かい種類は知らんがそうだな。あれよりデカいシロナガスクジラってもいるんだけど……流石にここには居ないみたいだな。"」

 

「見てみたかったなぁ。」

 

飼育できそうな程スペースはあるが……そもそもキヴォトスにシロナガスクジラがいるのだろうか?

 

「あれ見て!お魚だ!あはは、可愛い!」

 

「"俺の武器達もいるぞ!"」

カジキさんとマグロさん、不良にチラつかせれば大抵は逃げてくれるので大変助かっております。

 

「本当だ!動いてる所始め見た。」

 

「"カジキさんはドリルの様に動くだろうが。"」

 

「うん………私一人、こんなに楽しんでいいのかな?」

 

いきなりツッコミを放棄して良く分からない事をいいだした。何か嫌な事でもあったのだろうか。

 

「"お前はパトロール頑張ってるし問題なし!"」

 

「セリカちゃんだって頑張ってるし、皆も…」

 

うーん…面倒臭い。

 

「"はいはい、今度皆で来ればいいだろ?後、俺も楽しんでるからお前だけというのは間違いだ。"」

 

「そうだね、皆と私と先生でまた来よう。……勿論、先生のお金で!」

 

「"おい!"」

 

「うへっw」

 

その後、イルカショーを見て、またトンネルに戻って来て、その後に触れ合いコーナー、クラゲ館、ウミガメ館、グッズショップまで回った所で日が落ち始めたので今回は終了。

 

 

──────────────────────────

アビドス駅

 

 

「…楽しかった。アンコウの餌やり体験、滅茶苦茶面白かったね。すっごい大きな口だった。夜光クラゲもかっこよかったし。記念品もこんなに沢山買っちゃったし、うへへへ。こんなに疲れたら帰ってすぐに寝ちゃいそう。」

 

「"寝坊すんなよ?"」

 

ホシノの感想を聞きながら、過疎りまくったアビドス駅の出口を目指していた。

 

「ねぇ、あいつ…」

 

「"ああ…"」

 

会いたい様な会いたくない様なあいつが、カツカツと足音を響かせこちらへ歩いてくる。…こちらは迎え撃つ…なんて事はしない。

 

 

「"くうぅぅろぉぉふぅぅくうぅぅ君ッ!"」

 

ガンッ!   ズズズズッ

 

すました顔でこちらへ向かう黒服に駆け寄り、頭を鷲掴みにし、無機質なタイル壁に押し付けてスライドさせた。前回警告はしたのだ。今ここですり下ろされたリンゴになっても文句は言えないだろう。

 

 

「"ッエーイ★愉快に素敵にキマっちまったぞお前はァ! なあ、ホシノ?"」

 

「……先生、こいつ様子がおかしい。」

 

確かに、壁に押し当てられた瞬間も声すら上げ無かった。そしてよく見ると外傷が一切無い。こいつらがケガしたらどうなるか知らんけど…

 

「……………」

 

「「"????"」」

 

黒服は何事も無かったかの様に立ち上がり歩き始めた。どう考えてもおかしい。

その後に殴る蹴る等を加えたが一向に反応はなかった。

 

「"…どうなってんだ?"」

 

「分からない、でも…今のこいつに関わっても多分碌な事は無いよ。……帰ろう。」

 

楽しかった空気は消え去り、両者無語のまま出口を目指し角を曲がる。

 

「ねぇ、先生…」

 

「"ああ…"」

 

先程と同じ無機質な長い通路、6枚のポスター、3つの扉、黒服…

 

「「"ループしてる。"」」

 

駅、変なおっさん、ループする通路。覚えがある、これは……

 

「"八番出口…"」

 

「ここがどうかしたの?」

 

「"八番出口っていう間違い探し系のゲームがあってな、状況が似てんだよ。俺はネタバレが嫌でルールしか知らないんだけどさ…"」

 

異変を見逃さないこと

異変を見つけたら、すぐに引き返すこと

異変が見つからなかったら引き返さないこと

八番出口から外に出ること

 

「それに巻き込まれたって事?…でも、そんな事ありえるのかな?」

 

「"アニメやマンガ知識で悪いんだけど、人の恐怖や信仰により怪異が具現化するってのは良くある話だ。"」

優れているかはさておいて、トンビが鷹を産むというやつだ。知らんけど。

 

「…………」

 

ホシノは俺の話を訝しみながら通路を進む。

 

納得出来ないのは分かる。だが、ヘイローや神秘がある世界だ。怪異がいても驚きはしない。対処法が分からない奴が怖いが…

 

「"俺は初めてこの駅を使ったから出口までの距離は分からんが、こんなに長い物なのか?"」

走るより飛ぶ方が速いし経済的だからな。

 

「いや、すぐに出口に辿り着くはずだよ。こんなに長い筈がない。……1番出口?何で?」

 

「"な?あり得ただろ?"」

遭遇して所で全然嬉しくは無いけど…

 

「…………」

 

 

[1番出口]

 

「"そこに8番出口と表示されたら外に出られる訳だ。暫くはループする通路の写真を撮ろう。正常な通路がどんな物か俺には分から───"」

 

シッテムの箱は反応しない。水族館を出る前には60%くらいはあった筈だ、こんな短時間で無くなる筈がない。

 

「"ホシノ、お前のスマホは………"」

 

「うーん、写真撮り過ぎちゃったのかな?……ん、どしたの先生?」

 

ホシノの頭上にある筈のヘイローが見当たらない…寝ている訳でも死んでいる訳でも無い筈なのに…

 

「"何でもない、通路を確認してから一度引き返してみよう。"」

 

「う、うん。」

 

通路の確認は確実にしないといけないというルールと異変は2つ同時に起こらないというルールをホシノに伝え、引き返した。勿論、今回の異変内容は伝えずに。

 

[0番出口  三]

 

「3?いや、それより0番出口って……」

 

「"すまん、間違えたみたいだ…"」

 

ホシノの頭上にはヘイローが無い…異変ではないのか?一体いつからだ!?シッテムの充電切れも異変等では無かったみたいだ。

……それに三ってなんだ?何を意味する?2番出口には数字なんて書いて無かった筈だ……ゲームでもこうなのか?クソッ!ネタバレでも見とくんだった!

 

「先生、大丈夫?」

 

俺の顔を心配そうに覗き込むホシノ。ヘイローが無い事が分かれば違和感しかない。

 

「"…大丈夫だ、さっきの通路を思い出しながら全て確認して行こう。"」

 

ホシノと一緒にポスターと扉、床、黒服、天井等、調べられる所を調べた。

 

「このドアノブ、位置がおかしくない?」

 

扉の中心にドアノブがついている異様な光景、異変と言わざるを得ないだろう。

 

「"確かに、これが正常な訳がないな。異変も2つ同時に起こらない、他の場所ももう一度確認して良く覚えよう。"」

 

 

[1番出口 三]

 

正解したがやはり三の文字は消えない…

 

「"正解だったみたいだな。次に進もう。"」

 

「意外と簡単かも知れないね。」

 

1番通路 異変なし

 

 

[2番出口 三]

 

「"戻って来たな。"」

 

「後6回進めれば良いんだよね?」

 

「"ゲーム通りならな…ま、取り敢えず進もう。"」

 

先程と同じく、通路の確認を始めようと角を曲がると…

 

「"うっwww"」

 

「どうしたの先せ うへっww」

 

白いタキシードを着た黒服がこっちに向かって歩いて来た。ご丁寧にグレーのコサージュまで付けてやがる。流石にこれは笑わざるを得ない。

 

「"2Pカラーってw黒服w黒服ぅw"」

 

「先生、笑い過ぎだよーw」

 

 

[3番出口 三]

 

「"うわっ!あいつめっちゃこっち見てくる!"」

 

「うへ、気持ち悪い…」

 

「"いつにも増してな!引き返そうぜ。"」

 

[4番出口 三]

 

「"黒服が二人…来るぞ、ホシノ!"」

 

「来ないよ先生。」

 

 

[5番出口 三]

 

異変なし

 

 

[6番出口 三]

 

「"異変見つかった?"」

 

「うーん…大丈夫じゃないかな?」

 

ポスターにも扉にも床にも天井にも異変は無い。

 

ザアアアァァァァァァ

 

「「"逃げよう!"」」

 

進もうとした瞬間、大量の砂が押し寄せて来る。これで異変なし判定で強制的に0番出口まで戻されたら恨むぞ。

 

 ズサッ  「うわっ!」 

 

「"ホシノッ!"」

ホシノが転けてしまった…あっ、最初から岩を出しておけば………

 

 

 

ザアアアァァァァァァ

 

 

[0番出口 二]

 

数字が減っている…

 

「私のせいで、ごめんね。」

 

振り出しに戻った事を申し訳なく思ったのか、ホシノのおじさんモードが終了した。

 

「"いや、俺も助けられたら良かったんだが………何故かこの場所では魔法が使え無かった…半分は俺のせいだ。"」

勿論異変では無い。今現在物の出し入れ以外は何一つ使えない。

 

「ヤバいじゃんそれ!」

 

ホシノのヘイローと言い、俺の魔法と言い、この空間は神秘や魔力を封じる事が出来るのか?

 

「"ああ、ヤバい…それよりホシノ、俺の左目はどうなってる?"」

 

「ん?…いつも通りだよ。どうかしたの?」

 

「"何でも無い…進もう。"」

怪異如きに神の体の一部を封じられるとは最初から思ってはいなかったが、やはりおかしい。砂に飲まれた筈なのに外傷どころか砂粒一つ付着していない。意味が分からない。

 

 

0番出口 3番出口 共に異変なし

 

[4番出口 二]

 

1番からは電気が急に消えたり、唐突にドアが開く等の簡単に気が付く異変であり難無く進んでこれた。

 

ドンドンドンドンドンドンドンドンドン 

 

ドアが内側から叩かれる…ホラーゲームでありがちなやつだ。

 

「うわっ!」

 

「"異変だ、引き返そう。"」

簡単ではあるが、恐怖を煽るような異変ばかり起きている気がする。

 

 

[5番出口 二]

 

「"ポスターもドアも床も天井も特に異変は無いな。"」

 

「うん。問題ないよ。」

 

ポスターの内容、ドア、ドアノブ、点字ブロック、蛍光灯、黒服、その全てに異変は無い。後少し…

 

 

[0番出口 一]

 

戻った…一体何処を見落した?全て正常だった筈だ…

 

「ねえ、あの数字…後一回間違えたらどうなるのかな?

 

こんな状況で間違える事に減って行く回数…不安にならない訳がない。」

 

「"分からない…けど今まで以上に慎重に行こう。"」

 

絶対に碌な事にはならない。これ以上間違える事は多分許されない。

 

 

 

0番出口 1番出口 異変なし

 

 

[2番出口 一]

 

黒服や扉には異変は無く、今回はポスターのようだ。子供が描いたハゲ散らかした男ラクガキ…それに…

 

「"アビドス砂祭り?"」

 

雪なら分かるが砂とは…それにしてもこのポスター、破れた跡が幾つもあり、それを無理矢理補修しているようでかなりボロボロだ。

 

「触るな!……あっ、あぁ、ごめん、何が起こるか分からないし引き返そう。」

 

「"…そうだな、引き返そう。"」

 

一瞬、今まで見たことが無い程鋭い目つきと殺意を向けられた。…アレはヒナに目を付けられる訳だ。

それはそうと、アビドス砂祭りは何かしらの地雷らしい。できるだけ触れない様にしよう。

 

ビリビリビリビリ

 

「………行こう。」

 

一瞬足を止めたが、ホシノは後ろの物音には目もくれず歩き始める。

 

 

 

[3番出口 一]通路前

 

表面上落ち着いてそうなホシノに休憩の提案を申し出る。脱出する為には、表面上だけでなく心を鎮め冷静にならなければ何かを見落とす可能性がある。

 

「うへ〜、おじさん眠くなって来ちゃった。そろそろ行かない?」

 

「"ああ、そうだな。"」

 

ホシノは隠し事が上手過ぎる…今は少しでも冷静になれた事を信じるしか無い

 

 

[3番出口 一]

 

チーーン

 

角を曲がるタイミングを見計らったかの様に鈴の音が鳴り響く。

 

「お葬式?あの遺影の男の子は誰なんだろうね?」

 

「"誰だろうな。"」

 

そこにあったのは通路は無く葬式会場。椅子には喪服を着たマネキン達が座っている異様な光景。

 

「"異変だ。引き返そう。"」

 

一度目は油断を誘い不意打ち、二度目は恐怖を煽り、三度目は巻き込まれた人間の記憶…では無く情報を元に心をえぐりに来る…まさか俺の葬式に参列する事になるとは…

 

 

 

4番出口 異変なし

 

 

[5番出口 一]

 

 

角を曲がる前から分かる、少し薄暗い。明らかな異変だ。

 

引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ引き返せ

そう書かれた紙が通路一面に貼られている。

 

「"引き返そう。"」

 

「うん。」

 

薄暗い通路の中心には、水色の長髪でインナーカラーがピンクの連邦生徒会の服を着た顔の見えない女がこちらを指指していた。どちらの情報を元に作られた存在かは分からないが不気味で仕方なかった。

 

 

[7番出口 一]

 

「"最後だ…分かりやすいので頼む。"」

 

「絶対に脱出しようね。」

 

曲がり角を曲がった先には…

 

「ユメ先輩!」「"──君!"」

 

その人を認識した瞬間、ブライの足は動いていた。

 

「先生、行っちゃ駄目!」

 

唐突に腕にしがみつかれた…邪魔だ

 

「"誰だよそいつ…邪魔だから手ぇ離せよ!"」

 

「力強っ!私達は別々の人が見えてる、だから──」

 

本当に邪魔だ…

 

 

 

「兄ちゃん!」「だっこして。」「見て、上手でしょ!」「かっこいいやろ!」「兄ちゃん!」「外いこ!」「やだ!ボールで遊ぶ!」「兄ちゃん!」「風呂入ろ!」「兄ちゃん!」「ゲームやろ!」「強いー!」「もうやらん!」「兄ちゃん!」「一緒にお菓子食べよ!」「食べ過ぎ!」「もう食べんで!」「ママ……何処?」

「うわああぁぁん」

 

 

いつか聞いた…いつも聞いていた弟の声が聞こえて来る。

 

 

「"弟が泣いてんだ、俺が行かねぇと!"」

 

パン!

 

痛くも痒くも無い平手を俺に打ったホシノの顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

…仕掛けも仕組みも何が起きているのかも分かってる。……それでも何故こんな状況で…何でこいつは

 

「今度、皆で水族館に行くんでしょ!それにその人は多分もう……」

 

分かってる…分かってる…

 

「"ああ、分かってる………!"」

 

もう会えない事なんて…

それでも俺は…もっと頭を撫でてあげたかった…もっと褒めてあげたかった…もっと遊んであげたかった…風呂もゲームももっと一緒にやりたい事が一杯あった…せめて、中学に入学するまでは見届けたかった………それなのに俺は………けど

 

「"…ごめん、ホシノ。引き返そう。"」

 

「うん。」

 

涙や鼻水で顔がぐしゃぐしゃな俺達は引き返した。

 

 

[8番出口 一]通路前

 

「"次でゴールの筈だが、一度休憩しよう。お互い酷い顔だ。"」

 

一応持っておいたポケットティッシュをホシノに差し出す。

 

「うん…」

 

ポケットティッシュを受け取ったホシノは暫くして膝を抱えて縮こまる。

…前世に未練があるのは悪い事だとは思っていないが、死を受け入れられずにホシノまで危ない事に巻き込みかけた自分を本当に情けなく思う。

 

「"…なあ、ホシノ…頭を撫でても良いか?"」

 

「良いよ…」

 

ホシノは依然として膝を抱えている為、顔は下がっており何を考えているのかは分からない。

 

弟にも弟の代わりにされたホシノにも失礼極まりない行為だという自覚はある。それを理解した上でこの行為で安心を得る俺を俺は心底軽蔑する。

 

「"ごめんな…"」

 

「…………」

 

 

[8番出口 一]

 

割と長めの休憩を終え、角を曲がれば先程までの通路は無く何の変哲もない駅の出口がそこにはあった。

 

「"しゃーい!脱出じゃい!"」

 

空元気を出し、いつもの調子で歩き出す。

 

「うへー、帰って寝たいよー。」

 

きっと、ホシノもそうだ。それもそうか…

 

「"…さっきの事について俺は話す気は無いし、お前の抱えている物も無理に話を聞く気は無い。でも、どうしようも無ければ誰かを頼ってくれ、アビドスの奴等でも、頼りないけど俺でも良い。…こういうのはカイザーの件の時に言っとくべきだったが…"」

 

好きな魚を見ていても自罰的な思考に陥る奴だ、17にしてかなり多くの物を溜め込んでいるんだろう、それが爆発してからでは遅いのだ。アビドスの一件のような事が再発されたら堪ったものではない。

 

「その話を出されると弱いねー。…うん、分かったよ。」

 

過去のやらかしを持ち出されたホシノは、バツが悪そうに左頬を掻きながら渋々同意する。

 

「"よろしい。"」

 

「先生もおじさんを頼ってみてもいいんだよ〜?」

 

先程までバツが悪そうにしていたというのに…変わり身の早い奴だ。

 

「"…マジで?超ありがたいね。"」

ネルとの決闘代理人として頼らせてもらおう。

 

 

 

──────────────────────────

アビドス

 

8番出口から抜け出すと、ホシノのヘイローが正常に出現した。魔法も使用可能になった…抜け出せたという認識でいいだろう。

 

「"うぅー寒む……さて、帰りますかねぇ。"」

 

抜け出せたと確信し、気を緩めた瞬間全身に寒気が襲ってきた。あそこで幾ら彷徨ったかは知らないが日はとうに沈んでいたようだ。…今日は流石にゲームなんてできそうにないな。

 

「"じゃあな"」「おじさんの家はこっち」

 

「"え?"」「ん?」

 

「もしかしてここで解散?か弱いおじさんを夜中に一人で帰らせるつもりなの?」

 

このおっさんは何を言っているんだ?

 

「"自主的にパトロールして不良をボコせる奴がか弱い訳無いだろ。"」

 

「あっ、急に持病の貧血がっ!目眩がするから家まで送ってほしいな、先生。」

 

「"聞いた事ねぇし、クッソわざとらしい!あっ、手ぇ離せ…って力強っ!おい、全然元気じゃねぇか!"」

 

 

 

腕を掴まれ30秒くらい引きづられたが、ホシノは止まる様子が無さそうだったので大人しく一緒に帰る事にした。

 

 

八番出口の怪異は誰にも信じられそうにないので効果があるのか分からないが、8の左隣に 0. を勝手に付け加えておいた。怒られたらその時はその時だ。

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

流行には遅れて乗るタイプの人間なので最近になってようやく葬送のフリーレンを見始めました。今の所、クヴァールさんとヒンメルさんがお気に入りです。

 

そういう事なんでアインザームと8番出口とジャンケン小僧を悪魔合体させてブライ君を少しだけ精神的にイジメたくなりました。

ブルアカ本編にもペロロジラとか言うフィクションの具現化がいるから悪用されるんだ。巻き込んですまんな、ホシノ。

 

因みに2回目の失敗の理由はゲーム本編にもある天井のシミです。あんなん気付くかよって感じですよ。

 

間違える度にホシノのヘイローの一部を消失させようかな…とか、8番出口と勝手に誤認しただけで本当は上位互換の別の怪異でした…とかやりたかったけど、知能の低い上に魔法も封じられたクソザコメンタルのブライ君では無理だと判断してこうなりました。

というか、前世に一切未練が無い他の一般転生者が逆に怖い。

 

 

アンケート機能のお試しです。皆様はブルアカの最高レアリティの出る封筒は何封筒と言っていますか?

  • 紫封筒
  • 虹封筒
  • ピンク封筒
  • 百鬼夜行のピンク髪メカクレモブを実装しろ
  • ベアトリーチェはよく見ればシコリティ高い
  • いいからお前は全国のタカハシさんに謝れ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。