透き通るような世界観に混じる逸般不純物! ネイビーアーカイブ 私のミスですか?   作:ゴジマツリ=ユーリエフ

91 / 129
90.反省無き半生のDIEジェスト

 

 

同情無き同情は同情とは言わず、同情する同情を同情と言う。

 

色々な意味で信用できない語り手タグ発動!!

 

タイトル通り、ブルアカ要素は殆どないぜ!!

 

──────────────────────────

 

 

 

「やはりあなた様は、今こそが確実に美しい…………」

 

「"どうした急に?何かあったのか?"」

 

頭でも打ったのか?いや、ワカモは最初から頭がおかしかったな。何はともあれ今回はアクリルがあってマジ感謝だ…………感謝することか?

 

「いえ、あなた様を包み隠していた眼帯の下に私の想像する以上に美しい物が隠されていたのでつい………私はてっきり…………。」

 

「"ただのものもらいで大袈裟だなぁ…………。"」

 

適当に誤魔化した直後、ワカモは耳を後ろに倒し尻尾を逆立てた。

 

「…………私、嘘は嫌いです。」

 

ワカモさんはオコらしい。

 

「"そりぁ悪かったな、これからは気を付けよう…………まあなんだ、俺の居た場所の文化や風習的に隠すべきもんだったってだけだ。"」

 

「!!…………も、申し訳ありませんでした、そうとは知らず不快感な思いを………ど、どうか嫌わないで下さい!」

 

尻尾が一瞬でヘタった。

 

「"俺もよく知らずお前に不快な思いをさせたんだ、ここはお互い様って事にしようぜ。"」

 

「ありがとうございます!」

 

感情がジェットコースター

 

「"かまへんかまへん…………で、何で分かったんだ?"」

 

「眼帯の年季です、2日前と7日前などに着けられていた眼帯はかなり使い込まれたような物でしたので、ものもらい等の感染症の類では無いと思いまして。」

 

「"なるほどなぁ………。"」

 

服装に拘りが無いせいで碌に考えてなかったな。

 

「あれほどの年季が入った品、となれば、あなた様の思い入れのある大切な物である事は必然!それを私は…………やはりこの一件、」

 

「"はいはいステイステイ………アレはただの贈物だったから使ってただけだ。"」

 

「…………大切な物では無いのですか?」

 

「"…………さぁ?大切なのかそうでないのか………どうなんだろな。"」

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

初めて死んだのは確か、6月の中旬頃……

 

入学早々にアホやらかして、正直行きたくない学校もバイトも無い休日。ケチな俺はバイトで稼いだ5000円をとスマホとワイヤレスイヤホンしか入って居ない鞄を持って、往復3キロの道のりをバスを使わず歩いていた。

 

目的地はもちろん、絶賛セール中のゲームショップ。

目的は2ヶ月後に控える弟の誕生日プレゼントとして、セール中の弟が欲しがっていた2作品ぐらい前のハイパー鞠男を購入だった。どうしようもなくケチな兄ですまない。

 

店まで残り300メートルの十字路に差し掛かったタイミングでイヤホンから2シーズン前の最早聴き飽きたアニソンが流れ始めた。

 

さっさと飛ばそうと鞄を探りながら十字路に踏み入った瞬間、激しい痛みと共に俺の体は宙を舞った。

 

宙を舞う最中に見えた高齢者ドライバーのガン開いた目と半空きの口元を認識した瞬間、自分の死を悟ったのか、俺の世界はスローモーションに動き始める。

 

そんな事が起きようとも、解決策など思い付くはずもなく、自立歩行も出来ない程に骨や内臓にダメージを受けた今の俺には何の意味も成さない。

 

こんな時に浮かんで来るのは「あの時何であんな事言ったんだ」とか「反抗期の時に理不尽にあたってしまった母への謝罪をしておくべきだった」とか「日常的に感謝の言葉を述べておくべきだった」とか「今日はバスに乗っておけば」とか今更どうしようもない後悔ばかり。

 

そんな後悔も落下とその際の接触によって折れた骨達が内臓をかき混ぜ始め事によって立ち消えた。

 

永遠にも感じられるその一瞬に俺の体は生きる事を諦め、スカスカの走馬灯(エンドロール)が流れ始めた。

 

楽しかった瞬間もそうでない瞬間も、その全てを激痛で上書きするように車輪はゆっくりと回り続け、息絶えるまでの数秒間、俺は後悔に苛まれ、ただただ生を渇望していた。

 

 

………とまあ、何処にでもあるつまらない話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな生き汚さが故だろう。

 

 

 

「無」という表現が適切としか言い様の無い場所で姿は見えないが自分の事を「女神」と名乗る者に力をもらい、見知らぬ世界で生を受けた。

所謂チート系異世界転生というやつだ。

 

 

 

神がいるのならば死後の世界とやらで家族を待たせて欲しかったものだが、折角もらったチャンスだ。

魔法や魔物が存在する世界と言っていたし、今生もそれなりに頑張ろう。

 

 

と、思っていたのだが、やはりファンタジーといえば中世といった感じにマトモに科学が発展している訳も無く、俺の母は俺を産み落とした時に亡くなってしまったらしい。

 

そのせいか父は殆どネグレクトだし、他の兄姉や正妻の女も妾忘れ形見である俺を疎ましく思っているようで、完全に家族ガチャはハズレ。

それでも父は一応領地持ちのお偉い貴族さんらしく家ガチャはアタリのようだ。

 

まあ、元よりコイツラを家族と思うのは無理があったし丁度良い。

 

 

 

 

なんてのは馬鹿らしい勘違い。こいつらは後に"炎獄の冥主"とも呼ばれた者をこの世に産み落とした大罪人と呼ばれる愚かな一族だ。

 

ま、俺の事なんだけど。マジで二つ名が多過ぎ問題。

 

 

 

 

 

この俺、ネイヴ・フォン・ローレルは体を満足に動かせる様になってからは現代ではあり得なかったファンタジー要素に触れる為の下準備をした。

 

*1

 

ネグレクト故に期待もお貴族様のお勉強も娯楽も無いことが好転し、面倒臭がりで3日坊主な俺でも筋トレは続いたし、いつもはチュートリアルすら読み飛ばすというのに魔術に関する事は全力で取り組めた。

 

 

………基礎作りが上手く行ったというだけで、そっからは紆余曲折………うん、本当に色々あった……本当に………

*2

 

 

 

 

 

そして時は流れ12の初秋、ここで俺の第二の人生の転機が訪れた。

 

 

 

 

2度目の死

休む暇が無かったとはいえ完全な油断だった。

いや、慣れ始めた事による油断の方かもしれない。

 

出会いを求めるには不適切な場所(ダンジョン)の中層、退くも進むも面倒な場所。

敵の数が多かったとはいえ、死亡確認を行っていない敵の近くに避難したのは失敗だった。

足に攻撃をもらい、冷静さを失い、そこからはただの転がった巻藁の様に一方的だった。

 

 

 

後はただ、家族との再会を死後の世界で待つだけ……そう思えば特に後悔は無かった

 

 

……………まあ、それが出来たら苦労しなかったんだが。

 

 

 

 

 

 

 

右足に走る痛みと聞くに堪えない騒音で目を覚ます。

痛みの方向に目をやれば一匹の瀕死の魔物が必死に叫びながら俺の足にナイフを何度も突き立てていた。助かる見込みがない為か、彼奴等に仲間意識がない為か、周囲を見渡せどその一匹だけだった。

 

それはそうとこの12年、色々と傷を負う経験はあったが痛いものは普通に痛い、俺は左足に力を込め、右足にしがみつく魔物の腹に振り下ろし、騒音を止んだ。

 

静かになったところで俺は思考を巡らせ、さっきまでの事を思い返した。

 

何度計算しようと、とんでもない速度で歩くたかし君の様に違和感しかない回答だが、何度思い返そうとも間違い無く「死んだ」という結論にしか至らない。

 

捨て問は捨て問、正しい答えに辿り着けないのがわかった今、帰還する他に選択肢は無い。

 

そう思い、腹筋を使って上体を起こし、何の違和感も無く立ち上がったところで、またしても違和感に気が付いた。

 

穴だらけであるはずの足に痛みは疎か、まるで満足のいく睡眠がとれたかの様に頭はスッキリしていて先程までの疲労感が一切感じられない。

 

 

そこで初めて俺は超再生に目覚めた事を理解した

と、勘違いしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

3度目の死は翌日の夕暮れ、俺が継ぐ事の無い領地に戻った時に訪れた。

 

 

 

大衆の前、絞首台に首を縛られ、後は落とすだけという所で目が覚めた。

 

最後の記憶は絶縁を言渡しながら殴り掛かった来た現父親にカウンターをキメ、街を歩いていると何故か襲い掛かってきた奴隷商達だか人攫いだかを返り討ちにした後、なんやかんやで事情聴取を受けた辺りだった。

 

 

何かを盛られたか、あるいはガスか………今となっては分からない。

 

 

 

 

 

 

それでも捕らえら処刑されそうになった理由ははっきりしている。ネイヴの体で死んだ時に変色した左眼だ。

 

この時に掛けられた言葉で当時の俺は自分の体に起きた変化を自覚した。

 

 

 

 

まあ、左眼の変色如きでこうなったかというと、歴史の本に恥ずかしげも無く書かれてあった「亜人種掃討」の名残りの様なものだ。

 

先天的な奇形児や多胎の母子、虹彩異色症などを獣や畜生と見なし、世に出回ろう者なら例外なく後ろ指を指し、何か気に触れる様な事があれば処分するというのがこの世界の"当たり前"のせいだ。

 

そして今回の様にその処分対象が領主の息子ときた、そりゃあもう大騒ぎするのは必然………………加えて俺はそんな身分になり下がったにも関わらず"人間様"に暴力を振るった。

 

この世界で"害獣"を殺すのには十分過ぎる理由という訳だ。

 

 

 

 

 

それから何度死んだのだろうか、次に意識を取り戻したのは紅い炎に包まれた街のド真ん中。

都合良く焼き切れたロープと都合良く燃え尽き灰になった絞首台………

 

正に奇跡。四方八方から絶叫と俺に対する怒号が聞こえる中、俺だけは悠長に熱された灰の上で夜空を見上げていた。

 

 

体を起こし、目の前に現れた光景は正に地獄という言葉が相応しい惨状。

 

これを引き起こしたのは誰なのか………覚えは無いが頭でも体でも分かっているはずなのに、この時の俺は全力で否定した。

 

 

 

「俺じゃない、俺じゃない」と心の中で否定しつつ、自分で撒いた炎を消去する事無く逃げ出した。

 

 

 

行く当ても何も無く、ただひたすらに歩き続けて森の中、どれほどの距離を歩いたのか、何日経ったかは分からない、飲み食いする気になれず何度か餓死や水不足による衰弱死をしたが、あまり進んでいなかったらしく追手に遭遇した。

 

 

「見つけたぞ害獣。」

 

よほど自信があったのだろう。追手は1人、俺より歳は少し上の茶髪の剣士はわざわざ声を上げ腰の剣を抜く。

 

まあ実際、今と比べれば格段に弱かったのは間違い無いのだが……。

 

こいつは随分とご立派な奴だった。

 

「知っているか害獣。貴様のせいで貴様の家族、ローレル家の者は先日処刑されたぞ。」

 

模範たれ、と世を乱す害獣の存在が許せず居ても経ってもいられない程に真面目で

 

「それも当然の事だよな。貴様という人様に危害を加える害獣を産み育て、手綱を握れずあの始末………。」

 

「…………そうか。」

 

「そうか?………やはり貴様には人の情など分かるまいな…………まあ、良い……どうあれ貴様はこれからも不幸を振り撒き続けるだろう…………だから貴様はここで死んでおけ、それが世のため人のためだ。」

 

「知らねぇよ…………先に害したのはお前等だろ。」

 

「当然の事だろう、貴様等はこの世に存在することを許されぬ異物なのだからな。」

 

 

化け物相手に1人で挑むほどに勇気ある騎士様

 

 

 

 

言い逃れは出来ない、俺は初めて自分の意思で人を殺した。

 

「存在が悪?生きてるだけで罪?ざけんな!」

 

「死ね!死ね!死ね!死ね!死ねっ!」

 

二度と不快な声が聞こえないよう、殺した後に何度も何度も何度も何度も喉元にナイフを突き立てた。

 

服が自分の血か相手の血か分からないほどに赤く染まっても止まる事は無く、血で染まった赤い雑草が見えてくるまで何度も何度も繰り返した。

 

 

 

 

しばらくして俺はまた行く当ても無く彷徨い始めた。

ただ逃げたかった、あの惨状と目の前の現実から。

そんな事をしても無意味だというのに。

 

 

それでもその時の俺は餓死や衰弱死を繰り返しながら進み続ける。そして死ぬ度に俺の体は満たされた状態で復活する。

 

 

 

それを4回終え、意識が戻り立ち上がろうとしたその時、

 

「おいおいおいおい!大丈夫かよ、おい!」

 

横から狼狽した老人のマヌケな声が響いた。……恐ろしく語彙力無いな。

 

「うおっ!何だ生きてたか……全く……ビビらせおって…大丈夫か?水飲むか?」

 

「いらん、寄るな。」

 

当然、メンタルブレイク中のブライさん………いや、ギリギリネイヴさんは顔も向けずにスルーしようと歩きだした。

 

「ちょ、待てよぉ!そんな血だか泥だかでボロボロな状態で何処に行くんだ?」

 

しかし、ジジイは食い下がってきた。

 

「関係ないだろ。」

 

「備えあれば憂い無し、何処に向かうにせよ道端で倒れるようじゃ目的は果たせんだろう。近くに儂の住んでる村がある、ちょっと寄って行きんしゃい!」

 

「うるせぇなジジイ、喰い殺すぞ。」

 

堪らず振り返り両目を見せながら脅したのだが………

 

「おお、そうか、腹が減っていたのか、それじゃあついて来い、儂が食うはずだった物を用意しよう……儂が食うはずだった物をな!」

 

相手はとうしようもないイカれ野郎だった。

 

見た目こそ、深いシワだらけの顔と真っ白な髪と歳の割にあまり曲がっていない腰とコートの上からでも分かる全身についたそれなりの筋肉……良い歳の取り方をした老人だった………見た目だけはマトモだった……本当に見た目だけは。

 

「恩着せがましいジジイだ。飯はいらん、死にたくなければさっさと村へ帰るんだな。」

 

「腹が減った言ったかと思えば、飯は要らんと…………全く……これだから最近の若者は………お?何だ?お前の飢えとるのは本当に飯なのか?え!?」

 

「何なんだお前……常識とかねぇのか?」

 

「困ってる人がいたら助ける、んな事子供でも知ってる常識だろ?」

 

「そう、じゃあ俺は対象外だ、困ってもねぇし人でもねぇからな。」

 

言うまでも無くこの時の俺に人権なんて物は存在しない。このジジイの発言に俺はカテゴライズされていないし、世間的に見れば貶されこそすれど、褒められる事ではない。

 

「ん?……ああ、確かお前ほどの年齢の者はそういうのに憧れるお年頃なんだったな。」

 

「…………マジでマトモじゃねぇな。」

 

「いやいやいや、儂ほどにマトモな人間はそうそうおらんぞ?お前の危惧しているのはその左眼だろ?んなもん、儂に言わせりゃ、だからどうした?って話だ。」

 

「は?」

 

一度人を殺したら「殺す」って選択肢が日常に入り込む。この考えはどうやら正しかったようで、この時の無神経な老人には殺意を覚えた。

 

「生き物は本能的に自分達とは違う異質な物を排除する。だがな、それは獣のする事だ。儂は人間だ、見た目に差異はあれど言葉を解し心を解する者を同胞だと考えている。」

 

ジジイはこのように自分の考えこそが正しいと信じて疑わない傲慢な奴だった。

 

「そんじゃあ、そんな獣のだらけの世界で俺という異物を助けるメリットは何だ?」

 

「さっきも言ったろ?それこそが常識であり人の常だからだ…………後な、今年は作物が不作で儂の村マジピンチ!このままじゃ安全に冬越せない!!だから人手が欲しいんだよぉ!狩猟のよぉ!」

 

いい歳こいたジジイの本気の地団駄を見たのは後にも先にもこれが最後だろう…………いや、結構みたな。

 

「滅茶苦茶打算的じゃねぇか。」

 

「当たり前だ、この世に無償の優しさなんぞ存在するはずが無いだろ。」

 

「支離滅裂にもほどがある………さっきの発言とまるっきり矛盾してんぞ。」

 

「矛盾こそが人を人たらしめるのだ………そして儂は過去は振り返らん主義だ。」

 

「めんどくせぇ………良いかジジイ、お前がどうあろうと実際問題俺はこの世界では駆除対象だ、集団生活なんぞ出来るはずがねぇだろうが。」

 

「ハァ〜〜〜〜…………す〜ぐ思考停止、これだから最近の若者は………足らぬ足らぬは工夫が足らぬと言うだろう!ちょっと待ってろ。」

 

目の前のジジイはコートを脱ぎながら膝を折り、地面にコートを置いた後にナイフで一部を切り裂いた。

 

「ほらよっ、今度マシなの作ってやっから今は取り敢えずこれでも巻いとけ。」

 

そう言ってジジイは手に持った即席の眼帯をこちらに投げつけて来た。

 

「臭そう。」

 

「今のお前よりマシじゃい!!…………別に片目の潰れた者なんぞたいして珍しくも無い、向かいの家のアンドリューさんだって熊に右足を持っていかれとるしな…………………お前に不便をかけるのもおかしな話だが、それさえ外さなければお前を冷遇する者はおらんよ………どうだ、儂らの村に来る気は無いか?」

 

「……………」

 

「冬の野宿は辛いぞぉ〜?そりゃあもう、冬の野宿と同じくらい辛い!」

 

「……………分かった、春まではお前の村に滞在しよう………何かあっても後悔すんじゃねぇぞ?」

 

「おお!やっと来る気になったか!儂はルークだ、よろしくな。」

 

「ネイ…………誠司だ。」

 

「ほぅ、セージというのか……取り敢えず儂は担当区域の罠を巡回した後に村の者に「儂の親戚のプロ狩猟が越冬の手伝いに来た」という設定で話は通しておく。お前はその内に水浴びでもしとけ。」

 

「鹿やらイノシシなんかの狩りなんぞやった事がない。やってたのは基本的に魔物だ。」

 

「そうか………まあ、似たようなもんだろ!それに狩る方法は基本的に罠だしなんの問題もない!」

 

「それ人手増やす意味ねぇだろ………本当救いようのねぇバカだな、運任せで越冬が出来るかよ…………はぁ……狩猟対象の弱点部位と後処理が楽に済む殺し方を教えろ。」

 

 

こうして俺とジジイの村での二人暮らしが始まったのだが………思い返してみれば結構チョロいな俺………。

 

 

 

 

 

 

だがまあ、村での生活はそれなりに楽しかった。

 

「よ〜し、罠回収して帰るか。」

 

「回収?つか早くねぇか?もうボケたのかジジイ。」

 

「もう越冬分のノルマは達成したからな、これ以上は必要ないし、狩り過ぎて来年に影響が出りゃ意味がない………後、一言余計だ。」

 

「人口が少ないとはいえ早すぎない?2週間も経ってないと思うんだが、本当に飯に困ってたのか?」

 

「いや、あんなポンポン魔法を連発しながら狩るとは思わんだろ………初日に儂が男共を呼び寄せて血抜きフェスティバルしてたのをもう忘れたか?」

 

「俺の狩り方がおかしいって……下手過ぎるって意味だよな?」

 

「的確に心臓を貫いておいて何言ってんだお前…………。」

 

なろうのテンプレセリフも言えたし。

 

 

 

 

 

「ちょい出てくるわ、低温火傷には気を付けろよルーク。」

 

「!!……デートか?デートなのか!?」

 

「どうしてそうなんだよ色ボケジジイ。」

 

「否定はしないということはそうなんだな!………となると相手はカミラか?それともアレサか?…………いや、最近お前の様子を見るに相手はシスカだな!」

 

「フリッツと釣りに行くんだよ!バーカ!」

 

「なるほど、そっちの趣味か♂」

 

「違げぇよ!俺はノーマルだ!」

 

「おいおい、異性間恋愛を【ノーマル】称するのは同性愛者への差別にならんか?」

 

「めんどくせぇな………。」

 

「………で、本当のところ誰狙い?」

 

「修学旅行かよ………」

 

「しゅうがくりょこう?」

 

友人も気になる人も出来た。

 

「…………あのなぁ、俺は春には出て行くんだ、誰狙いもクソもあるかよ………それにこの呪われた血を残す訳にはいかない。」

 

まあ、今の自分の立場と呪いでしかない不死の能力のせいで踏み出そうとは思わなかったけど。

 

「ま〜だ、そんな事を………春までとは言わずもっと居れば良いだろうに、それによぉ………お前童貞のクセして何反出生主義なんてもんに目覚めてんだ、酸っぱい葡萄か?玉砕が怖いだけの腰抜けヘタレか?」

 

「うるせぇ!」

 

「後なぁ、お前が居ないといったい内の湯は誰が沸かすんだ!もう儂はお前の魔法無しでの洗体なんぞ面倒でやりたくないぞ!風呂キャンだ風呂キャン!」

 

「2日入らねぇこともザラだろうが!」

 

「ハッハッハ!」

 

「何も面白くねぇよ!」

 

「そうか…………だがなセージ、儂は本当に春までとは言わずこれからもこの村に住んで欲しい。だからもう一度真剣に考えてくれないか?」

 

「……………分かった。」

 

「行ってらっしゃい、晩飯までには帰ってこいよ〜。」

 

「おっけー、いってきます。」

 

「誰とイチャコラしようと構わんが、婚前交渉はマジでイカンからな!」

 

「しねぇつってんだろクソジジイ!」

 

 

 

 

 

 

 

結局俺は春先以降も村に滞在する事は無かった。

それどころか、俺はこの村で冬を越すことすら出来なかった。

 

「爺さん、俺は今からこの村を出る、世話になったな。」

 

「は?どうしたんだ急に。」

 

「水浴び中をカミラに見られた。」

 

バレない様に誰も来ない様な森の中で済ませていたにも関わらず、そいつは現れた。

 

「カミラもお年頃だからな、そういうのにも興味があるんだろ、儂も若い頃は────。」

 

「今はふざける場面じゃねぇだろ。目が合ったんだぞ目が!」

 

「夕暮れ時だ、それにあの娘は目が良くない、見えてないという可能性も…………いや、お前が安心してこの村に居られるように儂が話をつけて来よう。飯は適当に作って適当に寝てろ。」

 

 

 

 

 

俺はここで黙って村を出て行くべきだった。

 

その日、ルークが帰って来ることは無かった。

日を跨ぎ、安否が心配だったが、情けないことに俺は人目が怖くて外に出てルークを探すことが出来きず、そして案の定、その日もルーク帰って来ることは無かった。

 

 

そして更に次の日、その日まで一睡もせず一歩も外に出ずルークの帰りを待っていた。

 

正確な時間は分からないが、日付が変わり皆寝静まっているであろう時間帯、いつもの静けさは無く窓の外には燃え盛る炎が見え、慌てて家から飛び出した。

 

周囲を見渡せば何処もかしこも炎、炎、炎、背水の陣なんて生易しいものではなかった。

 

この窮地から村民を助け出せる唯一の可能性のある俺は前日まで気にしていた事を忘れたかのように周囲の民家の扉を叩き避難を促したが一軒たりとも返事は返って来ることはなかった。

 

 

 

つまりはそういう事だ。

 

結局、ルークが裏切ったのかどうなのかはキヴォトスに来た以上確かめようのないことだろう………ま、今はもうどうでも良いが。

 

 

そしてこの大掛かりな放火の犯人は害獣を駆除しに来た討伐隊の奴等だった。

 

 

俺はまた殺した。自らの死体を積み上げながら1人残らず殺した。

 

俺が無惨に殺した立派な騎士様の言う通りだったという訳だ。

俺はこの世界にとって存在そのものが悪であり、不幸を振り撒く存在に他ならないということを自覚した。

 

 

 

今の俺が出来たきっかけは、多分この一件があったからだと思う。

 

 

普通に生きる事も死ぬ事も出来ない事を知らしめられた俺は自暴自棄になり、村中にある民家の尽くを燃やし畑を荒らし、生き残った家畜を殺し回り、最後に自らを殺した。

 

何度も何度も何度も何度も何度も、窒息死、溺死、焼死、感電死、服毒死、轢死、考えられるパターン、シチュエーションを全てを試したが真に死ぬ事は出来なかった。

 

 

 

そして俺はある事に思い至った。

 

俺は俺が誰かに迫害されないぐらい強くなれば良い。

皆がひれ伏し、敵意を持つ事が愚かしいと考えるほどに。

 

神を殺し、この目を抉ろう。

いつか俺が普通の死を迎える為に。

 

バカであろう。深く考えず、本能のままに。

そうすればこの現状でも少しはマシになるだろう。

 

 

 

そこからはネイブという名と親からもらった誠司という名も捨て、自らを無頼(ブライ)と定義し、ひたすらに力を求めた。

邪道も王道も可能性がある物は全て試した。

 

そして辿り着いたものの一例が【身体強化を応用した強制的な筋肉の破壊による筋トレ】と【電流で自らの脳のリミッターを外すクソナードモード】だ。

 

 

 

まあ、結局、途中で夜中に自分の生首をそこらの街に放って、害獣騒ぎの収束を図ったり、一向に見える気配の無い神に萎えて賢者モードに入ったりした訳で…………

 

 

そうして残ったのが人外じみた底無しの魔力と腕力、不名誉な不名誉な二つ名達と希死念慮………最高に虚しい最強の完成ですわ。

 

 

 

 

そこから更に時は流れ、俺の知らぬ間に拉致られ異世界転移。

それも基本的に俺が文字通りの雑魚として扱われるレベルの人外魔境。

 

そしてそこで我が同類より送られる数ヶ月振りの死。

 

 

 

んで、意識が戻ったと思えば、悪路に揺れる救急車の担架に全裸で寝かされた俺とその脇腹で鼻を啜って泣きじゃくるモップの様な毛量の少女…………俺にどないせーちゅうねん………。

 

とりまチ◯コでも光らせとくべきか?コンプラ的に。

 

 

*3

 

 

──────────────────────────

 

 

 

こりゃあ間違っても人を導く立場の職には就けませんわ!

 

 

それはそうと花言葉は便利ですね。(2度目)

 

ルークさんが聞き間違えたセージという植物の花言葉は「知恵」「尊敬」「家族愛」「長寿」だそうです。

ま、セイジとも言うらしいんで間違ってはないんですが。

 

サイトによって表記は様々でしたが、セージは昔のローマでは「不老不死のハーブ」や「不老長寿のハーブ」なんて呼ばれ方をしていたそうです。現ブライ君、旧ネイヴorセイジ君にピッタリですね!

 

 

 

それとルークさんの末路は想像にお任せします。

 

セイジ君を売った。悪行を知って売った。異端者として村民に殺された。それとも普通に逃げ出した。

 

それぞれで好きに解釈して下さい。

 

因みに少し前までは悪行を知って村の為に薬を盛って討伐隊に差し出すという話を書く予定でした。

 

そのルートでは、人を殺した害獣を匿った罪でルークさんは情報提供したにも関わらず、異端者として討伐隊の皆さんに殺されます。

 

そんで、討伐隊をセイジ君が殺し、セイジ君はルークさんの死体を踏みつけながら死体に罵りまくる予定でした。

 

 

 

まあ、どのルートだったとしても村民の方々が裏切るというところだけはどうやっても変わりません。

 

 

酷い話じゃねぇか、酷い世界だろ、ここは!!

 

 

 

*1
knave(ネイヴ)………悪党や下僕などの意味を持つ単語。間違っても自分の子供に付ける名前じゃないよ!

*2
ボッチになったり誘拐されたり雑魚相手に滅茶苦茶ビビったり

*3
おねんねしてたから汚珍珍はギンギンですよっ!

アンケート機能のお試しです。皆様はブルアカの最高レアリティの出る封筒は何封筒と言っていますか?

  • 紫封筒
  • 虹封筒
  • ピンク封筒
  • 百鬼夜行のピンク髪メカクレモブを実装しろ
  • ベアトリーチェはよく見ればシコリティ高い
  • いいからお前は全国のタカハシさんに謝れ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。