大皿でピーマンを   作:灯火011

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美味しいピーマンは食べるだけで幸せです。


①ピーマンを輪切りにします。

②ごま油でさっと炒めます。

③醤油と味の素で味を付けてどうぞ。

シンプルですがナイスなピーマンです。ゴマとかをかけても美味しいです。


ピーマンは今日も今日とて旨味が強い

 後から考えてみれば簡単な事なのだけれど、そういう物が一番難しい。四月一日トレーナーは、そう思いながらトチノステラの走りを見ている。

 

『どう?四月一日トレーナー』

「そうだね。体幹がどうもブレるかな。腕の振りが少し()()()のと、()()は、上体を倒し過ぎかもしれないよ」

()()()()、意識して走ってみるよ。ありがとね』

 

 四月一日は専属トレーナーになったわけではなく、トチノステラらを含む、自主練に励むウマ娘達を見ている数多のトレーナーの一人として接している。ただ、その中でもトチノステラから助言を求められることも多く、実質は専属トレーナーに近い。

 

『で、それはそうとして、答えは判った?』

「……いや、まだ」

『そっかー。ま、頑張ってね。私は待ってるからさ』

 

 四月一日を一瞥すると、トチノステラは勢いよくコースへと駆け出していく。その姿は、確かに腕をコンパクトに振り、上体を起こした走り。四月一日の教えの通りだ。

 

「お、四月一日。ついに専属になったのか?」

 

 同じように自主練を見ていた中堅のトレーナーから、揶揄われるように声をかけられると、苦い顔を浮かべてから口を開く。

 

「いや、まだ。ただ、少しは気に入られてるみたいですが」

「そうか、進展ありだな。頑張れよ」

 

 中堅トレーナーはそう言って、別のウマ娘の元へと向かっていった。その背中を見ながら、四月一日は天を仰ぐ。

 

 

 自主練の後はシャワーを浴びて、夕食を食堂で摂るのがウマ娘達の日常だ。それはトチノステラも例外ではなく、今日はチンジャオロースの定食を喰らっていた。

 

「四月一日トレーナー、毎日ステラの事みてるよねー。もう専属契約していいんじゃない?」

 

 隣に座り、シャウエッセンを食べながら、ロマンリバーが茶化すようにそうトチノステラにそう告げた。苦笑を浮かべたステラは、チンジャオロースの中のピーマンを器用に集めて、口に運ぶ。一噛み、二噛み。彼女の顔には満足そうな笑顔が浮かぶ。

 

「聞いてる?」

『聞いてる聞いてる。四月一日トレーナーは良い人だけどね。でも駄目』

「わがままー」

 

 うへー、とロマンリバーは肩を竦める。それを見たトチノステラも、苦笑を浮かべていた。そして食事を食べ進めた彼女たちであったが、ふと、ロマンリバーがある事に気づき、言葉を発した。

 

「そういえば聞いてなかったけど」

『ん?』

「ステラの目標レースって何?」

『ん?あれ、言ってなかったっけ』

 

 トチノステラの目が点になっていた。そういえば、誰にも告げていなかったかと。それならば、同室のリバーにならば話してもいいだろうと思い、トチノステラは考えを口にした。

 

『トチノオーとのマッチレース』

 

 言葉を聞いたロマンリバーの目が点になった。そして、自然と聞き返すように言葉が口から零れる。

 

「マッチレース?」

『そ、1VS1。トチノの文字を持つウマ娘達は彼女の後追い、なんて呼ばれているの知ってるでしょ?だから、それを覆したくてさ』

 

 つまりは、トチノステラが、トチノオー越えを目指しているという事に他ならない。

 

『で、目標のために、凱旋門は絶対なんだよね』

「凱旋門?」

『そ。そこを獲らないと、超えるための下地すら認められないから。そして最後、トチノオーとのマッチレースに勝って、実績を示そうかなぁ、って』

 

 なるほどなぁ、とロマンリバーは頷いた。確かに、凱旋門を走った後、一時代築いた英雄とも言えるウマ娘に、マッチレースで勝ったとなれば実績は十二分だろう。

 

「トレーナーさん、たどり着けるかな?」

『どうかなー?でも、ワガハイは信じてるよ』

 

 楽し気に笑うトチノステラ。だが、ロマンリバーは頭に疑問が浮かぶ。

 

「でも、トチノオーさんって引退してしばらく経つよね?そんな彼女とレースをするの?」

 

 当然の疑問であろう。これから成長期を迎えるウマ娘と、既に全盛期を超えてしまい衰えたウマ娘。贔屓目にみても、前者の方が有利なのは火を見るよりも明らかだ。そんな勝負をするために、トチノステラは練習を重ねているのだろうか?

 

『ううん、違うよ。今はさ。便利なものがあるじゃない?』

「便利な物?」

 

 にやりとステラの口角が動く。

 

『VRウマレーターさ。調べたら、全盛期、凱旋門賞勝利時のトチノオーのデータも入ってたからね。ただま、今はまだ、私の実績じゃウマレーター使えないけどね』

 

 

 四月一日トレーナーは、おそらく、という答えにはたどり着いてはいる。今までの「トチノ」が目指したものも、それに近いものがあるからだ。

 

「トチノテイオー。トチノオーの記憶が薄れぬうちに現れたトチノ。心のライバルは『トチノオー』と豪語する。彼女を超えるために凱旋門を目指したが、勝利後に骨折。引退を考えた彼女は、一度ではまだ超えてないとの声があり、2度目の凱旋門を制覇した」

 

 様々な当時の雑誌インタビュー、SNS、ニュース映像などを引っ張り出した四月一日の執念は、まさしく、引き寄せている。

 

「トチオトメ。トチノテイオーの同期。トチノテイオーのライバルと目された。ティアラ路線で活躍し、衰える前に引退を決意するも、そのティアラ路線らしからぬ脚の速さから、トチノテイオーと共に凱旋門にという声が高まり、署名運動まで起こったため、結局推される形で凱旋門を走る。しかし、後のインタビューで『トチノオーは超えられなかった』と心の内を語る」

 

 彼女らの声は、結局『トチノオーを超えたい』という意識に集積していく事に、四月一日は気づき始めた。

 

「トチノスズカ。トチノテイオー世代の次のトチノ。逃げで活躍し、クラシック級ではマイル~中距離の逃げウマ娘として君臨。だが、シニアに入ると同時に中長距離路線へ。心境の変化を聞かれた彼女は『憧れのトチノオーを超えたい』という言葉だけを告げて、その年の凱旋門へと目標を定めた」

 

 明確な理由は、当時を知らないから不明だ。しかし、結果として『トチノ』は『トチノオーを超えたい』という考えに至るという事。そうなれば、と四月一日は考える。

 

「……トチノステラもトチノオーを超えたいと思っているのなら。その目標レース、常識的に考えれば凱旋門……。だが、そうではないと言った。それなら、考えられるのは」

 

 四月一日は右手の人差し指を、眼前で一本たてて見せた。答えはただ一つのレース。凱旋門ではない。アメリカでもない。国内でも、おそらくはない。

 トチノステラは以前にこう言った。

 

『凱旋門賞じゃ無いって言ったよ。ちなみに、アメリカでもないよ。まぁ、正直言っちゃうと()()()()()()()()()んだ』

 

 走る場所は、関係ない。

 

 そうなれば、考えられることは一つ。

 

「トチノオーその人と、走り、競い合えればよい。そのように、トチノステラは考えている」

 

 四月一日トレーナーは、指を見つめたまま、そう小さく呟いた。




※次話は10月15日(火曜日)投稿です。
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