大皿でピーマンを   作:灯火011

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ピーマンの肉詰めは良くある料理です。

しかし、ピーマンの肉巻きは最近初めて知りました。

①ピーマンを千切りにします。

②豚バラ肉に塩コショウをした上で、片栗粉を軽くまぶします。

③千切りピーマンを束にして、豚バラ肉で巻きます。

④ごま油をフライパンにしきこんで、焼きます。
※油はなんでもいいです。ゴマなのは香りが良いから。

弁当の具にも良い逸品です。


ピーマンは旨味も強い

『わぁ!今日の食堂の日替わり定食、ピーマンの肉巻きだ!』

 

 選抜レースから数日後の事。我らがピーマン野郎は、今日も今日とてピーマンを喰らいに食堂へと足を運んでいた。今日は珍しくピーマン料理が日替わりに並んでいるからだろう。注文をしているピーマン野郎は、非常に機嫌が良い。

 

『おばちゃん、ピーマン肉巻き定食お願いしまーす!』

「はいよー!」

 

 窓口に声をかけてみれば、元気のよい声で返事が返される。そして、油でピーマンを焼く良い音が響き渡り始めていた。

 

『それにしても、トレセン学園でピーマン料理って珍しいね?何かあった?』

「ステラちゃんがピーマン食べられなくなっちゃったから、ピーマンの在庫が余っちゃってねぇ」

 

 おばちゃんが困り顔をしたからか、ピーマン野郎は思わず吹き出してしまっていた。ちなみに、一日に余る量は新たなメニューを導入したものの、5キロを超える。一日の入荷を減らせばいいと思うかもしれないが、農家との契約など大人の事情もあり、しばらくの間は搬入量も減らせないというのが、このトレセンの実情だ。

 

「ほんと、ステラちゃんが食べてくれないと余って仕方がないわよー」

 

 あははは、と笑うおばちゃん。その原因を作ったピーマン野郎は、気まずそうに頭をポリポリと掻くばかりだ。

 

 

 さて、選抜レースで見事トップを飾ったピーマン野郎、トチノステラであったが、トレーナーは今のところ決まっていない。もちろん、何名かのトレーナーからは声をかけられているものの、例の狸親父が考案したトレーニングメニューに目を通すと、皆一様に態度を変えてしまうからだ。

 

『トレーニングメニューを見たら、本気かコイツ、みたいな視線で見てくるんだよねぇ』

 

 その次にトレーナー達から出てくる言葉は、

 

「俺が、私がトレーニングメニューを作り直します」

 

 ときたもので、それでは残念ながらお眼鏡には適わない、という事になってしまっている。ピーマン野郎的にも狸親父の言う事は絶対に近いため、ならばこの人は私のトレーナーにはふさわしくないな、と割り切っている形だ。

 

『シャウエッセンは決まったっつってたなー』

 

 シャウエッセン、ロマンリバーはトレーナーを見事射止めたとのことだ。なんでも、重賞を何度も経験しているトレーナーらしく、ロマンリバーの夢であるクラシック戦線にはぴったりの人物であるらしい。

 

『ま、気長にいこー、気長にー』

 

 ピーマン野郎はそう言いながら、ピーマンの肉巻きを頬張る。生のピーマンとは違い、熱の通されたピーマンは苦みが少なく甘みが強い。その上、豚肉の油をすっているものだから、ピーマンと豚肉の相乗効果で、非常に舌を楽しませる料理となっている。

 

『お、美味し。生が一番なのは変わらないけど、肉巻きも悪くないね』

 

 彼女のお眼鏡にも叶ったらしく、更に並べてあった肉巻きたちはあっという間に胃の中に消えていった。そして、最後に味噌汁をぐーっと煽り、両の手を目の前で合わせる。

 

『ご馳走様でした』

 

 今日のところは生のピーマンは勘弁してやろう。そういわんばかりに鼻息を荒げながら、彼女は食器を返却口に戻す。そして、そのまま、練習場へと足を向けた。

 

 

 練習場では今日も数多のウマ娘達がしのぎを削っている。並走をするもの、タイヤを曳くもの、筋トレやストレッチを行うもの、坂路を勢いよく上がるもの、その熱量たるや、見守るトレーナー達の額に汗を流させる程のものだ。

 

『さーて、今日のところは……』

 

 ピーマン野郎はそんな彼女らを尻目に、比較的開いているコースを探している。普段であれば坂路に一直線なのだが、今日は少々勝手が違う。

 

『……狸親父の言う事にゃ、スピードとパワー上げなさい、ってねー』

 

 選抜レースの後、これまた狙ったように狸親父から手紙が届いていたのだ。内容は彼女の言葉通り。

 

「どうせお前にトレーナーはしばらく付かんだろう。だから、それまでの自主練のメニューを送っておくぞ」

 

 とのことで、今日のところはスピードのトレーニングを行うらしい。並走、ランニングマシン、フィットネスマシンなど、様々な内容があるのだが、今日、彼女が選んだのはこれだ。

 

『パラシュートラン、ね。やってみますかー!』

 

 パラシュートラン。それは、パラシュートを腰に括りつけてコースを走るという単純ながら強度の高い練習だ。この練習法は、ある人物が、あるレースを攻略するために日本に持ち込んだもので、効果は折り紙付きである。

 

「ピーマンだ。今日はスピード練習なんだ。しかもパラシュートラン……ちょっと手伝ってくる」

「本当だ。私も手伝う。あの練習ミスると怖いからね」

 

 ピーマン野郎がパラシュートランの準備をしていると、数名のウマ娘とトレーナー達がその周辺を固め始めていた。ただでさえ場所を取る練習である事と、まっすぐ進めなかった場合のフォローに入るためだ。

 

『手伝ってもらっちゃって悪いねー』

「いいのいいの。アタシだっていつも坂路付き合ってもらってるしさ」

「そーいうこと。君の走りからは学ぶものも多いからね」

『ありがとうね!』

 

 ピーマン野郎は体力お化けだ。だからこそ、彼女のフィジカルに憧れているウマ娘も多い。走り込んでも走り込んでも、ケロっとしている様は、かの名ウマ娘である『ジェンティルドンナ』その人のよう。スタミナ、とは違う、()()()()()()()()()()()()()()、というのが一際多いとも言える。

 

「よーし、配置についたね。いいよ、ステラ、思いっきりいっちゃって!」

『オッケー!いくよー!』

 

 ぐ、と下半身を落としてスタート体勢。それに合わせるように、周りで控えていたウマ娘達の緊張も一つ高まっている。見守っているトレーナーは、自然とその拳を握っていた。

 

『せぇの!』

 

 ドン!とトチノステラの足元が爆ぜる。同時に、パラシュートが風を受けて大空に舞い上がる。その空気抵抗たるや相当なもので、一瞬彼女の脚が止まりかけた。

 

『きっっっつ!』

「顎を引いて上半身を下げて!腰も一段落として!蹴り足と腕の振りを意識!」

『わかっ……た!』

 

 見守っていたほかのウマ娘のトレーナーが思わずアドバイスを入れた。それに素直に従うと、ステラの体は徐々に、前へと進み始める。パラシュートが一際大きく風を受けて、ステラとパラシュートを結んでいる紐が、ギチギチ、と悲鳴を上げる。

 

「その調子!足を止めなーい!」

「ちょっと右行ってる!少し左へ!」

『オッケー……!おりゃあぁあああ!』

 

 ズドン、ズトンとトチノステラの体が更に前へと進んでいき、ついには、パラシュートを付けながらも、練習コースを走り始めたのである。今日のところはどうやら、友情と、数名のトレーナーのコーチングのおかげで、トレーニングは成功を収めたようだ。

 

「最近、彼女素直よね。いい傾向だわ」

「そうだな。あとはトレーナーさえ決まれば……と言ったところか。君はスカウトしないのかい?」

「断られたわよ。君は?」

「俺もだ」

 

 そんなステラを見ながら、何人かのトレーナー達は肩を落とすばかりだ。まだ、彼女の相棒たるトレーナーの影は見えてこない。

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