大皿でピーマンを   作:灯火011

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トチノの説明入ります。模造歴史です。


時にはシンプルに。

ピーマンをグリルに居れて弱火で5分程度焼いて、お好きな調味料をかけてみれば結構旨いです。個人的には醤油バター。


トチノの血脈

 トチノ。この冠を持つ競走馬は、ある()()()の日本競馬において特殊な立ち位置にある。

 

 

 某雑誌、『今年の注目馬特集』より抜粋

 

 ……初代はトチノオーと呼ばれた名馬で、祖にシンボリルドルフやメジロマックイーンを持つ古の血統を持つ馬である。無敗で世界を飛び回り、最後の有馬記念でも勝利を収め、文字通り無傷でその競走馬としての経歴を終えた。

 

 その強さは、有馬記念の発走前、コメンテーターが発した次の言葉で察することが出来る。

 

『さあ今日の注目はやはりトチノオー。引退レースと銘を打っています。展開はどうなることでしょうか』

『おそらくは、どのような展開であっても、先頭はトチノオーで決まりでしょう。2着が実質的な勝ち馬です』

 

 発走前から確信を持つような強さの馬であったため、そののちの子馬達は、オーナーや所属関係なく、トチノオーの強さと、この馬を発見し育て上げたオーナーの功績に敬意をこめて『トチノ』の冠が与えられていた。

 ただ、最近では直接の子は競馬会から姿を消しているためか、なかなかこの冠を見る事は無い。

 

 しかし、つい先日メイクデビュー東京を勝利した競走馬にその残り香を見ることが出来た。

 「トチノステラ」

 その名の通りトチノオーの血縁者だ。まずは負けずの一勝ということで、関係者は胸を撫でおろしている事だろう。オーナーはトチノオーの鞍上を務めたことのある人物で、曰く、「トチノ」の名を絶えさせたくなかった。とのことだ。

 

 ちなみにこのトチノステラは少々変わった特徴があるらしい。まず食事についてはえり好みをするらしく、特に、他の馬が嫌うピーマンをよく喰らうのだとか。

 その他にも、育成牧場においては人の言う事は聞かずに、独自に走り込みを行っていたり、気づけば脱走していたりとハチャメチャだったらしい。

 ただ、トレセンに入ってからはそのハチャメチャさは鳴りを潜め、今では練習場のリーダーのように、様々な馬と仲良くする様が見られるのだとか。

 

 そしてもう一つ特筆すべきは、常に牝馬のロマンリバーが横に控えている事であろう。どうにもこうにもロマンリバー側がトチノステラを好んでいるらしく、結果的に合同の練習をしている形になっている。馬っけを出さないのは、トチノステラの精神が成熟しているからであろうか。ちなみに、ロマンリバーという名前は2代目で、初代は宇都宮競馬場の地方馬だ。

 このロマンリバーについてはまた別の記事で詳しく説明するが、血統を紹介すると、アメリカ競馬の色が濃く、その体にはかの名馬、A・P・インディの血が流れている。そのためかバネは確かなものを持っている馬であり、トチノステラのライバルになるのでは、と筆者は見込んでいる。

 

 話は逸れたが、オーナー曰く、トチノステラの頑丈さはトチノオーに匹敵する、とのことらしく、並大抵のトレーニングは楽にこなしてしまうそう。これからのクラシック戦線、そしておそらくは、『トチノ』の馬達が挑み、栄光を手にした凱旋門賞も視野にいれているであろう陣営の動きは、これからも注目だ。

 

 

 トレセン学園においてトレーナーは重要な役割をはたしている事は想像に容易い。年頃のスポーツマン、それも女性のスポーツマン、さらに言えば別の種族のスポーツマンを指導し、そのメンタルケアもやってのけるという超人的な能力を求められる。育成にマニュアルというものはない。一人一人が全く違う特徴を持ち、全く違う性格を持つからだ。

 

「このトレーニング内容だと……将来、足を壊すと思うんだけどね」

『でしょうねー。判ってますよ』

 

 その中でも一等メンドクサイウマ娘、ピーマン野郎の元には、選抜レース以降何名ものスカウトがやってきている。今もまさにそのスカウトの最中で、狸親父の言いつけを守っているピーマンはかのトレーニング内容をトレーナー候補へと手渡している。

 

「判っていてやろうっていうのか。面白いね」

『否定はしないんですね?』

「ま、やりたいってんなら止めてもしょうがないでしょ。本人の方針が一番だよ」

 

 ほう、とピーマン野郎の表情が少し緩む。今までにいなかったタイプのトレーナーだ。トレーニング内容を判ったうえで、止めもしない。強いて言えば協力もしてみよう、そんな雰囲気すら漂っている。

 

『じゃあ一つ質問です。トレーナーさんはこの練習内容を見た上で、私がどのレースを目指していると感じていますか?』

「最終目標を答えてみろ、ってことでいいのかな?」

『はい』

 

 トレーナーは再びトレーニング内容へと目を通した。一日数時間以上のキツイトレーニング。並のウマ娘であれば炎症や骨折の危険すらある。それを加味した上で、目指したい場所があるということだ。となれば。

 

「数日頂けるかな?検討して、答えを合わせる」

 

 この場ではその答えは出せないと判断したトレーナーは、首を横に振りながらそう言葉を告げる。その目は真剣そのものであり、必ずや、ピーマン野郎をスカウトすると告げているかのよう。

 

『もちろん。いつでもお待ちしています』

 

 ピーマン野郎、トチノステラは少し頬に笑みを浮かべると、首を縦に振った。




※次話は月曜日に投稿します。
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