①ピーマンを幅広めに千切りにします。
②電子レンジで1分、もしくはお湯で30秒ぐらい湯通しします。
③市販のキムチをお好みのサイズに刻んで、②のピーマンを和えます。
④ ③にごま油を香りづけ程度に混ぜ込み、食べます。
ピーマンキムチ和え。個人的には卵黄をぶっこむのも好きです。
真面目に練習を行うようになったトチノステラ。ここ数週間でトレーナー達からの評価もうなぎ登りで、その体のポテンシャルを十二分に発揮させている。
体力が多いため、休養少なく長い時間高強度の練習を行える。その上、坂路の練習やプール練習をしていたからだろう、走るための足腰と、走るための心肺も十二分に鍛えられている。
基礎が出来上がっていた彼女は、選抜レース以降、確実に、同期の中ではメキメキと頭角を現し始めている。
『そぉーれぇい!』
今日は室内での筋トレを主に行っているようで、彼女の体はレッグプレスマシンの上にあった。この機械は、判り易く言えばダンベル上げの脚部版だ。成人男性ならば、最高でも体重の3倍を上げるのが限界と言われているが、そこは流石のウマ娘。彼女は、体重の10倍近い重量を勢いよくぶち上げている。
『もいっちょぉ!』
ただ、基礎を十二分に鍛えていた彼女でも容易ではないのであろう。その額には汗が流れ、体中の表面に血管が太く浮かんでいる。と、不意にその動きが止まった。
『あれは』
トチノステラが、ある方向を向いている。そこにいたのは、彼女から課題を受けていた四月一日トレーナーであった。ゆっくりとレッグプレスマシンをニュートラルに戻し、トチノステラは一息をついてから、トレーナーの元へと歩みを進めた。
『久しぶりだね、キミ。何か用?』
滴る汗はそのままに、トチノステラは口角を上げ、挑むように首を傾げる。四月一日はと言えば、真剣な目でトチノステラの目を射抜いている。
「答えを持ってきたんだけど、聞いてくれるかな?」
『勿論。汗拭いてくるからちょっと待ってて』
■
「このトレーニング内容から、日本国内の全ての重賞を走っていくぐらいの気迫を感じるんだ」
トチノステラはと言えば、その言葉を聞いていながらも、楽しそうに微笑を浮かべるのみだ。まだまだ答えにはたどり着いて居ないらしい。
「そして、目指すのは国内だけじゃない。メニューの中には、やたらと走法の矯正の時間もとられている。となれば、外国の大きなレースを目指していると私は思う」
『うん。いい線は行ってるよ』
ここで始めてステラは口を挟んだ。同意するように頷いて、その顔には優し気な笑みが浮かぶ。
『確かにトレーナーさんの考察の通り、ある意味、海外のレースも目指していると言えるね』
「やっぱり。そうなると……と考えられるのは2つ。なんだけど」
四月一日はそう言いながら、指を2本立てる。
「でも、トチノステラ。君は、最終目標のレースを当てろと言った。つまり、私に求められている答えは明確に一つということだよね?」
指が一本折りたたまれて、人差し指だけが立っている。
『その通りだよ』
強く頷くトチノステラ。その瞳にはトレーナーがしっかりと映り、まるでトレーナーの奥底を覗くような鋭さだ。
「だから私はこう断言するよ。トチノステラの最終目標は『凱旋門賞』と」
四月一日は、自信をもってそう告げた。
沈黙が支配する。トチノステラは目を瞑り、少しだけ首を下げる。肯定の意味か……と、四月一日はホッと胸を撫でおろした。
『凱旋門賞、ね』
「それ以外、考え付かない。このトレーニング内容、強度、国内じゃないならば、世界最高峰のレース……っていう感じでたどり着いたんだけど、どうだろう?」
『なるほど、確かにそういう考えもあるよねぇ』
ふふ、とトチノステラの顔が破顔した。彼女的にも思うところはあったようで、軽く頷きながらクスクスと笑う。四月一日はそれを見ながら、なるほど、どうやら答えを当てたようだと再度安心した。のだが――。
『残念。凱旋門賞じゃあ、無いよ』
トチノステラの口から出た言葉は、予想だにしていない返答そのものだった。
「え?今、なんて」
『凱旋門賞じゃ無いって言ったよ。ちなみに、アメリカでもないよ。まぁ、正直言っちゃうと走る場所は関係ないんだ』
「それは……どういう」
『それを考えて、私の最終目標レースを当てるのがキミの仕事だったはずでしょ?』
ずい、と顔をトレーナーに近づけて、更に言葉を続ける。
『……それに、四月一日トレーナー。『トチノ』っていう私の名前から凱旋門賞って導き出したんだろうけどさ、ちょっとそれは偏見だよ?』
しまった、と四月一日は苦い顔をする。『トチノ』のウマ娘は最終的には凱旋門賞を走るのではないか。であれば、凱旋門賞が目標レースではないのか。そう思い込んでいたのだと。
つまり、彼女の事を見て、彼女が求める最終レースというものを導き出さねばならないのだと。
『でも、ここに至るまでの考察は素晴らしかったよ。だから、もう一回チャンスを上げる』
再び、クスクスと笑い始めたトチノステラは、もう一度四月一日にチャンスを与えるつもりらしい。これはつまり、存外、四月一日の事を気に入っているのであろう。
『私が走りたい、最終目標のレースを当ててみてね。トレーナーさん?』
そういって、トチノステラは再び筋トレのマシーンへと足を向けた。残されたトレーナーは、一つ溜息を吐くと、トレーニングルームを後にするのであった。
■
「よさそうなトレーナーじゃん。さっさと契約しちゃえばいいのに」
事の顛末をルームメイトのロマンリバーに話した結果、トチノステラに返された言葉だ。
『トレーナーが決まってる人の言葉は違うネェー』
「茶化さないの!このままじゃ、選抜レースに勝ったのにもったいないよ」
『判ってるんだけどね。でも、私の目標をわかってくれる人じゃないとヤダ』
「わがままー」
『何とでも言えばいいさー!』
わちゃわちゃと彼女らが雑談を交わすのは、校舎の一角に作られているウマ娘用のサロンだ。中等部や高等部、トゥインクルシリーズの出場の有無など関係なく様々なウマ娘が集まるこの場所は、良い交流場となっている。
「お、トチノステラ。何楽しそうに話してんだい?」
『ドカドカ。ワガハイのトレーナーが決まらないって話だよ』
「え?選抜で勝ったのにまだ決まってないの?嫌味かよアンタ」
トチノステラに親し気に声をかけたのは、ドカドカという名前のウマ娘だ。選抜レースで一緒に走った彼女も、今のところトレーナーは決まっていない。
「おー、もっと言ってやって言ってやって。ステラったら全然トレーナーさん決めないんだもん」
「そーいうアンタは……」
「ロマンリバー。ちなみに私はトレーナーさん決まって練習はじめてるもんねー」
「マジかヨ。羨ましいなぁー!」
ドカドカは額に手を当てて、天を仰ぐ。トレセン学園において、トレーナーが付くという事はそれだけでも一つ上のステップに入ったという事だ。大体のウマ娘がトレーナーすら付かずに退学していくわけなので、ドカドカからしてみれば、目の前の2人は輝く存在であろう。
『ま、トレーナーが居ないどうし、仲良くやろう?』
「やーなこった。アンタの場合は、首を縦に振ればすぐ決まるんだろー?噂になってんぜ?トレーナーからの誘いを断りまくってるって」
『げ、本当?』
ドカドカは強く頷いた。
「本当も本当さ。ま、でも、アンタの場合は選抜レース以来、真面目に練習を積み重ねていたし、何か考えがあってのこと、なんだろ?」
『うん』
「じゃあ、最後まで拘るしかないわなー。全く、羨ましい悩みだぜ」
バシバシと、ドカドカはステラの肩を叩く。トチノステラはと言えば、大人しく、それを受け入れていた。