パン屋は今日も忙しい
あの記者さんが宣伝してくれたおかげもあって、売上は以前の倍になっているのだ
記者さまさまなのだが…その反面もある。どうも供給スピードが追いつかない。運んでは売れ、運んでは売れと大慌てでパンが飛んでいく
「いらっしゃいませ〜商品お預かり…――」
レジ打ちをするのは大神ミオ
この店、ころねのパン屋の店主である戌神ころねの妻だ。テキパキとこなすレジ打ちだからこそ、今この店が回っているところもある
でもその店主は…
「おまたせしましたぁっ!顔パンパンパンはもうしばらくお待ちくださいぃぃ〜!( ∩ ˙˙ )=͟͟͞͞⊃⊂=͟͟͞͞( ˙˙ ∩ )」
大慌てだ
厨房にいるのはころね1人だけ。そして運ぶのもころね一人。猫の手も借りたいものだ。
と、そこで運良く裏口の方からただいまーという声が聞こえてきた
ころねは声を大きくして、裏口に繋がる扉を開き、ちょっとてつだってぇ〜!!!と叫ぶ。
しばらくしてその扉から出てきたのは、銀髪の少女。ころねとミオの娘である「かなた」であった
「いらっしゃっせ〜!顔パンパンパンお待ちどうさま!次はメロンパンだよ!」
かなたはエプロンを着用し、ころねが作ったパンを次々に運んでいく
そのおかげがあってか、普段より効率よく回転し、ピークは次第に去っていったみたいだ
最後の客が去った後、3人はふぃーと息を漏らした
かなたが居なかったらキツかった
「娘、助かったよ」
「本当にありがとう〜かなたちゃんも忙しいだろうに」
「無理して体壊しちゃってもいけないし、僕ができることがあれば手伝うよ」
そう言ってかなたは微笑むと、それを見た2人は泣きそうになりながらかなたを抱きしめた
ミオはお客が居ないうちに事務系の処理しておくから、2人は奥で休んでてと声をかけると、かなたは僕も手伝うと言ってくれたがミオは簡単な処理だから大丈夫よと返す
まぁレジ内のお金と売り上げのお金が一致しているかどうかの確認だ
「そう?ならお言葉に甘えさせて貰うけど…無理はしないでね」
「ありがとう。棚にかなたちゃんの好きなお菓子とかあるから好きに食べていいよ」
とミオが言うとやった〜と言って奥に言ってしまった
さて…始めるとするか
初めに今日の売り上げを全て合計することから始まる。レジの使用履歴を印刷して―という作業をしている時、1人の客がやってきた
しかしミオは集中していてその事に気づかない
その客が会計にやってくると、集中しているミオに向かって話しかけた
「お忙しそうですね」
「ほへ?あ!すみません!」
声をかけられたことでようやくミオはその人の存在に気がついた
スラッとした体。ミオのものとはまた違うそのケモ耳。そして、どこかカリスマ性のあるその立ち振る舞いがミオの目に入ってくる
よく見ればこの方はこの間昼に来ていたお客さんであることに気づく
白い白衣を着たこの方。この間は2人の女性と来ていたはずだが…
「貴方は…確かこの間も来てくださいましたよね?」
「覚えていただけてるなんて光栄です」
「本日は彼女たちはいらっしゃらないのですか?」
「えぇ。今日は私一人だけです。何しろ"惚れて"しまいましたから」
何に惚れたのかはよく分からないが…悪い人ではなさそうなのは見て取れる。そしてお客さんは一言、この時間帯に来てしまったことを謝るのであった
それは心からの謝罪のようにも見え、この人は他人に優しくできる人なのだろうと思える
「すみません。ラッシュ後の束の間の休息時に来てしまいまして…」
「いえいえいいんですよ!来て下さることだけでも私たちは嬉しいのですから。53,000円になります」
53,000円丁度受け取り、商品を渡す
お客さんはありがとうと一言言って商品を手に外へ出て行った
―あの惚れたとの一言。なぜだかあの去っていく背に目が吸い付く
なかなかのミステリアスな人だったなと、ミオは思いながら事務作業を開始した
「お金がないな~」
その夜、バイクを走らせたかなたはつぶやいた
日々生きるのに精いっぱいで、お金がすぐに飛んで行ってしまう
今の手持ち金は―――円だ。決して多くはない。不安だからこそ今お金が欲しい
お金を手に入れるいろんなことを思い浮かべた。銀行強盗やら薬の密売やらと
でもかなた一人でできるかと言われてたらできないことばかりだった
「やっぱコンビニ強盗が一番かなぁ…」
ちょうど銃(レプリカ)もある。騙せるだけのものはある
そう思いながら腹をくくったかなたは近くのコンビニに突入する決心をした
バイクを止め、銃を手に持って歩みを始めるかなた
―手を上げろッ!!!!とコンビニに突入したのは良かったのだが、何かがおかしいことに気づいた
コンビニ店員がいない
それだけでなく、何処か荒れているような気もする…
不思議に思ったかなたはカウンターに近づくと、そこには悲惨な状況があった
「ひっ…」
血を流して倒れる店員。心臓と脳が銃で撃ち抜かれたように穴が開いており、そこから血が流れているようだった
レジも壊れていて、引き出しが開いており、中はすっからかんだ。かなたが来る前に誰かがやっていたのだろうか…でも誰ともすれ違ってないし、いた形跡もなかった
「いったい誰が…――!!」
その時、コンビニの外から警察のサイレンが聞こえてきた
このままここにいるのはマズイ。そう思い一目散に立ち去ろうとすると、出入口目前で警察に止められてしまった
「そんなに急いでどこに行くのかな~お嬢さん」
警察官の「夏色まつり」はかなたを見てそう呟く。その後ろで同じく警察官の「ベスティア・ゼータ」が手錠をもってウキウキした目でかなたのことを見ていた
冷や汗をかくかなた。そしてその後に日々わたるのは、かなたの冤罪だ~という声だけだった