かなたが解放されてから次の日の警察署
今日はなんだか穏やかな日だ
何人か外で見回りをしているが、何が起こったという報告は無い
そのため署内にいる人達は、若干暇を持て余しているようだ
角巻わためはぽーっとしながらパソコンに映る画面がスクロールされるのを眺めていた
「……なんか面白いものないかなぁ」
ひとつ。またひとつ。とリンクが上に吸い込まれていく
だけどすぐに止まった。面白そうな記事を見つけたのだ
ホロスサントスの記者であり、警察によくタレコミしてくれている尾丸ポルカの記事だった
内容は…【巷の噂を検証!闇夜に溶け込むゴーストマシン!】
「なーんか面白そうだなぁ〜」
ポチッとリンクを踏んで記事をじっくりと見る
『病院内で噂になっている幽霊車。調査をしてみたところ、目撃した!という人は街中にも多かった。目撃例はどれも人気がなく暗い場所や深夜のドライブなどが多くあがった。
早速私も深夜に調査してみようと思う
深夜1:00。私は全く人気のない道路で張り込みを始めた
さぁ姿を現して見せろゴーストマシン!!!
だが待てど暮らせど一向に現れる気配は無かった
所詮は噂。都市伝説だったのだろう
そういう類のものは心の中の恐怖が形になって現れたものだから
幽霊の正体見たり枯れ尾花というように、なにか見間違えたのだろう
と思っていたのだが…』
丁寧に写真付きの記事。見る側も進行が分かりやすくて助かる
そして興味が惹かれるような最後の言葉…その下には1個の動画が添付されていた
わためは興味本位でボタンをクリックする
すると動画が再生され、音声が流れる
それは記者がバイクに乗っているような音声だった
『まーこういう記事もいいか―――――???なんか変だな。音が多いような…へ?!』
記者の驚く声と同時にカメラは何も無かったところから突然車が現れたのを捉えた
本当に何も無かったのに、あたかも最初からいましたよと言わんばかりに車が走っている…合成にしては手が凝っているように見える
そして動画はその車を追うようにカメラワークが移動していく
幽霊車はモヤがかかったかのように不鮮明に移りながら走っていると、また突然消えたり出たり不審な行動を始めた
記事はその後、これは嘘では無いが、嘘と思われても仕方ないほど驚くものだった。あの車の正体はわかっていない…と締めくくられていた
「わわわ…」
わために少しの恐怖が襲う。ガタガタと体が震え、今見たのが信じられずにいる
すると突然後ろからおい。とわための肩に手を回す人がいた
それに驚いたわためはわぁっ!!と驚いた声を上げた
「わぁっ!!…ぼ、ぼたん副署長ぉ〜」
「勤務中におサボりとは。素晴らしいねぇ」
「えへへそれほどでも―」
「褒めてるんじゃないぞ」
ぼたんはそのままわための警察帽子をグイッと前の方にずらし、わためが見ていた画面を観察する
わわっ!といきなり目の前が見えなくなってあたふたするわためをよそに、ぼたんは画面を調べる。警察として職務怠慢は処罰に値する
もし変なものを見ていたら―と思ったが、画面にあるのはポルカ記者の記事とループ再生で流れている先程の動画
ポルカの記事ならまぁいいか。とぼたんは容認することにし、わために今回ことを告げようとしたその時、ぼたんは画面内で再生されている動画に奇妙なものが映り込んでいるのを発見した
(なんだこのモヤ…空間の歪みみたいな…合成みたいだけど、どうだろ。ゼータに聞いてみるか)
ぼたんは無線でゼータを呼んだ。幸いゼータは見回りに出ていることはなく、警察署の外で休憩していたので、すぐに駆けつけてくれた
なぜぼたんがゼータを呼んだのかと言うと、映像解析がゼータの得意分野だからだ
もともとゼータはとある情報関連の組織のエージェントをしていた。その実力はかなりの腕前だ
この間の事件の監視カメラのデータを取ったのはゼータだし、解析も全てゼータが行っているのだ
「なんですか?」
「来てくれてありがと。この記事の動画なんだけどさ、合成かどうかちょっと見てくれる?」
「これ?ゴーストマシンの記事?」
ゼータは動画を見始めた
そしてぼたんが気になった部分に差し掛かると、ゼータは何度も再生を繰り返してよく見る
うーんと唸りながらゼータはぼたんに顔を向けた
「これ、合成じゃない。多分本物。元データ見ないとわかんないけど、合成だとしたら記者程度の人間ができるものじゃない」
「ゼータがそこまで言うんなら本物なのかな。ありがと、1回ポルカに連絡とるわ」
「お願いします―」
プルルルルとポルカに連絡を取るぼたん隣で再びゼータは動画を再生する
霧から現れたかのような出方。空間が歪んでいるようにみえるその現象……ゼータはその現象をつい最近見たことがあった
―つい最近のコンビニ強盗
カメラには突如血を吹いて倒れる店員と、怪奇現象のように開くレジスター。そして消えていくお金が映っていた
しかしそれには1フレームだけ同じような歪み方をした現象が映っていたのだ
画面1列に同じ歪みならバグで理由が着くのだが、その歪みは人の形をしていた。明らかにおかしい
もしかしたら自分たちの知らない技術―光学迷彩みたいなものがあるのではないかと考えているが、尻尾すら掴めなかった
だが、今は違う
ポルカが撮影したこの映像が本当で、動画解析を鮮明にすれば、車も判明して持ち主特定に至るだろう。尻尾どころか足も掴めそうだ
「―…あい。あーい。ありがとうございますぅ〜。ポルカもうすぐ来るって」
電話が終わったぼたんはそう告げる
ゼータは少しウキウキしながらポルカの姿を待ち始めた
ぼたんはわためのことを見て、後ろ頭をかいた
「まぁ記者の記事だから容認するけども。次変なの見てたらステーキにしてやるからな」
そういうとひっ…と怯える羊のわため。それを愉しんだのか、ぼたんはさらに言葉を繋げた
じっくり遠赤外線で焼いて滴る肉汁は美味いんだろうなぁ…腿が1番柔らかくて脂肪が乗ってるんだとか。じゅるりと言うと、わための目がうるうると涙が浮かんできていた
そんなやり取りをしていると、ポルカがこんちゃーと受付の方に入ってくる。ゼータやぼたんは待ってたと言って、ポルカの方へと向かう
ポルカはUSBメモリをカバンから取り出して、ゼータに手渡す
「これがデータです。なんも加工してないんで。これガチなんすよ」
「OK。えーと…」
ゼータはパソコンにそのUSBを接続し、解析ソフトを通じてその映像を鮮明化、ノイズ除去。など色々繰り返すと、本当にその映像が加工されていないものであるとわかった
さらに車がよく見えるところで動画を停止し、解析に解析を重ねてナンバープレート特定までサクッと終わらせてしまった
ゼータはわためにナンバーの特定を依頼する。ゼータが読み上げると同時にわためは警察の車両データベースでナンバー検索をかける
数秒後…無事に特定が完了した。だが――
「その車両…盗難車両で登録されてますよ!」
「マジ?元の持ち主は?」
「ヌス・マレタです」
わためが人の名前を言った途端にぼたんの顔つきが変わった
そして一言、驚いた顔つきをしながらつぶやいた
「…行方不明事件の第一被害者だ」
段々と物語が進んできましたね