「…行方不明事件の第一被害者だ」
ぼたんは驚いた顔をしながらそう口にした
ゴーストマシンと思わしき車の所有者、ヌス・マレタ氏は1ヶ月ほど前から行方不明となっている。家族の話からすれば山にドライブしに行くと言った後、行方不明となっているそうだ
それからというもの、このホロスサントスで度々行方不明事件が発生するようになった。だから警察はこのヌス・マレタ氏からの行方不明者を行方不明事件として捜査を行っているのだ
「山中いくら探しても見つからなかった車がねぇ…」
「被害者の車が使われてるのか、それとも被害者自身なのか…」
ぼたんとポルカは真剣に考える
その車を運転していたのは誰なのかを
ぼたんは色々考えているうちに、疑問が浮かび上がってきた
(そういえばヌス氏は山に出かけるって行ったきり行方不明だったな…この動画…一通りの少ない場所だけど…どこなんだ?)
「―ポルカ。この動画どこで?」
「えっと、この山から下った場所です」
そう言ってポルカは地図を広げたスマホにピンを指す
山の麓を走る道。アスファルトとはいえ砂で汚れていたり、脇には草が生えていたりという感じに誰も通らない道だろうという道だった
―山で消えた第1被害者。突如現れたゴーストマシン…それが撮影されたのは山の麓…関係がないとは言いきれなさそうだ
「―ご協力感謝します。尾丸ポルカ殿」
「いえいえ、情報提供は私の仕事ですので―」
「―続けて頼みたい。今夜、私たちと一緒に調査してくれない?」
「…はい?」
気が抜けた声がポルカの口からスルッと抜けていった
その夜
例の麓にて先程集まっていたメンバーが車の隣で話し込んでいた
ぼたんとポルカが乗ってきた車とわためとゼータが乗ってきた車。一応2台体制で調査に当たる。もし逃げられても片方が追跡できるように
「ここで見たの?」
「はい。いまみたいな感じで夜空眺めてて、諦めて帰る時に」
「ゼタ、なんか近くにいたりする?」
ゼータはふるふると首を横に振った
付近に人の気配は全くない。ゼータが来る途中に仕掛けておいた人感センサーカメラが反応することは無かった
まぁ気長に待ってみますか。と4人は談笑しながら来たる車を待つ
「ゼータここには慣れた?」
「はい。だいぶ」
そっかとぼたんは呟く
話を詳しく聞けば、ゼータがこのホロスサントスに来たのは約半年前ぐらい前のことらしい。ここは他と比べて物価が高い。だが、それに見合った報酬や施設がある。それと娯楽
慣れるには時間がかかるだろうと思っていたぼたんだが、慣れてくれたようで安心した
「なにかあったらわためが助けてあげるからねぇ〜」
「ありがとうございます」
「あ〜可愛いねぇ〜」
わために頭を撫でられて照れているゼータ
てぇてぇだ。とポルカは思わず激写に成功した―が、隣にいるぼたんがものすごい眼光で圧をかけてきている…
使うなよと言わんばかりだ…使ったらどうなってしまうのか―いやいや、考えないようにしよう
そう思いポルカはあはは…と流しながらスっとスマホをポケットにしまった
―その時。ポルカの耳になにか変な音が入ってきた
ズササササーという砂と何かが擦れる音とキュルルルルとタイヤがスリップするような音。ポルカはそのことをゼータに教えると、ゼータは急いでカメラを確認した
するとカメラには、1台の車がドリフト走行で走っているのが映っていた
しかし例のゴーストマシンではない…
「―あー車は違うですけど…どうします?」
「んー危険運転だから一応捕まえとくか。あたし行ってくるわ。行くぞポルカ」
「え、ポルカも―ちょちょ!」
手を引かれて車に乗せられるポルカ
ゼータとわためは一時待機。で例の車が映ったら移動と報告を頼んで、ぼたんは車を走らせた
危険な車がいるポイントはゼータにマークしてもらった場所に近づいていくと、その妙な音は次第に大きくなってきた
ゼータがもうすぐ来ると教えてくれたため、ぼたんは近くに車を停め、例の車が来るのを狙った
次第に大きくなっていく音。そして先の見えないカーブからヘッドライトのあかりが見えた
車の姿を捉える。白黒パンダの少し古めな車。リトラクタブルヘッドライトを用いた珍しい車
ぼたんはよしと一言呟きサイレンを鳴らして車を追いかけた
「前の車止まりなさーい。危険運転ですよー」
警告するものの、止まる気配は無い。もしかしたらギャングが乗っているのかもと思い、ぼたんはポルカに対して自分の拳銃を渡し、銃弾を込めてくれと指示した
アタックして止めるのもありかもしれないが、今走っているところはやけに狭い。並走なんてできそうにない
ーとその時。ポルカは異変に気づいた
前の車のさらに前―そこに以前のようなモヤが見えていた
「ししろさん…前の車の前に…」
「前?お――」
ぼたんもその存在を確認したようで、わため達に対して今すぐ車を走らせて前に出てくれと連絡した
「前の車!やっぱり止まらないでそのまま走って!今だって言ったら全力ブレーキかけて!分かったらハザードちょうだい!」
ピカピカとハザードをつけてくれた
わかってくれたようだと思ったぼたんは車ではなく道の先を見た。この先いくつかのカーブを抜けた場所が観測ポイントだった。つまりはそこまで行ければ、わためたちが前に出てくれるはず
そう思いながら車を走らせ、ぼたんは近くまで来たらわために合図をする。もうすぐだと
生憎そのモヤは消えることなくまだ続いている
カーブを抜けその先の丁字路に差し掛かった時―ぼたんはマイクに向かってブレーキ!!と合図する
赤の線を描きズザザザザ!と2台はタイヤとアスファルトを焦がす
モヤのかかった車はそのまま丁字路に差し掛かると、そこから出てきたのは、わための車だった
ドンッと鈍い音が響き渡り、わための車の横に衝突跡ついた
例の車がぶつかったのだろう。だがその姿はない…
と思っていたら、プシューと白い煙がわための車の横から巻き上がり、バチバチと雷が走ったあと、車がわための隣に突如現れたのだった
ぼたんやポルカは車から飛び降りるように外に出てる
「わため、ゼタ!」
「痛た…わため達頑張ったよ…!」
「もう少しやり方あったと思うけど…よくやった!体は大丈夫?」
痛たたと首を抑えるわためにぼたんは褒めちぎる
警察車両はロールケージなどの特殊な装備を実装している。それがなかったらもっと酷かったかもしれない
それよりもーとゼータは例の車を指さす。それよりもだけども、ふたりが心配だと言っていると、白と黒の車から人が降りてきた
「お二人のことは私に任せてください」
「あなたはーー病院の看護師さん…ですよね?」
そう言われ頷く女性。髪は赤っぽく目は赤と青のオッドアイの人はIRySと名乗った
IRySは車に乗る2人の手当を始め、ポルカとぼたんは例の車に行くことにした
白い煙を出している車の扉は開かず、窓をぼたんは覗く
しかしヒビが入った窓ガラスは明かりを照らしても中が見えないように加工されていた。かろうじて人の影が見える程度
「ポルカ、少し下がって」
ぼたんはそういうとヒビの境目に向けてぼたんは自分の肘をぶつけて窓ガラスを割った
パリンと割れる窓ガラスの穴を広げ、中に腕を入れて鍵を開け扉を開いたところ、中から力ないように人が倒れ込んできた
よく観察すれば、それは噂の人物であった
―中にはもう誰もいないことを確認したぼたんは、1度扉を閉め、噂の人物―ヌス・マレタ氏を観察する
「行方不明時の服装、頭部から出血。意識なし。脈は――なし」
しゃがみこんで観察するぼたんに、2人の治療が終わったIRySが近づいてきてぼたんの代わりに詳しい容態を見る
少しIRySがヌス氏に触れると、驚いたような顔をIRySは浮かべた
どうかしたのかのかとポルカは聞くと、静かにIRySは言う
「血液に触れている部分のみが暖かいこの不自然な感じ…恐らくですけど、すでに死んでいたみたいです。それも随分と前に」
は?と理解できない2人。いててと遅れてやってくる2人にも説明していたが、訳が分からないのは同じらしい
―するとその時、ぼたんはなにか動く音が聞こえた。ガチャという鍵の開く音。その音が聞こえた方を素早く振り向くと、ヌス氏の車のドアが開いていた
「え、ポルカいま扉開けた?」
「いや?開けてないですけど…」
「マジ?なんか開いてるんだけど」
「いやいやそんなバカな〜いかにもゴーストマシンだからってそんな―――」
振り向いたポルカの目の前でその扉は再びしまった
誰も居ない暗闇の中。ひとりでに閉まったその光景を見たポルカの悲鳴が山に響き渡った