魔女弁護士めぐみさんの事件簿   作:西山由昌

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白い少女 前編

 埼玉地方裁判所。今、この裁判所では痴漢事件の審議が行われていた。

 被告人は無罪を主張しているが、日本の警察や裁判制度の性質上刑事告訴された場合、有罪判決が言い渡される確率は99.8パーセントと言われている。

 つまり、残りの0.2パーセントで勝負しなければならないのである。

 そして、判決は──

 

「主文、被告人加藤憲弘を無罪とする──」

「おっしゃァァァァァァァァ!」

 被告人は、その場で立ち上がって喜んだ。

「これも全て愛坂先生のおかげです。ありがとうございました」

 そう言い加藤は、黒いロングヘアの女性の弁護人に深々とお辞儀をする。

「いや、私も冤罪だと立証できて良かったです」

 そう言い、握手をする。

 

 

 

 

 

「いや~、何とか勝てたわ」

 恵はそう言いながら、箒にまたがって空を飛んでいた。

 この世界は、魔法が広く認知された世界である。空には、魔法を原動力とする飛行物と飛行機で溢れかえり、地上では杖を持った人々が魔法を扱い生活している。

 そして、愛坂恵も広島の魔法学校を卒業した歴とした魔女である。

 

「さてさて── 今日のお昼ご飯もコンビニおにぎり1個かな」

 

 思い立つと、恵は箒を降下させ地上に降り立つ。

 コンビニの手前には、小川を跨ぐ小さな橋があった。その橋の片端で、ぼんやりと川に映る自分を見る白色のボサボサの長髪をした小学2年くらいの少女を見つけた。

 恵は、一瞬その少女を見るも気にせずコンビニに入っていく。

 

「おにぎりが── 1個170円──」

 

 恵は、値段表をじっと見る。そして、財布から500円玉を出す。

「独立してから給料は断然良くなったけど── まだ、前の会社に勤めてたときの癖が出るのよね。でも、おにぎり1個170円は流石に無いわよね」

 ブツブツとそう言うものの、結局おにぎり1個とペットボトルのお茶一本、合計400円ほど使った。

 

「これが、東京って奴か──」

 

 疲れたような表情でコンビニを出る。

 ふと、橋の方に目をやると、少女は恵が店に入る前と同じ場所にいた。

 

(あの子、もしかして──)

 

 恵は嫌な予感がし、少女に話しかけることにした。一歩ずつ、少女に近づいていく。

 すると少女は、橋のガードレールを登り始めた。

 

「ちょっと待って!!」

「わッ!?」

 恵は、少女の服を引っ張り無理矢理地面に下ろす。

「あんたバカなの!ここから飛び降りても、大怪我するだけで死にはしないわよ!」

 

 恵は、店の前で少女に向かって怒鳴る。少女は、俯いたまま恵は怒鳴る声を聞いていた。

 だが、流石に店の目の前と言うこともあり人目が多い。なので、近くに公園に少女を連れて行った。

 

「で、なんで死のうとしたの?」

 

 少女をベンチに座らせ、事情を聞く。

 

「──────死にたいから」

 

 少女は枯れそうな声で言う。

 

「だから、その理由を聞いてるのよ」

「────自分の、親にいじめられた」

「親に虐められたって、虐待じゃない。でも、言われてみれば貴方かなり痩せてるし服もボロボロね」

 

 葵の姿を見ると、恵はさっき買ったおにぎりを葵に手渡す。

 

「とりあえず、これ食べなさい」

 

 葵は、手渡されたおにぎりを静かに食べる。

 

「とりあえず、今日は私のウチに来なさい。明日、警察か児童相談所の人に連絡するから」

「──うん」

 

 そう言うと、葵を箒に乗せ空を飛ぶ。葵は、恵の服を強く掴んでいた。

 

「──どこまで行くの?」

 

 葵が聞くと、恵は箒を上昇させながら答える。

 

「東京の港区よ、私の職場兼自宅があるの」

 

 約30分後、2人は恵の職場と自宅が入っている4階建のビルの前に降り立つ。

 

「――――――愛坂弁護士事務所」

 

 葵は、ビル3階の窓ガラスに貼られた文字を読む。

 

「――――弁護士?」

 

 葵は、恵を見て聞く。恵は、そのように頷いた。

 

「おいで、3階が事務所よ」

 

 事務所に入ると、来客用のソファーに高校の制服を着た背が高い茶髪のロングヘアの女子高生が寝ていた。

 女子高生は、一瞬2人の姿を見る。

 

「おかえり」

 

 女子高生はそれだけ言うと、顔を元の方向に戻した。だが、もう一度2人の姿を見返す。

 

「子供、いたの? もしかして、日本語でなんて言うか分からないだけどロシア語で言うところのвнебрачный ребенок?」

 

 あおいの姿を見て言う。

 

「違うわ! てか、ブネ――なんとかって何よ?」

「えっと――、家族の知rrrらない子供。例えば、父親が家族に内緒で作った子供がвнебрачный ребенок」

「あ、隠し子の事ね」

 

 女子高生の喋り方は、どこか訛っている。

 そんな、彼女を見て葵は恵に聞く。

 

「――――あの人は?」

「あの子は、クリスティーナ・ヤツ―― クリスちゃん、本名なんだっけ?」

 

 恵が、クリスティーナに聞くと彼女は寝ながら言った。

 

「クリスティーナ・ヤツシヴナ・ナカヤマ」

 

 彼女は、そう返すと葵は彼女に言う。

 

「――――外国人?」

 

 すると、彼女は起き上がりながら言う。

 

「私、ロシアから来たヴァンパイア。日本の永住権持ってるから日本に来て勉強してる」

 

 クリスティーナは完全に起き上がり立ち上がった。すると、背丈は恵よりはるかに高く顔は無表情で目は赤い瞳だ。まるで、睨んでいるようだ。

 すぐさま、葵は恵の後ろに隠れた。

 

「え、なんで隠れる?」

 

 そう言って、恵の後ろに周りこみクリスティーナはしゃがみ込み葵に目線を合わせる。

 

「ハハハ―― 貴方カワイイ―― 」

 

 クリスティーナは、無理矢理笑顔を作ろうとしているが葵は半分泣きそうになる。

 なぜなら、彼女は笑顔のつもりだが白目をむいており口も笑っていると言うよりしゃくれている。

 

「あ、そうだ。クリスちゃん、この子貴方の部屋で寝かせて」

 

 恵がそう言うと、クリスティーナは「オッケー」と言うが葵は泣き出しそうになっていた。

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