「何度言ったら分かるんだ! ウラヌスだって言ってるじゃねえか!!」
「番号でお願いします」
クリスティーナは、アルバイト先のコンビニで客と口論になっていた。
「テメェ! 客舐めてんのか!!」
「はい、舐めてます。関西のおばちゃんがくれる飴ちゃんくrrrらい舐めてます」
「認めてどうするんだ! もう、いい! こんな店、2度と来ないからな!」
客の男はそう言うと、イラついた表情で店を出ていく。
「Когда они придут в следующий раз, я их придушу!!」
(訳:次来たら息の根止めんぞ‼︎)
去り行く客に、暴言を言い放つ。
(――Я слышал, что в последнее время эльфы грабят круглосуточные магазины, так что мы должны быть осторожны)
(訳:――最近エルフによるコンビニ強盗が多発してるらしいから気をつけないと)
クリスティーナ、mは、レジから店の周りを見ると店の奥の天井にあるミラーに写った1人のエルフに目が止まった。
そのエルフは、挙動不審で周りを警戒している。クリスティーナは、注意深く観察するとエルフは商品を鞄に入れた。
「Вопрос в том, покинут ли они магазин в таком виде……」
(訳:このまま店を出るかどうか――)
すると案の定、エルフはそのまま店を出ようとする。
「待ちなさい‼︎」
それを見たクリスティーナも、すぐさまレジカウンターを飛び越えエルフを捕まえた。
捕まった瞬間、エルフは喚き始めるがクリスティーナは聞かずにバックヤードに連れていく。
「取ったもの出して――」
「Ich gulanturlismonya blooma şik ponoi ûya kopînac!!」
クリスティーナがそう言うも、エルフは聞かずにずっと喚いていた。
「もしかして―― 日本語出来ない? えっと―― キャ―― キャン―― ノットスピーク―― Япо… じゃなくてジャパニーズ?」
クリスティーナは、片言の英語で聞くもエルフは喚く一方だった。
「Чертовы эльфы……」
(訳:このクソエルフが……)
クリスティーナは、苛立ちながらもスマホを取り出して警察に通報する。
数十分後、万引きしたエルフは警察に引き渡された。
疲れ果てた顔で、クリスティーナは帰路に着く。
「ただいま――」
事務所に入ると、生気のない声で言う。
「はい―― はい―― 旦那様の強制送還を取り消して欲しい? いや、ちょっとそれは厳しいですね」
「キョセイ―― ソカン?」
恵は、どうやら顧客と電話していた。クリスティーナは、熟語が続いたため内容が頭に入っていない。
「――おかえり」
「え!?」
クリスティーナは聞き覚えのある声に驚き、ソファーを見る。そこには、警察に引き取られたはずの葵の姿があった。
「え、なんでいる?」
クリスティーナが、膝を曲げて葵と目線を合わせて言う。
葵は、小さな声で笑顔で答える。
「――今日から一緒に住むことになったよ」
「へぇ、よろしくね――」
そう言って、クリスティーナは右手を上げて葵の頭を撫でようとする。しかし、葵はその手を避けた。
「おかえり――」
電話が終わった恵が、葵を撫でようとしてたクリスティーナに話しかける。クリスティーナは、右手を下ろし立ち上がる。
「そうそう、葵ちゃんここで住むことになったわよ」
「それは葵ちゃんから聞いた。そういえば、さっきのキョセイ―― ソカンがどうこうって?」
「強制送還になりそうなエルフの旦那を助けてって」
「で、キョセイソカンってなに?」
「え、あんた知らないの?」
クリスティーナのその質問に、恵は少し驚きながらも言う。
「強制送還ってのは、入管の命令で国から母国に送り返されることよ。ついでに言っておくと、貴方も1年以上を超える実刑が言い渡されると永住権取り消されて強制送還よ」
「――気をつけよ」
するとクリスティーナは、大きくため息をついてソファーに座り込む。
「あら、バイト先で何かあったの?」
恵が聞くと、クリスティーナはアルバイト中にあった事を話す。
「クレーマーと万引きしたエルフのせいで疲れた」
「エルフね―― 最近、難民エルフが埼玉を中心に多いって聞いたけど――」
恵が、そう言うと葵は彼女に聞く。
「難民エルフって?」
「元々、エルフ人って言うのは国を持っていなくて森に住んでいたの。でも、20世紀に入ってから戦争が頻発するとエルフ人は土地を追われるようになったわ。しかも、第二次世界大戦中のドイツではいちゃもんつけられて迫害されたりしたの。その状況が今に至ってるってわけ。まあ、聞いた話だと観光ビザで入ってきて裏で出稼ぎしてるって言う話も聞いたけど」
「――難しそうな問題」