2010年以降、エルフ難民によるコミュニティが埼玉県を中心として関東各地に築かれるようになった。
多くのコミュニティは、地域住民と同化するための取り組みを進めてきているが、一部のコミュニティは難民という立場を利用して好き放題やっており警察の留置所や入国管理局の収容施設に収監されていた。
そして、その影は東京都港区にも広がっていた。
「いいか、我々は今こそ日本政府へ不当逮捕や不当な職質への賠償を求め、その賠償としてここ関東を我々の土地にするのだ!」
「いいぞいいぞ!」
「だが、その為には金が必要だ。分かるな?」
「この国には、コンビニエンスストアという形態の店が大量にある。そこから、金を取りまくればいい」
「おおー!!」
「何かあれば、在日エルフ支援機構に不当逮捕だの差別だの言えば守ってもらえる」
「ああ、俺たちも他県の連中に負けてられねえ―― やるぞ!」
「おお!!」
ところ変わって、クリスティーナのバイト先のコンビニでは日中からシルバーのセダンがずっと止まっていた。
「店長、あの車ずっと止まってます」
「あの車、昼頃からずっと止まってるんだよ」
クリスティーナとコンビニの店長は、その車を怪しんでいた。
「A班、ハウスマート桜町店前の駐車場にて張り込み中。現在、犯人グループと思われる集団は見当たりません」
車の中では、刑事が無線でそう報告する。
ちょうどその時、マスクとサングラスをした複数人の集団が店に入っていく。
「いrrrらっしゃいませ〜〜」
クリスティーナは、いつも通りレジで立っていた。
すると、入店してきた集団の1人が隠し持っていたリボルバー拳銃を発砲する。
「キャー!!」
「Что случилось!」
(訳:何が起きたの!?)
店内では、発砲音と客の悲鳴が響き渡る。
すると、集団のうち1人の男が鞄を持ってレジで動揺するクリスティーナに言う。
「カバンニカネイレロ、ゼンブイレロ」
『あ、はい。すぐ入れますかrrrら――」
男がカタコトで言うと、クリスティーナは要求通りレジを開けて全ての紙幣と硬貨を鞄に詰め込む。
「はい、全部入れました――」
「モットダ! バックヤードニマダアルハズダ!」
男はそう言うと、クリスティーナにナイフを突きつける。
「あ、はい!」
クリスティーナは、バックヤードに行きレジへの補充用の現金を探して持ってくる。
「こ―― これで全部です」
クリスティーナは、そう言って鞄に入れると男は鞄を持って言う。
「GO!!」
男はそう言うと、集団はすぐさま出口に向かって逃げていった。
「あ、カラーボール!」
クリスティーナは、当たった対象に特殊なインクが飛び散るカラーボールと呼ばれるものを取り出すとレジカウンターを華麗に飛び越え集団を追いかけ店の外に出る。
「Эй! подождите!」
(訳:待てコラ!)
そう叫ぶと、クリスティーナは集団達にカラーボールを投げようとする。すると、集団の1人がクリスティーナに向かって拳銃を発砲する。
「Черт!」
(訳:クソ!)
弾はクリスティーナの足元ギリギリの地面に被弾する。
「Не относитесь к вампирам легкомысленно!」
(訳:吸血鬼舐めんな!)
そう叫ぶと、クリスティーナはヤケクソになってカラーボールを集団に向けて投げまくる。
その時だった。シルバーのセダンから数人の刑事が降りてきた。
「警視庁だ動くな!」
「全員武器を捨て両手を広げて地面に伏せろ!」
刑事達は集団とクリスティーナに、拳銃を向けて静止する様に指示する。
だが、全員日本語の意が分からずじっと止まっていた。
「This is Tokyo Police! Drop your weapons and get down on the ground with your hands outstretched! Or I'll shoot you!」
1人の刑事が英語で呼びかけると、集団は英語を理解したのか指示に従ったがクリスティーナだけは英語も理解できずあたふたしたままだった。
集団は、刑事によって確保された。
「あ―― あの、何て言いました?」
クリスティーナ、恐る恐る刑事に聞く。すると、刑事はクリスティーナに拳銃を向けて言う。
「あなたは、この店の店員ですか?」
「はい、そうです―― ここでアルバイトしてます」
「じゃあ、あなたは大丈夫です。あとで記録を取りますのでそのままでいてください」
「はい――」
すると刑事は、クリスティーナに向けていた銃口を下す。
翌日、この強盗事件は全国ニュースで報道されていた。
「昨夜18時ごろ、東京都港区のコンビニで起きた強盗事件ではリーダー格のミチェル・ハルトマン容疑者をはじめドイツ国籍のエルフ6人が逮捕されました。彼らは、いずれも難民申請中だったとのことです」
恵と葵は居住スペースの居間でテレビを見ていた。
「いや〜〜、あんた酷い目に遭ったわね」
恵は、畳の上で寝転がるクリスティーナを見て言う。
「レポート書くのに警察署まで行かされて疲れた」
クリスティーナは、眠そうな声で言う。
その時、部屋の固定電話が鳴った。
「葵ちゃん出て」
恵は、そう言うと葵は無言で頷いて電話に出る」
「――――恵お姉ちゃん、裁判所?」
「裁判所? 今弁護関係の依頼は何も受けてないはずよ」
そう言って、葵から受話器を受け取る。
「はい、もしもし。電話代わりました愛坂です―― 国選弁護人に選任ですか? はい――はい――」
電話を切ると、今に戻る。
「メグちゃん、電話の相手誰だった?」
クリスティーナが、そう言うと恵はテレビを見ながら答える。
「国選弁護人に選ばれたって、しかもミチェル・ハルトマンっていう昨日のコンビニ強盗の犯人グループのリーダー」
「え!?」