ゼンレスゾーンアカデミア   作:かゆ、うま2世

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六分虚:ビギニング

「………なんだありゃ」

 

 

雄英高校ヒーロー科、一年A組

中国の光る赤子から始まった、ヒーローとヴィランがイタチごっこを続けるこの超人社会の中で、ヒーローを志す者が集う場所。俺、六分虚も例外ではなく、ちゃんと試験に受かってそこに来ていた

 

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」

 

 

……この会話は聞かなかったことにしよう。日本最高峰のヒーロー科だ。頭がおかしい奴ぐらいいるだろう。それがたとえヴィラン予備軍にしか見えない不良だとしても

 

 

『随分と乱暴な………ヒーロー志望、なんですよね?』

「……の、筈」

 

 

ああいう人間は心の中でブロック。最大限努力して関わりを減らすのが得策だ。あの人の眼中に存在しない石ころになるんだ。そうすれば、お互いに干渉せず時が過ぎていく筈

あ、なんかメガネ君が別の人に絡みに行ってる。情緒どうなってんのかな

 

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」

 

『寝袋とは……中々珍妙な』

「いや、あんな見た目でもヒーローだよ。抹消ヒーローイレイザーヘッドだ」

 

 

突如登場した寝袋に包まれた浮浪者のような風貌の男。あんなんだがれっきとしたヒーローだ。個性を消す個性を持った、メディアに殆ど露出しないアングラ系の

 

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

「早速だがコレ着てグラウンドに出ろ」

 

 

寝袋から取り出したのは所謂体操服。入学式って感じじゃないな。雄英の校風は自由、それは先生側も然り、か

 

 

「個性把握……テストォ!?」

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

 

思った通り、個性使った体力テストか。まあ、合理的ではある。体育館でじっとしてるぐらいなら、こうしてさっさとカリキュラムを進めた方がずっといい

 

 

「実技入試成績のトップは……六分だったな。中学の時、ソフトボール投げ何メートルだった?」

「いくつだっけ」

『虚、70メートルよ』

「70メートルみたいです!」

「じゃあ、円から出なきゃ何してもいい。早よボール投げろ」

 

 

 

うんうん、例の不良君の舌打ちが聞こえた以外は特に問題なし。あの不良君、もしかして向上心ヤバいタイプだったりするのかな、やめろ、俺を見るな

 

 

「ボール投げ、かぁ……」

 

 

個性を使って、となると……うん。

適任が一人いる

 

 

「ルーシー」

 

 

円の中にしゃがみ込んだ俺の傍らに現れる、トゲつきのバットを構えた金髪の少女。今、この場で俺の中から彼女を呼んだ理由なんて、今更言うまでもないだろう

 

 

「ホームランですわ〜!」

 

 

軽く投げ上げたボールに、トゲつきバットのフルスイングがクリーンヒット。ボールは空高く打ちあがり、雲一つない青空へ消えた

 

 

「………953.4メートル」

「フライじゃなくて良かったぜ」

「しませんわよそんなこと」

 

 

その言葉を最後に、ルーシーは体を霧散させて俺の中へと戻っていった。今更だけどこれ良かったのかな。投げてないし、なんなら俺の体力テストなのにやったの俺じゃないし、なんかズルした気分。

 

 

「一キロ近ぇ!?」

「"個性"思いっきり使えんだ!さすがヒーロー科!!」

「なにこれっ、おもしろそう!」

 

 

クラスメイトの一部からざわざわとした声が聞こえる。普通に生きていれば、この年齢で思いっきり個性を使った経験なんてないだろう。大抵は皆、誰にも見えない所でこっそり練習するぐらい

 

 

「面白そう……か。ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

 

おっと、流れ変わったな

 

 

「よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 

まさかの初日から除籍をかけた体力テスト。阿鼻叫喚、歴史に残る一日目のスタートであった

 

 

 

 

 

 

「あら」

「あっ………」

 

 

次の種目は50メートル走。俺のペアは先程おもしろそう発言をかましたピンク肌の女子だった。さっきから微妙に気まずそうにしているのは、相澤先生の地雷を踏んだのが自分だという自覚があるからだろう

 

 

「……まぁ、その、気にすんなよ。えっと…」

「……芦戸三奈。はぁ、どうしよー…私のせいでホントに誰か除籍になったら……」

「流石に除籍は無いでしょ。真面目にやってりゃ」

 

 

スタートの構えを取る芦戸を横目に、ただ少し息を吸って、前を見た

 

 

「……?準備しなくていいの?」

「いや、してあるよ」

 

 

スタートの合図と共に、俺の体が持ち上げられた。走ってるのは俺じゃなく、ボール投げの時と同じく、いきなり現れたサメの尻尾を持つメイド

 

 

『3秒42ッ!』

「……これ、あたしがやる必要あった?バイクでいいじゃん」

「この短距離でバイクは意味わかんないだろ。ありがと」

「それもそっか。どういたしまして」

 

 

サメメイド……エレン・ジョーとの問答を終え、ルーシーと同じく中に戻っていくのを見届ける。2秒程遅れて芦戸がゴールした

 

 

「はやーっ!てかズルい!六分走ってないじゃん!」

「あはは。まぁ、疲れ知らずってわけでもないから」

「そうなの?ていうか凄い個性だね!メイドさんだったり、ボール打った娘だったり!召喚系?」

「そんなとこ」

 

 

めっっっっちゃぐいぐい来るな。これが陽キャであるか。今まで俺、陽キャに縁なかったからな

 

 

『たじたじであるな』

「やかましい」

 

 

残りは握力と、長座体前屈と……まぁ、結構あるな。皆に頑張って記録出して貰お

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 

ま、危なげなく一位だ。こればっかりは皆が強い。俺の個性は、文字通りあらゆる状況に対応できる個性だし

握力はカリンちゃんに頼んで、幅跳びはリナさんに背負ってもらって、持久走はシーザーにバイク乗せてもらって……

 

 

「最下位は……緑君か」

 

 

21位、最下位のところに表示された、緑谷出久の名前。ボール投げで指を折りながら高記録を出したのが最後で、それ以外はパッとしない点数だった。透明なだけの女子にすら負けてるあたり、なんか急ピッチで体仕上げたって感じだ

何より………

 

 

("同期"で覗いた個性がヘンだ……なんだアレ、滅茶苦茶強いのが、何個も何個も混じり合ってる)

 

 

俺の中に、青衣という人がいる。玉偶……機械の体を持つ治安官、らしい。名称は微妙に違うけど、多分警察とかその辺の組織だ

まぁ、重要なのはそこじゃない。重要なのは、俺の目と青衣の目を繋げられるってこと。繋げれば、青衣の目の機能を引き出せる

見えるのは個性だったり、身体能力だったり、割と結構細かく見れる

 

 

「因みに除籍は嘘な。君たちの個性を最大限引き出す合理的虚偽」

 

『は──────!!??』

「あんなの嘘に決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ」

 

(嘘、ねぇ………冗談キツいぜ、イレイザー)

 

 

緑君があの時自分の指を犠牲にする選択をしなかったなら、ヒーロー科から生徒が一人消えていた。それだけは断言できる

 

 

(ま、そうはならなかったからどうでもいいか。今はとにかく緑君の個性が気になる)

『虚の坊、気づいておるか』

(青衣?何か────)

 

 

感じたのは視線、校舎の陰にオールマイトが立っている。"同期"は現在も継続中。一切不明だったオールマイトの個性が、俺には見え────

 

 

(………なんだアレ、スッカスカじゃねえか)

 

「六分ー?どうしたのー?」

「ん……今行くよ」

 

 

すでに解散の指示が出されているため、教室に戻ろうと校舎に入っていく。今見たものについて考えを巡らせながら

 

 

 

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