ゼンレスゾーンアカデミア   作:かゆ、うま2世

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職場体験、疑心暗鬼

体育祭が終わっても、俺の心に晴れやかな気持ちなど欠片もない。都市伝説のスーパーヴィラン、それと関係があるかもしれないクラスメイト………その二つが、俺の中でぐるぐると渦巻いて、俺の心を曇らせる

 

 

(緑谷はヴィランなのか?だとしたら間違いなく複数個性持ち。個性を使う度に怪我をするのは演技?どうする、相澤先生に伝える───相手はどこまで俺の動きを把握してる?)

 

 

USJ襲撃から、存在自体はほとんど確定している雄英内の内通者。そしてその内通者と繋がっていると思われる超常黎明期の伝説的ヴィラン

順当に行けば内通者は緑谷だ。だけど、内通者は何も一人とは限らない。複数人の内通者、あるいは奴自身の個性による監視───クソ、何でもありかあのヴィラン

 

 

(助け求めた瞬間誰かに危険が及んだっておかしくない。俺だって、今狙われないって保証はどこにも無い……!)

 

 

大きな障害になりそうだ、とあのヴィランは言った。障害は取り除くものだ、それが大きなものであれば尚のこと

どこまで、何をすればいい。誰を信じればいい?クラスメイト、教師、プロヒーロー、近所の人。目に映る全ての人間が疑わしく見えてきた

 

 

「────ぃ、おい、六分」

「────あ、はい」

「次お前」

 

 

クラスメイトと先生の視線────あぁ、そういえばヒーローネーム決めの最中だった。確か職場体験だっけ……体育祭で活躍したやつには指名が行ってるらしいけど───あぁ、そういえば俺にも一件来てたな。誰かは大体予想つくけど

 

 

「ヒーロー名は……ホロウで」

 

『……虚君、それは』

 

 

中の朱鳶さんが苦い声を漏らした。そりゃそうだ。彼女達にとっては世界を壊した大災害、その名を冠してヒーローになるだなんて。きっと誰もいい気分はしないだろう

でも、世界は白と黒だけじゃない。この世の殆どを塗り潰すグレーに手を伸ばさなきゃ、きっと世界は変えられない。俺が、いつかそうしてもらったように

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「いや本当、ありがとうございますマニュアルさん」

「お礼される事でもないよ。それに、君入試一位だったんでしょ?」

 

 

職場体験。俺はマニュアルさんの管轄するヒーロー事務所にお世話になる事になった。マニュアルさんかなとは思ってたけど、本当に指名してくれたのか……

打算っぽい事言ってはいるけど、そんなつもりが微塵もないのはわかってる

 

 

「てか、飯田も来てたんだな」

「………あぁ」

 

 

市街パトロールを終え、事務所へと戻った直後。職場体験先が同じだったクラスメイト、飯田君へと視線を向けた

飯田君がここにいるって事は、恐らく指名を受けたんだろうけど……ちょっと妙だ。言い方は悪くなるけど、飯田君ならもっといいところから指名もらえる気もするんだが……

 

 

『虚、ヒーロー殺しよ……保須でインゲニウムがやられてる。個性も似てるし、多分弟さんよ』

「あー………」

 

 

ジェーンの言葉から察するに、多分飯田君の目的はヒーロー殺しへの復讐……?

あくまで推察でしかない。本当に来たくてマニュアル事務所に来た可能性だって十分ある

下手なことは言えない、言えないけど……

 

 

『治安官としては感心できない行為ですが……』

(証拠も何もないし、デリケートな話だからなぁ)

『ヒーロー殺し…クソ、早いとこ捕まえないと……』

『セス坊、今の我らは治安官ではない。我らの行動の責は虚の坊が担うことになる。全てにおいて、判断を下すのは虚の坊だ』

『……わかってます、青衣先輩』

 

 

俺の中の特務捜査班の会話に耳を傾ける。そっちの事情に口出しするつもりはないけど、そのヒーロー殺しとやらには俺も少し思うことがある

俺から言う事も無いし、してやれる事もない。とりあえずは飯田君が変な事しないように気を配るしかないか

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「君、ヒーロー殺し追ってるんだろ」

 

(言った!!!!!)

 

 

俺だけじゃなく、中の全員も同じ反応だった。目を背けてた飯田君の事情を言い当てていくマニュアルさん。大人として放置はできないし、正しい行動だと俺も思うけど

 

 

『………がっつり言ったのう』

『まぁ、放置するよりはいい選択ですわ』

『うんうん!暗い顔は似合わないって〜』

 

 

……兄を傷つけられてここまで怒るあたり、飯田君は白でいいのだろうか。復讐なんて、ヒーローとしちゃやっちゃいけない事なのかもしれないけど……俺も、皆が傷つけられたら何するかわからない

 

 

「視野がガーッとなっちゃってそうで……」

 

 

頭の横に置いた両腕を前後に動かしながらの言葉だった。視野が狭まっている───確かにそうだ。今の飯田君はヒーロー殺ししか見えてない。自分の復讐が、人にどんな影響を与えるのか、見えていない

 

 

「飯田君」

「っ……なんだ、六分君」

「一般論しか言えないし、俺が飯田君の立場ならどうしたかなんてわかんないけど……やめとけ。まず第一に、お前が危ない」

 

 

ヒーロー殺し。ヒーローの殺害数は確か40を超えていたはずだ。プロヒーローをそれだけ殺し、今尚逃げ続けているその実力。卵に過ぎない学生が、それも単独で挑んでいい相手じゃない。

 

 

「個人的には復讐もいいと思うけどね」

「虚君!?」

 

 

マニュアルさんの梯子を外されたかのような顔がなんとも面白い。ヒーローだって一人の人間なのだし、それに振り回されるような事が無ければ恨みを持つのも悪くない

 

 

「けど、やめとけよ。委員長いなくなんのやだし」

 

 

………今思えば、この時

『復讐やめます』って言うまで殴るぐらいしておくべきだったのかもしれない

 

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