荊州南陽郡、その政庁の一室にて、腰までの長い黒髪を持ち、眼鏡をかけた一人の女性が書類の作成に当たっていた。
竹簡に文章を筆でつらつらと記していたのだが、不意に手を止めてぼんやりと窓の外に広がる青空を見つめ、ため息混じりに呟いた。
「・・・なんでこうなったんだろ?」
私の姓は橋、名は瑞、字は伯嶺、真名は東雲。
橋瑞・・・どっかで聞いたことあるような名前だけれど、たぶん結構ありふれた名前なんじゃないかな?
後漢帝国のとある地方都市の政庁につとめるごく普通の下級官吏のごく普通の娘だ。
字の伯嶺だって日本で言うところの太郎さんっていう意味らしいし、やはり平凡な名前だ。
別に、父親の裏の顔は王朝に使える暗殺者集団の長だとか、母親は騎馬民族の族長だったとかそんなことはなく、父はごく普通の洛陽郊外のある小さな町に勤める下級官吏で母は同じくその町の警備隊の仕官だった。幼馴染だった二人はごく普通に恋愛をして、ごく普通に結婚をして、そして数年後にごく普通に子供を授かった・・・そんなごく普通の家族だった。
でも私は少し違う。私は実に不思議なことに、前世の記憶を持っていた。
記憶が目覚めたのは私が5歳になった頃のこと。
よくある授乳プレイとかそういう感じの周知プレイをしなくて良かったのは幸運だったといえる。
記憶によると、前世の私は日本の地方に住むごく普通の大学生(♂)だったんだけれど、ある日トラックに惹かれてしまい、直後に会った変な爺さんから「君ちょっと後漢末の時代に逝ってきてね?」とか言われた後、気がついたらこの後漢王朝の時代にいて女の子になっていたというわけだ。つまりは極ありふれたよくあるTS転生とか言うやつです。
大体小説だとこういう過去とかに転生したら現代知識を生かしてチートするっていうのがよくあるパターンらしいんだけれど・・・残念ながら私にはほとんど何の技術の知識も持ってはいなかった。
よく異世界トリップやタイムスリップとか転生とかしたら農業やればいいんじゃね?なんていわれているけれど、私の実家は畑も田んぼもやってなかったし私自身農業やった経験なんてなかった・・・小学校の夏休みの宿題にあった朝顔の観察って農業に入りましたっけ?
味噌?醤油?・・・大豆から作るのは知っているけれど作り方がわかりません。
また、大学で歴史を勉強していたっていってもやっていたのは西洋史や日本史だし東洋史・・・それも後漢時代なんて横山先生の三国志や蒼天航路、komeiの三国志か、そうでなければ三国無双で孔明がビームをこう、ドバーッて出すことしか知らない。ああ後、董白ちゃんprpr
確か、そもそも三国志ってなんか黄巾の乱って言う反乱が起こってその後gdgdになった挙句に国が魏呉蜀の三つに分かれちゃったって言うやつでしたっけ?
勉強もあんまりできなかった。
この時代の勉強って言うのははっきりいったら暗記物だ。
優れた官僚って言うのは礼記やら史記やら論語やらを暗唱できて何ぼっていうことらしい。まぁ、当たり前のことかもしれないけれど そんな膨大な文章量を暗記なんてできんわ。
また、下級官吏でも大体漢字を1万字書けないとなれない仕事だった。
後、なんか場合によっては詩も作らなきゃならないらしいんだけれど、そっち方面の私の才覚は「柿食えば~」で止まっているのだから文才なんてない。あるわけない。杜甫?李白?・・・知らない子ですね。
そもそも、頼みの綱の現代知識だってそんなたいしたことを知っているわけでもないものだから、それほど役に立つことはなかった。
武術だってできなかった。大体神様に会ったら武術チートとかできるって聞いたんだけれどアレもうそだったようで、ためしに警備隊の指揮官やっている母さんから槍を教えられてましたが「あんたは才能ないね」と苦笑交じりにいわれれてしまった・・・つらい
一応、高校時代に弓道部にいたけれど・・・この時代ってほとんど弩を使うらしい。度って言うのはボーガンのこと。弓道部にいたっていってもめちゃくちゃ弱かったですしね。
一応今でも練習はしていますが・・・
つまりこっちもあまり役に立たちません
つまり、結論を言うと転生チートなんてなかったんや!・・・ということになりますね。
・・・なんでこんな時代に転生したんだろ?もっと優秀な人がなるべきだよこういう場合はまぁ、下手にチート知識なんて持っていても多分厨二病でも拗らせたかもしれないし、そういう面で考えるならば、分相応という意味ではそれはそれで良かったのかもしれないけれど。
大体そんな感じなので天才とかチートになんかにはなれませんでした。
いやまぁ、前世でも凡人だった人間がいきなり天才なんかになれるわけもないし、いきなり物を無限に出せるようになったり、SLB撃てるようになる方がおかしいか。
もうすぐしたら多分戦乱か何かが起こるかもしれないけれど、まぁ、そうなったらそうなる前にとりあえずさっさと安全なところにトンズラでもするとしましょう。
そして時は流れ、私は南陽郡は棘陽県にて郡尉曹書佐の職についています。
私の両親は洛陽のある司隷河南郡の出身なんだけれど、私が生まれてしばらくしてからこっちにやって来ることになったのだそうです。
尉曹っていうのは郡における軍の責任者の一人ですね。他に塞曹や兵曹とかがいます。
そして、私はその中の一人、尉曹の部下の事務員ですね。
ところで、なんでそんな職にお前が着けたのかって?
・・・ぶっちゃていえば、コネです!コネがあって何ぼというのがこの時代です。
人事登用制度に孝廉っていうのがあるのですが、それはすごい名声を上げた人間を公務員に推薦する。というものですが、大体の場合地方の豪族の子弟や身内が中央政界に参加していくためにこの制度が利用されているんだそうです。もちろん、それに選ばれる人は基本的にすごい勉強をされているそうですが、縁故採用ここに極まれりですね!
さて、私の父親が宛県に勤めていらっしゃる方と知り合いでして、その方の紹介をもらったんですよね
丁度、前任の方が退官されて欠員が出ているということでした。それで、読み書き計算と礼儀がある程度できる人を探していたらしいですが、一応私は私塾に通ってそれなりに読み書きもできましたので渡りに船だったとのことです。
ただ、そんな事情云々はともかく、私はとりあえず、拾ってくださった方の期待にこたえるべく日々仕事をしていくといったところでしょうか?
まあ、もしも危なくなったときになったらまた考えましょう。多分なんだかんだで大丈夫だと思いますし。まあ、気楽にいきましょう!
・・・そう思っていた時期が、私にもありました。
どうも、エーベルハルトと申します。
今回久しぶりにssを書かせてもらいました。
主人公は橋ズイです。
袁術の大将軍になった人らしいですが、ぶっちゃけ文官として使った方が役に立ったりしますので、私はいつも文官ないし僻地の徴兵用に使ってたりします。
小説家になろうの方にも別の名前でアカウントを持っておりますので、気が向いたらそちらでも挙げようかと考えています。
曹というものは太守の元で実務を行う方々ですね。
今の会社で言うところの課長や部長といったところでしょう。
主人公はその下の書佐・・・つまり一番下っ端であったりします。
追記
橋ズイを橋瑞に修正しました。