ヒトカスはもう、終わりですね() 作:伝説のスーパークロウ人
「お時間を頂き、ありがとうございます」
「あ、いえ。お気になさらず……」
……何でこうなったんだろう。
これ以上悪目立ちとかしたくないんだけど、実質的な雇用主、みたいな立場の人達に逆らいたくはない、追放ものとか洒落にならないし。
「私に対して、礼節は必要ありませんよ」
「……いや、流石に外聞が悪いんで……」
うへぇ、しかもよくあるお優しい人なお姫様だ。
「その
「……?」
「詳しくは言いませんが……私、いわゆる疎まれる立場、というものにある王女なので」
「率直に申し上げるとするならば、私よりも国王やお兄様に敬意を払った方が幾分か
「この場には、あなたと私以外に聞く者もいませんし」
「……」
確かに……とはならんけど。
なんか政治の黒い部分見えそうだしこれ以上は追及したくない、そういう問題は勇者様に投げてくれ。
「そういう問題でもないんで……この接し方は、諦めてください、ハイ……」
「……わかりました。強要するつもりもありませんので」
「っ……と、それで、俺に、何を?」
わざわざ王女様が言いに来るような……案件なのか、それともこのお姫様のフットワークが軽いのか、なんだけど。
「事務的なことと、個人的なこと……おおよそ二つ、になるでしょうか?」
「……」
「とりあえず、事務的なことから済ませてしまいましょうか」
「勇者様方を、こちらにお呼びすることになった理由及び、今後の方針について、です」
「……なるほど」
淡々と語るお姫様を見て、そう言えば、と。
まだ聞いてなかったな、今更過ぎるが。
「この世界は今、二つの危機に相対しています」
「一つは、魔王。魔族と呼ばれる在来の敵を纏め率いる侵略の王」
「彼の王は、今のところ緩やかではありますが、着実に攻めて来ている……とされています」
「……されています?」
それ脅威なんですかね、緩やかって言っちゃってるじゃん。
「実のところ、今はまだ魔族の王は人類に対する脅威とはされていません」
「……体の良い象徴、ということになります」
「あー……」
まあ、勇者を呼ぶなら魔王って言葉使った方が良いのか。
勇者と言えば魔王、魔王と言えば勇者、みたいなとこあるし、主観だけど。
「もう一つは、
「……
「突如として現れ、元々あったものを侵食し、モンスターを産む」
「……この世界で、最も人を……いえ、生物を脅かした大災害」
「……」
「それがダンジョン、勇者様方をお呼びした最大の理由です」
うわー……なんか、凄そう。
「これに対処する為に、勇者様方にはダンジョンに挑んでもらうことになると思います」
「……一つ、良い……っすか」
「はい。遠慮なく仰ってください」
「それを、わざわざお姫様が、なんで俺に?」
それ、纏めて広場かどこかで伝えてしまえば済む話だよな、とシリアルキラーは思うのよ。
一般人もそう思うだろうけど。
「ああ、それはあなたが邪魔だったからですね」
「はい?」
いきなり毒吐かれたんですけど。
「ああ、私が、ではなく。お兄様に、ですね」
「は、はぁ……」
……それ、何か違うのか?
「シリアルキラー……つまり、人殺し。その職業を持つあなたを、お兄様は必要としてないのです」
「必要ないですし、そんな物騒な人物に手間をかけるような人ではありませんから、私から伝えておくように、と」
「……厄介払い、と」
「その考えで間違いはありません」
……うーん、そんなに信用ならんかぁ……ならんわそりゃ。
「というより、世間体的にあなたのような職業の人を、危機に対する
「そういう意味合いもあるのではないでしょうか?」
「ごもっともな意見です、はい」
「……その分、私の方もやり易いのですけど」
「?」
そう言えば王女様は王女様でなんか用事あるって言ってたな。
「カイ・イサカ様」
「……」
「 私の側に付きませんか?」
「……はい?」
……え、どういうことですかねそれ。
「詳しい事情は、また別の機会に話させて頂きますが……
「その時に、あなたが私の側に……いえ、取り繕う必要はありませんね」
「あなたを制御する立場に私を置きませんか、という提案です」
「……えっと、それは……つまり」
勇者じゃなくて俺ってことは、そういうことだよな?
「 この国は将来、人を殺すと。そういうことですか」
「はい。もちろん、ダンジョンや魔物相手であれば、勇者様の能力の方が優れています」
「しかし、ダンジョンはともかく、魔族側の最終的な敵は人です、断言します」
「魔族は魔人と魔物の総称ですからね」
「……えっと、それをしてお姫様になんの利益が?」
「……そうですね、血を流し過ぎないため、と耳障りの良い言葉を使っておきましょうか」
「はぁ……?」
あー……ああ、うん、なんとなく読めたぞ。
将来、俺が活躍するorしてしまう場面が来る、その時に王様や王子様に任せたらバッサバッサと敵殺すことになると。
それが、耳障りの良い理由らしい、ラノベかよ。
……みたいなもんでした。
「本当の理由は?」
「ご想像にお任せします」
「出世、クーデター、抑止力……どれであると思ってもらっても構いません」
うわぁ、一番大事なとこ誤魔化された。
人は良いお姫様だけど、ちゃんと世間の生き残り方も知ってる強かな部類の人だった。
「……」
「これに関しては、今すぐ決断する必要はありません」
「……というより、殺人について即断即決をされては、こちらが困ってしまいます」
「……そっすね」
拒否するならまだしも、これだけで良いよとか言えるほど度胸はない、人殺しとか物騒な……。
「……じゃあ、お望み通り考えさせて貰います」
「そうして下さると、こちらとしてもありがたい限りですね」
「……ぁ、それともう一つ」
「?」
「……あの時、私のミスのカバーをさせる形になってしまい、申し訳ありませんでした」
「今、この場で正式に謝罪と感謝を」
「あー……いえ、そういうのは必要ないので……」
一番の被害者、ってか可哀想なのはあのちっこいのだし、うん。
「まさか、召喚術で魔族に変化する方がいらっしゃるとは思わず、そのまま読み上げてしまったのは、不覚でした」
「あれ、やっぱりイレギュラーなんすか」
「亜人系の方に変化する事例は、歴史を振り返れば稀にあるのですが……名目上は敵対している魔族に変化する方は、あの方が初めてですね」
相当なレアイベントだったと、嫌な幸運引いたな……あのピンク。
「……これは、私の主観と経験則に寄りますが」
「?」
「あの方への大々的な注目や嫌悪は、薄れているとは思います。それ以上の脅威を認識しましたから」
「ハハハ……」
まぁエッチな少女と、アブナイ青年なら、後者を注視するよね、そうだよね。
はぁ……いや、自業自得なんだけどね。
「ですが……人の欲は、その程度では……と思います」
「……そっすね」
「ええ、あの方はそれ以外の面でも優秀だと、判断されていますからね」
「今後も助けるのであれば、あの方のことを気にかけておくに越したことはないと思います」
「欲望とは、僻みや妬みによっても増幅されてしまう、脆い感情ですから」