ヒトカスはもう、終わりですね() 作:伝説のスーパークロウ人
「……ご忠告、ありがとうございます」
「お気になさらず。あの方には私も負い目がありますから、その縁で、ということに過ぎません」
会釈をして、その場を去る。
……クラスメイトはまだ話しているか既に自室に戻っているのか……多分、自主訓練とかしてるんだろうけど、やる気に満ちてるし。
「気まずいしそっちは行けないよなぁ」
なんせ俺だけいなかったんだし、あっち側に。
……にしても、だ。
「
それは、その通りである。
いや、あっちは助けられたとすら思ってないんだろうけど、そうなるような流れだったし、俺も便乗したし。
何でだ、って? なんか気まずいじゃんそういうので感謝されるのって、気まずくない?
ラノベの読み過ぎとか思われるかもだけど、こういう展開でわざわざ助けたって理解されながら動きたくないんだ、個人的に。
我ながら捻くれていると思う。
「恩の押し売りはしたくないし、これ以上助けたくもない」
薄情だって? いや、うん……そりゃ助けなきゃとは思う、良心の部分では。
でも、関わりたくないってのも本心なんだよな。
……今考えても結論でないかなぁ、ぐっちゃぐちゃだわ。
「……ん?」
廊下から覗ける、広場……この場所からなら、訓練場になるが。
「……何やってんだ?」
日が暮れ、設置されたランプや篝火のぼんやりとした明かりだけで照らされた、薄暗い訓練場。
その他の場所からは見えにくい、その場所にて……。
男が……多数?
「あれは、確か」
……てか、どれだけぼやかした言い方してもわかるな。
お察しの通りあれはうちのクラスメイトである、名前は……すまん知らん。
ただ、俺から見えてる奴らは。
元の世界にいた頃から
んー……まぁ、あいつらならアレだろ不良の溜まり場的なアレ。
委員長とかカースト高い女子とか、居心地悪いんだろな、部屋とか建物の中って。
「元々敬遠されがちだったんだっけ……?」
まずい、覚えてない。
いや、まあ想像するのは容易いんだが、よくあるオープンオタク的なタイプでな。
まあ、その、気持ち悪いとか言われて……た、か?
「とは言え、なんだ。中々珍しいものを見たもんだな」
よくよく見るとなんかすげえ組み合わせの集団なのだと気付く。
ザ・創作の世界のオタクって感じな見た目の男達と、委員長含むサッカー部やらバスケ部やらに所属してた筈のキラッキラの男達。
んー……ありゃ自主練か。
「環境が変わったならでは、の交流ってのかねぇ」
共通の敵ならぬ共通の敬遠対象が見つかったんだし、オタクの彼等の知識もこの世界なら役に立つんじゃなかろうか。
「ああやって団結できてるの見ると、嬉しいような悲しいような……」
誰か俺とも仲良くしてくれたりしない? しないよねぇ……。
てか自主練してるのは、十人程だが、他の奴らは何してるんだろうか。
「女子と、他の男連中か」
って、気にする必要ねぇわ何してんだ俺。
悪い癖だぞほんと、人間観察か読書くらいしか元々できることがなかったとは言え。
余計な思考を止め、自室に戻ろうと足を進める。
俺が今後、考えて行動すべきことは……そうだな。
「自分の身の振る舞い方、だよな」
助けるのか見捨てるのか、お姫様に判断を委ねるのか委ねないのか。
前者はまぁ……俺が偉そうに助ける助けないを判断せずとも誰かしら手を伸ばしそうなもんである。
後者はまだわからん。
「そもそも居場所がねぇな、ははは」
職業って何なんだろうなぁ。
まあどうにかなるか、するしかないだろう。
……そんなことを考えていたら、いつの間にか自室の前まで足を進めていた。
白い誰かとすれ違ったことにも気付かずに。
「……あの人は……?」
○△○
「ステータスカードに表される職業とは、己の可能性を示したものだとされています」
「才能、性質、その他の何か……それを示す基準となるものは、未だ明確にされてはおらず、また本当にそれが適正なのか、というものを示す証拠もありません」
「まあ基本的にはステータスカードが正しいということになっていますが」
「……なるほど」
やっぱり俺には警察に目ぇ付けられる才能があったらしい、おそらくだが。
この魔道具の名前はステータスカードと言うらしく、とてもありふれた道具でもあるらしい。
「……個人的には、ステータスカードが記す情報が全てではないと思います、が」
「やはり記された職業を極めることが大成する為の一番の近道であることは、否定しきれない一面であるとは思います」
「毎回毎回、お気遣いありがとうございます、お姫様」
あの時の一件を、余程……その、なんだ。
……懸念しているのか、否か?
まあ、とにかくそういう「形だけの情報」に対するアレコレをとても配慮してくれている、が。
「そういうのは、俺じゃなくてあの……カエデ? ってのにしてあげて下さい」
そう、あのちっこいのが今一番心配されなきゃならない立場である、大変だな。
周囲のクラスメイトの奇異の目とか……拒絶の念とか、とにかく変わり過ぎた環境の影響を最も受けたであろうあいつ。
「そうしたいところなのですが……いえ、そこは良いのです」
「いや良くない……と、言いますか、そもそも」
言葉の節々から、どうしようもできない事情への苦労のようなナニカを感じ取れるが、それ以上に気になることもある。
「……なんで、お姫様が俺に?」
「?」
「いえ、何故俺個人と対面してじゅ……その、座学じみたことをしているのかと」
フルプレートの兵士さんに案内された先にいたのはお姫様であった。
じゃなくてね?
その後兵士さんもどっか行っちゃうし……このお姫様、あまりに放任され過ぎでは?
「……では逆に聞いてもよろしいですか、イサカ様」
「はい」
相も変わらず微笑んでいるお姫様。
王族ってポーカーフェイスがなきゃ務まらないのかねぇ、怖い怖い。
そんなお姫様から紡がれた問い、というのは
「側に恐怖の対象がいる状態で、最高効率の学習は可能でしょうか?」
「……はい?」
……んん? ……んー……んん。
「常に殺されるかもしれない、という恐怖の中、座学に対して真面目に取り組めますか?」
「……あー……」
そういうことか、そういうことなのか。
「つまり、後ろにモンスターがいる状態はよろしくないと」
「そういうことです」
例のアレか、うへぇ強い。
「……しかし、随分と怖い人型モンスターが居たもんですね」
「そうですね。お兄様は教える立場として、そう言った懸念は排除したいと」
「……そういう経緯で、被害が少ない私があてがわれた、ということです」
「大胆な切り捨てですね」
「為政者としては間違いなく正しいと思いますよ」
うーんサッパリしてるぜこのお姫様。
なんかそういうものとして区切るのがとてもお上手、と言えば良いのか、悪いのか。
「……こんな身の上で言うのも、なんですが。話題になったついでに、一つ良いですか」
「ふふ、いつでも、どれだけでも構いませんよ。ここの生徒はあなた一人ですから」
「……じゃあ遠慮なく」
なんとなく気になっていても、なんとなく予想が付くから言い出さなかったのだが。
「一応、魔族は敵、みたいな認識ですよね」
「はい」
「良いんですかね? あのピンクの……カエデ、をそのままにしていて」
「……そうですね」
そこが、懸念点であり、楽観視している面でもある。
「あの方がサキュバスでなければ問題だったでしょう」
「サキュバスとインキュバス……つまり、淫魔という種族は昔から、少なからず人間
そういうこと、なんだろうなぁ。
うん、わかってたけども、とりあえず頑張って生きてくれ、ちっこいの。
「……」
「私から言葉にするのは、ここまでに。……あまり良いことでもありませんので」
「……っすね、ありがとうございます」
○△○
転移してから、はや二ヶ月。
クラスメイトが死んだらしい。