ヒトカスはもう、終わりですね() 作:伝説のスーパークロウ人
「……どーも、噂の殺人鬼様ですよ」
「……」
「……」
「……なんてのは置いといて、自己紹介させてもらうぞ」
どうしてこうなった?
○△○
それは突然だったな。
「そちらの世界における勇者という職業は、どうやら救世主や英雄と言った側面のイメージが大きいようですが、こちらでは少し意味合いが違います」
「確かに救世主、英雄という側面もあります。ですがそれは成した故の結果に付随するものであり、本質としては『仲間を率い道を拓く者』に相当するんですよ」
「……リーダーとか指揮官気質ってことですか、要するに」
「そういうことです」
はへー。
いやよくよく考えてみりゃそうなんだろうけどさ、勇者モノに仲間ってド定番だし、皆好感度は高いし。
仲間の行動を命令できたりするし……そっか、普段思い浮かべるアレって結果なのか。
「本職の指揮官との違いはやはり、前線で戦えるか否か、になるでしょう」
「……やっぱ、指揮官って後ろにいるものなんすかね」
「今までの歴史を参考にするなら、と言ったところでしょうか?」
「と、言いますと」
その日も座学で、職業による今までの得意不得意の傾向や、こちらの一般的なイメージなどの擦り合わせなんかをしていた。
「前線での勝手を知らなければ、組み立てた戦術にズレが生じる可能性を拭いきれませんからね」
「ですが、群体の戦闘における頭脳を、無闇に晒すと言うのも……リスクがありますし、この辺りは難しい問題です」
「となると勇者って中々……その、都合のいい存在である、と」
「そうなりますね」
「委員長達も、中々苦労しそうなことで」
……とまぁ、為になるのかならないのか非常に微妙な知識を積もらせていたところだった訳だが。
「失礼します」
「……何事ですか?」
珍しく、とてもとても珍しく。
お姫様の部屋に兵士がやって来たのだ、いつ振りだったんだろうなほんっとに。
少なくとも俺は、俺が初めてこの部屋に案内された時以来だが。
顔芸得意なお姫様が眉を顰めるぐらいだし相当珍しいと思う、王女の概念壊れてないかこの国。
「王子がお呼びです」
「お兄様が、ですか」
要件は、お姫様のお呼び出しということだった。
……まぁ、反応を見るにそれすら珍しい出来事であったのは想像できるが。
「わかりました、後程向かうと。お兄様に伝えておいて下さい」
「いえ、今すぐに、とのことです。それと……」
兵士が、こちらを一瞥する、なんですかね。
「イサカ様もお連れするように、とのことです」
「……」
うわ、あからさまに機嫌悪そう、険しい顔付きだ。
異世界の美人……まだ美少女か? まぁ顔がいい人が機嫌を損ねるってのは新鮮だし、日本人とはまた違った圧を感じるなぁ。
矛先俺じゃないし明らか場違いな考えだけど。
……まぁ、この時の俺は平和ボケしてた、ぶっちゃけ。
王女様との個別授業か、訓練場でぼっち自主練するしかやることがなかったんだっての、仕方ないじゃん、と弁明しておく。
月日が経つに連れて隔離行為の規模が拡大されていくのほんと面白い、面白くねぇけど。
「……何があったんですか?」
「……」
またこっちを見た、なんなんだ?
「……勇者様が亡くなられました」
「……!」
「…………は?」
なんて?
「 様含む、四名の勇者様が亡くなられました」
「故に、事情があれど戦力を放っておく訳にはいかない、とのことです」
「……わかりました、すぐに向かうとお伝え下さい」
亡くなった?
……あぁ、死んだってことか。
名前に聞き覚えはある。
四名……そうだ、それくらいの人数でわちゃわちゃと過ごしてた奴らだった筈。
「……イサカ様」
「ん、ああ。何ですか、お姫様」
「大丈夫ですか?」
これまた珍しく、心配そうな表情のお姫様、いっつも貼り付けたような笑みを浮かべてるのにな。
「……大丈夫じゃない様に見えました?」
「いえ」
そうではないらしい。
「一応の確認です」
「ご友人を亡くされた、ということになるのですから」
「……ご心配、おかけしました」
確かに衝撃的ではあるんだが、何だろう。
「でも、不思議と悲しさは薄いんで、ご心配なく」
「そうですか」
一緒に馬鹿して笑い合った訳でもなく、汗水流して訓練した訳でもないから、だろうか。
不思議と沈んではいないのだ、すまん。
○△○
んで、なんやかんやあって今に至る。
説明雑って? クラスメイトの阿鼻叫喚が聞きたいんなら話すが。
わざわざ聞きたいもんでもないよな、ってことで今の状況は、というと。
「ホタルです、イセノホタル。後でわかるとは思いますけど、戦闘には期待しないでくださいね」
「俺はカエデだ。……その、よろしく」
「ああ」
亡くなったメンバーはそれなりに優秀なチームだったらしい。
だから、というわけでもないらしいのだが、俺も今回からちゃんと実戦を経験できるようになるらしい。
「一つ聞いても?」
「なんだ」
「どうして今まで……というのは、なんとなくわかりますけど。なぜ今更?」
直球だねぇ、手っ取り早いのは嫌いじゃないんだけどさ。
「察しが良くて助かるよ」
「それはどうも」
「簡単な話だよ、
「……そういうことですか」
「???」
王子様も可哀想だよなぁ、指導者、為政者としてはちゃんとしてたってのに、周りはそうも行かないんだから。
「じゃなきゃ俺みたいなのを王子様が許すことにはならんだろうよ」
「理解しました。……まぁ、許したとは言い難い人選だとは思いますけれど」
「ごもっとも」
「えっと……?」
殺人鬼に非戦闘系に厄ネタだもん、こんなん切り捨てパーティ以外の何者でもねぇよ。
「ついでに言えば俺達の手綱を握ってるのは王子様じゃなくてお姫様だ」
「体の良い爆弾処理、と言う訳ですか」
「僻地に投げ捨ててるの鑑みたら、爆弾ってより核兵器かもな」
「同じことですよ」
「……まあ、あんたにはツキがなかったな」
「あるものでやりくりするのは、私の……商人としての腕の見せ所、とでも言っておきます」
「……商人なのか」
思ってた数倍非戦闘系だったわ、戦わない職業代名詞と言うべきか。
「先に言っておきます、このチームの責任者は私、ということになっています」
「そして、私は必要なら切り捨てることに躊躇いはありません」
「……とりあえず、切り捨てられないよう、命大事に動いてくださいね?」