レゼといい早川家崩壊といい、チェンソーマンによって曇らされ、そして新しい扉を開いたという方は決して少なくないハズ。かく言う私も、それなりに曇らせは好きでしてね···フフ···。
まあでも今作にシリアスは似合わないので、原作は完膚無きまでにブチ壊れました(事後)。
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《Sideレゼ》
とうとう、お祭りの開催日がやって来てしまった。たった2週間きりの友情ごっこも、これでおしまい。
ごった返す喧騒の中、屋台を巡る。
楽しい···
私たちは長い階段をゆっくり上り、誰も人が来ないという高台へやって来た。
「この場所、カフェのマスターに教えてもらったんだ。花火が一番見えて、誰も人が来ないマル秘スポットなんだって」
「ふ〜ん」
木でできた柵にもたれかかって、眼下に広がる住宅街や畑を眺める。
少しの沈黙の後、切り出したのは私だった。
「···ねえ、デンジくん」
「ん?」
「いろいろ考えたんだけどさ、やっぱり今のデンジくんの状況おかしいよ」
「···」
「16歳で学校にも行かせないで悪魔と殺し合いさせるなんて、国が許していい事じゃない」
···これは、私がずっと誰かに言って欲しかった言葉。心からの言葉。
手を掴み、目を見て、これだけは混じり気のない想いをぶつける。
恋愛感情と友情、どちらがそうさせたのかは分からないけれど。
「仕事辞めて···私と一緒に逃げない?私がデンジくんを幸せにしてみせる。一生守ってあげる。···お願い」
これは分岐点だ。
万が一、私と一緒に日本の公安から逃げる選択をしてくれたなら···私はその通りに行動する。
苦難は多いだろうが、今よりも悪くなることはない···と信じたい。
「逃げるって···どこに?」
「“知り合い”に頼めば、絶対に公安から見つからない場所があるの。そこでだって···すぐは無理でも、学校に行けるはず。デビルハンターもしなくて済む」
「なんでレゼがそんなこと···」
「だって私···デンジくんが好きだから」
「······なんでそんなに悩んでるの?デンジくんは私のこと嫌い?」
「好き···だと思う」
「···なにそれ」
「だけど···俺、最近仕事認められてきてさ、監視がなくても遠くへ行けたりするし···クソみたいな性格んバディの扱い方も分かってきた。イヤ〜な先輩ともやっと仲良くなってきたんだ。仕事の目標みてえなモンも見つけてさ。だんだん楽しくなってんだ···。確かにデビルハンターは痛えし危険かもしれねーけど楽しいことも多いし、前も話したけど、そのうち学校にだって行ける」
「公安で仕事続けながら···レゼと会うのじゃダメなの?」
···私は日本の女子高生じゃない。
ソ連の兵士だ。
今の時期は、世間一般では夏休みにあたるから誤魔化せているけど、これ以上の現状維持はもう不可能。
だから、『公安からの逃走』か『それ以外』か。
私とデンジくんには、それ以上の選択肢は無い。
何度目かの沈黙と未練を、私は完全に断ち切ることに決めた。
「···そっか分かった。デンジくん、私の他に好きな人いるでしょ」
「え?」
大輪の花が夜空に打ち上がった瞬間、私はデンジくんとキスをした。
ありったけの“想い”を込めて。
舌を絡め、唾液を交換し合う激しい接吻。
鳴り止まない花火の音を背景に···私はデンジくんの舌を噛み切った。
そして、千切れた舌から血を流す
これは───宣戦布告だ。
日本の女子高生からソ連の兵士へと戻った私が、ナイフを振り上げてターゲットの首を切り裂こうとした瞬間──サメの悪魔と
「ダッシュ!!」
「え!?」
サメの悪魔がターゲットを抱えて、柵を越えて高台から飛び降りた。
···筒抜けだったのに今まで泳がせてたってことか、性格の悪い!
首のピンを引き抜き、爆弾の悪魔に変身する。
支配の悪魔については、その概要だけはソ連にも知られている。
──曰く、公安と
──曰く、普段は温厚だが、キレると極めて危険。
──曰く、近接戦闘においては、
それだけならまだしも···どうやら、戦力は目の前のコイツ1人だけでは無いらしい。
支配の悪魔の後ろから、ペストマスクを付けた魔人と、気弱そうだが包丁を構えた女が現れた。
ぱっと見ただけでも、それなり以上の手練れ。
ならば高台の下から逃げるか?
そう思いチラリと見るも、そこにも別働隊の存在が確認できた。
八方塞がりだ。ほんの僅かな隙もない。
爆発で飛べば、逃げ切れる可能性も僅かながらに存在するのではないか···そんなお気楽なことを考える余地すら一片たりとも残っていない。
空中へ逃げようとしても、その前に捕縛されるのが関の山だ。
私は最初から、“詰み”だったらしい。
無駄と分かりきっている抵抗をする気も失せ、私は支配の悪魔の“鎖”によって捕縛され、公安へと連行されていくのだった。
◆◆
《Sideアキ》
「アァ゙ッ、痛え···!」
「ほら血だ、飲め」
高台の下で待機していた俺たちは、手筈通りにサメの悪魔が抱え飛んできたデンジを処置する。
まずはチェンソーをふかして千切れた舌を治癒。
そして持ってきていた輸血パックにストローを差し込み飲ませる。
「···助かったぜ、アキ」
「チョロすぎんだよ、お前は」
“チェンソー”の心臓を狙ったハニートラップ。
ヤクザの襲撃
「マキマさんからはもう聞いてるけどよ···レゼがソ連のスパイってマジなの?」
「そうだ。証拠も掴んでる」
「だけどさ、レゼがそんなに悪いヤツだとは思えねーんだ。全部がウソだとは···」
「···その証拠も、マキマさんが引き出した。マキマさんは元々、ソ連に対して懐疑的だったらしいしな。詳しいことは分からないが···まあとにかく、もう大丈夫だからお前は休んでろ」
「そっか···そりゃ良かったぜ」
爆弾の悪魔──レゼを拘束する任務について説明されたとき、岸辺隊長から聞かされた話がある。
ソ連の母親が、子供を叱る時にするおとぎ話がある。
『軍の弾薬庫には秘密の部屋があって、その部屋は親のいない子供たちでぎゅうぎゅうにあふれている。』
『そこにいる子供たちに自由はなく、外にも出られない。モノのように扱われ、死ぬまで体を実験に使われる···。』
長い間ただのおとぎ話とされてきたが···その秘密の部屋は、本当にあったと新聞に載った。
デンジを狙ったのは、その部屋の1人。
ソ連が国家に尽くす為に作った戦士···
そんなヤツをマキマさんがほっとくワケがない。
だからこそ俺は、あの
◆◆
《Sideレゼ》
檻の中···ではなく、なぜか公安のビル内へと連れられた私。
両手首を鎖で縛られてはいるけど、それだけ。
私を支配しようとする素振りすら無い。
「着いたよ」
マキマが開き戸を開けると、そこは──
「···会議室?」
──
会議用の大きな机に、黒のワークチェア。
隅には観葉植物が置かれ、壁の一面には大きなホワイトボードが掛かっている。
壁を見ても、防音処理が施されているわけでもなさそうだ。観葉植物の対角線上に置かれたテレビは少し浮いているけれど、他に特筆すべきことは無さそうだ。
「耐衝撃かつ防音タイプの会議室もあるけど、落ち着いて話せる場所だったらどこでも良かったんだ。まあお互いにとって大事な話だし、真面目に話し合おうと思って会議室をお借りした」
「···話?私を支配するんじゃないの?」
「悪人や悪魔以外に使うのはイヤなんだ。確かに悪魔らしくないかなーとは思うけどね」
そう言って、目の前の女は苦笑した。悪魔らしくないというのは、自虐···なのだろうか。
実際、目の前の女からは緊張こそすれ、こちらに対して悪感情を持っているふうには見えない。
「レゼちゃんには、公安に入ってほしいんだ」
「···私が仮想敵国のスパイだって知ってるよね?私が暴れたら、相応の被害が出るよ」
「レゼちゃんのことは調べた。···過去に数回、上官への不服従で処罰されてるね。それでも殺害は免れている」
「だから何?」
「君は“あの部屋”へ歯向かった、勇気と力を持つ
「話がうますぎる。私がソ連から離れた場合“報復”もあり得るし、私が公安に受け入れられるとは思えない。そっちのリスクとリターンが明らかに釣り合ってない···どうせ裏があるんでしょ」
半ばヤケクソ気味に答える。
目の前にいるのは高位の悪魔だ。
どうせ逃げられないし、何かしら企んでいるんだろう。これは口だけの、ささやかな抵抗だ。
「···あーあ。バレちゃったのなら仕方ないか。そうだよ。私の本当の目的は───」
「───新鮮なデンレゼを生で見ることだよ」
「·········」
何を言っているのか、分からない。
話が一向に見えてこない······。
否。
理解はしている。確かに分かっている。
だけど脳がそれを受け入れてくれない!
「ずっと···見たかったんだ。2人が真っ当に暮らして、友情であれ恋情であれ、ゆっくりと育んでいく様を。···あ、だからレゼちゃんにはデンジくんと同じ学校に行ってほしいんだ。これは命令···ではないけど。別の学校でもそれはそれでいいよねぐふふ。義務教育を受けれてないってのも良くないので、どのみち学校には行ってもらうからよろしく。···ああ···デンレゼ···愛を育み結ばれる2人···たまに私も混ぜて欲しいなあ。さんぴー。いや、私という不純物は要らない?そんな···私もデンジくんと······でもでも、邪魔者は去って観戦に徹したほうがいいかな···寝る前の戦···大運動会···暗い部屋に響く嬌声······おっと鼻血が。ポケティーポケティー。ふふ···オタク女の血が騒ぐ···私の望む世界が、その無限大の可能性がここにあるんだ···なんとしても護らなければならぬ······ッッッ」
「······まあそんなわけで、レゼちゃんの安全は私が命を懸けて護るから。安心してね」
············。
とりあえず、命の危険は無さそうだけれど。
コイツヤベー女だ。怖い。
というか、デンジくんってこんな女にロックオンされてるの?えええぇぇ······。
優しく微笑まれても、さっきの話をした後じゃ余計に怖いだけだし、ポケットティッシュが鼻に詰まっている状態じゃあ、なんとも締まらない。
デンジくんへ抱いていた“恋”のようなモノが、一気に萎んでいくのを感じた。
彼とは、友人くらいが丁度いいのだろう。
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結局、レゼちゃんはデンジの女友達ポジションにおさまりました。毎日楽しそうです。良かったね。
とにかく、デンレゼの呪縛からは逃れられたレゼ。しかし今度は、クァンシからの熱烈アプローチに悩まされることになったのですが···それはまた、別の話です。