クソ雑魚マキマさんの日常(本編完結)   作:訥々

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レゼ篇③(終) 支配・爆弾・チェンソー

レゼといい早川家崩壊といい、チェンソーマンによって曇らされ、そして新しい扉を開いたという方は決して少なくないハズ。かく言う私も、それなりに曇らせは好きでしてね···フフ···。

まあでも今作にシリアスは似合わないので、原作は完膚無きまでにブチ壊れました(事後)。

 

──────────────────────

 

 

 

《Sideレゼ》

 

とうとう、お祭りの開催日がやって来てしまった。たった2週間きりの友情ごっこも、これでおしまい。

ごった返す喧騒の中、屋台を巡る。

 

楽しい···()()()楽しいと思えた時間はしかし、すぐに終わってしまった。あっという間に日は落ちて、花火ももうすぐ上がるだろう。

 

私たちは長い階段をゆっくり上り、誰も人が来ないという高台へやって来た。

 

「この場所、カフェのマスターに教えてもらったんだ。花火が一番見えて、誰も人が来ないマル秘スポットなんだって」

「ふ〜ん」

 

木でできた柵にもたれかかって、眼下に広がる住宅街や畑を眺める。

少しの沈黙の後、切り出したのは私だった。

 

「···ねえ、デンジくん」

「ん?」

「いろいろ考えたんだけどさ、やっぱり今のデンジくんの状況おかしいよ」

「···」

「16歳で学校にも行かせないで悪魔と殺し合いさせるなんて、国が許していい事じゃない」

 

···これは、私がずっと誰かに言って欲しかった言葉。心からの言葉。

手を掴み、目を見て、これだけは混じり気のない想いをぶつける。

恋愛感情と友情、どちらがそうさせたのかは分からないけれど。

 

仕事辞めて···私と一緒に逃げない?私がデンジくんを幸せにしてみせる。一生守ってあげる。···お願い」

 

これは分岐点だ。

万が一、私と一緒に日本の公安から逃げる選択をしてくれたなら···私はその通りに行動する。

苦難は多いだろうが、今よりも悪くなることはない···と信じたい。

 

「逃げるって···どこに?」

「“知り合い”に頼めば、絶対に公安から見つからない場所があるの。そこでだって···すぐは無理でも、学校に行けるはず。デビルハンターもしなくて済む」

「なんでレゼがそんなこと···」

「だって私···デンジくんが好きだから」

 

「······なんでそんなに悩んでるの?デンジくんは私のこと嫌い?」

「好き···だと思う」

「···なにそれ」

「だけど···俺、最近仕事認められてきてさ、監視がなくても遠くへ行けたりするし···クソみたいな性格んバディの扱い方も分かってきた。イヤ〜な先輩ともやっと仲良くなってきたんだ。仕事の目標みてえなモンも見つけてさ。だんだん楽しくなってんだ···。確かにデビルハンターは痛えし危険かもしれねーけど楽しいことも多いし、前も話したけど、そのうち学校にだって行ける」

 

公安で仕事続けながら···レゼと会うのじゃダメなの?

 

···私は日本の女子高生じゃない。

ソ連の兵士だ。

今の時期は、世間一般では夏休みにあたるから誤魔化せているけど、これ以上の現状維持はもう不可能。

だから、『公安からの逃走』か『それ以外』か。

私とデンジくんには、それ以上の選択肢は無い。

 

何度目かの沈黙と未練を、私は完全に断ち切ることに決めた。

 

「···そっか分かった。デンジくん、私の他に好きな人いるでしょ」

「え?」

 

大輪の花が夜空に打ち上がった瞬間、私はデンジくんとキスをした。

ありったけの“想い”を込めて。

 

舌を絡め、唾液を交換し合う激しい接吻。

鳴り止まない花火の音を背景に···私はデンジくんの舌を噛み切った。

そして、千切れた舌から血を流す()()()()()に、私が噛みちぎった“モノ”を見せつける。

これは───宣戦布告だ。

 

日本の女子高生からソ連の兵士へと戻った私が、ナイフを振り上げてターゲットの首を切り裂こうとした瞬間──サメの悪魔と()()()()()()飛び掛かってきた。

 

「ダッシュ!!」

「え!?」

 

サメの悪魔がターゲットを抱えて、柵を越えて高台から飛び降りた。

···筒抜けだったのに今まで泳がせてたってことか、性格の悪い!

首のピンを引き抜き、爆弾の悪魔に変身する。

支配の悪魔については、その概要だけはソ連にも知られている。

 

──曰く、公安と()()()()()使役されている。

──曰く、普段は温厚だが、キレると極めて危険。

──曰く、近接戦闘においては、()()クァンシに匹敵する···!!

 

それだけならまだしも···どうやら、戦力は目の前のコイツ1人だけでは無いらしい。

支配の悪魔の後ろから、ペストマスクを付けた魔人と、気弱そうだが包丁を構えた女が現れた。

ぱっと見ただけでも、それなり以上の手練れ。

 

ならば高台の下から逃げるか?

そう思いチラリと見るも、そこにも別働隊の存在が確認できた。

 

八方塞がりだ。ほんの僅かな隙もない。

爆発で飛べば、逃げ切れる可能性も僅かながらに存在するのではないか···そんなお気楽なことを考える余地すら一片たりとも残っていない。

空中へ逃げようとしても、その前に捕縛されるのが関の山だ。

 

私は最初から、“詰み”だったらしい。

無駄と分かりきっている抵抗をする気も失せ、私は支配の悪魔の“鎖”によって捕縛され、公安へと連行されていくのだった。

 

 

◆◆

 

 

《Sideアキ》

 

「アァ゙ッ、痛え···!」

「ほら血だ、飲め」

 

高台の下で待機していた俺たちは、手筈通りにサメの悪魔が抱え飛んできたデンジを処置する。

まずはチェンソーをふかして千切れた舌を治癒。

そして持ってきていた輸血パックにストローを差し込み飲ませる。

 

「···助かったぜ、アキ」

「チョロすぎんだよ、お前は」

 

“チェンソー”の心臓を狙ったハニートラップ。

ヤクザの襲撃()()と合わせて、デンジが狙われたのは二回目か。

 

「マキマさんからはもう聞いてるけどよ···レゼがソ連のスパイってマジなの?」

「そうだ。証拠も掴んでる」

「だけどさ、レゼがそんなに悪いヤツだとは思えねーんだ。全部がウソだとは···」

「···その証拠も、マキマさんが引き出した。マキマさんは元々、ソ連に対して懐疑的だったらしいしな。詳しいことは分からないが···まあとにかく、もう大丈夫だからお前は休んでろ」

「そっか···そりゃ良かったぜ」

 

 

 

爆弾の悪魔──レゼを拘束する任務について説明されたとき、岸辺隊長から聞かされた話がある。

 

ソ連の母親が、子供を叱る時にするおとぎ話がある。

『軍の弾薬庫には秘密の部屋があって、その部屋は親のいない子供たちでぎゅうぎゅうにあふれている。』

『そこにいる子供たちに自由はなく、外にも出られない。モノのように扱われ、死ぬまで体を実験に使われる···。』

長い間ただのおとぎ話とされてきたが···その秘密の部屋は、本当にあったと新聞に載った。

デンジを狙ったのは、その部屋の1人。

ソ連が国家に尽くす為に作った戦士···

モルモット(ネズミ)と呼ばれる連中だ。

 

そんなヤツをマキマさんがほっとくワケがない。

だからこそ俺は、あの(悪魔)を信じて付き従うんだ。

 

 

◆◆

 

 

《Sideレゼ》

 

檻の中···ではなく、なぜか公安のビル内へと連れられた私。

両手首を鎖で縛られてはいるけど、それだけ。

私を支配しようとする素振りすら無い。

 

「着いたよ」

 

マキマが開き戸を開けると、そこは──

 

「···会議室?」

 

──()()()ただの会議室だった。

会議用の大きな机に、黒のワークチェア。

隅には観葉植物が置かれ、壁の一面には大きなホワイトボードが掛かっている。

壁を見ても、防音処理が施されているわけでもなさそうだ。観葉植物の対角線上に置かれたテレビは少し浮いているけれど、他に特筆すべきことは無さそうだ。

 

「耐衝撃かつ防音タイプの会議室もあるけど、落ち着いて話せる場所だったらどこでも良かったんだ。まあお互いにとって大事な話だし、真面目に話し合おうと思って会議室をお借りした」

「···話?私を支配するんじゃないの?」

「悪人や悪魔以外に使うのはイヤなんだ。確かに悪魔らしくないかなーとは思うけどね」

 

そう言って、目の前の女は苦笑した。悪魔らしくないというのは、自虐···なのだろうか。

実際、目の前の女からは緊張こそすれ、こちらに対して悪感情を持っているふうには見えない。

 

「レゼちゃんには、公安に入ってほしいんだ」

「···私が仮想敵国のスパイだって知ってるよね?私が暴れたら、相応の被害が出るよ」

「レゼちゃんのことは調べた。···過去に数回、上官への不服従で処罰されてるね。それでも殺害は免れている」

「だから何?」

「君は“あの部屋”へ歯向かった、勇気と力を持つ()()なんだよ。ネズミじゃない。···だから、君には公安で働いてほしい。そうしたら、日本の法に基づいた人権のある生活を保障するよ」

「話がうますぎる。私がソ連から離れた場合“報復”もあり得るし、私が公安に受け入れられるとは思えない。そっちのリスクとリターンが明らかに釣り合ってない···どうせ裏があるんでしょ」

 

半ばヤケクソ気味に答える。

目の前にいるのは高位の悪魔だ。

どうせ逃げられないし、何かしら企んでいるんだろう。これは口だけの、ささやかな抵抗だ。

 

「···あーあ。バレちゃったのなら仕方ないか。そうだよ。私の本当の目的は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───新鮮なデンレゼを生で見ることだよ」

「·········」

 

何を言っているのか、分からない。

話が一向に見えてこない······。

 

否。

 

理解はしている。確かに分かっている。

だけど脳がそれを受け入れてくれない!

 

「ずっと···見たかったんだ。2人が真っ当に暮らして、友情であれ恋情であれ、ゆっくりと育んでいく様を。···あ、だからレゼちゃんにはデンジくんと同じ学校に行ってほしいんだ。これは命令···ではないけど。別の学校でもそれはそれでいいよねぐふふ。義務教育を受けれてないってのも良くないので、どのみち学校には行ってもらうからよろしく。···ああ···デンレゼ···愛を育み結ばれる2人···たまに私も混ぜて欲しいなあ。さんぴー。いや、私という不純物は要らない?そんな···私もデンジくんと······でもでも、邪魔者は去って観戦に徹したほうがいいかな···寝る前の戦···大運動会···暗い部屋に響く嬌声······おっと鼻血が。ポケティーポケティー。ふふ···オタク女の血が騒ぐ···私の望む世界が、その無限大の可能性がここにあるんだ···なんとしても護らなければならぬ······ッッッ」

 

「······まあそんなわけで、レゼちゃんの安全は私が命を懸けて護るから。安心してね」

 

 

 

 

 

············。

とりあえず、命の危険は無さそうだけれど。

コイツヤベー女だ。怖い。

というか、デンジくんってこんな女にロックオンされてるの?えええぇぇ······。

優しく微笑まれても、さっきの話をした後じゃ余計に怖いだけだし、ポケットティッシュが鼻に詰まっている状態じゃあ、なんとも締まらない。

 

デンジくんへ抱いていた“恋”のようなモノが、一気に萎んでいくのを感じた。

彼とは、友人くらいが丁度いいのだろう。

 

 

──────────────────────

 

結局、レゼちゃんはデンジの女友達ポジションにおさまりました。毎日楽しそうです。良かったね。

マキマさん(カプ厨)も「これはこれで···!」と満足げです。良かった······よね?

 

とにかく、デンレゼの呪縛からは逃れられたレゼ。しかし今度は、クァンシからの熱烈アプローチに悩まされることになったのですが···それはまた、別の話です。

 

 

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