ガンダムブレイカー4 クローバーガールズ   作:守次 奏

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寒暖差がジェットコースターなので初投稿です。


第十話「その散り様は誉れ高く」

「さあさあ皆集まってー! 今日私たちに挑むのは、私立聖ドミニオン学園ガンプラバトル部! ルールは四対四の殲滅戦! 私たちも腕利きのメンバーでチャレンジャーを迎え撃ちます!」

 

 マイクを持った、どこか女王様然とした吊り目が印象的な、黒服のメイドさん……コバトさんのバンドメンバーをやっているミサキ・アヤヒさんが観客を煽り立てる。

 この「MAID-MAIDEN」ではお客さんがメイドさんにガンプラバトルを挑むことができて、それが名物になってるがゆえの光景……らしい。

 店内に集まっていたお客さんたちの視線が、わたしたちに向けられる。

 

「……っ」

「ヨツバちゃん、大丈夫?」

「は、はい……大丈夫です。ノア、先輩」

「無理そうなら必ず言ってね!」

「……はい。ありがとう、ございます」

 

 ガンプラバトルには慣れたつもりだったけど、期待が入り混じっている好奇の視線に晒されるのは、正直まだ怖い。

 今だって圧倒的な番狂わせを期待して、お客さんたちはわたしたちを見ているのだ。

 それぐらいに、コバトさんたちは、強い。

 

 その事実を噛み締めるように、ガンプラホルダーにかけるノア先輩の右手は震えていた。

 

「さて、私たち『MAID-MAIDEN』のメイド隊が選出したメンバーはまさかまさかの超ガチ編成! まずはリーダーの、コバト!」

「皆ー! 私たちに応援よろしくぅ!」

 

 アヤヒさんのマイクパフォーマンスを受けて、コバトさんは観客たちにウィンクと共に投げキッスを一瞥する。

 店内を埋め尽くす「コバト」コールは怒号のようで、圧倒的なカリスマと、裏打ちされた実力があることが窺えた。

 そして、コバトさんの隣にスタンバイしているメイドさん……迷彩柄のブリムにアーミーブーツ、メイド服の上から迷彩柄のマフラーを巻いている謎の女の子も、威圧感のある無表情でわたしたちを見据えている。

 

「サリア先輩、あの子ってこの店のメイドさんなんですか?」

「……そうだけど」

「なんかミリタリーな感じですけど……あっガスマスク取り出してしゅこーしゅこーしてる」

「……うちは変なメイドしかいないのがウリだから」

 

 デミ子ちゃんとサリアさんはそんな話をしていたけど、コバトさんの左に控えているメイドさんは、わたしと同じようにどこかびくびくおどおどしている。

 正統派の気弱なメイドさんって印象を受けたけど、サリアさんの言うことが本当なら、あの人も変なメイドさんなんだろうか。

 それもじきにわかるはずだ。

 

 わたしも緊張に肩を強張らせて、アヤヒさんが次のメイドさんを紹介するのを待つ。

 

「さあ、次に出でたるメイドは、この子! 常連ならご存知、クールでキュートなミリタリーメイド、ミスミ・ニィニヤ・シズちゃん!」

「呼ばれたからには全力を尽くす。覚悟するといい、ガンプラバトル部」

 

 わあっ、と歓声が上がる。

 なんだか違和感の塊みたいな存在なのに、ナチュラルに受け入れられている辺り、この店が「上級者向け」と評されるのがなんとなくわかったような気がした。

 でも、メイドとしての在り方はともかく、あの子には警戒しておかなきゃいけないと、根拠はないけどわたしの第六感が告げている。

 

「そして次はー!? ドジっ子で萌え萌え! 後輩系として当店人気ナンバースリーのクヌギ・リンカちゃん!」

「え、えと……頑張って、お掃除、しちゃいましゅっ! あぅう……噛んじゃいました……リンカはダメなメイドです……」

 

 全身から庇護欲をそそるオーラを出しているから勘違いしそうになるけど、あのリンカさんというらしいメイドさんも油断ならない存在だ。

 それはコバトさん同様バチバチにピアスを開けているからだとか、髪を濃いめの紫に染めているだとか外見的な理由じゃない。

 なにかとてつもない危険を感じる。思い過ごしなんかじゃなく、わたしのファイターとしての経験が、リンカさんを侮ってはいけないと全力で警戒していた。

 

「そして最後はこの私! ミサキ・アヤヒが務めさせていただきまーす!」

「アヤヒちゃん最高!」

「サリアちゃんと一緒に踏んでくれー!」

「アヤヒちゃんの御御足とサリアちゃんのキュートな義足で踏んでくれー!」

 

 ……やっぱりこのお店、客層も変だなあ。

 固めていた警戒が解けそうになってしまう。

 でも、それも含めてきっと相手の戦略なのだ。

 

 だから今は神経を張り詰め、尖らせておくに越したことはない。

 そして、マイクを握っていたアヤヒさんもガンプラバトルシミュレータの前に立って、スマホとガンプラを読み込ませる。

 わたしたちも同様に、ホルダーから取り出した各々のガンプラと、生徒手帳をシミュレータに読み込ませた。

 

「覚悟はいい? ノアちゃん」

「……大丈夫です、あたしたちは、負けません」

「勝てるといいね」

 

 コバトさんがどこか在りし日を懐かしむような目でそう呟くと同時に、画面の前に【Battle Ready?】の文字が浮かび上がる。

 

「行こう、ヨツバちゃん! サリア! フミカちゃん! これがわたしたち……聖ドミニオン学園ガンプラバトル部の初陣だよ!」

 

 ノア先輩は啖呵を切ると、カタパルトから出撃したエンツィアンGⅡを戦場である砂漠に降り立たせた。

 わたしもフィアンマフリーダムを着地させて、まずは敵の動向を探る。

 デミ子ちゃんのデミトレーナーは……正直、戦力としてはかなり厳しい。

 

 だけど、そんなのはデミ子ちゃんだって百も承知のはずだ。

 それをわかっているからこそ、カタパルトを飛び出してから地上に降り立つことなく、サリアさんの機体──ダリルバルデをベースに、グエル専用ディランザの角と、ディランザ・ソルの盾にグエル専用ディランザの盾を組み合わせた二重装甲、そして背中にアンビカーを背負ったガンプラが先行している。

 大型のランスと大楯を持っているその見た目からわかるように、サリアさんのガンプラは相手の攻撃を引きつけるタンク役だ。

 

「カミナギさん、私がサリアさんに続きます!」

「……えっあっ、デミ子ちゃんは、隠れてた方がいいんじゃ」

「気を遣わなくても大丈夫です。私がこのメンバーの中で一番戦えないのはわかってますから」

 

 だから、その身を犠牲にしてでも敵を炙り出す。

 デミ子ちゃんの瞳からは、そんな決意が滲み出ていた。

 ……誉れ高い在り方だ。なら、わたしがその決意を邪魔する理由はどこにもない。

 

「行きますよ……っ! デミトレちゃんの底力を見せてあげ──」

『……ん、隙だらけ』

 

 デミ子ちゃんが、スラスターを噴かそうとした瞬間だった。

 巻き上がる砂塵の中から溶け出るように現れたその機体は、コールドダガーで深々とデミ子ちゃんのデミトレーナーを貫き、斬り裂く。

 一瞬のことに加えて、砂塵の中に隠れるように移動する敵は、ロービジカラーにペイントされていることも手伝ってすぐに足取りを消してしまう。

 

「デミ子ちゃん!? このっ……!」

「……だ、ダメです! ノア先輩!」

 

 ツインバスターライフルを構えて、巻き上がる砂塵の中に狙いをつけるノア先輩をわたしは制止した。

 だけど、遅かった。

 範囲で巻き込もうとしたのであろうその一撃はさらに大量の砂塵を巻き上げて、軽い砂嵐を起こしてしまう。

 

 これじゃ、敵が。

 砂に隠れて行動する敵が、ますます有利になってしまう。

 そんなわたしの焦りをつくかのように、フィアンマフリーダムのセンサーが敵機の機影を捉えてコーションを吐き出す。

 

『死んでくださいぃぃぃ!!!!』

「……っ!?」

 

 メイスのような長柄に、ギャンシュトロームの自航防楯を二枚貼り付けたのであろう回転鋸を先端に装備した斧が、死角から振り下ろされる。

 反射的に「無銘雪走」でそれを受け止めてはいたけど、回転鋸は遠慮なく刀身を削り取っていく。

 ……これは。もしかしなくても。

 

 ──とても、まずいのではないだろうか。




Tipsはまた次回
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