ガンダムブレイカー4 クローバーガールズ   作:守次 奏

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RTAを見てたら休日が溶けたので初投稿です。


第十二話「顧問を探そう」

「えー、聖ドミニオン学園ガンプラバトル部の記念すべき第一回ミーティングの議題はずばり、『顧問になってくれそうな先生を探そう!』です」

 

 今日も今日とて部室がないわたしたちは、『MAID-MAIDEN』のボックス席に陣取ってミーティングを開いていた。

 初勝利と部員が揃ったことに浮かれ切っていたわたしたちはすっかり忘れていたのだ。

 学園側から部活として正式に認められるためには、顧問の先生が必要なことを。

 

「……振り出しに戻ったね」

「うぅ、なんでサリアも教えてくれなかったの!」

「……いや、あんだけ喜んでたところに『顧問が足りない』って最高に空気読めない発言じゃん」

「それはそうだけど!」

 

 ノア先輩は恥ずかしさに顔を真っ赤にして、サリアさんに八つ当たりをしていた。

 実際あの場で顧問の先生がいないからまだ部活として認められないよ、なんて言われたら冷めることは請け合いだから、気持ちはわかる。

 でも、現実問題として顧問の先生がいないというのは事実で、先生の勧誘となると生徒より面倒くさそうだという始末。

 

 おまけに今日のミーティングは、一番そういう人望がありそうなデミ子ちゃんが欠席だ。

 もう解散して明日に回した方がいいんじゃないかな、と思ってしまう。

 でも、さすがのデミ子ちゃんでも先生に人脈があるとは聞いてないし、あったとしても大体の先生はもう既になにかの部活の顧問をやっている、というオチがつきそうなのが悲しいところだった。

 

「……あっあの、一応デミ子ちゃんにメッセージで確認してみますか」

「んー、ごめんね、ヨツバちゃん。なんか用事があるときにわざわざ呼び出すのも野暮かなって思って」

「……あっはい、そうですね」

 

 デミ子ちゃんを頼りにする線は潰えた。

 つまりわたしとノア先輩、今日はバイトがオフなサリアさんの三人で顧問の先生を探しにいかなきゃいけないということだ。

 ノア先輩ぐらいしかまともに他人とコミュニケーションが取れそうなメンバーがいない。

 

 そのノア先輩は多分先生たちからマークされてるだろうし、サリアさんは……

 

「……ヨツバ」

「はっはい!?」

「……あーしの身体のことなら心配しなくていい」

 

 気怠そうに生徒手帳を操作しながら、制服の上にカーディガンを羽織ったサリアさんがぼそりと呟く。

 確かに歩き回らなきゃいけないからそこも確かに心配してたんです。

 心配してたんですけど、一番心配なのはサリアさんが愛想よく先生とコミュニケーションが取れるかどうかなんですよぅ!

 

 なんて、口が裂けても言えるはずがないから、わたしは「アッソウデスネ、アリガトウゴザイマス」と小声で返すのが精一杯だった。

 で、わたしが先生とまともにコミュニケーションを取ることなんて、ノア先輩もサリアさんも多分最初から期待していないだろう。

 置き物としてもじめじめしてるわたしが役に立つわけはなく、むしろ先生の逆鱗に触れてしまった罪で東京湾に沈められかねない。

 

「……と、東京湾はいやだ……東京湾はいやだ……っ!」

「ヨツバちゃん壊れちゃった」

「……いつものことだと思うけど」

 

 がんがんと机に頭を打ちつける。

 せめて不快にならないように愛想笑いや営業スマイルの類を身につけておくべきだった。

 などと思っても時既に遅し、わたしは多分ニチャァっとした営業スマイルしか浮かべられなくて市中引き回しの刑に処されるのだろう。

 

「あばばばばばば……」

「……ヨツバ、そんなに怯えなくていい。フリーの先生は押さえてるから」

「あっえっ、サリアさん、わたし……市中引き回しの刑に遭わなくていいんですか?」

「……うん。なんでヨツバがその思考に至ったのかは全く理解できないけど」

 

 サリアさんは苦虫を噛み潰したような顔で、生徒手帳のスクリーンを立体表示する。

 するとそこには、先生たちの顔と簡単なプロフィールがいくつか並べられていた。

 共通しているのは、「顧問担当部活動」という項目が空欄になっていることだ。

 

「おお、やるね、サリア! いつの間にこんな情報集めてたの?」

「……昨日の夜」

「じゃあそれ連絡してくれてもよかったじゃん!」

「……どうせここに集まることになるだろうと思ったから」

 

 どこからその情報を手に入れてきたのかはわからないけど、サリアさんはこうなることも想定していたらしい。

 間違いなく仕事ができる女だ。

 そしてわたしはデミ子ちゃんより先に寝てしまっていた怠惰な罪人です。

 

「……ヨツバ?」

「……ご、ごめんなさい……なに一つお役に立てず……それどころか惰眠を貪っていて……」

 

 思わず、サリアさんに土下座していた。

 

「……別にいいよ、こういうのって向き不向きがあるし」

「うぅ……優しさが染み渡ります……」

「で、話を戻すとそのリストの中から顧問になってくれそうな人を選ぶってわけね」

 

 ノア先輩は床に額を擦り付けていたわたしを引っ張り上げて、溜息混じりに言う。

 リストに載っている先生の数は大体十数人で、そこから非常勤講師の人を除けばもっと絞られる。

 そして、常勤でわたしたちの話を聞いてくれそうな雰囲気の先生は。

 

「……まあ、無難にアサムラ先生だよね」

「アイカちゃん先生かー、いい人だけどあたしの話聞いてくれるかな?」

「……あ、アイカちゃん先生……?」

 

 二年生の二人はよく知っている人なのかもしれないけれど、つい最近入学したばかりのわたしは全く心当たりがない名前だった。

 リストに残されたそのアサムラ・アイカ先生は少し癖のある明るい茶髪をセミロングに切り揃えて、人のよさそうな笑みを浮かべている。

 プロフィールを読む限り、担当教科は国語で、つい去年着任したばかりのようだ。

 

「ヨツバちゃんは一年生だからあんま面識ないよね。とにかく元気で活発で人当たりがいい先生なんだよねー、生徒との距離も近いし」

「……評判はいい人だよ」

「あっその」

「どしたの、ヨツバちゃん」

「あっいえ、その、それだけ評判もよくて生徒にも好かれてる先生が部活の顧問をやってないのかなって……」

 

 特に他意はないけど、気になったことをわたしは口に出してみた。

 すると、ノア先輩とサリアさんは顔を見合わせて、お互いに首を傾げる。

 これだけ好条件が揃っているのに、部活の顧問をやっていない理由は、二つに一つに絞られるだろう。

 

 一つは、本人が固辞しているパターン。

 これが一番現実的だ。

 そして、もう一つは──実はとても部活なんて任せられないぐらいひどい先生だというパターンなんだけど、こっちはノア先輩の話からは考えられないし、あんまり考えたくない。

 

「そうだね……でも、真実はあたしたちの目で確かめるしかないよね!」

「……当たって砕けろっていうし」

「……あっはい、そうですよね」

 

 わたしの言葉に、ノア先輩とサリアさんは一瞬顔を顰めた。

 だけど、すぐに立ち直って席を立つ。

 ノア先輩が言っていた通りだ、困難が立ちはだかってきたとしても、そこから逃げていたらわたしたちは一生逃げ回るしかない。

 

 当たって砕けろ、善は急げ。

 思い立ったが吉日だ、ということで、わたしたちはお会計を済ませて、学園に引き返していった。

 アサムラ先生がまだ学校にいることを祈って。




しかし コミュ力が 足りない!
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