第一生徒会室──という名のビルは、一際広い学園の敷地の左側に居を構えていた。
隣り合っている第二生徒会室と第三生徒会室も概ね似たような装いで、ここが本当に学園なのか疑いたくなるぐらいのビジネス感が漂っている。
窓がガラス張りになっているのもそれっぽい。
「さて、あたしたちガンプラバトル部の初仕事……絶対に部室を獲得するんだから!」
「……張り切ってるね、ノア」
「だってせっかくヨツバちゃんとフミカちゃんとアイカ先生が加入してくれたんだから、部長としてはそれに報いるだけのことをしなきゃならないわけで」
ふんすふんす、と、ノア先輩は気合いたっぷりにそう語る。
入り口のゲートに生徒手帳を翳して、一階のエントランスにお邪魔したわたしたちは、案の定というか、第一生徒会の執行部なのであろう生徒たちに変なものを見る目で見られていた。
……第一生徒会の人たちって、本当にわたしたちの活動に協力的なんだろうか。
「六階が生徒会長執務室なんですね、カミナギさん!」
「あっはい、確か」
見た感じ全部で六階建ての建物で、二階がガンプラバトル室、三階から順に初等部、中等部、高等部の生徒会執務室って案内板に書かれていたから、それで合ってると思う。
「生徒会長さんともお近づきになりたいですね、そうすればデミトレちゃんの像を建ててもらえたりするかも、ですから!」
「……あっはい、そうですね……」
ぴかーん、と目を光らせるデミ子ちゃんだったけど、流石にデミトレーナーの銅像は建ててもらえないと思う。
世の中にはヅダの胸像が建てられている学校もあるらしいけど、中学までは田舎でひっそりと暮らしていたわたしには縁のない話だった。
でも、第一生徒会長さんと仲良くなれたらいいな、と思うのは確かだ。最近、ガンプラバトル部の活動が知れ渡ってくるにつれて、変な目で見られているような気がするから。
「おーい、ヨツバちゃん、フミカちゃん、エレベーターついたよー!」
「……あっはい、行きましょう。デミ子ちゃん」
「はい!」
ノア先輩とサリアさんに続く形でエレベーターに乗り込んで、わたしたちは六階へと向かう。
いきなり生徒会長執務室に乗り込んで大丈夫なんだろうかという心配はあっても、思い立ったが吉日とばかりに前へ進んでいくノア先輩に水を差すのも野暮だ。
それに、デミ子ちゃんも第一生徒会長にデミトレーナーをプレゼントしたいみたいだし。
と、そんなことをぼんやり考えていると、行き先は六階に指定してあるはずなのに、エレベーターが急に五階で停止する。
「アポなしで生徒会長に会いにくるなんて、常識外れにも程があるわよね……」
「げっ、ユウコ……!」
「なにその鬼や悪魔を見るような目は。とりあえず生徒会長に会いたいなら、副会長の私を通してほしいんだけど……」
ユウコ、と呼ばれた黒髪をツーサイドアップに結えた上級生の女の子は、生徒手帳に「副会長権限発動」の文字を浮かべて、わたしたちを取り囲む。
エレベーターが五階で停止したカラクリはどうもこれらしい。
流石にアポ無しでは通してくれなかったみたいだ。ばちばちと一触即発の空気が漂う中で、口火を切ったのは。
「ふっふっふ……わたしたち生徒会役員を通さずに生徒会長と謁見しようなどとは愚かなことを! 遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! 第一生徒会庶務にして『双星の金銀花』とはわたしたちのことなのよ!」
「姉がうるさくて申し訳ありません……第一生徒会庶務のテンマン・シラガネです。こっちは姉のコガネ」
黒みがかかった赤茶色の髪にそれぞれ、コガネと名乗った女の子は右側に金色のメッシュを、シラガネと名乗った女の子は左側に銀色のメッシュを入れ込んでいた。
それ以外は顔立ちも背格好も瓜二つで、双子だということが一目でわかる外見だ。
そして、その瞳にはわたしたちを待っていたとばかりに鋭く研ぎ澄まされた眼光が宿っていて、コガネさんの手は既に、腰のガンプラホルダーへと伸ばされていた。
「ふっふっふ……ミカゲ会長に会いたいのであればこの『双星の金銀花』を倒していくのだな! 自称ガンプラバトル部!」
「すみません……この二つ名は勝手に姉が名乗ってるだけです、ついでに姉が失礼なことを言って本当に申し訳ないです……」
「あっ、その……別に気にしないで! 慣れてるから!」
シラガネさんがコガネさんの頭をすぱーん、と叩きながら頭を下げる。
ノア先輩が困惑するのが納得いくぐらいによくできた妹さんだ。
お姉さんがその分破天荒だともいうけれど。
「痛たた……なにすんのさシラガネ! どっちみちここはガンプラバトルで解決するとこでしょ!?」
「お姉ちゃんは段階を飛ばしすぎ。ユウコ先輩も呆れてるし」
「うぐぐ……でもわたしたち『双星の金銀花』ことテンマン姉妹は生徒会の門番なんだから! そうですよね、副会長!」
「……どの道、四対四でのバトルになるだろうから、あなたたちにも助力をお願いするつもりではあったけど」
「ほら!」
なにかを諦めたように手のひらで顔を覆ったユウコ先輩の言葉に、コガネさんはすっかり得意げな様子でドヤ顔を披露する。
すごい、とてつもなくポジティブだ。
前だけ向いて生きてます感が凄まじくて、わたしみたいな石の下とかゴミ置き場を棲家にしてそうな陰キャにはあまりにも眩しい。
「あばばばばば……生きててごめんなさい……」
「えっわたしそこまで酷いこと言った!?」
「ヨツバちゃんは陽のオーラに当てられすぎちゃうとこうなっちゃうんだよ」
「……スズシロ先輩も苦労されているんですね」
地面に倒れて形状を崩壊させるわたしを溜息混じりに引っ張り上げて、ノア先輩は改めて、とばかりに腰のガンプラホルダーからエンツィアンGⅡを取り出す。
「それじゃ改めて……第一生徒会長に会わせてもらうために、わたしたちガンプラバトル部は、第一生徒会執行部に勝負を挑みます!」
「はっはっはー! 受けて立つよ、自称ガンプラバトル部! この『双星の金銀花』ことテンマン姉妹を倒せると思わないことね!」
「姉が本当にすみません……」
ユウコ先輩とノア先輩にそれぞれ頭を下げるシラガネさんが少しだけ気の毒だったけど、遅かれ早かれこうなる予感はしていた。
揉め事を解決するならガンプラバトル。
なんとなくこの学園の流儀が最近はわかってきた。
「こほん。それなら私たち第一生徒会執行部とガンプラバトル部の戦いは、四対四の殲滅戦ルール、そしてアサムラ先生を立会人として二階のバトルシミュレータルームで行います。異存ありませんね、スズシロさん。アサムラ先生」
「異存なし!」
「ん……あたしも了解」
「ありがとうございます。フェアな戦いができることを期待しています」
ふぁさっ、と肩にかけていた白いコートを靡かせて、コガネさん、シラガネさん、そしてもう一人、わたしたちがこれだけ騒いでいても爆睡していた女の子がユウコ先輩に拳骨で叩き起こされて引きずられていく。
「……ば、ばばばばバイオレンス……!」
「割といつもの光景だけどね」
寝ていたその子が悪いとはいえ、ユウコ先輩のやり方が暴力的だったということは、先輩の上に立つ生徒会長もそれだけ厳格でバイオレンスな人なのだろうか。
少しでも不興を買うようなことがあれば、もしかしてわたしたちは簀巻きにされて東京湾に投棄されてしまうんじゃないだろうか。
そんな不安を胸に抱きながら、わたしたちも第一生徒会執行部の面々に続いてエレベーターに乗り込んだ。
双子姉妹のエントリーだ!
Tips:
【天満 黄金(テンマン コガネ)/原案:アルキメです。様】
【天満 白銀(テンマン シラガネ)/原案:アルキメです。様】
私立ドミニオン学園高等部一年。
第一生徒会『ミレニアム』所属。
『双星の金銀花』の二つ名で知られている姉妹。
コガネが姉で、シラガネが妹。
黒みがかった短めの赤茶の髪と瞳をしており、顔立ちも背丈も瓜二つ。
コガネの方は『金メッシュを右側から垂らしている』。
シラガネの方は『銀メッシュを左側から垂らしている』。
またコガネは『サスペンダー状のスカートコーデ』だが、シラガネの方は『サスペンダー状のキュロットコーデ』など、微妙に差異があるため正面から見れば見分けがつきやすい。
姉妹揃って大きめの上着を愛用しており、背後からでは見分けがつかない。
コガネは明るく快活はお調子者で、感情が表に出やすい正直な性格。
浮き沈みが激しいが、同時に切り替えも早く、長時間思い悩まないなど良くも悪くも能動的な前向き。
シラガネは冷静で大人しく、姉を反面教師にしてか周囲を見て行動する大人びた性格。
感情を表に出さないように努めており、子どもっぽさの色濃い姉をたしなめたりする役割が多い。
とはいえ、調子に乗るときは調子に乗る。
基本的にはコガネの気分屋にシラガネが振り回されていることが多い。
使用するガンプラはアストレイレッドフレームとブルーフレームをベースにしたコガネの『金角レッドアストレイ』とシラガネの『銀角ブルーアストレイ』。
一人称は共通して『わたし』。
二人称はコガネが『あなた/呼び捨て/ニックネーム』など。
シラガネが『あなた/〜さん』など。
「遠からん者は音にも聞け! 近くばよって目にも見よ! 双星の金銀花の天満姉妹とは、わたしたちのことなのよ!」
「毎度姉がうるさくてすみません。この恥ずかしい二つ名も姉が一方的に自称しているだけなので……」
「いいのいいの! 将来はみんなこの二つ名を畏れるようになってるんだから!」
「お姉ちゃん、それは捕らぬ狸の皮算用って言うんだよ」
「つまりたぬきみたいに可愛いってこと!? いやー可愛すぎてお恥ずかしいへへへへ」
「お恥ずかしいのはこっちだよ……あとお姉ちゃんの可愛いは愛玩動物的な可愛さで、わたしはどちらかと言えば美少女的な可愛さだからそこは区別しようね」
「なんでぇっ!?」