ガンダムブレイカー4 クローバーガールズ   作:守次 奏

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秋なのか夏なのかわからないので初投稿です。


第十七話「新たなるデミ」

「ルールは事前に説明した通り。あなたたちが勝てば生徒会長への訪問を許可します。私たちが勝てば、諦めてもらいます」

「上等! あたしたちガンプラバトル部をみくびらないことね!」

「その台詞はそのままそっくり返すわ」

 

 ユウコ先輩とノア先輩が互いに啖呵を切り合ったことで、戦いの合意は成立した。

 ガンプラバトルシミュレータに生徒手帳とガンプラを読み込ませて、わたしも操縦桿をきつく握り締める。

 相手の構成はわからないけど、この学園で生徒会役員をやっているんだから、絶対に一筋縄ではいかないことは確かだ。

 

「ふふふ……!」

「あっデミ子ちゃん、なんだか上機嫌ですね……?」

「それはバトルが始まってからのお楽しみです! 頑張りましょう、カミナギさん!」

「……あっはい」

 

 デミ子ちゃんはなんだか自信に溢れているようだったけど、なにかあったんだろうか。

 悪いことじゃないのは確かみたいだけど。

 それならなによりだなぁ、とぼんやり頭の片隅で考えながら、わたしとフィアンマフリーダムはランダムで選ばれた戦場──廃墟都市へと降り立った。

 

「うわ、ステージ運は腐ってるなぁ……」

「……相手がどう出るかを初動で見極めないと、こっちがやられる」

 

 ノア先輩とサリアさんが愚痴をこぼした通り、廃墟都市は遮蔽物が多くて、味方と分断されやすい。

 それだけでなく、奇襲にも警戒しなきゃいけないのが厄介なところだ。

 ステルスやミラージュコロイド、そしてジャミングを持っているガンプラが相手側にいたら、己の勘しか頼るものがなくなってしまう。

 

「ふふふ……! その心配はご無用ですよ、スズシロ先輩、サリア先輩!」

 

 わたしたちが頭を悩ませていたそのとき、デミ子ちゃんは自信たっぷりに言った。

 

「フミカちゃん、なにか秘策でもあるの?」

「……そのデミ、見たことないけどまさか」

「そのとーりです! ようやく完成した私だけのデミトレちゃん、『デミスカウト』の広域レーダーとアンチジャミング、アンチステルスにお任せです!」

 

 一歩前に踏み出たデミ子ちゃんのガンプラは、その言葉通りにいつもの素組みのデミトレーナーじゃなかった。

 デミトレーナーをベースにチュチュ専用機の盾を両肩に二枚、背中には大型のレドームと、スモークディスチャージャーを装備している。

 よく見るとアポジモーターも増設されていて、雰囲気がデミギャリソンに近付いていた。

 

「……あっデミ子ちゃん、それって」

「はい! カミナギさんは作ってるの見たことありましたよね、やっと完成したんです! さあ……行きましょう、私のデミトレちゃん!」

 

 デミスカウトがレドームを展開すると、データリンクでわたしたちに感知した相手の位置が転送されてくる。

 廃墟都市の中心を巡る高速道路上に二体、敵陣の最奥に一体、そしてまっすぐこっちに向かってくるのが一体。

 謎に包まれて動けなかった初動の遅れを取り返すように、敵の布陣が丸裸だ。

 

「……す、すごいです……デミ子ちゃん」

「そんなことありません! 全てはデミトレちゃんの誇る無限の拡張性のおかげです!」

 

 やっぱりデミ子ちゃんはデミトレーナーのことがよっぽど好きなんだなぁ、と、返ってきた答えにわたしは感心しつつ、まずは突撃してきた一体を屠るべく、両手に持った刀を構える。

 データリンクが示している敵の位置情報はさっきと変わっていない。

 

 高速道路上に居座っている相手がなにを考えているのか不気味だったけど、今は突出してきた敵を押し返してラインを上げるのが最優先だ。

 

「『水天』!」

『あぇええぇええ!? バレてるじゃないですかユウコ先輩! 私正面切っての戦いは苦手なんですけど!?』

 

 飛ばした斬撃で、相手が隠れていたビルは四つに割れたけど、本体には届かなかったようだ。

 果たしてわたしたちに奇襲をかけようとしていたその機体は、ビビッドなピンク色にペイントされ、陸戦型ガンダムのコンテナを背負ったケンプファーだった。

 恐らくステルス機構を付与していたのだろう、ただ、デミ子ちゃんのアンチジャミングがあまりにも強烈だったから、意味をなさなかっただけで。

 

『相手にも情報戦型がいたのね……誤算だけど、作戦に変更はないわ! 行きなさい、ユキネ!』

『うぁあぁああー! もうヤケクソです! くらえランダムグレネード!』

 

 背中のウェポンコンテナから取り出した大型の投擲弾が、わたしたちに襲いかかる。

 ただ、迎撃は余裕で間に合う。

 ゆっくりとした山なりの軌道で投げられたその弾を、わたしは斬撃で叩き落とそうとしたけど──

 

「ダメです、カミナギさん! 避けてあのケンプファーに距離を詰めてください!」

「……っ、りょ、了解!」

 

 デミ子ちゃんからの指示で迎撃から突撃に体勢を移行、わたしは脇目も振らずにピンク色のケンプファーへと前ブーストを噴かす。

 そして、次の瞬間、デミ子ちゃんがなぜあの弾を迎撃してはいけないと警告したのか、その理由が判明した。

 爆ぜたグレネードからは、電磁波が撒き散らされていたからだ。

 

「あっぶなー……これ食らってたら機能停止からの一網打尽だったじゃん」

「……デミ子、やるね」

「ありがとうございます、先輩!」

 

 一瞬で武装の特性を見抜いたその観察眼に洞察力と、戦場を把握するデミスカウトの強みが合わさって、今のデミ子ちゃんは飛躍的なパワーアップを遂げていた。

 

『ぐ、ぐぬぬ……ランダムグレネードはまだまだありますよ! イヌイ・ユキネ! 第一生徒会書記として、これ以上の好き勝手は──!』

「『水天』」

『に゛ゃあ゛あぁああああ──! なんで──!』

 

 相手が投擲弾を取り出した瞬間を狙って飛ばした斬撃が誘爆を引き起こし、散弾と爆発、そして電磁パルスの三重の自傷ダメージで、ピンク色のケンプファーは爆散する。

 これで数的優位を手にしたのはこっちだ。

 あとはサリアさんにデミ子ちゃんを守ってもらいながら、わたしとノア先輩で一気に詰める。

 

「行きましょう、ノア先輩!」

「了解、ヨツバちゃん!」

 

 次に倒すべきは、高速道路に陣取っている二機だ。

 恐らくなにか考えがあってのことなんだろうけど、ユキネさんが倒されても二機はそこを一歩も動いていない。

 恐らく二機一組ということは、コガネさんとシラガネさんなんだろうけど……

 

「っ! ノア先輩、避けてください!」

「えっ!? わかった!」

 

 そんなことを考える暇さえも与えないと言わんばかりの長距離スナイプが、二機で編隊を組んでいたわたしたちの間に割って入る。

 弾が飛んできた方向は間違いなく高速道路だ。

 狙撃に適したスポットだとはいえないけど、それでもコガネさんかシラガネさんのどっちかはスナイパーとして確かな腕を持っているようだった。

 

 狙撃を警戒しつつ、遮蔽物を縫うようにわたしとノア先輩はマニューバを展開する。

 その間も容赦なく、わたしたちはビルの隙間や瓦礫になっている部分といった遮蔽物がないところを狙撃され続けていた。

 強い。本来であればきっと、ユキネさんがわたしたちの足を止めたところを狙撃で蹂躙する手筈だったのだろう。

 

 高速道路に陣取っている意味は正直わからないけど、早めに対処しないと厄介だ。

 スロットルを全開にして、わたしはあえて矢面に立つ。

 ノア先輩が狙われなければ、その分ツインバスターライフルによる火力支援は期待できるし、ある程度弾を避けたことで相手の癖もわかってきた。

 

 スナイパーというのは位置さえバレてしまえば、近接戦に持ち込んでしまえばさほど脅威にならない。

 見えないようなところじゃなく、高速道路に陣取っていたのが命取りだ。

 あとはセオリー通りにわたしがコガネさんかシラガネさんの片方を倒せば──!

 

『ふっふっふ、そんな甘い考えでわたしたち「双星の金銀花」を倒せるとは思わないことだー!』 

「……もう一機!」

 

 高速道路から飛び降りてきた、レッドフレームを武者頑駄無風にカスタマイズした機体が手にした二振りの刀を振り下ろす。

 わたしは咄嗟に左手の「無銘雪走」でそれを受け止め、「火車」の要領で衝撃を逸らした。

 荒削りな部分はあるけど、鋭い太刀筋だ。

 

『第一生徒会庶務、テンマン・コガネ! 同じ二刀流の剣士として、いざ尋常に勝負だよ!』

「……が、ガンプラバトル部、カミナギ・ヨツバ! わたしは……負けません!」

 

 本気で倒すと決めた相手には名乗りを上げる──明文化されてはいないものの、一つの風習として残っているその啖呵を切ってきた以上、コガネさんは間違いなく本気なのだろう。

 

『唸れわたしの「烈怒丸」!』

「……『土崩』!」

 

 お互いに乱舞の構え、ならばこれは受け流せない。

 そう判断したわたしは、コガネさんとの打ち合いを選択する。

 わたしの修めている「カミナギ流」は基本的に押し引きがその型ごとにはっきりしているのが強みであり、弱点でもあった。

 

 それを炙り出すかのように、わたしが繰り出した「攻め」の剣をコガネさんは柔軟に受け、隙を見ては攻めに転じるというフレキシブルな戦い方で、こっちを追い詰めてくる。

 戦いの中で成長している、なんて漫画の中での台詞や出来事だと思っていた。

 でも、事実としてコガネさんはわたしが繰り出す「型」を見極めて確実に対処しているのだ。

 

 その二つ名は決して大言壮語ではないのだろう。

 

『わかってきたのよ、あなたの型が!』

「……ッ!」

『押し引きを長引かせない一撃必殺! だから受けに回ると途端に脆くなるのね!』

 

 正確な分析だ。

 カミナギ流はとにかくパワーで相手を一掃することが前提の短期決戦型で、いってしまえば力押しの剣。

 守りを崩すことやいなすことはできたとしても正面切っての打ち合いとなると、結構分が悪いところがあるのは確かだった。

 

 ──でも。

 守りの剣が、攻めの守勢を取れる型がカミナギ流に存在していないとは誰も言っていない。

 わたしはコガネさんが攻撃を「見抜く」ことを前提に、あえて甘い太刀筋で油断を誘う。

 

 強い人なら絶対に見逃さない、僅かな隙。

 

『もらったのよ! 見様見真似……「斬鉄」!』

 

 強ければ強いほど引っかかりやすいその偽装を、案の定強いコガネさんは見逃さなかった。

 

「……『日暈』」

 

 必殺の太刀筋、その後には必ず隙ができる。

 わたしは「斬鉄」と名付けられたその一撃を回り込むようなマニューバで回避して、ガラ空きになった相手の背後に斬撃を叩き込んだ。

 

『な、なんでぇぇぇー!? む、無念……がくり』

「……コガネさんが、強かったからです」

 

 滅多に使うことのなかった「受け」の型である「日暈」を使わされたのは想定外だったけど、これで恐らく相手のメインアタッカーは落ちたと考えてもいい。

 戦いに集中していたあまり気を配れなかったけど、ノア先輩とシラガネさんの戦いも、決着がつこうとしていた。

 アストレイブルーフレームを武者頑駄無風にカスタマイズしたシラガネさんの機体は、長砲身の種子島雷威銃を失ったからか、引き撃ちを繰り返すノア先輩に、ナギナタを振るうことで迎撃を試みている。

 

『ああもう、あれほどツーマンセルで戦おうって言ったのに……!』

「わかっててもさせないけどね! ヨツバちゃん!」

「……りょ、了解ですっ、ノア先輩!」

 

 これでもう戦いの趨勢は決まったといってもいい。

 敵陣の最奥に陣取っていた、恐らくデミ子ちゃんと同じ情報戦タイプの機体が前に出てきたけど、全てはもう遅かった。

 大量のミサイルをばら撒きながら突撃してくる、キャバリアーアイフリッドを装備したサイサリスにノア先輩がツインバスターライフルの一撃を見舞う。

 

「『月虹』」

 

 そしてわたしは、シラガネさんに肉薄してすれ違いざまにその機体を両断していた。

 

『くっ……ぐぬぬ……』

「これで四対一ね、ユウコ!」

『……はぁ。そうね、これ以上戦っても勝ち目はないし、貴女たちのデミトレーナーを見くびっていた時点で負けていたのね、でも!』

 

 焼け焦げたキャバリアーアイフリッドをパージしたサイサリス──ユウコ先輩の機体はラジエーターシールドを構えて、ビームサーベルを最大出力で展開する。

 

『タダで負けてあげるほど、第一生徒会副会長の肩書きは安くないのよ!』

「なっ、あたしを踏み台にした!?」

『これでぇっ!』

 

 サイサリスが持っている強大な出力を全開にしてノア先輩を踏みつけると、ユウコ先輩はせめて一太刀、とばかりに、サリアさんに守られていたデミ子ちゃんを撃墜しようと試みていた。

 背中のMLASから放たれる無数のミサイルをサリアさんは一歩も引くことなく盾で受け止めて、本体の接近にも動じることなく騎兵槍を構える。

 デミ子ちゃんを、守らなきゃ。

 

 わたしも反射的にブーストを噴かして、ユウコ先輩のサイサリスを追いかける。

 だけど、届かない。

 ミサイルのノックバックで動けないサリアさんの隙をつくように、ユウコ先輩はビームサーベルを大上段に振りかぶって──

 

「ありがとうございます、大丈夫ですよ、皆。 私はもう……もう、お荷物じゃないです!」

『嘘、アサルトナイフ……!?』

 

 その僅かな隙を見定める形で、デミ子ちゃんが腰の鞘から抜き放ったアサルトナイフをサイサリスのコックピットに突き刺す。

 そして、システムが【Battle Ended!】の表示をスクリーンに映し出し。

 わたしたちの勝利が、決まった。




デミ子、パワーアップ!
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