ガンダムブレイカー4 クローバーガールズ   作:守次 奏

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崖っぷちの初投稿です。


第三話「崖っぷちのヒーロー」

 ノリと勢いでリューナ先輩からの決闘を受けてしまったわたしたちは、空き教室から近いところにあった「第十二ガンプラバトルシミュレータ室」を訪れていた。

 機械を扱う部屋特有の、ひんやりとした冷房に、わたしは身体を震わせる。

 そこには、GBBBBのサービス開始以前に使われていたガンプラバトルシミュレータが並んでいて、最大で五対五までできるように設備が組まれていた。

 

「勝負は私たちと貴女たちで相手を最後まで殲滅した方が勝ち、といったところかしら? ハンデが必要なら事前に申し出てちょうだい」

「情けなんてかけなくていいよ、あたしたちは勝つから」

「はっ、編入生の前だからってそっちこそ粋がる必要はないわよ? でも、言った以上撤回は無用。後悔しないことね」

 

 対面のバトルシミュレータにリューナ先輩と取り巻きの二人は移動して、生徒手帳とガンプラをシミュレータに読み込ませる。

 生徒手帳という名のスマートフォンに搭載されているカメラと、シミュレータの内部に搭載されているカメラが連動してガンプラをスキャンして、原寸サイズになったそれがスクリーンに投影された。

 リューナ先輩の取り巻きたちは一般機のゲルググメナース、そして、本人は。

 

『サザキ・リューナ! ギャンバルカンシュトローム、出撃するわ!』

 

 背中にスラッシュウィザードを改良したと思しきガトリング砲を二門背負って、原型機は左手にだけ装備していた巡航防楯を右手にも装備したその機体が、フィールドとして選ばれた砂原に降り立つ。

 ギャンシュトロームを迎撃戦特化にしたカスタマイズビルドだろうか。

 ごくり、と緊張に生唾を飲み込みつつ、わたしも震える手で生徒手帳と、腰のホルダーにしまっていたガンプラを取り出す。

 

「大丈夫だよ、ヨツバちゃん。緊張しないで」

「……あっ、は、はい……」

「それじゃあ飛ばしていこっか! スズシロ・ノア! エンツィアンGⅡ、出ます!」

 

 一足先にスキャンを終えていたノア先輩のガンプラ──インパルスガンダムとテレビ版ウイングガンダムゼロのミキシングモデルが砂原へと飛び立っていく。

 大丈夫。ノア先輩に言われた通り、冷静になればいい。

 ここはあの舞台じゃない。目の前にいるのは、あの敵じゃない。

 

「か、カミナギ……カミナギ・ヨツバ! 行きます!」

 

 スキャニングが終わったわたしのガンプラ、フィアンマフリーダムガンダムもまた、カタパルトに降り立って砂原へと射出される。

 

【Gunpla Battle Started!】

 

 そして、全てのガンプラがバトルフィールドに集まったことで、バトルの開始がシステムから宣言された。

 

『一気に殲滅するわよ!』

『了解!』

 

 まずは相手から仕掛けてくるらしい。

 遮るもののない荒野を、地上用パックを装備したゲルググメナース二機が先行して直進する。

 わたしのフィアンマフリーダムに射撃武装らしい射撃武装は、頭部の機関砲ぐらいしかなかった。

 

 だから、手が出せない……のではない。

 ガンプラバトルをしているとがくがくと身体が震えて、視界が揺れる。

 怖い。目の前に迫る敵が。

 

 わたしに向けられているであろう無数の視線が。

 なにもかもが怖くて、がくり、とわたしは操縦桿から手を離してへたりこんでしまった。

 思い出したくない。でも、思い出してしまう。

 

 わたしを見据えるあの冷たい目を。

 ぶつけられた悪罵の数々を。

 そして、わたしの心をへし折ったあの金髪の女の子が浮かべていた、笑顔を──

 

「ヨツバちゃん、危ない!」

 

 ゲルググメナースのビームライフルから放たれた一撃がわたしのフィアンマフリーダムに直撃する寸前、ノア先輩は射線に投擲したシールドを割り込ませることで直撃を防いでくれた。

 

「……の、ノア先輩……」

「大丈夫! ヨツバちゃんは……あたしが守るから!」

 

 ノア先輩はそう言って微笑むと、挟撃に移行したゲルググメナースの一機を蹴り飛ばして体勢を崩しつつ射線を切る。

 両手に持っているツインバスターライフルは強力な分、発射までの時間に僅かなラグが起こることを考慮しての行動だった。

 そして、放たれた砲火は体勢を崩したゲルググメナースを飲み込み、爆発四散させていた。

 

『ミギコをやったの!?』

『サコ、落ち着きなさい! あの程度なら……このギャンバルカンシュトロームで押し通れる!』

 

 胸部のハッチを開いたリューナ先輩のギャンバルカンシュトロームが、空中のエンツィアンGⅡに向けてガトリング砲を一斉射した。

 ハリネズミのような、あるいは嵐のような弾幕砲火に晒されて、ノア先輩は足を止めてガードすることを選んでしまう。

 ──ダメだ、その選択は!

 

 叫ぼうにも声が出なかった、次の瞬間。

 

『足を止めたわね、ノア! さあ行きなさい自航防楯!』

「きゃああっ!」

 

 左手からホイールが走るように回転して放たれたビームの刃──自航防楯が備える迎撃機構を攻めに転用したその一撃が、エンツィアンGⅡの左腕と頭部を斬り裂いていく。

 これじゃ、相手の思う壺だ。

 しかも自航防楯はもう一枚残っている。

 

『さあ、リューナ様! このサコ共々やつらに鉄槌を!』

「こいつ、組みついて……っ!?」

 

 そして、ダメ押しのように残ったゲルググメナースがエンツィアンGⅡを関節を固めるように捕縛していた。

 終わりだ。

 もう、負けた。

 

 わたしはただ震えるまま、動けないままその光景を見ていることしかできなかった。

 ──だけど。

 

『この程度の腕前でガンプラバトル部を立ち上げようだなんて、本当に思い上がりもいいところね!』

「ぐ……っ……!」

『夢だかなんだか知らないけど、現実を見ればわかるでしょ? 夢っていうのは、強者のみに見ることが許されるものなの。貴女みたいな弱者はね、現実を噛み締めて地べたを這い回るのがお似合いなのよ!』

 

 ……違う。

 そうじゃない。そんなこと、ない。

 夢は誰もが等しく見るためのもので、叶わないことの方が多いけど、それを追いかけることを許してくれるのが今という時間だって、おじいちゃんは!

 

 わたしは怯えていた自分を無理矢理に奮い立たせて、操縦桿を掴む。

 脚はまだ情けないことにがくがくと震えていて、怖くて涙も鼻水も止まらないけど。

 それでも、誰かの夢を笑って踏み躙るような人なんかに、負けるわけにはいかないんだ!

 

『さあ終わりよ、スズシロ・ノア! これに観念したらさっさと夢を諦めて現実に生きることね!』

「くっ……動いて、動いてよ、エンツィアンGⅡ! あたしは、まだなにも──!」

 

 ギャンバルカンシュトロームが右腕の自航防楯を射出すると同時に、わたしは地面に突き立てていた二本の刀を掴んで、スロットルを全開にする。

 そして、すれ違いざまに「フツノミタマ」で自航防楯を切り裂いて、もう片方の「無銘雪走」で続くギャンバルカンシュトローム本体が構えたファルクスG7ビームアックスの柄を半ばから断ち切った。

 

『な、なに……っ!? さっきまで動かなかったガンプラが!?』

「はーっ、はーっ……げほっ、おえっ……」

 

 なにかを言い返そうにも、喉元まで迫り上がってきた吐瀉物を飲み込むのが精一杯だ。

 リューナ先輩は即座にわたしから距離を取って、四門のガトリング砲による遠距離からの封殺を選択する。

 だけど、それは読めていた。

 

「今だよ、ヨツバちゃん!」

 

 呆然としていたゲルググメナースを振り切ったノア先輩がツインバスターライフルの一撃で後顧の憂いを断つと同時に、わたしは再びスラスターを全力で噴かし、あえて弾幕砲火の中を突っ切っていく。

 コックピットへの防御は交差させた刀だけで十分だ。

 どのみち、最大の攻撃手段である自航防楯とファルクスG7ビームアックスを失った時点で、相手は詰んでいるのだから。

 

『くっ……!? この……粋がるなぁっ!』

「……!」

 

 これ以上の攻撃は無駄だと悟ったのか、リューナ先輩はスレイヤーウィップによる奇襲を試みてきたけど、それも正直読めていた。

 

「はあああああっ……!」

 

 左手の「無銘雪走」で鞭を切断し、右手に構えた「フツノミタマ」でわたしはギャンバルカンシュトロームを真っ二つに断ち切る。

 

『ば、バカな……私の、ギャンバルカンシュトロームがぁぁぁっ!』

 

 リューナ先輩の断末魔と同時に、システムが吐き出した【Battle Ended!】の表示を確認して、わたしは。

 

「おえええええっ……」

 

 盛大に吐瀉物を床にぶちまけてしまっていた。




ゲロインと化したヨツバちゃんUC
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