ガンダムブレイカー4 クローバーガールズ   作:守次 奏

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残暑が復活したので初投稿です。


第九話「始動!ガンプラバトル部」

「と、いうことで……ぱんぱかぱーん! ヨツバちゃんのおかげで無事に部員が揃いました!」

 

 翌日の放課後、既に生徒手帳経由で伝えてはいたけど、改めてデミ子ちゃんの歓迎会をしよう、という話になって、わたしたちは「MAID-MAIDEN」のボックス席に肩を並べていた。

 ノア先輩はすっかり浮かれた様子で、クラッカーを鳴らしていたけど、それも仕方ないと思う。

 まさかこんなに早く部員が集まるなんて、思っていなかっただろうから。

 

「……思ったより早く集まったね、部員」

「うん! それもこれもヨツバちゃんのおかげだよ! フミカちゃん、改めてよろしくね!」

 

 わたしのおかげ……なんだろうか。

 改めてそう言われると、ちょっと照れる。

 でも、デミ子ちゃんとわたしで空いた穴が埋まったのは、自分のことのように喜ばしい。

 

「はい! 私、サワイデ・フミカです! デミトレちゃんが大好きなので、気軽に『デミ子』って呼んでくださいね! あっ、ノア先輩、サリア先輩! よかったらお近づきの印に、これどうぞ!」

 

 デミ子ちゃんは今日もテンション高く、布教用と思しきHGデミトレーナーをノア先輩とサリアさんに手渡していた。

 

「えっと……デミトレ? なんで?」

「はい、布教用にいくつかストックしてるので!」

「??????」

 

 ノア先輩が投げかけた疑問に、デミ子ちゃんは元気よくそう返す。

 だけど、結果としてはノア先輩の頭上に浮かぶクエスチョンマークの数が増えただけだった。

 それはそうだと思うよ、デミ子ちゃん。デミトレが悪いとかじゃなくて、普通の人は布教用のキットなんてストックしてないから。

 

「……いいキットだし、ノアももらっておけば?」

「おおっ、サリア先輩はデミトレちゃんの良さがわかる人なんですね! いいキットなんです、デミトレちゃんは! 組みやすくてよく動いて塗装も改造ももってこい! 世の中はもっとデミトレちゃんのことを評価してあげるべきです!」

「……あーね」

 

 心底面倒くさそうな表情で、サリアさんはデミ子ちゃんのデミトレーナー語りに相槌を打つ。

 サリアさんの気持ちもわかる。

 だけど、デミ子ちゃんの気持ちもわかる。

 

 だってオタクは……好きなもののことになると早口になってしまう生き物だから……!

 流石にガンプラの布教までする強火じゃなくても、一応ガンダムシリーズのオタクを、ガノタをやっている身としては、好きな作品を褒められたら語りたくなってしまう気持ちはよくわかっていた。

 でも、それをやり過ぎると逆にドン引きされるのも理解しているから、生きるって難しいねフリットと心の中でユリン・ルシェルが囁くのだ。

 

「せっかくだからここで組み立てちゃおっか、デミトレ。サリア、コバトさんから工具とか借りていい?」

「……いいよ、コバトさんなら今控え室にいるはずだから、あーしがメッセージ飛ばしとく」

「ありがと! そういえばヨツバちゃんもフミカちゃんからデミトレもらったの?」

「あっはい、一応持ってきましたけど……」

 

 昨日は疲れたから夜ご飯を食べてお風呂に入ってからすぐ寝ちゃったせいで、デミ子ちゃんからもらったデミトレは組み立てられていやかったのだ。

 それをわざわざ持ってきた理由は特にない。

 強いていうなら、帰りに寮の制作スペースで組み立てるためだろうか。部屋に置いとくと忘れそうだから。

 

「それじゃフミカちゃんの歓迎は記念に組み立て会から始めるってことで!」

「あっはい……あ、改めてよろしくお願いします、デミ子ちゃん」

「皆さん……! デミトレちゃんの良さをわかってくれて、私は感無量です! 短時間で組み立てられて、コックピットハッチのシールで個性も出せるHGデミトレーナーは本当にいいキットなんです! だから、一家に一機飾ってもらうのが私の夢です!」

 

 ……急に、スケールが大きくなった。

 でも、それだけデミ子ちゃんはデミトレーナーのことを愛しているのだろう。

 劇中ではスレッタとチュチュが友達になるきっかけになった活躍もしてるし、それでファンになったのかな。

 

「お待たせー、人数分の工具持ってきたよ!」

「ありがとうございます、コバトさん!」

「店内でガンプラ組み立てられるメイド喫茶なんて新台場ギガフロート広しといえどもうちだけだよ?」

「……あっ、そ、それは……そうですね」

 

 バチバチにピアスを開けてたりメッシュを髪に入れているコバトさんのせいで忘れかけていたけど、普通のメイドカフェにまずガンプラを持ち込もうものなら、笑顔で出禁を言い渡されることだろう。

 

「流石に塗装はダメだけどね」

「……当たり前すぎる」

 

 サリアさんが頷いた通り、食べ物を扱う店でまさか有機溶剤を取り扱うわけにはいかないだろう。

 

「それじゃサクッと組んで記念に写真撮っちゃおっか」

「いいですね! 四人それぞれのデミトレちゃんが大地に立つ!」

「……四機いてもザクに負けそう」

「そ、そんなことないですよ! ね、カミナギさん?」

「えっあっはい」

 

 他作品との強さ比べほど不毛なことはないと思うけど、でもデミトレーナーとザクかぁ。

 シャアがもしザクに乗ってたら普通にデミトレーナーを倒しそうだ。

 でも、デミトレーナーはビームガンを持っているから攻撃力では優位を取っているわけで……意外と絶妙なマッチアップなのかもしれない。

 

 ぱちん、ぱちんとランナーからパーツを切り出しながら、わたしたちはそんな他愛もない話に花を咲かせる。

 

「でもアムロがデミトレに乗ってたら普通にシャアでも負けると思うけど」

「……ノア、それは流石にシャアを過小評価してる」

「えー? フミカちゃんもそう思うよね?」

「はい! デミトレちゃんに白い悪魔が乗ったら向かうところ敵なしです!」

「……そ、そういうの、夢がありますよね……アスランがデミトレーナーに乗ってたらどんなマニューバするんだろう」

「多分中からジャスティスが出てくるよそれ」

 

 コバトさんが苦笑しながら呟くと同時に、わたしたちもまたつられてどっと笑う。

 確かにアスランならデミトレーナーに偽装したジャスティスでスレッタのピンチに駆けつけてくれるかもしれない。

 おあつらえ向きに、デミトレーナーの頭には決闘用のアンテナを取り付けられるわけだし。

 

「実際ズゴックよりは無理なくしまえそうじゃない?」

「……肩でバレる」

「デミトレちゃんのキットにジャスティスを収めるのは難しいかなーと思います!」

「……け、結構中身詰まってますからね……」

 

 空洞になっているパーツが少ないから、よほどの凄腕モデラーでもない限りデミトレーナーにジャスティスを収めることは不可能だと思う。

 四人がそれぞれ一致した結論を出すと同時に、わたしたちは手元のデミトレーナーを組み上げていた。

 ノア先輩は黄色のシール、サリアさんは青のシール、デミ子ちゃんは赤のシールで、わたしがピンクのシール。

 

 こうしてコックピットに貼るシールだけでも結構な違いや個性が出てくるんだな、と、思うと、なんだか感慨深い。

 

「それじゃ写真撮っちゃおっか! ガンプラバトル部結成と、デミ子ちゃんの加入を祝ってー! はい、チーズ!」

 

 ノア先輩がわたしたちに向けて傾けた生徒手帳ことスマートフォンの画面に、ノア先輩と、ぎこちなくピースサインを浮かべたわたしと、全く動じていないサリアさんと、ダブルピースで満面の笑顔なデミ子ちゃんが写る。

 ガンプラバトル部結成……これで、ノア先輩の夢にまた一歩近づいた。

 それが今は、ただただ喜ばしくて。

 

「あれ、ヨツバちゃん、笑ってる?」

「……あっえっ、そんな、笑ってましたか」

「うん、やっぱり笑顔の方が似合ってるよ」

「……えっあっあっ、ありがとう、ございます……?」

 

 恐らくわたしはノア先輩が言った通り、笑っていたのだろう。

 口元が引き攣った感じがするし、きっとまだまだぎこちないものだったんだろうけど。

 同時に込み上げてくる気恥ずかしさにむにむにと頬を捏ねていると、わたしたちを少し離れたところから見守っていたコバトさんが駆け寄ってくる。

 

「ガンプラバトル部、まずは部員が揃ったってことでおめでとう、ノアちゃん」

「ありがとうございます、コバトさん! それで……あたしたちに、なにか?」

「ふふっ、せっかく部員が揃ったことだし……私たちとガンプラバトル、してみない?」

 

 コバトさんの言葉に、わたしたちのことを生ぬるい目で見ていた他のお客さんたちがざわめき出す。

 

「マジかよ、コバトちゃんが……!」

「ガンプラバトル部っていうけど、ドミニオン学園の生徒が実際どんなもんなのかは気になるよな」

「サリアちゃんに踏まれてぇ……」

 

 なんか最後の人は関係なかった気がするけど、その宣戦布告を受けて、ノア先輩は固唾を飲み込んでいた。

 

「……本気の、ですか」

「そ、本気と書いてマジなやつ。それともハンデありの方がよかった?」

「……ノア」

「わかってる、サリア。ここで逃げたら……あたしたちはこれからもきっと逃げ続ける。だから、受けます!」

「そうこなくっちゃ!」

 

 対戦の合意が成立したことで、店内は一挙に湧き上がって騒がしくなった。

 中には、どっちが勝つかを賭けている野次馬もいる。

 コバトさんたちは、きっとノア先輩が恐れるほどに強いのだろう。

 

 ──なら。

 

 この前みたいに、あっさり終わったり、しないよね。




ヨツバの中の修羅が囁く
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