ソルベ   作:ショコラよりメダルリボン派

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第4話:「新しい風」

 中谷友香は、若葉商店街の入り口に立ち、今日も「ル・ソルベ」の暖簾をくぐった。涼やかな店内の空気が彼女を包み込み、肩に乗っていた少しの疲れがふわりと和らいだ。彼女はこの店で、アルバイトとして働いているが、今日は少しだけ特別な気持ちで店に向かっていた。

 

「おはようございます、佐伯さん!」

 

 明るい声で友香は挨拶しながら、店の奥にいた佐伯昇に軽く手を振った。

 

「おはよう、友香ちゃん。今日は元気そうだね」

 

 佐伯さんはにっこりと微笑んで、カウンター越しに顔を覗かせた。

 

「例の新作ソルベ、持ってきてくれた?」

 

「はい、持ってきました!今日は私のアイデアで、『パイナップル&ココナッツ』です!ちょっとトロピカルな感じを狙ってみました!」

 

 友香はバッグから丁寧に作った手作りのソルベを取り出し、佐伯さんに差し出した。

 

「トロピカルか…面白いね。じゃあ、早速味見してみようか」

 

 佐伯さんは楽しそうに声をかけ、スプーンを取り出して友香の新作を一口味わった。

 

「うん…パイナップルの甘さとココナッツの風味がうまく混ざり合ってる。これはお客さんに受けるんじゃないかな」

 

 佐伯さんの満足そうな表情を見て、友香の心の中に小さな自信が芽生えた。

 

「本当ですか!?良かった…ちょっと冒険しすぎたかなって思ってたんです」

 

 友香はほっと胸を撫で下ろした。彼女はいつも明るく元気だが、実は心の中ではたくさんの不安を抱えていた。特に、将来のことを考えると、焦りと悩みが頭をよぎることが多かった。

 

 仕事が終わり、夜の商店街を歩く友香の足取りは少し重かった。家に帰ると、いつものように家族が出迎えてくれる。彼女の家はパン屋を営んでいて、両親は商売に忙しい日々を送っている。

 

「お帰り、友香。今日もル・ソルベでアルバイトだったの?」

 

 母親が軽く笑いながら声をかけた。

 

「うん、今日も新作ソルベを作ったんだ。パイナップルとココナッツのフレーバーで、佐伯さんにも褒めてもらえたよ」

 

 友香は笑顔で答えたが、その笑顔はどこかぎこちなかった。

 

「そう…でも、そろそろ家のパン屋も手伝ってくれると助かるんだけどね。ル・ソルベでのバイトもいいけど、家の商売も大事だからね」

 

 母親の声には、どこかプレッシャーを感じさせる響きがあった。

 

「うん…わかってる」

 

 友香はそう答えながら、自分の将来について考えた。パン屋を継ぐか、それとも自分の好きなスイーツ作りを追求するか。選ばなければならない時期が近づいていることを感じていたが、まだ自分の心がはっきりと決まっていなかった。

 

 翌日、友香はル・ソルベでの仕事を終えた後、陽菜、みさき、りんの3人と一緒にソルベを楽しんでいた。彼女たちは友香の新作「パイナップル&ココナッツ」を早速注文し、その感想を彼女に伝えていた。

 

「これ、すごく美味しいよ!パイナップルの甘さとココナッツのクリーミーさが絶妙だね!」

 

 陽菜が目を輝かせながらスプーンを口に運んだ。

 

「うん、本当にトロピカルな味わいで、夏にぴったりのソルベだね」

 

 みさきも静かに微笑んで頷く。

 

 りんは一口食べて、少し考えたあとに言った。

 

「面白い組み合わせだと思う。甘さがちょうど良くて、飽きがこない感じがするよ」

 

「みんなに気に入ってもらえてよかった…」

 

 友香は心からほっとした表情を浮かべながらも、少しだけ遠くを見つめるような目をしていた。

 

「どうしたの、友香?なんか今日は元気ない感じだけど」

 

 陽菜が不思議そうに彼女の顔を覗き込む。

 

 友香は少し戸惑いながらも、ため息をついて答えた。

 

「うーん、実はさ…家のパン屋を継ぐか、それとも自分の道を進むか、最近ずっと悩んでるんだよね」

 

「そうなんだ…」

 

 みさきが静かに呟いた。

 

「でも、友香が本当にやりたいことは何なの?」

 

「それが…まだわからないんだ。パン屋を手伝うのも悪くないけど、スイーツ作りも好きだし、ル・ソルベで働いていると、それがどんどん楽しくなっていく。でも、家族はやっぱり家業を大事にしてほしいみたいで…」

 

 友香はその場でじっと考え込んでしまった。彼女にとって、家族との絆は大切だが、同時に自分の夢を追いかけたい気持ちも強かった。

 

「それなら、ゆっくり考えればいいんじゃない?」

 

 陽菜が肩を叩きながら、軽やかに言った。

 

「家族の期待もあるだろうけど、友香が一番大事にしたいことは何か、ちゃんと見つける時間が必要だと思うよ。急いで決めることはないんじゃない?」

 

「そうだね」

 

 りんも頷く。

 

「結局、自分の人生だから、自分が納得できる選択をするのが大事だと思う」

 

「ありがとう…」

 

 友香は少しだけ微笑んで、友達の言葉を噛み締めた。焦ることはない、自分のペースで進めばいいということに、少し安心感を覚えた。

 

 その後、彼女たちは楽しそうに新作ソルベを食べ続けた。トロピカルな味わいが口の中に広がり、友香の心も少しずつ軽くなっていった。

 

「じゃあ、次はまた新しいフレーバー考えてみるね!今度は何にしようかな…」

 

 友香は再びソルベ作りへの意欲を取り戻し、笑顔を見せた。

 

「友香の新作、また楽しみにしてるからね!」

 

 陽菜が元気いっぱいに答えた。

 

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