神様は配信者 作:上様
ほのぼのと言っておきながら、暗くなってしまいました。申し訳ございません。
X日後。
『どうも、もやしです』
『皆さん知ってました?最近知ったんですが、一回一回買うよりもまとめ買いの方がお得なんですよ。と言う事で今日は残りのもやしを全部使って、最高のもやしのフルコースを作って行こうと思います。皆さんも是非もやしを食べながら、見てくださいね』
話しながらそっともやしの袋を遠くへ遠ざける。それなのに、休まること無く、私の手は寧ろ強く震える様になった。今も、また無意識に震えてる手を隠して押さえながら、画面に向けて無理矢理笑顔を作る。
『さぁ、どんなもやし料理が出来るか楽しみですねーあはは』
心にも無い言葉を並べてその罪悪感を消すように必死に手を動かす。その間も、心配はずっと残る。上手く出来ているだろうか?上手く笑えてる?視聴者が求めている物を作れているのか、私はこれで良いのか。本当にこのままで大丈夫なのか。絶えず、不安が頭の中で巡り回る。
『はい、まずは前菜のもやしのナムルの完成です。お次は、スープですね。これは、前作ったもやしのお味噌汁にしましょうか。和のフルコースみたいな感じですかね』
何もしてない時には、大抵もやしの事を考えている気がする。寝ても起きても、もやしの事ばかり。もしかしたら、私はもやしに恋しているのかもしれない。
『お味噌汁は前作った通りなのでサクッとやりましょう。詳しくは前の動画をご覧下さい。すいません、量が多いのでサクサク行こうと思います』
そう伝えつつ、私は次のもやしについて頭を動かす。
『さて、皆さん気になってるであろう魚料理、肉料理ですが。ご安心下さい、勿論もやしです。なんせもやしのフルコースですからね。そこに肉や魚が混ざって仕舞えば、それはもやしのフルコースとは言えないので』
魚料理を作る為、私はもやしを袋のまま握りつぶした。そして木の棒で丁寧に潰した後、丁寧に一口大に形を作りしっかり衣を付けて揚げた。
『もやしの磯辺……海苔使って無いので、磯辺風揚げですかね』
その後、同じ要領で潰して丸めて肉料理のもやしの大豆肉団子を作り、難関だった肉、魚を制覇した。
後は……ソルベ?何?ソルベって。あーシャーベットか。なら、シャーベットって、もやしのシャーベット?駄目だ全く美味しくなるビジョンが見えない。と言うか、私にそんな技術は無い。プロなら美味しく出来るだろうけど、私はそこら辺の神様だからなぁ。
『ソルベはパスで、後は生野菜としてもやしのおひたしで終わりです。まだ余ってる奴は……また後々考えます。それでは、食べますか!』
目の前の最後の晩餐みたいな料理を前にしても、楽しそうにしなければいけない。苦しそうに食べる人間を見て、人は笑うのか。笑う人もいるだろうけど、大半は笑顔に吊られて笑う筈だ。
だから、体がもやしを拒否していようと、無理やり口の中へ捩じ込み咀嚼をする。食べなければ減らないし、捨てるのはもやし農家に申し訳無い。何度も箸が止まり、戻しそうになりながらも何とか全部平らげた所で私はカメラに向けて笑顔を作った。
『えーここて、皆さんに大事なお知らせがあります。ご飯節約生活《もやし編》は今日で終わりとなります。もう、私は限界なのですいません』
そこまで撮って初めて、私の体は安心した様で正常に動き出した。それを感じた私は急いでトイレへと向かった。
『はっ!?』
ゆ、夢?夢、ですよね。夢なのに、恐ろしいほどリアルでした。まるで実際の出来事の様に。まさか、予知夢と言う奴でしょうか?もやし生活を続けるといずれこうなるよと言う体からの警告かもしれません。
『もやし生活は昨日の分で終わりにしますかね、明日からは何をするか……』
ゆっくり考えながら、再び寝る事にしました。明日は明日の私がどうにかしてくれる筈です。任せました!!