ひか姉に幼馴染がいたら   作:わたっくし

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初作品です。よろしくお願いします。



わたしの幼馴染

 

 ふと、昔のことを思い出した。私がまだ9歳くらいの頃のことだ。

 

 私には幼馴染がいた。綺麗な銀髪をサイドテールにした、可憐な女の子。私よりも少し背が低くて、ちょっぴり天然な子だった。

 二人で遊んだし、二人で学校にも行った。二人でお泊まりもしたし、二人でお風呂にも入った。何をするにも、私と彼女はずっと一緒だった。

 

「ひーちゃん!一緒に遊ぼう!」

 

「ひーちゃん!向こうでご飯食べようよ!」

 

「この桜餅とっても美味しい!ひーちゃんにもあげる!」

 

 私の名前が「ひかげ」だからひーちゃん。

 そして彼女の名前が「凪咲」(なぎさ)だったから、お互いに「ひーちゃん」「なーちゃん」と呼び合っていた。

 

「おはよう、ひーちゃん」

 

「算数教えて、ひーちゃん」

 

「ひーちゃん、大好き!」

 

 ひーちゃん。ひーちゃん。ひーちゃん……。

 

 正直言って、満面の笑みで「ひーちゃん、ひーちゃん」と私を呼ぶ彼女の姿は、相当堪えるものがあった。

 いや、さすがにあの可愛さは反則でしょ。あんな天使のスマイルを披露された上、自分の名前まで呼ばれたら、何言われても従っちゃうんですけど。

 

 初めの頃は特段なんとも思っていなかった。でも、なんていうか、歳を重ねるにつれ蠱惑的になってきたというか……いや、別にそういう目で見てるわけじゃないんだけど、そのー……。

 

 ……別に私だけがえっちな目で見てるわけじゃない。誰だってそうなるはずだ。

 

 だって、このみちゃんとか駄菓子屋も、自分の名前呼ばれた時、顔赤くしてたし。

 

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「このみちゃん、かえでちゃん!あーそーぼっ!」

 

「「ッッ!!」」

 

 おやおや……これは二人とも照れてますな……よし。

 

「あれあれあれ〜?お二人とも顔が真っ赤じゃありませんか〜?」

 

「えっ!?いや、私は別に、そんなに、赤く……ない……けど……」

 

 普段取り乱さないこのみちゃんの焦ってる姿はレアだし、見ていて面白い。後が怖いけど。

 

「ええ〜?ホントはちょっぴりドキッとしたんじゃないの〜?」

 

「そ、そんなことねーよっ!別に凪咲のこと好きって言ってねーし……ああっ!?凪咲!?いや、別にお前のことは全然嫌いじゃないからな!あー……」

 

 ししし、焦ってる焦れてる。

 これには鈍感ななーちゃんも、自分がどう思われてるか理解するんじゃないかなー?

 

「えーっと、私はこのみちゃんもかえでちゃんも大好きだよ?」

 

「「「…………」」」

 

 将来、変な女に引っ掛けられないか心配だ。

 

 こんな風にちょっぴりドキドキさせられながらも、毎日楽しい日々を過ごしていた私たちだが、別れの瞬間は唐突に訪れた。

 

 なーちゃんが引っ越すことになった。都会の方に。

 

 なんで!?嫌だ。離れたくない!そう思っているのはなーちゃんも同じのようで、涙ぐみながら引っ越しのお話を告げてくれた。

 理由は両親の仕事に関することらしく、どうにか引っ越ししないで済む方法はないか模索したものの、幼い私たちでは見つけることができず、どうすることもできなかった。

 

「もっとみんなと一緒に遊びたかったなぁ……」

 

 今にも消えてしまいそうな声だった。そして、彼女に悲しい顔をさせたくないという思いが、私の中で燃え上がった。

 

「じ、じゃあ忘れられないくらい、今からいっぱい遊ぶぞ!」

 

 咄嗟に出た言葉だったが、彼女の顔はパアッと晴れた。

 

「うんっ!いっぱい遊ぼう、ひーちゃん!」

 

 だから、その笑顔は反則だって言ったじゃん……言ってないけど……。

 

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 そして、とうとう別れの日が来た。もちろん、分校のみんなで見送りに向かった。

 

「また必ず戻ってくるからね。」

 

 そう言って彼女は電車に乗り込む。なーちゃん家族は一足先に向こうで待っているらしい。

 

 そろそろ電車が出発する。なーちゃんとの時間もあとわずかだ。

 

「凪咲ちゃん……」

 

「また戻ってくるよね……?」

 

 越谷姉妹は今にも泣き出しそうな雰囲気だった。小鞠の方はほぼ泣いていたけど。

 

「凪咲ちゃん……またね……」

 

 このみ姉が泣いている……珍しい。

 

「向こうでも頑張りなー。応援してるよ。」

 

 かず姉は……やっぱり大人だな。こういう時に応援の言葉をかけることができるかず姉は、教鞭をとって正解だったと思う。

 

「……じゃあ……元気でな……」

 

 ぜってー泣いてんじゃん、駄菓子屋。嗚咽(おえつ)しちゃうから、口数少なくなってんじゃん。

 

「みんな……ありがとう!ひーちゃんも、またね……!」

 

 なーちゃん、向こうでも元気でな……!私も応援してるからさ!

 

「ゔん゙、や゙っ゙ぱ゙り゙行がな゙い゙で゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙」

 

「お前が一番泣いてんじゃねーか。」

 

「泣゙い゙でね゙ーし」

 

 泣いてねーし。

 

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 いやー、懐かしいことを思い出したな。もう彼女とはかれこれ七年近く連絡をとっていない。あの頃はお互いケータイを持っていなかったし、彼女の両親の電話番号も知らなかった。

 

「じゃあ私たちが会いに行けばいいじゃん!」と駄菓子屋に提案してみたものの、「行き先が都会ってしか判明してない相手をどうやって見つけ出すんだよ。どこの都会かが分かっているならまだしも。……まあ、私だって会いたいけどな……」

 と、別の意味で顔を赤くして反論された。なーちゃんのこと好きすぎだろ。

 

 まあ駄菓子屋の言う通り、なーちゃんの詳細な行き先が判明していない以上、彼女を探し当てるのはいささか無理がある。なんならさらに引っ越してるかもしれないしね。

 

 以上の理由により、あの時以降、私たちは彼女の姿を見ていない。

 

 ああ、なーちゃんに会いたいなー。あの笑顔をもう一回見せておくれよ。一緒の高校行きたかったよー……うあー……

 

「ひか姉、なに落ち込んでるん?」

 

「あー、いやまあちょっとねー。」

 

 ちなみに私は現在、絶賛帰省中である。いやー、やっぱりたまにはみんなに顔見せてやんないとねー。

 

「あ、それよりれんげ。居間にれんげが好きなお土産置いてあるよ。」

 

「なーっ!?さすがひか姉、ウチのこと分かってるんなー。ひか姉ありがとなーんっ。」

 

 ふふふ。かっこつけて奮発したかいがあったぜ。こんなに家族想いな姉はなかなかいないだろう。……でも六十個入りはさすがに奮発しすぎたかな……。さすがに二人に対して六十個はいささか多すぎかと思う。まあ、それでも妹の笑顔を見れたなら後悔はない。……そう、笑顔……。

 

 ……笑顔。…………あーー、なーちゃんの笑顔が脳裏にチラつく。

 

 ダメだ、唐突に昔のことを思い出したせいか、今日の私はなんかおかしい。こんなに思考がぐるぐるループしていては何も手につかない。よし、少し横になろう。思考がリセットされるはずだ。

 

「ピンポーン」

 

 ………来客か。誰が来たのか少し考えたが、まあ十中八九、夏海が遊びに来たんだろう。もしかしたらこのみ姉って線もあるな。ちょっと前、私に用がある的なこと言ってたし。

 まあどちらにせよ、今の私には応対する気力が残っていない。悪いけど、れんげに出てもらうか……。

 

「れんげー。悪いけど出てくんねー。」

 

「わかったーん。」

 

 すまんな、れんげ……。お土産全部、れんげが食べていいよ……。

 

 ……………………………………

 

 声が、聞こえる。

 

「……お姉さん、どちら様なのん……?」

 

 知り合い……ではなさそうだ。

 

「あーっ!れんげちゃん、すごく大きくなってる!」

 

 親戚か……?なんだか聞いたことある声だな……。

 

「な、なんでウチの名前知ってるん?」

 

「あはは、さすがに覚えてないよね。れんげちゃん、あの頃赤ちゃんだったもん。れんげちゃんがちっちゃい頃、沢山遊んだんだよー?」

 

 れんげが赤ちゃんの頃っていうと、七年くらい前か……?

 

 七年前……ん?

 

「はー、そうなんなー。じゃあなっつんとか駄菓子屋とも友達なん?」

 

「うんっ!そうだよ。みんなと沢山遊んでたんだー。懐かしいなぁ。」

 

 駄菓子屋とも……友達……?

 

「じゃあ、ひか姉とも友達なん?」

 

……………………

 

「うんっ!お互いのこと、ひーちゃんなーちゃんって呼び合ってたんだー。」

 

 瞬間、私は体操選手のごとく飛び起きて、ダッシュで玄関まで走った。

 自室から玄関に着くまでわずか十秒にも満たない時間であったが、私の中では様々な感情が渦巻いていた。

 

 なーちゃんに会える。なーちゃんと話せる。なーちゃんと遊べる!

 

 猛ダッシュで階段を駆け下りた後、バッと玄関の方を振り返る。廊下越しに見える玄関には……。

 

 あの時から少し成長していて、より魅力的になった天使がいた。

 

「ああーっ!ひーちゃんっ!久しぶり!」

 

 だから、その笑顔は反則だって言ったじゃん……言ってないけど……。

 

 




ひか姉かわいいよね…
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