ひか姉に幼馴染がいたら   作:わたっくし

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なーちゃん視点スタートです




再開

 

 小学3年生の時、私は生まれ育った故郷を離れ、都会へと引っ越した。親から引っ越しの話を聞かされた時は相当ショックだった。小さい時から育ってきた場所を離れるのは寂しかったし、何よりみんなと離れたくなかった。

 

 しかし、当時の私は齢9歳。誰かの家に預けてもらうわけにもいかず、両親について行かざるを得なかった。

 初めは「行きたくない、行きたくない」と駄々をこねていたが、両親の事情や気持ちを理解してからは、少しずつ引っ越すことに前向きになっていた。

 

 そして都会に移り住んではや七年。生活様式の違いや環境の変化に色々苦労したものの、私が想像していたよりもずっと楽しく過ごすことができた。

 

 これが、いわゆる「住めば都」ってやつかな? 今では私もすっかり都会の生活に慣れてしまった。つまるところ、今の私は田舎と都会の両方の生活に適応しきったハイブリッド型女子学生だ。今の私に住めない場所などない!

 

 ……でも本当は、やっぱり向こうに戻りたい。ひーちゃんたちに会いたい。ひーちゃんたちと遊びたい。

 どうにかして彼女たちに会えないか長年うんうん悩んでいた私だったが、ある時、一つ妙案を思いついた。

 

「……あ、一人暮らし……」

 

 そう、一人暮らしだ。向こうで一人暮らしをすれば良いのではないか。今年から高校生になる私としては、ベストなタイミングと言える。

 長年ひーちゃんたちと再会する方法を考えていた私にとって、この案は非常に革命的なアイデアだった。そしてそのまま、私は一人暮らしをすることを決断した。

 

 またひーちゃんたちと一緒に過ごせるかもしれない。そう考えると、私の中でワクワクが止まらなかった。

 しかし、一人暮らしをするためには親の許可を取らないことには始まらない。

 

「ダメって言われたらどうしよう……」

 

 私はそんなたくさんのワクワクと一抹の不安を胸に、その日は床についた。

 

 そして翌朝、家族で食卓を囲む中、私は勇気を持って口を開いた。

 

「私、高校生になったら一人暮らししたい。」

 

 言ってしまった。昨日は些細な不安だったものが、今となっては莫大な不安と化している。

 断られたら、どうしよう。もしそうなったら、ショックで二〜三日は寝込んでしまいそうだ。

 そしてしばしの沈黙の後、何かを察したかのようにお母さんが微笑んでこう言った。

 

「ふふっ。ひかげちゃんたちのところへ行くのね。いいわよ。凪咲の好きなようにしなさい。」

 

―――やった。……やったぁ!!!

 

 私は母の言葉を聞いた瞬間、食事中であるにもかかわらず、嬉しさのあまり飛び跳ねてしまった。

 またひーちゃんたちに会える。この事実に心動かされた私は、ちょっとした狂乱状態に陥っていた。

 

「えっ。えっ。もう荷造り始めた方がいいかな。えーっと、えーっと」

 

「落ち着きなさい。」

 

 はい。

 

 落ち着いた私は、お母さんに一人暮らしを許可したわけを聞いてみた。なんでもお母さん曰く、いくら仕事の都合とはいえ、生まれ育った故郷から半強制的に引き離してしまった上、慣れない都会の生活を送らせてしまったことに、少なからず罪悪感があったらしい。そうだったの!?

 

 そういった理由で今回私の一人暮らしを許可してくれたというわけだ。私としては、両親が罪悪感を感じる必要は全くないと思っているんだけどな。お母さんたちだって本当は寂しかったし大変だったろうしね。

 

 ……そういえば「一人暮らししたい!」ってだけしか言ってないのに、ひーちゃんたちのところへ行くつもりなことがバレてる……。そんなに私って分かりやすいかな……。

 

 まあなんにせよ、これで晴れて一人暮らしすることが決定したわけだし、少しずつ引っ越しの準備も始めなくてはならない。向こうに何持っていこうかなー……。えーっと、まずスマホでしょ、あと充電器。通学用のカバンと洋服。あ、あの部活のテニスラケットもだし、あとえーっと……。

 

「凪咲、高校落ちたら一人暮らしはナシだからね」

 

 そうだ、私受験生だった。

 

 ―――月日は流れ、春。見事志望校に合格した私は、生まれ育った地へ向かうため家族で空港に集まっていた。

 

「じゃあ、行ってきます。」

 

「……うん、いってらっしゃい。気をつけてね。」

 

「うん!……お父さん。行ってくるね。」

 

「……………………」

 

 ちなみに父は私の一人暮らしに反対していた。「まだ高校生に一人暮らしは早い!」的なことを言っていたが、お母さん曰く、普通に寂しいからというのが本音らしい。ふふっ、素直じゃないなぁ。

 

「でも凪咲、あんた可愛いんだから周りには気をつけなさいよ。」

 

 ……何にだろう? 周りにはほとんど女の子しかいないし大丈夫だと思うけど。そう考えている私を見て、お母さんは呆れたような表情を見せた。なんで。

 

 そうこうしているうちに、私が乗る飛行機の搭乗時刻が刻一刻と迫っていた。改めて別れの挨拶をしてゲートの方へ向かおうとすると、

 

「凪咲……向こうでも、元気でな。」

 

 普段から口数が少ないお父さんが声をかけてくれた。ああもう。最後に泣かせに来ないで欲しい。今から飛行機乗るっていうのに、前が見えないじゃないか。

 

 ゲートに入る直前、私は両親の方を振り向いて、

 

「今までありがとう!お父さんもお母さんも大好き!いってきます!」

 

 こう言って私は搭乗ゲートをくぐった。

 

 ―――ついに、ここ《都会》を離れる。初めて来た時は右も左も分からず大変な思いをしたが、今では七年間の思い出が詰まった第二の故郷だ。

 そんな地を離れるのは少々寂しい気もするが、同時にその何倍も向こうでの生活を楽しみにしている自分がいる。さっきからずっとワクワクが止まらない。

 

 そして飛行機は乗客を乗せて、私のふるさとへと向かっていった。

 

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「……っていう訳だったんだー。じゃあひーちゃん。改めまして、ただいまっ!」

 

「お、おう。おかえり。」

 

 七年ぶりの再会を果たした私たちは、一階の居間でおしゃべりをしていた。なーちゃんが帰ってきた理由を話してくれたんだけど、楽しそうに喋るなーちゃんがあまりにも可愛すぎて、半分くらいしか話の内容を聞き取れなかった。えーっと、私に会いたいから戻ってきたんだっけ? 私たちのこと大好きかよーもう。

 

 ……しかし本当に可愛いな、なーちゃん。昔も十分すぎるくらいに可愛かったのだが、今の彼女は人類が出せる可愛さの限界を軽く突破している。

 それに昔から変わらない小さめの身長が、また彼女の可愛さを引き立てている。玄関で見た感じ、私よりも身長が低そうだった。あ、やばい、もし今のなーちゃんに上目遣いされたら、自分を抑えられる気がしない。

 

「ひか姉なんで顔赤いのん。」

 

 まずい、顔に出てたか。

 

「い、いやー、さっきまで運動してたから汗かいちゃってさー。」

 

「さっきまでひか姉ずっと自分の部屋にいたのん。」

 

「……自分の部屋で運動してたんだよ……。」

 

 れんげ、私を追い詰めないでくれ。そう考えていると、急になーちゃんが立ち上がってこちらの方へ近づいてきた。えっ?

 

「ひーちゃん、本当に大丈夫?」

 

 距離にしてわずか十五センチ。彼女は私の顔を覗き込むように、自身の顔を私の顔に近づけてきた。待って待って待って! 近い近い近い!!!

 唐突ななーちゃんフェイスは心臓に悪い。向こうでもこんなことしてたのか、この天使は。ドキドキのあまり口をパクパクさせていると、彼女はさらに顔を近づけてきた。えっ?

 

「……うんっ。熱はなさそうだね。良かった!」

 

 最高記録更新。記録ゼロセンチ。彼女は自身のおでこと私のおでこをくっつけてきた。今の私の顔はゆでダコのごとく真っ赤になっていることだろう。

 

「だ、大丈夫。大丈夫だから……」

 

 そう言って私はフラフラと生まれたての子鹿のような足つきで彼女と距離をとった。あー、ヤバかった。この場にれんげがいなかったら、あのまま押し倒してたかもしれない。もしも二人っきりの場合、例えばなーちゃんの家にお泊まりした際にこんなことになったら………………。

 

 ………あれ? そういえば、なーちゃんの家ってどこなんだろう。

 彼女が元々住んでいた家は今では貸し家になってるし、この辺に新しくできた家もなさそうだし……。

 

「ねえなーちゃん。なーちゃんが新しく住む家ってどの辺なの?」

 

「ああ、それなんだけどね、ひー「ピンポーン」」

 

 ……なんともタイミングの悪いチャイムだ。すぐに玄関の開く音が聞こえたことから、多分姉ちゃんが帰ってきたのだろう。

 

「たっだいまー。」

 

 やっぱり姉ちゃんだった。みんなで玄関の方へ向かう。ふふふ、なーちゃんが戻ってきてるって知ったら姉ちゃん驚くだろうな。

 

「おかえりー」

「おかえりなーん」

「おかえりなさい」

 

「うん、ただいまー。……おっ、なーちゃんももう戻ってきてたんだね。久しぶりー。」

 

「うんっ、久しぶり!」

 

 あれっ?………それだけ?

 

 ……いや、七年ぶりの再会だよ!? なんで姉ちゃんもなーちゃんもそんなに平然としてんの!? ……ていうか、「もう」って何、「もう」って!

 

 混乱している私の様子を見た姉ちゃんは、何かを察したかのようにこう言った。

 

「あー……そっか。いやー、実は二週間前くらいになーちゃんのご両親から電話があってね? なーちゃんがここに来るってのを教えてもらってたんだよ。」

 

「そうなんだよー。」

 

 そうだったのか……。……ということは、私よりも姉ちゃんの方が先になーちゃんが帰ってくることを知っていたのか。

 

 ……なんか悔しい。私が一番最初に知りたかった。

 一番乗りではなかったことに少々不機嫌になった私だったが、直後にそんな気持ちを吹っ飛ばすかのような発言が二人の口から飛び出した。

 

「いやー、それにしてもなーちゃん久しぶりだねー。」

 

「うんっ。これからまたお世話になるけどよろしくね!」

 

「うん、よろしくー。」

 

 ……「これからお世話になる」……? なんだか聞き捨てならない言葉を聞いた気がする。

 

「ね、ねぇ。これからお世話になるってどういう……。」

 

「あ、そうそう。さっき言おうとしたんだけどね、」

 

 ……えっ、まさか……

 

「私、今日からひーちゃんちに住むことになったんだ! これからよろしくね、ひーちゃんっ!」

 

「えええええええええええええええええええええぇぇぇぇ!?!?!?」

 

 ―――想い人との同棲が始まった瞬間だった。

 

 





なーちゃんはひーちゃんよりも2センチ程小さいです
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