転生したら魔導王の子だった   作:又三郎

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第八話 ヒント

 

 

 

 ジークがアレクから北神流を教わり始めた。

 本人はこれもまたクライブ君と同様に、こっそり強くなって他の兄弟を驚かせたいらしい。

 特にアルスには知られたくないようだ。

 年齢も近いし同性だし、対抗意識があるのだろう。

 

 そんなジークの意思を尊重し、パパもママも子供には知らせることはないが、俺は魔力補充の関係で事務所に行くことが多いし、そうするとジークにもバッタリ会う。

「何してたの?」と訊けば「師匠とあそんでた!」と言い張る。

 俺は言う。「お姉ちゃんも仲間にいーれて!」

 ジークは言う。「だめ! ひみつの特訓だもん!」

 

 バレバレなんだけどな。

 師匠って言っちゃってるし。

 

 

「ジーク、一緒に帰ろう」

「ペトラ姉!」

 

 オルステッドへ魔力を渡した俺は、アレクとジークがいる鍛錬場に顔を覗かせた。

 事務所の地下にある体育館のような場所だ。

 

 ジークはパタパタと走ってきた。

 どんっと飛び込んでくる仕草は無邪気なのだが、その頭も体もしっかり汗ばんでいるわけで。

 5歳になるかならないかの男子に、こまめに汗を拭く習慣を身につけさせるのは至難の業なわけで。

 

「うぎゃ! 汗びっちょり!」

「えへへー」

 

 飛び退いた俺をジークは面白がって追いかけ回す。

 

「ししょー! バイバイ!」

「はい、さようなら」

 

 アレクの返事にアッという顔をしたジークが「さようなら」と言い直す。アレクはにこっとした。

 子供といえど、最低限の礼儀は求められるのだ。

 師匠は友達じゃないからな。別れ際にバイバイはマナー違反だ。

 

「そうだ、ペトラちゃん、ちょっと頼まれてくれないかい?」

「内容によりますけど……」

 

 俺は彼の弟子でもなんでもないから、生意気な口をきいてもいいのだ。

 パパがいたら「ダメです」と両手でバッテンを作ってきそうなことを考えながら、俺はアレクから折りたたまれた紙を受け取った。

 

「ミリシオンの傭兵団支部に行った時に、貴族の使いから預かったんだ。君のお父さんへって」

 

 手紙だ。

 赤いシーリングスタンプで封をしてある。

 裏には覚えのない家紋と、差出人の名前が書かれている。

 クレア・ラトレイア、カーライル・ラトレイア……。

 

 ゼニスばあちゃんの実家からだ。

 

「ルーデウス様が出張に赴かれる前に渡しそびれてしまってね。事務所にお戻りになられる時に僕がいるとも限らないし、家に置いてもらったほうが確実に渡るだろう?」

 

 簡単な用事である。

 そういうことなら、と引き受けることにして、俺はジークを引き連れて事務所をあとにした。

 

「赤ヤギさんたら……」

 

 ジークのボーイソプラノで歌われる赤と褐色のヤギが延々手紙を食べあう歌を聞きながら、俺はラトレイア家からの手紙を眺める。

 歌を教えたのはルーデウスパパである。

 みんなは当然パパオリジナルソングだと思っているようだ。

 俺は元ネタ知ってるけどな。

 

 手紙は個人的な内容だろう。

 前世の郵便機能に遠く及ばないこの世界では、手紙は人から人へ渡ってのんびりと届くものだ。

 だから紛失も多い。

 そうならないように、オルステッドコーポレーションにおいては世界中のどこでも迅速に連絡をとれる体制を整えたのがルーデウスである。

 

 仕事関係の連絡であれば、アレクには渡さず、もっときっちりルーデウスの手に渡るようにするはずだ。

 

 俺は立ち止まって道の端にはけた。

 

「ジーク、いい? 今からお姉ちゃんのすることは誰にも内緒だからな」

「?」

 

 ゆっくり慎重に、蝋が崩れないようにシーリングスタンプを剥がしていく。

「ママに怒られちゃうよ」と弱気なことを言う弟には、「バレなきゃいいの」とありがたい助言をしてやった。

 

「よしっ、剥がれた」

「見せて!」

 

 覗き込もうとしてくる緑色の頭を片手でぎゅむっと押さえ、先んじて中身を読む。

 

 えーと、なになに……。

 時候の挨拶と、ゼニスの容態はどうかと訊ねる内容。

 

「え?」

 

 それから、なぜか俺のことも書かれていた。

 ペトラはそちらで馴染めているのか、本人が貴族令嬢としての人生を望まざるとも、養育が負担になればいつでもうちで引き取ることはできる。

 ただし自分たちもすでに高齢なため、我が息子エドガーの養子とする事となるが──

 

「なにこれ」

 

 まるで俺が家の邪魔者みたいな言い草である。

 失礼しちゃうわ。全然まったくそんなことはないってのに。

 しっかりもののルーシーより叱られる頻度は高いけど。

 

「なんで僕に見せてくれないの!?」

 

 焦らされて不満が爆発したジークのパンチを受けながら、両手で手紙をしっかり畳む。

 封蝋の底面を軽く炙り溶かしてくっつければ元通り。

 誰も一度封筒を開けたとは思わないだろう。

 

 ジークもあれだ。

 俺が大人しくしてるからいい気になってるな。

 赤ん坊の頃から怪力で、厳しく手加減を教え込まれているジークは、許可された時と相手以外には全力でぶつかることはない。

 だからパンチも手加減はされて痛くないのだが、まあやっぱり、腹は立つわけだ。

 

 ぎっと睨むと、ジークはビクッとする。

 

「こらー!」

「わー!」

 

 俺はジークと追いかけっこをしながら家に帰り、しれっとアイシャ姉ちゃんに手紙を預けた。

 ルーデウス、あの手紙に、なんて返事を書くんだろうな。

 

 


 

 

 アルスとジークは未就学児なので暇を持てあましていた。

 学校の課題は当然なく、ママたちからの魔術、剣術訓練も終えてしまったのである。

 さっきまで家の中でドタバタ遊んでいたから、遊び疲れてもいた。

 今年にラノア大学に入学して、課題も出されたはずだがやっていないララとともに子供部屋でレオによりかかってくつろいでいると、部屋の扉がノックされた。

 

「ジーク」

「パパ?」

 

 威厳はあるが、妻と子には穏やかな顔しか見せない父──ルーデウスの表情は硬い。

 いつもと違う。

 アルスはジークとルーデウスに注目し、ララは我関せず顔でゴロゴロしているが、ジークは幼いながらに緊張した。

 

「ジーク、この手紙なんだが、開けて読んじゃったのか?」

 

 父の手には一枚の羊皮紙があった。

 ジークは首をひねり、もう一度逆側にひねり、あ、と思い出す。

 ペトラ姉が自分だけ読んで、僕には見せてくれなかったやつだ。

 

 

 ジークには一人の兄と三人の姉がいる。

 ただ一人の兄は横でしっかり聞き耳を立てている赤髪の男の子、一番下の姉はレオの背中でグーダラしてる青い髪の女の子であるが、彼らの話は置いておこう。

 

 上二人は同い年で、彼女たちは同じ時に生まれた双子なのだとジークはパパやママに教えられている。

 ジークは最近、ご近所に住む双子の男の子と友達になったのだが、彼らは鏡写しのようにそっくりで、喋るタイミングもいつも同じなのである。

 

 ジークの姉たちは違う。

 見た目も性格もバラバラだし、喋るタイミングだって被ったことはない。

 

 双子のかたほう、ルーシーは真面目でしっかりしていて、ママに代わって家でふざけるジークやアルスを諌めることさえある。

 双子のもうかたほう、ペトラはちゃらんぽらんで、ジークたちを注意するどころか、けしかける側だ。ママに何度注意されても足を開いて座る癖は直らないし、言葉遣いも時々男の子じみている。

 

 ジークはどっちの姉も好きである。優しいし。顔が可愛いし。

 

「よ……よんでない」

「本当に?」

 

 ペトラの所業によって自分も怒られそうな気配を察知し、ジークはおしっこが漏れそうになった。

 ジークの前に膝をつき、目線を合わせてくるルーデウスを前にして、ジークはもじもじと白い膝を擦りあわせる。

 

「怒らないから、正直に教えてくれ。ママたちには言わないから、ね?

 ……アルス、ララ、耳を塞いでなさい」

「はい!」

「やーだー」

 

 ジークはなおもブンブン首を振って容疑を否定する。

 だって本当に覗き見てはいないのだ。ペトラは見てたけど。

 

「そうか……。実はな、手紙の中にこんなものが挟まっていたんだ」

 

 そう言ってルーデウスが摘んでみせたのは、一本の髪である。

 元の持ち主はまだ年若い者であるのか、髪にはコシがあり、瑞々しい。

 長さはジークの髪と同じくらいで、おまけに緑色である。

 なんという偶然。いや、間違いなくジークの髪であろう。

 

「この手紙の送り主はラトレイアの人なんだが、あの家には、緑色の髪の人はいないんだ」

 

 ルーデウスは説明し、「ジーク」と念を押した。

 

「ほんとうに、読んでないんだな? パパの目を見て言えるか?」

「あうぅ……」

「パパ、なんでそんなに怒るの?」

 

 怯えるジークを見かねたか、それとも普通に自分も怖くなったのか、アルスが困り顔で言う。

 

「……ああ、ごめんごめん、パパは怒ってないよ」

 

 強ばっていた自分の顔を片手でぐにぐに揉み、ルーデウスは言った。

 

「ていうか、必死。ただの手紙でしょ?」

 

 そう口を挟んだのはララだ。

 

「そうかな……必死かなあ」

「うん」

「まあ、仕事関係で、見せられないものもあるからね」

「オルステッド様の所に遊びに行ったら、パパは仕事のことなんでも教えてくるのに?」

「き、君たちには知られてもよくても、偶然手紙を開いた時に知らない人に覗かれでもしたらまずいからね」

「ふうん」

 

 歳の近い兄姉が具合よく矛先をそらしてくれた間に、ジークは一生懸命言葉を整えた。

 まだ4歳のジークには、手紙に挟まっていた髪の毛を自分の物だと認め、かつルーデウスの疑いが冤罪であると訴える言葉を用意するのに時間がかかるのである。

 

「僕は見てないよ! でもペトラ姉は見てた!」

 

 ジークはペトラを売った。

 怒った顔を見せたことがないパパが、怒るかもしれない。

 白ママや青ママのように諭すのではなく、赤ママのように体をしっかり押さえつけてお尻を叩いてきたとしたら。

 そのときの恐怖はどんなだろう。

 

 その恐怖に打ち勝ってまでペトラを守ることはできそうにない。

 

 ルーデウスの顔色がサッと変わった。

 

「そうか。正直に話してくれてありがとう」

 

 ジークの頭をポンポン撫でる時はいつも通りに戻っていたが、気のせいか足早に立ち去る父を、三人の子供たちはきょとんと見送ったのである。

 

 


 

 

 ジークがチクることを懸念していた俺だが、ルーデウスパパからもママからも、何も言われないまま一週間がすぎた。

 弟は秘密を守っているようである。

 俺の平和は守られたのだ。

 

 平和に。

 

 ……。

 

 

「パパー! この前パパあての手紙こっそり読んじゃったんだけどさぁ!」

 

 俺は訊ねた。自分がよその家に養子に出されるのか否か。

 返事は断固としてノー。

 じゃあどうしてあんな手紙が来たのか。

 子供も孫も成人して寂しいと零した老夫婦に、うちは賑やかなんで一人あげましょう、と以前冗談で言ったのを本気にしたんだろうとルーデウスは言った。

 

 驚かせやがって。

 ちょっと不安になったじゃねえか。えぇ? ルディさんよ。

 

「もー、パパったらうっかり屋!」

「ハハ……どこにもやらないよ、お前はうちの子なんだから」

 

 俺は自分の盗み読みを棚にあげつつ、ルーデウスパパの肩をバシバシ叩いたのだった。

 

「パパを好きなのはいいけど、きちんと敬わないとダメだよ?」

「はーい」

 

 あとで白ママに窘められたけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 あの夢をみた。

 

「またそうして、散らかすのですね」

 

 うわっ喋った。

 

 俺を成長させたような人を眺める夢である。

 いつもは20代くらいの姿だが、今度は初老の姿だった。

 相手が言葉を発したのは、今回が初めてだ。

 

 大人の姿はともかく、年寄りとなると今の自分とはかけ離れすぎていて、想像するのは難しい。

 しかし、姿の変化と喋ったこと以外は、同じシチュエーションなのだ。

 この初老の女性と、自分の未来のそっくりさんは同じ人物だろう。

 

 

 俺、数十年もしたら、こういう姿になるのか。

 白髪混じりだし、皺もあるが、上品な雰囲気だ。性格はあまり優しそうじゃないな。

 気難しそう。

 うん、一言で表すならこんな感じだ。

 

 彼女は呆れたように俺を見下ろしている。

 

「持ってきた知識も、せっかく得たヒントも、何もかも散らかしたまま」

 

 散らかす? 何のことだ。

 ここには、俺と、あなたのほかには、何もない。

 そう思うために、周りに視線を巡らせようとした。

 俺はボコボコとした隆起に埋もれて寝そべっていて、視界はほとんどそれに遮られている。

 だから、上──すぐ側で俺を見下ろす彼女しか、見えないのだ。

 

「ほら立ちなさい。片付けましょう」

 

 立てないんだ。

 なぜ?

 あ、障害物の隙間から、胴体が見える。

 きっと俺のものだ。

 あんなに遠くに。

 

 彼女がパンと手を叩くと、ずるずるとひとりでに胴体が引っ張られてきて、俺の頭と繋がった。

 立てる。動ける。

 ふらふらと立ち上がると、目線の高さが、思っていたよりも高い。

 

 少なくとも、目の前の女性よりは低いと思っていたのだが、頭一つ分は高いのである。

 

「あ、あー」

 

 聞こえた声は、若い男のもの。

 一歩踏み出そうとして、ドタンとまた倒れた。

 まるで生まれたてのバンビちゃんだ。

 

 ペタペタと自分の顔を触ってみると、肌の手触りは滑らか、顎はシュッと硬くて、鼻もなんだか高そうだ。

 体はしっかり引き締まっている。

 これはイケメンだな。きっとそうだ。

 

 もっとよく触って確かめよう。

 

「……」

「誰が自分の形に惚れ惚れしなさいと言いましたか」

 

 冷たく言い放つ女性……転生後の俺に多分そっくりだし、老けているし、老ペトラとでも呼ぶか。

 未来から過去転移してきたルーデウスに付けられたファンの愛称、老デウスにあやかるぞ。

 

「その不安定さ、幼さ……私にも責任はあります。あなたをこちらに召喚するために、あれこれ削り落としましたからね」

 

 老ペトラは俺に背を向けて歩き出した。

 ついて行くと、隆起はなくなり、代わりにそこここに穴が待ち受ける地帯に出た。

 地平がどこまでも見渡せた。

 干上がったウユニ塩湖のような光景だ。

 

 あれと違うのは、地面に時々深い裂け目があることだろう。

 

「削り落とした、って?」

「魂は軽くなるほど扱いやすくなりますが、記憶は失います。

 自分の名、家族構成、身分、何ひとつとしてわからないでしょう?」

 

 そうだな。

 俺の形だって、さっき手探りで判明したばかりだ。

 

「あなたに私はどんなふうに見えているでしょうね、こうして言葉を交わせる程度には、残しておいたはずですが」

 

 俺がバラバラであったように、老ペトラも完全な状態ではないのだろうか。

 ここはどこで、あなたは誰。

 疑問が浮かぶと、老ペトラは振り返った。

 

「私はペトラです。姓は捨てるしかありませんでした」

 

 そんな馬鹿な、と思った。

 俺が前世を思い出せなくて、相手がペトラなら、俺は何なのだ。

 いやいや、焦るな。

 相手はペトラ。

 しかし俺はペトラ・グレイラット。

 な? 別人だ。苗字の有無が俺のアイデンティティを保ってくれる。

 

「あなたの記憶は失われ、仔細は二度と戻りませんが、そこに何かがあった跡は残ります」

 

 黙る俺にかまわず、老ペトラは深い谷のような穴の前に、ゆっくり膝をついた。

 穴の縁には、鈍く光る鉱石がへばりついている。

 老ペトラが鉱石に触れる。

 

「あら、興味深い……運の良い残滓ですね。……『無職転生』……?」

 

 真面目な顔で無職転生って言われるとなんか恥ずかしいな。

 いや、名作なんすよ。無職転生。でもタイトルがね。

 とっつきやすい良いタイトルだと思うけどね。

 

「知りたければ、行動すればいいのよ」

 

 そうして、老ペトラは立ち上がった。

 もはや老いてはいない。

 そこにいるのは、毎日姿鏡で見ている、幼い少女。

 俺、ペトラ・グレイラットだった。

 

 

 ペトラの背に朝日が迫っている。

 夢が終わる、と直感的に理解する。

 ペトラは柔らかく微笑んだ。

 

「私の天才を使いなさい」

 

 手を伸ばすと、体が前にのめって倒れる。

 地表に叩きつけられる前に、日を受けて輝くペトラの金髪を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

 グレイラット邸の庭にて、待ち構えるエリスママに木剣で切りかかる。

 踏み込む足が、剣さばきが、以前より鋭くなっているのが自分でもわかる。

 

「上達したわね」

 

 しかしそれだけで剣王に勝てるわけがない。

 エリスママはある程度様子を見るように剣撃を受けた後、反撃を開始。

 俺はあっさりやられ、目の先にはエリスママの木剣の切っ先が突きつけられている。

 何回やられても恐ろしい。でも、楽しい。

 

「ま、まいりました……」

「はい。じゃあ次、アルスよ」

 

 下の二人の妹たちを除いた弟妹と共に、エリスに訓練をつけられているのだ。

 俺はエリスママの小手打ち──十分手加減されている──を受けて折れた手首の骨を治癒魔術で治しながら下がった。

 次はアルスだ。

 ところがエリスは息子を相手にする前に、俺に訊ねた。

 

「闘気なんて、いつの間に纏えるようになったのよ?」

「やっぱり、できてた?」

「ええ、まだ使いこなせてはいないわね。でも、よくやったわ」

 

 へへへ。

 褒められた。

 俺を調子にのせるない。オルステッドにも挑みかかっちゃうぞ。

 

 しかし、今までできなかったのが不思議なほど、必要な力の込め方、重心の移動の仕方がわかるのだ。

 そうすると、いつの間にか体が頑丈になったように感じる。エリスママが言ったように、これがいわゆる闘気なのだろう。

 

 姉弟の中では、一番のりで闘気を纏えるようになったのだ。

 使いこなせていないにせよ。

 

「いやー才能があってまいっちゃうなー」

「素直に尊敬したくなくなる」

「僕ってああいうのに負けたんだ」

 

 おやおや、ルーシー君にクライブ君。

 嫉妬はやめたまえよ。俺たち対等な仲間じゃないか。

 まあ、俺が一歩先に行っちゃったけど? そんなことで君たちに先輩ヅラなんてしないからさ。

 

「お?」

 

 鼻高々に子供たちの輪に戻ろうとすると、エリスに首根っこを掴まれて、ぽいっと遠ざけられた。

 え、なに?

 そんなに調子に乗ってるのがウザかった?

 

「今のペトラは、体の動かし方はわかってるのに、肝心の肉体が追いついていない状態よ。どうしてそんな事になったのかわからないけど……しばらく体作りに励みなさい」

 

 ちょっと待ってくれよ赤ママよ。

 

「体作りって、ひとりでえ!?」

「私はアルスたちを見なきゃいけないもの。終わったら戻っていいわ」

 

 こうして俺は、一人で走り込み、腕立て、背筋に腹筋等の筋トレメニューをこなすことになった。

 筋トレは好きだけどさ。

 ワイワイしてるみんなの輪から外れて、一人でやりたいほど好きな訳ではないのよ。

 

「ねぇね」

「あー! ねぇね! ねぇね! うきゃー!」

 

 俺はリリとクリスをじゃれつかせながら筋トレをして、心を慰めたのだった。

 

 

「エリスから聞いたよ、ペトラ、ちゃんと頑張ってたんだね! エラいよ!」

「あたしはアルス君が先だと思ったんだけどなー。でも、おめでとう、すごいじゃん」

 

 エリスママからシルフィやアイシャに話が行き、その日の晩飯は豪勢だったので良しとしよう。

 しかしソロトレーニングは寂しいぞ。早くルーシーかアルスあたりが俺に追いついてくれ。

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