どーも、道南支部幹部黒札の命子さんです。
カレンちんが志望したことで始動したガイア連合道南支部設立計画だけど、現状恙無く進捗してます。
やっぱ地元霊能家系が従順だといいね。地道に根回しした甲斐があったわ。
方法? ンなもん暴力に決まってんだろ。
霊能界隈なんて悪魔の脅威に対抗し得る力があって初めて成り立つんだから、急に来た外様が口だけで音頭取ったところで馬耳東風よ。
ガイア連合の看板も今や裏業界に轟いて久しいけど、実物を見たことなくて半信半疑って層もいるからね。
なので手っ取り早く現地霊能者の皆さんの前で、都市圏の異界を片っ端から潰していきました。
テメェらが断腸の思いで生贄を捧げて封じてきた異界がRTA感覚で潰されていく様はどうだ?
力及ばず霊地管理をメシアン共に委ねることもしなくていいんだ……どうした? 笑えよベジータ(
いやまぁふっつーに感謝されたし、喜んで傘下に加わってもらえたんだけどね。
どうも北海道の霊能組織は巨大な一族を形成してるとかではなく、細々と霊能を受け継いできた家系の寄り合い所帯みたいな形が精々で、ぶっちゃけもう限界っつーか実質破綻していたも同然だったらしい。
元を辿ればアイヌの血を引く云々カンヌンとかで、そこに本州から渡ってきた霊能一族と混ざり合ってーのっていう。あくまで道南はだけどね。
道南より北はまた事情が違うっつーか、北海道広すぎ&メシア教侵蝕で情報途絶問題が重なってまったく詳細不明らしい。
掲示板で十勝に刑務所作るっつー転生者の話は聞いたけどあっちは大丈夫なんかね……ある程度組織が形になったら一度話してみたいもんだ。
「ただいま戻りました……っと、命子もいたのね」
「おつおつー。もう終わったん?」
「江差方面は粗方潰し終えたわ。小規模異界の方には依頼を受けてくれた人達が向かっていたけど……」
未だ殺風景が残る支部拠点でつらつら考えているとシオリっちが戻ってきたようだ。
先日掲示板で道南支部立ち上げを告知し大々的に募集を呼びかけたはいいけど、さすがにまだ応募者も多くはないからね。
精々がオフ会で覚醒だけして地元に戻った北海道在住者がぼちぼちいるかという程度で、彼らのほとんどがLv10あるかどうかというレベルだから任せられる依頼もまだまだ少ない。
なので当面の間彼らの手に余ると判断された異界はあたしらで潰し、直ちに影響はない小規模異界をレベリングも兼ねた初心者向け依頼用として残すことにしたのだ。
「大丈夫かしら……見たところ専用式神もいなかったし、なんだか危機感も薄いっていうか」
「まぁそういうもんだって、本社を基準にしちゃイカンよ。ちゃんと【
「口を酸っぱくして忠告したからね、流石に忘れてはいなかったみたい」
「なら見守っときなー。心配なのはわかるけど、少しずつでも地力つけてもらわんとそいつらのためにもならんしね」
当然あたしらも小粒の雑魚異界とはいえ、ほとんどぺーぺーの初心者にきっちり攻略できるとも思っていないので保険はかけている。
警報人形もその一環やね。所持者のレベルを大きく上回る悪魔との遭遇や、依頼続行不可能なほどに負傷した際に自動で【トラエスト】が発動する緊急回避アイテムだ。
使い方はいたって簡単。人形に血を一滴垂らして携行するだけ。これじみーに製作難易度高くて(特に脅威度判定の部分とか)、普通に売るとなれば結構なお値段がするんだけど、これを道南支部の依頼限定でロハで供与してるのだ。
ツケは全部
なんなら人形が使用された時点であたしにも警報が入って【トラポート】で回収に向かうことになってるし。めっちゃ安全策設けてやってんだよね、あたしえらすぎ。
「そうね……こちらから大丈夫と判断して依頼を託したのだもの、信じてあげなきゃ嘘になっちゃうわよね」
「そーそー、あたしらもいつまでも下っ端じゃないってコト。支部を運営するって決めたんなら、下に任せることも覚えなくちゃねー」
ぶっちゃけあたし個人としては青森以外の支部なんてどーでもいいんだけど、カレンちんとシオリっちがなんとかしてぇって言うから手を貸してるだけなんだけどねー。
まぁそのシオリっちも他ならぬカレンちんが言い出したことだからって気もするけど、やると決まれば真面目なのがシオリっちのいいところやね。
あたしの役目は主に甘ちゃん寄りな二人のお目付け役と、いざというときの脅し役でござる。命子さんはこわーい警官さんなのだ。
「っと、そろそろ時間ね」
「んだね、もうすぐ――あ、きたきた」
「おいーっす、カレンちんと応募者連れてきたよーい」
シオリっちが腕時計で時刻を確認した矢先に支部へ【トラポート】で現れる影が複数。
本社に残してきたあたしの
「御二人ともお疲れ様です。ちょうどこちらへ向かいたいという方がいましたのでお連れしました」
「うぃーっす、なんか急に蟹食いたくなったから旅行ついでに依頼受けにきたわー」
「修行場の外に出るなんて珍しいじゃん。まぁそういうことなら自由に受けてってよ、足は用意すっからさ。でも半裸寒くない? あとサツのお世話にならんよう気ィつけてよー」
「地上の寒さなんて無いも同然だしヘーキヘーキ。ちゃんと
修行場で極寒地獄も体験してきた棍棒ニキにはいらん心配だったじゃんね。
半裸姿もちゃんとパンピーにはまともな格好に見えるようになっとるし。まぁあたしの眼には相変わらずの半裸姿だけどさ。あと腰を揺らすな(
「それじゃあ命子、私は向こうに行ってくるわね。カレンさんもよろしくお願いします」
「はい、シオリさんもお気をつけて」
「ういうい、他に希望者いないねー? んじゃ跳ぶよー、【トラポート】」
ともあれ無事カレンちんが戻ってきたので、今度はシオリっちが向こうに行く番だ。
複製に連れられ本社へ転移していったシオリっちを見送り、カレンちんに不在の間の諸々を報告する。
「えらいなー、ローテ組んで修行場潜るようにしてんだっけ?」
「んむ、地方に出突っ張りだと鈍ってしゃーないからね。最低限三日に一度は潜らんとなー」
「そんなヌルいん?」
「Lv20もあったら大事件ってレベルよー。だから高レベルはマジで小旅行か食べ歩きくらいしか無いんちゃう?」
「マジかー。まぁいいや、来ちゃったもんはしゃーないし適当に受けてくべ。なんか手頃なの見繕ってよ、サクッとやって報酬で蟹とスシ食べまくるわ」
「ういうい。つーわけだから高橋くーん、黒札案件からリストアップよろしゅー」
受付に控える高橋くん(24歳独身♀)に伝えれば、彼女は脂汗を垂らしながら大慌てで依頼を見繕い出した。
Lv10ちょいの雑魚転生者でも格上な彼らにとっちゃあ、日がな修行場に籠もってる本社のガチ勢は完全にバケモンだろうしあの反応もむべなるかな。
あれでも
「んーでカレンちんは無事Lv50の壁到達と。時間無いなりに大分仕上がってんじゃない?」
「とはいえセツニキさんからは
あー桃源郷ね……確かにあそこは脳筋戦法を矯正するのにうってつけではある。
搦め手が苦手な修行者も改めてアイテムの有用性に気付いたり、状態異常の脅威を知るのにあそこ以上の場所は無いしね。
かくいうあたしは既にクリア済みでーす。対応力と状態異常戦術には一家言あるし、僵尸軍団は逆に乗っ取り返して本体逆探して乗り込んだったわ。
あそこで幾つかのスキルが権能化したからね。まぁそのための修行場なんだけど、実際オススメではある。ただ問題は――
「時間かー。でも桃源郷にもなると一日だけの滞在じゃちょっと微妙かぁ」
「ただでさえ三日に一度という現状でもギリギリですからね」
「んー……どうせならシオリっちと一緒に挑戦してもらったほうが効率いいよねぇ」
実はシオリっちも絶賛挑戦中なんだよね。
レベルは51とちょっとだけ上がって、あたし程じゃないにしろ状態異常アタッカーでもあるから順調ではあるみたいだけどクリアはまだ先って感じ。
だからそこに純前衛のカレンちんが合流したらちょうどいいんじゃないかなって。
ちゃんと危機感を共有できてる二人には、きちんと強化してもらって今後も一緒にいたいからなー……ふむむ!
「しゃーない、また複製人形作るか! 二人がもう一人ずついれば大分余裕できるっしょ」
「……いいのですか?」
「『支部を運営する』『レベリングもする』、
覚悟はいいか? あたしはできてる。
ということでスマホをピッポッパ。目当ての人物にラブコールだ!
するとちょうど手が空いてたのか、ワンコールもしないうちに応答があった。
『……オモカゲか、どうした?』
「
『ふっ、冗談だ。久し振りだな、カス子ネキ。要件は何だ?』
「
『また随分と難題な代物を……新しく複製を作るつもりか?』
「そそそ。ちょいと入用でねー」
『大方支部運営と修行の両立のためだろう?』
バレテーラ。
まぁ順繰りに修行場に繰り出してるのは向こうも知ってるだろうし不思議ではないけど。
「で、どう? いける?」
『……一週間寄越せ。少し深めに潜って探す必要がある。代価は……そうだな、ツケでいい』
「うわこっわ。なにやらせるつもり……まさかあたしを!?」
『ハッ』
鼻で笑いやがったなこいつ! ケッ、これだから女食い放題のイケメン様はよぉ!
まぁ無事了承してもらえたならありがてぇ、ことスキルの調達はショタオジを除けば団長ニキに頼むのが確実だからねー。
『そのうち時間をもらう。その時には精々働いてもらうぞ』
「ういうい、お手柔らかに頼むわー。じゃあねー、調達できたらまた連絡ちょーだい」
『わかった。それじゃあな』
ピッと通話を切って取引しゅーりょー。
団長ニキのツケは怖いけど、あれで持ちつ持たれつを忘れない男だからそう無茶は言わんやろ……多分(
「今の方は?」
「下層友達ー。連合きっての調達屋でね、狙ったスキルを得るのに最適なのじゃ」
「……貴方には助けられてばかりですね」
「今更水臭いこというなよなー。命子さんは友達にはとことん甘いことで有名なのだ!」
ともあれこれで複製人形を作る目処は立った。その他の素材は在庫あるしね。
いやー身代わりになれるだけの人格を搭載可能な人形って、さすがに素材と術式だけで作るには無理があるからね。
いざというときは実働要員にもなってもらうことを考えると妥協はできんし、今後の楽のためには必要な投資じゃて。
「ま、二人なら人格複製しても大丈夫でしょ。そのへんの調整は入念にやるし、
「本当に……なんと御礼を申し上げればよいやら……」
「強くなってくれるのが一番の御礼だってヴァ! 桃源郷クリアしたら一緒に下層で遊ぼうね!」
「……ふふ、そうですね。その時はなんとか時間を作って目一杯潜りましょうか。そのためにも支部を盤石にしないとですね」
そう言ってカレンちんは職員から報告と書類を受け取り執務室へ戻っていった。
支部長ってのは大変だぁね、あっちこっちに責任が付き纏って息吐く暇もありゃしない。
彼女だけじゃなく霊視ニキといい、ショタオジといい……ほーんとお人好しばっかじゃんね。
「……さーてと、外回りいきますかぁ」
しなくてもいい苦労をわざわざ買ってくれた
んじゃダークサマナーでもしばきにいこっかな!
・カス子
桃源郷はクリア済み。
でもあのへんどうやってクリアしたのかとか詳しく描写しだすとキリが無いし本筋から逸れまくるので諸々割愛。
ただ僵尸軍団は降霊術(ネクロマンシー)で乗っ取り返し、異界に引き籠もった邪仙本体は位置を逆探し「あらゆる場所に赴く」能力(権能化【トラポート】)で殴り込みをかけてしばいた。
実のところカス子の本領は戦闘ではない。本人も薄々それには気付いている。
・邪視ネキ
絶賛桃源郷挑戦中。
状態異常の強さやアイテムの有用性は理解しているためいくらか順調と言えるが、現在はスキルの権能化に苦戦している。
実はも何もないが、戦闘面での才能はカス子よりも遥かに上。長じれば対天使特効最終兵器になり得る。
・魔人ネキ
合間合間にレベリングを重ね壁に到達した。これから桃源郷に挑戦する。
邪視ネキと同じくカス子よりも遥かに戦闘の才能がある。二人揃って桃源郷に挑めば遠からずクリア可能。
支部長として活動する中で、改めて連合上層部のありがたさと凄まじさを思い知った。
・棍棒ニキ
蟹を食うために小旅行にきた修羅勢。
桃源郷でヒイヒイ言ってる。
・団長ニキ
権能化した【スキルクラック】と【スキル抽出】でスキルを蒐集しまくっているスキルコレクター。その特技を活かして依頼を受けてスキルを入手してくる調達屋としても有名。
下層入りして長いベテランの一人であり戦闘力は極めて高い。
スキルの入れ替えと実行に特化した書物型式神【盗賊の極意】を武器に、コレクションしたスキルの数々で戦う万能型。
その名と戦闘スタイルからわかるように、ガワは完全にクロロ・ルシルフル。OSR勢の一人でもある。
ようやっとハルカくんの話を読み終えた……!
すげーなハルカくん、主人公すぎる……