【カオ転三次】今更転生ごちゃまぜサマナー   作:ふーじん

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25話:日本神解放作戦XX号【北方神域 カムイコタン】

「さっっっっっっっっっっぶ!!?」

「ヤバイヤバイヤバイ、ステータスに【凍傷】って出てる! 深刻化すると【凍結】まであるぞこれ!?」

「耐寒符の等級ケチるんじゃなかったー!!」

 

 前略、雪の上から。どーも命子さんです。

 異界の扉を抜けるとそこは雪国――どころか猛吹雪でした。

 猛烈な冷気に体温を奪われるどころか、MAGを多分に含んだ霊的な吹雪に準備の甘かった転生者が悲鳴を上げてます。

 

「阿呆が……」

「壬生狼ニキはさすがやね、いいランクの【耐寒】つけてんじゃん」

「藤田と呼べ、お前らのその呼称はどうも肌に合わん。……金は惜しむなと言ったんだがな」

 

 そんな彼らを見て呆れたように目を細めるのはムキラブ三狂刃が最後の一人、壬生狼ニキ。本名藤田五郎。

 名前から察せられる通りるろ剣の一ちゃんそっくりな転生者(あたしら)だけど、今回は異界攻略のための増援のまとめ役として本社から出張してきてくれたのだ。

 ……が、事前に情報を通達していたにも関わらず準備の甘い連中が何人かいたようで、耐寒や防寒の等級が足りず凍えているという始末。

 まぁこんなこともあるだろうと予想はしてたから、こちらでも霊符は用意してたけどねぇ。

 

「おーいバカ共ー、こっちに霊符あっから欲しけりゃ並びなー」

「助かるー! このままだと流石に死ねるわ……」

「ほいよ、一枚100マッカね。ツケでいいよ」

「高くね!? 本社より割増しじゃん!」

「前情報を甘く見てたバカには妥当な値段じゃん? つーかこっちも自腹で余分に用意してやったんだからつべこべ言うなし」

「うごごご……い、命の値段……!」

 

 背に腹は代えられないと渋々購入していくやつらに軽口を叩きつつ、ひとまず全員に耐寒スキルが行き渡ったのを確認。

 本社から派遣された壬生狼ニキ率いる中堅黒札の一団と、北方方面隊から派遣されたデモニカ装備の冬季レンジャー部隊が整列し過不足なく人員が揃ったのを確認して、本作戦の代表として口を開く。

 

「ほい、それじゃあ只今より日本神解放作戦を開始しまーす! 一致団結してこの【カムイコタン】を攻略しましょう。よろしくお願いしまーす!」

〝――応!!〟

 

 

 ◇

 

 

 時は少しだけ遡り、自衛隊がガイア連合に合流してしばらく経ったあとのこと。

 自衛隊が霊能面での戦力強化に努める傍らで進めてきた対メシア教戦略が実を結んだ結果、お上から【国有霊地】への侵入が許可されたのだ。

 これを以て連合及び自衛隊は国内に存在する全ての異界及び霊地への干渉が可能となったんだけど、そこで浮上したのがこれら国有霊地に存在する超大型異界群への対処に関する問題だった。

 

 その後の経緯は省くが、結論から言えば連合はこれらの異界に対し真正面から攻略することを決めた。

 霊地活性化の余波で生まれる有象無象の泡沫異界とは異なり、霊地活性化現象そのものに関わる霊地と異界をショタオジ自ら選出し、各部隊で調査攻略することを決めたのがつい最近のこと。

 そこであたしらが支部を置く道南、ひいては北海道にて要攻略と判断されたのが、旭川市に存在する霊地【神居古潭】――そこに存在する超大型異界【カムイコタン】だったというわけ。

 

 で、この【カムイコタン】。手始めに軽く偵察してみたんだけど……まーじーで広すぎやねんな。

 おまけに肉体どころか魂まで凍りつくような猛吹雪が絶えず吹き続け、足場も視界も悪い中を無数に潜伏した悪魔達を掻い潜りながら進んでいかねばならないというストロング仕様。

 複雑なギミックは見たところ少ないようだけど、その分強烈な淘汰圧を強いる極限環境に適応する必要があり、攻略に要する人員が限定されることが判明した。

 

 まず連合からは派遣人員をLv20以上の実力者に限定し前情報を公開した上で募集をかけた。そうして集まった力量だけはある脳筋集団で高レベル悪魔への対応を企図。

 そして自衛隊からは最難関のレンジャー課程を修了し、その上で対霊戦術も修めた最精鋭の対霊レンジャー部隊を派遣してもらい、その統率力と集合知によって異界内での探索を担ってもらう。

 そしてあたしは全体のまとめ役としてそんな彼らをフォローするのが役目。つまりは()()()()()ということが最優先になる。

 ほんとはここにシオリっちやカレンちんも加えたかったんだけど、流石にLv60オーバーの超高レベル戦力を一箇所に三人も集中させるのはロスが大きいということで他の異界に派遣されている。

 あたしがここに残されたのは大部隊への広域支援を得意とするからやね。まぁ適材適所というやつだ。

 

「それじゃあ自衛隊の皆さんはこちらに集まって――よし、飛丸お願いね」

『了解、ダ!』

 

 飛丸に命じて自衛隊に透明化の権能を行使する。

 今回は探索に専念してもらうため悪魔との交戦を回避できるよう、飛丸には隠形の維持に専念してもらう。

 少しばかり数が多いけど飛丸が戦闘に参加しないならこの程度の隠形は可能だ。飛丸のレベルも65、少なくとも道中の雑魚悪魔に気取られることはないだろう。

 

「うお、すげぇ……全然霊視できねぇ! 単に見えないだけじゃなくて干渉もできない?」

「対悪魔戦の基本原則に則ってるからねー。観測できない以上干渉できないから、フレンドリーファイアの危険も無いよ」

「基本原則通りってことは、あちらからの干渉は可能?」

「もち。隠形を見破られない限りは一方的に無敵だよん」

「なにそれチートじゃん。高レベルこわぁ……」

 

 ゲーム的に言うなら『エンカウント無効』『絶対先制』『発見判定に成功されるまで無敵』ってとこかな。でもこの程度だと下層じゃ精々雑魚避けにしかならないんだよね。まぁ典型的な格下殺しの権能だ。

 まぁ似たようなことはショタオジ配下のオンギョウキもできるというか、あっちが完全に上位互換なのでチートと言われても素直には頷けねぇんだけど。

 

「自衛隊の皆さん同士では認識可能に調整してますけど、大丈夫です?」

「全く問題ありません。ご配慮ありがとうございます」

 

 ちなみにこの返事の声すら他の人間には聞こえていない。権能に至った透明化は視覚的にではなく、概念的に透明になるからだ。

 もちろんあたしは飛丸の主人として認識できるようにしてるけどね。ともあれこれで自衛隊は心配無いでしょ、万が一の保険もあるし。

 

「ふむ……命子、それは俺達には掛けられないのか?」

「あたし由来じゃなくて飛丸の技能だからこれが限界だねぇ。あたしに使えればもうちょい効率化させて適用人数増やせたけども」

「成程、そう都合良くはいかんか。まぁ巻き添えを気にせず戦闘に専念できるだけで儲けものだ」

 

 そら壬生狼ニキ達戦闘要員に掛けられりゃ一方的だろうけどね、今回に限っては探索のほうが重要だし、貴重なレンジャー隊員を損なうわけにもいかんからね。

 つーかここまでお膳立てしてやってんだから、精々脳筋共はウホウホ言いながら殴り合ってりゃいいんだよ!

 

 そんなこんなで事前準備を終えて、連合員とその嫁式神、そして自衛隊を含め総数70に迫る大部隊の行軍が始まった。

 深く積もった雪面は浮き足玉で難を逃れ、クレバスを始めとする天然の罠は探索スキル持ちが発見して回避ないし解除。

 あたしは隠形化した上で上空から地表を【エネミーサーチ】で索敵し、随時情報を共有していく。このエネミーサーチも最近権能化の兆しがあるんだけど、近頃はどんどんネビロス由来の権能を覚えていくなぁ。

 

『進行方向より二時の方角から【ジャックフロスト】の大規模な群れが接近中。それと挟撃する形で【妖虫 ヤウシケプ】*1が潜伏、レベルは28』

「知らん悪魔だな、まずは俺が一当てして時間を稼ぐ。その間に範囲攻撃持ちはジャックフロスト軍団に応戦、残る奴らは【アナライズ】完了次第追撃しろ」

 

 索敵結果を伝えるや否や壬生狼ニキが迅速に判断を降し、先んじてヤウシケプに接近。

 得物の武器型式神【長牙】を平突きに構え、全身のバネを使って爆発的な勢いで突き入れる。

 そうだね、みんな大好き牙突だね! 見守っていた転生者から歓喜の声が上がり拍手が沸き起こる。当然あたしも喝采する。

 

「【地獄突き】――なんだ、存外脆いな」

「壬生狼ニキー、そいつ典型的なデバッファーだわ! 弱点は火炎と物理、優先的に仕留めるのが正解!」

「なら次からは発見次第駆除していけ。初見の悪魔が多そうだ、先陣は俺が切る」

「カムイ系の悪魔って全然いないもんなぁ。伝承だとホヤウカムイってすげぇ臭いらしいけど大丈夫かな?」

「この猛吹雪では鼻も利かんだろう、精々留意だけしておけ」

 

 壬生狼ニキの強みは貫通攻撃だから、こういうデータに無い初見悪魔への一番手として最適なんだよね。

 その上で本人の技量もクソ高いし、各種パッシブも乗ってしっかりダメージもデカいから、一当てと称しつつそのまま必殺することも多々ある立派な修羅勢だ。

 欠点は連合に合流した経緯から筋金入りの悪魔嫌いで、見かけ次第悪・即・斬で取り付く島もないところか。

 本人もその自覚があるから、要交渉のときは一歩引いた位置に下がって口出ししない割り切りの良さがある。

 ぶっちゃけ得物が刀なせいで三狂刃と一括りにされてるけど、為人としては他の二人とは比較にならない人格者だ。というか他の二人がド変態すぎる。

 

 その後も何度か交戦したが、遭遇する悪魔の平均アベレージが30弱と、超大型異界の名に違わない鬼畜っぷりだ。

 単純に正面戦闘するだけなら負けることは無いけど、この悪環境を利用して奇襲を仕掛け、その上で数でも攻め寄せてくるのはシンプルに脅威やね。

 こっちも自衛隊込みとはいえいつにない大人数を動員したけど正解だったねぇ。大型異界での敵は悪魔じゃなくて異界そのものだってのがよくわかるわ。

 

『報告。◯◯方向に残留MAGの流入を確認。併せて大規模な活性MAGも観測、反応は二つあります』

『ん、あーあれか……えっとサーチ結果は【凶鳥 イワオロペネレプ】と【魔獣 コロトラングル】か』

 

 って世界樹じゃねーか!! いや確かにアレもアトラス作品だしアイヌ神話に出てくる魔物だけどさ!

 しかもどっちもレベル30超か……異界補正も入ってるだろうとはいえ間違いなくボス個体だね。

 でも二体存在してるってことは、異界の主ではなさそうか……? だとしても何らかの要であることには違いない。

 

『おっけー、ならコロトラングルから対処するよ。レンジャー部隊は引き続き探索とMAGの観測に専念してね』

『対象が潜伏しているのは氷河地帯です。案内をつけましょう、情報共有願います』

『うい、ガイドよろしくでーす』

 

 部隊から選出された案内役を味方から認識できるようにして先導についていく。

 途中の襲撃は黒札が対処し、危険地帯を避けて行軍すること小一時間。

 霊能者にとっても脅威的な猛吹雪の中での行軍は要した時間に比べ驚くほど進みが悪いものだが、的確な案内はそれを随分と緩和してくれる。

 自衛隊が頼もしいという評価は近頃定着しつつあるけど、その中でも一握りの超人*2しかなれないレンジャー部隊ともなるとまた一段と違うわね。

 

 無事コロトラングルがいる氷河地帯に到着し、再度エネミーサーチで索敵すると海中に潜伏しているのがわかった。

 さすがに水中戦装備までは用意してないし、仮に用意できていたとしてもこの極限環境で水中戦が可能なのはモンハン部くらいのもんでしょ。

 なのでここは穏当に()()()()ことにする。

 

『総員【ザンマストーン】よーい! 自前で撃てるやつはリソース残量に気をつけてねー』

「おっしゃいくぜー! ガチンコ漁じゃい!!」

 

 戦闘員がありったけのザンマストーン及び衝撃系魔法を海中に放ち、その衝撃で海を荒らしに荒らしまくる。

 外部から水中への攻撃は観測の難しさや多少の物理的制約から地上ほどの効力を発揮しにくいが、それでも住処を騒音で荒らされては堪ったものじゃないでしょ。

 読み通りブチギレたコロトラングルが海中から飛び出し、怒り心頭といった様子で雄叫びを放った。

 

「っしゃ釣れた釣れた! アナライズ開始ィッ!」

「先手はもらう」

 

 敵はLv34の【魔獣 コロトラングル】。

 定石通り壬生狼ニキが一番槍を飾り、耐性無視の牙突(【地獄突き】)で一当てするも、さすがにボス個体は一撃では沈まない。

 様子を見るに体力(HP)もまだまだ余裕たっぷりといった様子で、霊格と純粋な体ステの高さから結構しぶとそうだ。

 

「耐性チェックよし、火炎弱点で状態異常無効! 少なくとも同格以下の状態異常は通らねぇっす!」

『RRRRRRRUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――!!!』

「やっべ【アイスブレス】……じゃねぇ! 睡眠効果も付与! おいこんなとこで寝ると死ぬぞ!?」

「【タルンダ】も仕掛けてきやがった! ソッコで潰すぞ!!」

『あいあい【メパトラ】。【デクンダ】もどぞー、数でゴリ押せー』

 

 まぁこっちのほうが数多いんで楽勝だけどね。

 こっちもLv20からなる地上基準で超精鋭の大規模集団だ、レベル差で威力が減衰しても数の暴力で弱点を突けば十分に対処可能。

 特に【アギ】系はショタオジから基本技能として教わることもできるから使える奴も多い。となればあとは楽勝よ。

 

「っしゃオラァ格上倒したったぁ!! でも全然経験値(MAG)入ってこねェー!!」

「さすがに人数差がデカすぎたよね。あとカス子ネキや壬生狼ニキもいたし」

「何人かミスって死んでらぁ。カス子ネキ蘇生よろー」

『ういうい』

 

 まぁレベル差があるのは確かだから、うっかり直撃食らって即死したやつもちらほらいるのは御愛嬌。

 とはいえここにいる黒札はレベリングに熱心で、何度か臨死経験もあるやつばっかだから大した問題ではない。

 パパッと【サマリカーム】をかけて復活すれば、特に感慨もなくそのまま戦線復帰した。

 

『死してなお蘇り平然としているとは……連合の黒札は凄まじいですね……』

『そちらが自衛隊の中でも生え抜きの精鋭なように、彼らも連合の精鋭ですからねぇ。霊能の世界は()()()()()()なんて微温い世界じゃないですから、まぁ慣れですよ慣れ』

『我々も見習うべき……では、ないのでしょうね』

『向いてる分野の違いってやつなんで比較するだけ無駄ですねぇ。まぁ今回の作戦で重要度が高いのはそちらですし、持ちつ持たれつでいきましょ』

『いえ、詮無いことを申しました。我々は我々の役目を果たすのみです』

 

 それを見ていた案内役の隊員からなんとも複雑な反応をいただいたけど、まぁしゃーないね。

 ある程度の領域になると死すら一種の状態異常だからねー、いくらでも対処できる手段があるから常人のような感慨も薄くなるのだ。

 そもそもショタオジ監修の地獄を体験したあとだと並大抵のことで動じなくなるし。マジで新地獄巡りは許さねぇからな(

 

『報告。【魔獣 コロトラングル】の討伐に伴い大規模なMAGの流入を確認、活性化も極大化しています』

『にゃるほど、こいつらが最奥への鍵になってたってことですねぇ。規模と環境に特化してる分そのへんは随分と素直だ』

『加えて寒冷化も深度を増しつつあります。推測ですが次の標的を倒したあと耐性を突破するものと思われます』

『そちらの判断で熱源装置を起動してください。魔石も惜しまずどんどん使っちゃってくださいねぇ』

『了解しました。では引き続き【凶鳥 イワオロペネレプ】までご案内します』

 

 再び案内に従って雪景色を進み、今度は山を登っていく。

 標高が上がるにつれて冷え込んでいく大気が【耐寒】を突破しつつあり、自衛隊は既に熱源装置を起動済み。

 黒札も更に耐寒装備を着込んだり温暖の術式を施したり各々対策を講じていくが、それでも骨まで染みるような寒さに口数を減らす一方で念話で「バカバカうんこしね寒すぎワロタ」のオンパレード。

 ま、あたしは式神装備で適温だけどねー。便利機能に特化した式神装備が高レベルになるとこういうとこで快適だからとても助かる。

 

『もうカス子ネキの格好を見てるだけで寒い件』

『それな。なにその痴女スタイルふざけてんの?』

『勝手に贈られてきた専用装備だっつってんでしょーが。そんなにキツイなら次は式神装備作るこったな!』

『ちょっと極限環境舐めてたわ……トリコのアイスヘルかよっつーね、全然ポテンシャル発揮できん』

式神()も氷結耐性あるのにしんどそうだわ、とっとと攻略して早く帰りてぇー』

『温泉入りてぇなぁ温泉、それもアッツアツのやつ。絶対気持ちいいって』

『攻略終わったら宴会用意してっから気張りなー。ちゃんと天然温泉もあっから』

『……五月蝿いやつらだ。俺を念話に巻き込むな』

『壬生狼ニキはニキで顔に出なさすぎてこえーよ。なんでそんな平然としてんの』

『馬鹿言うな、俺だって寒い』

 

 寒さに折れそうになる心を愚痴を言い合って紛らわしながら雪山を登る。

 一方でレンジャー部隊は念話も出来ないのに愚痴一つ零さず、黙々と先行しては探索し先導していた。

 あっちはこっちの真似なんてできねぇっつってたけど、こっちもこっちで向こうの真似なんざできないよなぁ。

 

『っとイワオロペネレプ発見、レベルは38。取り巻きもいるね、【凶鳥 アシトマチカプ】*3でこっちはLv22』

「っしゃあとっとと仕留めて次いくぞ次ィ!!」

「30未満はサポートに回れ! アタッカーは上に任せろ!」

「取り巻きの数も多い、範囲持ちはこっちを頼む!」

 

 目的地に到着し、敵陣を確認して即戦闘態勢に入る。

 取り巻きのちょっかいとイワオロペネレプの全体電撃攻撃や状態異常を伴った物理攻撃をいなしつつ解析を進めるも、アナライズ結果は無情の弱点無し。

 

「いっちょまえにボス補正かよ! こいつ原作だと氷弱点だろうが!?」

「こんな環境で氷結弱点抱えたままじゃ自滅不可避だし当然じゃね? ままええわ火力で殴れ殴れ!」

「コロトラングルよりは軟い! 手数で押し切れー!!」

 

 寒さを誤魔化すためにいつも以上に大声を張り上げながら一気呵成に飛びかかる前衛陣に、派手に範囲魔法をぶちまける後衛陣。

 ここまでの行軍で随分と鬱憤を溜め込んでいたのか、いつにも増して殺意高めで殺到する脳筋集団を前にしてはイワオロペネレプも然程時間を掛けず落ちた。

 比較的高レベルを数集めたとはいえ、この異界は悪魔よりも環境のほうがつえーなやっぱ。

 

「クソッ、寒すぎて身体が動かん……いっそ自前で燃えてみるか?」

「馬鹿なこと言ってないで死体集めれ。カス子ネキまたよろ!」

「はいはい【サマリカーム】。……いやここまで寒いとは思わんかったわね、最初ツケでいいっつった耐寒符やっぱロハでいいよ。つかこれ経費で落とせるレベルでしょ」

「地上の異界でこれほどの極寒は流石に想定外か。だがあともう一息だろう、このまま終わらせるぞ」

「マジでこんな異界作ったやつ許せねぇからなぁ???」

 

 案の定イワオロペネレプの残留MAGも所定の地点へと流入し、異界の活性がより強くなる。

 それに応じてますます厳寒を増した猛吹雪にいよいよ念話ですら口数が減り、それでも身体を押して行軍した結果――遂に最奥と思しき場所に辿り着く。

 現実の神居古潭をより極端にしたような大峡谷を遡り、無数の敵と雪原を乗り越えた先に存在した巨大な封印結界と……その前に鎮座する一際強大な気配を放つ異形の悪魔。

 あたしのエネミーサーチと何人かのアナライズが告げたその名は――

 

「【秘神 モシレチクコタネチク】――Lv48。以上、それ以外不明!!」

〝ドマイナーすぎる!?〟

 

 いや誰だよお前。大神でしか知らねーよ!!!

*1
アイヌの伝承に登場する巨大な蜘蛛の魔物

*2
一般的な意味で

*3
“恐ろしい鳥”という意味を持つアイヌ神話上の妖怪




・カス子
日本神解放作戦の北方責任者。【カムイコタン】攻略のサポーターとして抜擢された。
実は連合でも指折りの蘇生技術の持ち主。

・壬生狼ニキ
ムキラブ三狂刃最後の一人、見た目はるろ剣の一ちゃんそっくり。
元ネタとは無関係に刑事だったが悪魔関連の事件で妻子を喪い、その後に霊能とガイア連合の存在を知って合流した。
合流経緯が経緯なので典型的な悪魔排斥主義者で、悪(魔)・即・斬のデビルバスター。
ただし人格的には他の二人よりずっとまとも……というか常人なので、一括りに分類されていることに大いに不満がある。
耐性無視の【地獄突き】一本を軸にした切り込み隊長。得物は刀型の武器式神【長牙】。

・コロトラングル
見た目も性能も概ね世界樹の迷宮と一緒。
氷結属性の攻撃と睡眠を得意とする。
数の暴力で死んだ。

・イワオロペネレプ
見た目も性能も概ね世界樹の迷宮と一緒。
バチクソに速くて火力も高く、全体雷撃と石化や麻痺攻撃を繰り出す強敵。
だがやはり数の暴力で死んだ。

・モシレチクコタネチク
多分殆どの人が大神でしか知らんドマイナー神格。転生者も同様だった。
見た目は全然大神のメカフクロウと違うし、性能も一切不明。なにせ文献にも名前しか出てこない。
でも壬生狼ニキとカス子がいて、人海戦術とゾンビ戦術が可能なのでこのあとナレ死する。
詳細は次回の掲示板回にて。

北海道における日本神解放作戦の舞台となったのは、旭川市は神居古潭に位置する超大型異界【カムイコタン】となりました。
ドマイナーすぎるアイヌ神話由来のオリジナル悪魔が多数生息するメガテン版アイスヘルです。
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