【カオ転三次】今更転生ごちゃまぜサマナー   作:ふーじん

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34話:【聖戦要塞 五稜郭】前編

 桜散り緑生い茂りつつある初夏の函館は五稜郭。

 某国から核の雨が放たれ裏の認識でいう半終末が訪れて暫し経つ頃。

 市井には渡航制限が布かれ、一般市民はそれによって課される不都合の数々に不満を口にしながらも当たり前の明日を迎えていた。

 

 そう、最早海を隔てた外の国々が滅亡の憂き目に遭い、過激派の天使達が空を舞い、溢れ出た魔人達が各々の"死"を振り撒いていることすら知らず、安穏とした日常に浴している。

 強いて言えば一部の勘の良い者は漠然とした不穏な空気を悟っていたが、さりとて真実には至らず日常の流れの中に押し流されていく。

 あるいはそうした薄皮一枚隔ててある()()()()()()こそが、裏でその地を支配する者にとっては何よりの成果なのかもしれないが。

 

 今や平穏を享受できている国は日本のみとなった半終末の世界だが、それでもやはり変化はあった。

 それは治安の悪化や物価の値上がりであったり、ニュースを騒がすテロの数々であったり、あるいは行方不明者数の増加であったり。

 それらに紐付けて喧伝されるメシア教過激派なる国際テロ組織の名に不安を口にするも、しかし対岸の火事として見る者が大半であった。

 偏に国の――それらに与するガイア連合の努力の賜物が故に。

 よもや日常の裏側で【悪魔】なる存在が跋扈しているとは思いもせず――いつその魔の手が伸びてくるとも知らずに。

 

 今日も来場者で賑わう五稜郭公園の遥か地下。

 張り巡らされた下水道施設に接続する形で掘り進められた地下道の奥で、不穏を纏い屯する一団があった。

 彼らは皆士気高くして意気軒昂、裡に秘めた正義の炎に魂を灼かれ聖戦に臨む戦士達。

 まさしく昨今お茶の間を賑わすテロリスト集団(過激派)が、作戦の発動を前に固唾を呑んでいた。

 

「地脈の掌握完了致しました」

「天使召喚プログラムとの接続も完了。いつでも天使様をお招きできます」

蛮人(サムライ)共の教化術式も構築済みです。司教様……」

「よし……やれ!」

 

 頭目である司教の号令の下、連れていた供物からMAGを絞り出し地脈へ流す。

 召喚プログラムを通じて秩序(LAW)に染め上げられたMAGが五稜郭を支える大地の地脈へ溢れ、事前に施されていた術式を経て異界化の様相を呈した。

 

 その結果は即座に地上へ現れた。

 五箇所の稜堡を起点に外界を隔てるようにして力場が立ち昇り、頂点で結ばれドーム状の結界を形作る。

 そしてそのまま堀を呑み込んで膨張すると、五稜郭を丸ごと封じ込む形で定着する。

 異界の展開は刹那の間で完了し、内外の行き来を封じ数多の来場者を閉じ込めた。

 

 同時、領域に秩序の気が満ちる。

 その福音を祝ぐように数多の天使が顕れ、神の威を知らしめんがため剣を執る。

 恙無く行き渡ったMAGから術式の成功を確信した司教は歓喜に震え、沸き上がる熱に浮かされながら檄を発した。

 

「長きに渡る苦難を良くぞ耐えた……聖戦がための要塞は我らの手にある。報復の時は今。我らの聖地を取り戻すぞ――!!」

〝ははっ――!!〟

 

 某月某日、五稜郭公園を起点に異界の発生を認む。

 その報せは瞬く間に同地を預かるガイア連合道南支部の知るところとなり、即座に政府から解決を要請された。

 後に首謀者の過激派曰く【聖戦要塞】と化した五稜郭、その奪還作戦の開始である。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「ワグナス! 上層部は五稜郭の奪還を決定したぞ!!」

「命子さん、今はおふざけは無しです」

「うい」

 

 入室するや否や開口一番にそう言い放った命子へカレンが水を差し着席を促した。

 先に控えていたシオリが人払いの結界を張ると、本社からの伝言を携えた命子が口を開く。

 

「とりま対処はウチに任せることにして、関係各所には政界陣営(政治家俺達)を通して言い含めておくってさ」

「即断即決、ありがたいことです。黒札の方々については?」

「流石に急すぎるから即応は無理。戦力的に期待できる連中は都合がつかないね」

「道理ですね。ならば私達で動きましょう」

 

 命子の言にカレンは首肯し、ならばと支部の最大戦力の動員を宣言した。

 即ち道南支部の三幹部である彼女ら三名。いずれもLv80を超える超級戦力である。

 並の神格を越えてあまりある霊格は、およそ現在の地上においては向かうところ敵なし。

 緊急を要する現状、本社に身を置く黒札や近隣支部からの増援を期待できなくとも、そもそもからして戦力という観点で言えば三名の内一人を差し向けるだけで釣りが出る程だ。

 故に問題となるのはそこではなく――

 

「……で、やっぱり下手人は過激派で間違いなさそう?」

「ええ。シオリさんの見立てでは、異界を構成するMAGは極端にLAWへ偏ったメシア教のそれ。まず間違いないでしょうね」

「私の眼も疼いてるから間違いないわ。あの中には道理を外れた天使達がいる……巻き込まれた来場者と一緒に、ね」

 

 そっと目元に指を這わせながらシオリが応えた。よく見れば目元は紅く――泣き腫らしたのではなく、真実血の紅を拭った痕がある。

 サリエルの力を強く宿す彼女の双眸はこと過激派の如き天使の存在を良く察知し、警鐘として血の涙を流す機能が根付いていた。

 そも此度の一件に関して誰よりも早く察知したのが彼女であり、カレンはそれを受けて緊急事態を発令したに過ぎない。

 

「既に自衛隊には連絡し、周辺地域の封鎖と住民の避難を要請しました。間もなく完了する見込みです」

「流石に公的に名分があると動きが早いねぇ。地道にプロパガンダしてきた甲斐があったね」

「職員には後方で事後のための諸準備を。そして命子さんには吸血鬼殲滅隊(ブラッドジャケット)*1を率いて被災者の救助に当たっていただきます」

「早速運用の機会が巡ってきたわけね。てことは()()()()の方も?」

 

 こと集団支援に長けた彼女の力量は、部隊の運用に掛けては右に出るものはいない。

 先の【カムイコタン】攻略戦でも見せた飛丸の【透明化】の権能は今や定石として知れ渡っており、不可視にして不可侵の部隊を率いての攻略は数多くの任務において無傷での完遂を成し遂げている。

 しかしながら主な連携相手である自衛隊は協力者と言えど指揮系統は別。あくまで対等の同盟者であるため常に運用可能なわけでもない。

 そこを補う形で最近になって導入されたのが、KSJ研究所の三人衆が開発した懲罰部隊【吸血鬼殲滅隊(ブラッドジャケット)】だった。

 そして導入されたのはそれだけではなく――

 

「ええ。私はデモノイド部隊を率いて陽動を。シオリさんには単騎で遊撃してもらいます」

「問題ないわ。……一匹残らず狩り尽くす、見逃しはしない」

 

 同じく開発者として名高い佐渡島支部を差配するパピヨンニキ――蝶野光爵が開発した兵士型デモノイド【ネメシスT型】を八体導入済みだった。*2

 両者の熱烈なプレゼン合戦の末に甲乙つけ難しとなったところを、KSJ研究所からの代表者スカリエッティニキの厚意によって同時採用が可能となったためである。

 道南支部を差配する三人娘の飛び抜けた個人戦力はあれど、純粋な人手に欠ける点をこれによって大幅に改善できたのは支部にとって僥倖だろう。

 とはいえ、よもや導入して間もなくしてこのような事態が起きるなどとは誰も予想だにせず、まさしく天の配剤と言えた。

 

 互いの役割を確認し終え、しばし歓談していた三人の声を遮るようにしてノックが響く。

 カレンが入室を許可すると、場違いなドレス姿をした巨躯の美女――統率型デモノイド【ドミトレスク夫人】が優雅に一礼して報告を上げる。

 

「皆様、万事万端整いましてございますわ。いつでも出動可能です」

「ありがとうございます。では諸連絡は暮田さんに引き継ぎ、貴方は私の直掩としてデモノイド部隊を指揮してください」

「畏まりました。そう仰ると思って既に対処済みですわ」

 

 巨躯と呼ぶにも長身著しい魁偉な美貌に反して、事務能力にも長ける彼女はカレンの第二秘書でもあった。

 先んじて動いていた彼女にカレンは我が意を得たりと頷き、命子が感心したように感嘆の声をあげた。

 

「はえー……マジでめっちゃ有能じゃん。いい買い物したねぇ」

「改めて御二人には礼を言わなければなりませんね」

「ブラッドジャケットも合わせて評価レポート挙げないとやね。ま、それも無事終わってからだけど」

「…………」

 

 頷き合う二人の傍らで神妙な顔をするシオリ。

 対メシア教案件に際して殊更険しさを増すきらいのある彼女だが、今抱いている関心はそれだけではないだろう。

 その意を察した命子が彼女の背を叩き、いつもの調子でけらけら笑った。

 

「狙って無茶させるつもりはないから安心しなって。これでも仲間には優しい命子さんで通ってるんだからさ」

「……別に、そういうのじゃないけど。でも、うん……気を付けてね」

「そりゃこっちのセリフ。シオリっちこそカッカして無茶すんなよー」

「だ、大丈夫よ……いつまでも血が昇ってばかりじゃいられないのはわかってるし……」

 

 ともあれ、姦しさもそこそこにカレンの柏手で空気が切り替わる。

 俄に戦気を纏った三人が立ち上がって出陣を決意する。

 

「さぁてと、ちゃっちゃか済ませますかぁ。ちんたらしてたらカスが調子付くかんね」

「これ以上好き勝手させたら支部の名折れだもの、許してはおけないわ」

「では参りましょう――命子さん、転移を」

 

 各々意気込みを発し、カレンの合図で命子の【トラポート】が発動する。

 黒札の数こそ少なけれど過剰と呼んであまりある戦力を引き連れ、メシア教の敵対者たる三名が出陣した。

 

 つまるところこれは戦いではなく単なる蹂躙に他ならない。単純明快な戦力差故に連合の勝利が確定した以上、過激派の決起に意味は無い。

 故にこそ主題となるのは過激派などではなく……それに付随した因縁の数々に他ならなかった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 結末の確定した一事と言えど、巻き込まれた民衆にとっては未曾有の危機に変わりはない。

 映像の向こう側から世間を騒がせるだけだった過激派の出現に、多くは事の深刻さを理解せず物味遊山に過ぎなかった。

 しかしそれも野次馬根性を発揮して録画しようとした青年が骸となるまでであり……明確な暴力と、それが齎す死を目の当たりにした途端思い出したように恐慌に駆られ、押し合い圧し合いながら逃げ惑った。

 

 逃げる彼らの背をメシアンが追わなかったのは所詮逃げ場など無いと理解していたからに過ぎない。

 一連の首謀者である司教の男は鷹揚に手を挙げると()()()()()()()()()()()()と命じ、その意を受けて天使達が悠々と空を舞い民を攫う。

 彼らには見えも触れもできない正体不明の()()()に空へ連れ去られ悲鳴を上げる愚者(非覚醒者)の姿に司教は、「これだから神を信じぬ不心得者は」と落胆と嘲りを浮かべ居並ぶ騎士達へ向き直った。

 

「状況は」

「ガイア連合の者と思しき職員は処理し、その他抵抗する者共も同様に」

「結界に不備は」

「ありません。地脈からのMAGの流入も安定し、外部からは完全に遮断されています」

「異界律制御はどうか」

「時間流は加速しつつあり、外部時間基準で夜明けまでに調整が完了し百倍加速で安定する見込みです」

「――結構。聖戦に向けた橋頭堡の確保は完了したわけだ。まさに今、ベツレヘムの星は我らの頭上に輝けり!」

 

 部下達の報告を受けて満足そうに頷くと、陶酔した声で空を振り仰ぐ。

 五つの稜堡からなる五稜郭を五芒星――ベツレヘムの星に見立てることで、()()()()()()()()()()という伝承が力となって彼らメシア教に加護を与える。

 彼らの言う神の加護が五稜郭に満ち満ちて、それに応えるように絶え間なく天使が顕れその霊格を大幅に押し上げる。

 今や裏の常識となったガイア基準にしてLv39の【天使 パワー】を始めとする天軍の面々が続々と参集し、司教たる彼の麾下に置かれた。

 

「して、あれらは?」

「こちらに――おい」

『――――』

 

 そして侍るは天使達のみならず、時代錯誤な出で立ちをしたサムライ――【外道 バクシン】の群れと、その統率個体である【英傑 ヒジカタ】の姿があった。

 いずれも五稜郭の歴史を語る上で外せない過去の英霊達。この地の記憶と霊脈にも強く焼き付いた認知が(悪魔)となったものだが、しかしその目に自我の色は無く茫洋と佇んでいる。

 この地に宿った想念からMAGの活性化に際して自然発生するところをメシアンの教化術式によって洗脳され、彼らの支配下に堕ちたがための姿だった。

 いずれもLv30を下らない豪傑達。【ヒジカタ】に至ってはLv50を超え、紛れもなく現状の最大戦力だった。

 しかしかつての英雄と言えど蛮地の生まれ……加えて敗戦の将が天の国より参じた天使達を上回るという事実が気に入らないのか司教は鼻白み、不愉快そうに口を歪ませる。

 

「まぁ、いいでしょう。大天使様をお迎えするまでの番犬です。精々犬らしく飼ってやろうではありませんか。それよりも優先すべきことがあります」

「はっ。既に畜舎の確保に動き、要塞の神殿化に着手しております。司教様はどうかごゆるりと――」

「何を言います。ここは楽園の橋頭堡となるのです、共に汗水を流さずして何が司教ですか」

「おお……!」

 

 彼は、自分が信じる正義については誠実だった。

 即ち神を信じ、その使いたる天使を信じ、奉仕者たる同胞を信じ、正義のための労苦を厭わない聖者である。

 たとえその言い分を信じる者が彼らのみだったとしても、他を顧みない彼らにとってはその真実こそがあれば十分。

 まさしく狂信と盲信の絆に感涙する部下達を慈愛を以て見遣り、司教は朗らかに命を下した。

 

「さぁ、のんびりしている暇はありません。すべきことは無限にあります。此処を千年王国とする意気込みで動きますよ!」

〝ははっ――!!〟

 

 ◇

 

『――って感じですねぇ、怖や怖や』

『はぁ……まさか巻き込まれるなんて……』

 

 そんな彼らの様子を盗み見る者達があった。

 天を舞い聖務に従事する天使達に紛れて頭上から様子を窺っていた()からの念話を受けて、彼女は眉間に深く皺を寄せて嘆息する。

 思わぬ不運に我が身を呪いながら、されど看過はできずどうしたものかと暫し思い悩んで。

 

『……なぁ、()使()()()。どれくらい誤魔化せそうだ?』

『うーん、そう長くは保たないと思いますよぉ? いくら連中が盲の馬鹿揃いと言っても限度がありますし……何をなさるおつもりで?』

『決まってんだろ、なるべく長いことだまくらかして一般人を保護して籠城戦だ』

 

 少女――佐倉杏子は長い赤毛を揺らして両手を打ち付けた。

 かつて袂を分かった()()の暴挙に座して待つを選ばず、可能な限り足掻くことを決意して。

 そんな彼女の()()()使()である【エンジェル】は、()()()の美貌を驚愕に歪ませて応える。

 

『……本気ですか? 連中の言う通りなら此処は今や陸の孤島も同然、救援なんて見込めそうにないですよ?』

『無茶も無駄も承知の上。でも神は自ら助くる者を助くって言うだろ? 必死にやりゃあ案外なんとかなるかもしれないぜ?』

『今や悪名高きメシア教がそれを言いますかねぇ』

『元だよ、元。それにガイア連合が――()()()()が動かないなんてありえねぇ。噂がマジならあいつら程度歯牙にも掛けねぇはずだぜ』

『"弔鐘の魔女"に"人形遣い"ですか……救援としては頼もしいですが、そうなると長年の苦労が水の泡ですよ?』

『それこそ年貢の納め時ってやつだろうさ』

 

 道南を取り仕切る魔女の意向に反して隠れ潜んでいたメシアン二世の少女は、因果応報を前にしてそう気丈に言い放った。

 その覚悟を受け止め守護天使は無意識のうちに祈りに手を組むと、同じく覚悟を決めて杏子に問う。

 

『それで、具体的にはどうするんです? まさか貴方の力量で守りながら戦える――なんて思い上がってはいないでしょう?』

『そりゃそうだ、あたしにそこまでの力はねぇ。――だからあえて連中の懐に入る』

『というと?』

『おまえが連中の仲間のフリをすればいい。あたしが逃げた一般人に話を通して上手いこと纏めるから、適当なとこで捕まえて牢屋なりなんなりに連れて行け。その後は上手いこと言い包めておまえが監視役になりゃあ無体は働かねぇだろ。そうやって時間を稼ぐ!』

『いくらなんでも杜撰すぎる……とも言えないのが悲しいところですねぇ。連中なら通ってしまいそうというのがなんとも。……まぁ精々バレて粛清されるまでは演じさせてもらいますよ』

『へっ、しくじったら一緒に死んでやるさ。長い付き合いだし、ひとりぼっちは寂しいもんな』

『馬鹿おっしゃい、そんなことをされたら守護天使の面目丸潰れですよ。主に大目玉を食らっちゃいます! ……精々足掻いてくださいよ。ご武運を』

『ああ……そっちもな』

 

 二人はそう言葉を交わして行動に移った。

 守護天使は今一度盲目の仮面を被って天使に紛れ、杏子は逃げ惑う人々を取り纏めるために奔走する。

 

 逃げ場を求めて外周へ向かうも出口の一切が見えず途方に暮れる者達を集め、怪我をしていたならば【ディア】で治療し。

 先に捕まって連行される者を目撃して怯える者を宥めては、軽度の催眠を施して精神を落ち着かせて回った。

 無闇に逃げ回って殺されるよりは歯向かわず大人しくして無事を買おう、という少女の説得は異能の力を以てすれば通すに容易い。

 傍目には襲撃者に加担するような形になるのを自嘲しながら、それでもこれこそが活路と信じて。

 

 無論万事がすんなりと進んだわけではない。

 異能の力があれど巻き込まれた人々の数はあまりに多く、その全てに通用させられるほど杏子の力量は高くはない。

 天使(悪魔)を見ることもできぬ人々の中にはやはり信じきれぬ者達もいて、非条理を受け入れられず無闇に抵抗した挙げ句天使の反感を買い、無惨に殺されたものも多くいた。

 しかしながらそうして犠牲者が出るたびに危機を思い知り、却って説得が利きやすくなったのは皮肉と言うべきか。

 過激派の一味になりすました守護天使が拘束の体で保護に赴いた頃には、数百からなる来場者は皆一様に悲壮を顔に浮かべ、唯々諾々と命令に従うまでになっていた。

 

『奉行所の一角を収容所とするようです。ひとまずはそちらに移送し、ワタシが管理責任者となることに成功しました』

『頼みはしたけどマジか。連中どんだけ神殿に夢中なんだよ』

『皆関心が無いのか名乗り出ればどうぞどうぞと、まるでダチョウ倶楽部かと。まぁおかげで楽なもんでしたが』

『天使のくせに俗すぎんだろ。まぁ都合が良い分には大歓迎だ。飯やトイレはおまえに言えば?』

『ええ、まぁ。ご丁寧に配慮されていましたよ。相変わらず()()()()()()()()()()()()といった様子で』

 

 苦虫を噛み潰すような語調での物言いに、思わず杏子も吐き捨てたくなった。

 連行される傍ら互いの情報を共有する中で、古巣の変わらぬ驕慢な姿勢に、かつて同じ看板を掲げていた過去が恥となって総身をざわつかせる。

 古巣と言っても連中とは違い……今で言う穏健派に属していた杏子だが、姿勢はどうあれ同じ教えを戴いていたからこそ、かつての同胞の所業を許せず出奔した彼女にとっては何ら違いは無い。

 メシア教を捨て、されど正道にも戻れず。素性を隠してガイア連合の傘下に加わることもできなかった中途半端な己にとって、過去は今なお鎖となって彼女を絡め取っていた。

 魔女の意向を知って尚地元(函館)に隠れ住んでいたのもそうした重荷と後悔故のことか。

 それでも押し潰されず今日この日まで生きていられたのは、偏に口さがない守護天使(不良天使)の存在あってのことだった。

 

『さぁてこっからが正念場だ……勝手に賭けたケチなギャンブルだが、精々大穴狙いでやってやるさ』

『さっきは勝てる勝負だって言ってませんでした? ……こちらもなるべく引き伸ばしてみますが、あまり期待はしないでくださいよ。念話が通じなくなったら――』

『そん時はそん時、だ。……いざとなりゃ覚悟を決めるさ』

『……それがどういう覚悟かは、聞かぬが花ってやつですかねぇ』

 

 守護天使は最後に収容された人々を見遣り嘆息すると、苦々しい思いを努めて隠しながら立ち去った。

 取り残された者達は不安に身を寄せ合いながら、明日をも知れぬ我が身に震えだす。

 杏子はそうした彼らの中で独り覚悟を宿して、待ち受ける苦難を前に身構えた。

 

(頼むぜ神様……たまには祈りに応えてくれよ……)

 

 ――そうして杏子の長い戦いが始まった。

*1
『アビャゲイルの投下所』より、KSJ研究所が誇る改造人間部隊。

*2
『アビャゲイルの投下所第二支部』>>2497からのエピソードを通じて、『ファッション無惨様のごちゃサマライフ』の「アルカトラズ・レポート」で登場した兵士型デモノイド【ネメシスT型】を導入済み。詳しくはアビャゲイル様のスレを見よう!




・道南三人娘
最近拡充した戦力を引き連れ、総動員して五稜郭へ殴り込みをかける。
さながら梁山泊に攻め入る十傑集三人の如き絶望的な戦力差である。
無論絶望するのはメシアンの方(

・佐倉杏子
五稜郭の異界化に巻き込まれた元メシアン。現地民。
過激派と穏健派に分かれる前からメシア教と袂を分かっていたが、元メシアンの烙印を他ならぬ自分が一番負い目に感じている。
素直に名乗り出てれば普通に保護されてたことには気付いてない(

・守護天使
佐倉杏子の守護天使を名乗る【天使 エンジェル】。
天使のくせに俗っぽく、軽口を叩き、同胞をせせら笑う不良天使。
通常の【エンジェル】と違うのは、その眼を遮る覆いが存在しないこと。

・過激派の皆さん
このあとすごくひどいめにあう

・旧幕府軍の皆さん
士道不覚悟でこのあとひどいめにあう

・一般人の皆さん
このあとすごくぶじ


人魚ネキのおっぱいのサイズがデカすぎたり、アビャゲイルさんからとんでもねぇキラーパス渡されたり、三連休にめちゃくちゃ三次の更新来てたり、またも面白い新作増えてたりと情報量が多くて参ったね。
次から次へとネタが湧いて、これだからカオ転三次を書くのはやめられねぇんだ!

また頓西南北様。
アビャゲイル様のところでのネタ経由ではありますが、高作からパピヨンニキを始めとする設定を起用させていただきました。
匿名投稿のため個別に連絡を取れず、事後承諾の形となってしまい恐縮ですが、この場をお借りしてお礼申し上げます。
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