★【報連相は】異界発見報告・攻略相談スレ【忘れずに】 part◯◯
762:カス子
【速報】五稜郭異界攻略完了
763:名無しの転生者
まってた
764:名無しの転生者
カス子ネキおっすおっす
765:名無しの転生者
もう攻略したの早くなぁい?
766:名無しの転生者
発生から解決まで半日経ってない……経ってなくない?
767:名無しの転生者
確かメシア教案件だっつってなかったっけ
768:カス子
許可出てソッコで三人で殴り込んだから多少はね?
769:名無しの転生者
判断が早い
770:名無しの転生者
三人ってーとカス子ネキと邪視ネキと魔人ネキ?
771:カス子
それプラスKSJ研究所のブラッドジャケットとパピヨンニキのとこのデモノイド部隊ね
道南支部の主戦力総動員だゾ(
772:名無しの転生者
殺意高い……高くない?
773:名無しの転生者
三人ともレベル80↑じゃありませんでしたっけ(冷や汗
774:名無しの転生者
オーバーキルってレベルじゃなくて草
ラスボス倒しにでもいくんか(
775:名無しの転生者
そらスピード解決にも納得だわ、これでダメならショタオジ案件一直線だもん
776:カス子
そらおめー目と鼻の先でカスがナメた真似しやがったら全力で殴りにいくだろうがYO!
777:名無しの転生者
道南支部はトラピスチヌ修道院跡に建てたんだっけ?
喧嘩売るにしても近すぎるし度胸あんな過激派(
778:名無しの転生者
ただの考え無しでは?(ボブ訝
779:名無しの転生者
まぁ狙い目としてはわからんくもない
紛れもない霊地だし、要塞としての逸話が強くて補正も乗るだろうしな
780:名無しの転生者
にしたってどうやって占拠したんや
支部でも当然警戒はしとったんやろ?
781:カス子
>>780
あいつら地道に地下掘り進めて下水道に接続したらしいわ、ご丁寧に抜け道も隠蔽してな
ざっとしか調査してないんで詳細はまた後程になるけど、少なくともウチの一般職員では看破できんレベルやね
782:名無しの転生者
うーむ相変わらず技術力だけは無駄に高い連中やな……
783:名無しの転生者
やはり鋭意開発中のゲートサーチアプリの一刻も早い完成が待ち望まれる
784:カス子
ワイもそう思ったからまた今度ポケットマネーから追加予算出しとくわ
まさかこんな真似してまで潜入しやがるとかあいつらの行動力ナメてた
785:名無しの転生者
あざーっす、ゴチになりやす!
786:名無しの転生者
ネキのそういう気前の良いとこ好きよ
とりま実例も出たことだし開発を急がせるわ
787:名無しの転生者
んで一般人とかはどうだったん?
真っ昼間の五稜郭公園とか来場者多くて被害者続出やろ
788:カス子
>>787
幸い花見シーズンは過ぎてたから五百ちょいで済んだわね、それでも通常の異界騒ぎと比べりゃクッソ大人数だけど
最後には殉職者と犠牲者を蘇生した上で記憶処理とかもしたから結果としては犠牲ゼロで終わったけども、流石に数が数だからもうちょい後処理かかるわね
789:名無しの転生者
クッソ強引だけど犠牲者ゼロで済ませられたのすげーな
790:名無しの転生者
職員はともかく一般人の蘇生は大丈夫なん?
あんまそういうことみだりにやらんほうがええんちゃうの?
791:カス子
リカーム使えるだけの雑魚ならそうやがワイはスペシャリストやからな、魂も肉体もあるなら後遺症ゼロで蘇生なんざ朝飯前よ
下手に犠牲者出て社会不安煽られたほうが不都合やからな、カスには自分のやったことは尽く無駄だったことを思い知ってもらわんと
792:名無しの転生者
うーん強い(
793:名無しの転生者
普段はカスだけど有事の際は頼もしいな、悔しいが
794:名無しの転生者
このへんの取り扱いは支部ごとにスタンス違うからなぁ
常駐戦力に蘇生の達人がいると話が簡単で羨ますぃー
795:名無しの転生者
とりま事後調査は別として円満解決ってことでおk?
796:カス子
おkおk、報告書はまた後日上げるから事務処理よろー
797:名無しの転生者
ういうい、用意しとくわー
798:名無しの転生者
っぱ道南支部の保有戦力はガチやなぁ
799:名無しの転生者
揃いも揃って修行ガチ勢だからいざというときの対応力がダンチ
800:名無しの転生者
さすがに北の防人は格が違った
801:名無しの転生者
すごいなーあこがれちゃうなー
802:名無しの転生者
ほんとにカス子ネキにあこがれますか……?
803:名無しの転生者
ごめんやっぱ嘘
804:名無しの転生者
草
805:名無しの転生者
掌返しが早い(
806:カス子
このボケカスがよぉ……ままええわ、今は重要なことじゃない(
それよりちょっと入用のものがあるんだけどさー
807:名無しの転生者
なんだ、追加物資か?
808:名無しの転生者
聞いた感じ全然消耗してないんやろ?
809:カス子
いやそういうのじゃなくて、COMP持ってるやつおる?
十戒プログラム入りのやつ
810:名無しの転生者
なんだってそんなもんを……まぁあるけど
ちょうどデータ取りに使ってたやつあるけどいる?
811:カス子
くれー! 今から取りにいくから!
812:810
んじゃDM送るからそっちで待ち合わせしよ
813:カス子
せんきゅー! 野獣ニキありがとナス!!
814:名無しの転生者
ほんまやレス番が810で草
815:名無しの転生者
なんだこれは、たまげたなぁ……
816:名無しの転生者
臭そう(
817:810
たまたまレス番が一致しただけでこの扱いよ
風評被害こわいなぁ、とずまりすとこ(
818:名無しの転生者
難民の間でも既にミームになってるの草生えますよ
819:名無しの転生者
そのうち悪魔になりそう(
◇
「ただいまー、例のやつ受け取ってきたぞい。……シオリっちはなんでエプロン姿?」
「おかえり命子。ちょっと今食事用意してて……悪いけれどそっちの皿持ってくれる?」
COMPを受け取って本社から戻ってくると支部に美味しそうな匂いが立ち込めていて、シオリっちが揚げ物を作っているところだった。
山盛りのコロッケ、トンカツ、メンチカツが乗った大皿に、ガイアカレーのレトルトパウチを温めている鍋がどどんと。
あたしらの飯にしては量が多いけど*1……打ち上げなんてやる予定あったっけ?
そう思いつつも言われた通り皿を運んでいったら
「はぐはぐはぐはぐ――」
「そう慌てずとも食事は逃げませんよ」
一心不乱にカレーをかっこんでるあんこちゃんと、それに給餌してるカレンちんがいた。
合間合間に箸で揚げ物を差し出して食べさせてる様は完全に餌付け。つか食いっぷりすげぇな、欠食児童かよ。
「おー、へいほ! ほほはへーふへぇな!!」*2
「さんを付けろよデコ助やろー。つかなに人ん家で飯食ってんだオメー」
呆れながら皿を置くと、すぐに手を伸ばしてがっついた。
うへぇ、見てるだけで胸焼けしそう。よくそんな油モン食えんな。
『あのぉ……これって死ぬ前に好きなものを食わせるとかじゃないですよね? このあと毒ガス訓練が始まったりしません?』
「不良天使もいた。つか狂四郎知ってんのかよ俗物がよぉ……これどういう状況?」
『げぇっ、人形遣い! いえその取り調べがあると聞いたんですけど、キョウコがお腹を空かせた音を聞いたらこうなってて……謎の親切が怖い!』
「だって何日も禄に食べてないっていうから……」
だからって元メシアンを甲斐甲斐しく世話してんじゃねーよ、いくらジャッジ通ったからって甘すぎでしょ。
まぁシオリっちもカレンちんも理由はわかるからとやかくは言わないけどさぁ……まぁいいや。
とりあえず飯に夢中なあんこはほっといて、手持ち無沙汰にしてる不良天使の方に声を掛ける。
「おーい不良天使、これ」
『はいはいなんでしょ、こうなりゃもうなんだって来いってんですよ。……はてこれは?』
「おまえらんとこの古巣が開発した悪魔召喚プログラムだよ。これに入ってる【十戒プログラム】ってやつ試しな」
『ええぇ……そんなもん作ってたんですかこわ……。これ拒否権無いやつですよねぇ? 悪魔召喚に十戒とかごちゃまぜすぎやしませんか』
「話が早いやつは好きだよ、ほれはよ行ってこい」
『はぁい行ってきまぁす……』
食事に夢中なあんこは青い顔の相方に気づきもせず、不良天使はCOMPに飛び込んだ。
……かと思ったら数分も経たないうちに飛び出してきた。【エンジェル】から【パワー】へ昇格するというオマケ付きで。
「うっそぉ……マジでぇ?」
『はわわわ……な、なぜワタシが出世を!?』
「もぐもぐ……ぶほっ!? なんだおまえ、どうしたその格好!?」
木っ端の白衣姿から厳しい赤の甲冑姿になって現れた不良天使に、あたしとあんこのみならずシオリっちもカレンちんも口をぽかんと開けて驚いていた。
ええ……十戒プログラムってガチガチの制限アプリじゃねぇの……? なにこの機能しらん……こわ……(
「十戒プログラムはどしたん?」
『えっ? 普通に通りましたけど……今更あんな当たり前のこと聞かれても困るというか』
「それウチ傘下の天使からはクッソ不評なんですけど」
『やだ……天使のモラル低すぎ……!?』
「なぁあんこ、こいつおもしろすぎひんか?」
「こいつがスタンダードじゃないことはさすがにわかる」
こんなのがスタンダードだったらあたしらの苦労は最初から無かったやろなって。
しかしこんな挙動あるのか……悪魔召喚プログラムは四文字の息が掛かってる説あったけど、これを見ると案外マジなのかもしんねーな。
あたしら三人ともCOMPは使ってねぇからさすがに想定外だわ。
「大分興味出てきたな。そもそもこいつとはどういう経緯で契約したん?」
「えーとちっちゃい頃にやったミサで祈ってたら隣にいたっけ? 気付けば傍にいたからあんま気にしたことなかったな、そういや」
『懐かしいですねぇ。前々から地上に興味があったんですけど、たまたまこの子の祈りが届いたから便乗して降臨したんですよ。あの頃のキョウコは今みたいに擦れてなくて純粋で、「契約しませんか?」って聞いたら「いいよ!」って言ってくれたので、それ以来陰に日向に見守ってきた次第です』
「毎日横からずーっと「宿題はしろ」だの「夜更かしするな」だの口煩かった覚えしかねーけど」
「すごくマトモ……!?」
口を抑えて驚くシオリっち。比較対象が悪すぎてこんなんでも輝いて見えるとかメシアンどうなってんだ(
「地上に興味があったっていうけど、何が目的なん?」
『特に何も……? 興味があったから降りてきただけなんですけど……』
「おまえ元とはいえメシアンの守護天使だよな???」
『やめてくださいよ縁起でもない! ワタシが降りてきたときは同胞がそんなやらかししてたなんて知らなかったんですよぉ!!』
「あーと……信じてもらえないだろうけど、あたしの家族はメシア教を信じてただけでほとんど一般家庭と変わらなかったんだよ。家もちっちゃい町教会でさ、数人のご近所さんでミサをやるのが精々の」
「ふぅん?」
曰く悪魔と関わるようになったのは不良天使との契約をきっかけにして霊能に目覚めてからで、家族を守るためにスライム以下の雑霊を祓っていたのが始まりだという。
そこをメシア教のエクソシストに見出され、才能があるからと修行をつけてもらい徐々に実力を伸ばしていったのだとか。
他の家族は悪魔が視えず完全には理解が及ばないまでも「人のためになることなら」と、テンプルナイトとなったあんこをサポートしていたと。
それでか……道理で在野なのにLv15なんていう現地民基準で上澄みのレベルなわけだ。これならテンプルナイトの末席に加わっていてもおかしくはない。
「けどだんだん不穏な噂も聞くようになってさ……一般人の拉致洗脳だとか、人体改造だとか、あたしは悪魔祓い一辺倒だったから関わったことなかったんだけど、後方の研究施設だとそういうことが罷り通ってるって」
「……残念ながら、その噂の多くは事実ですね」
カレンちんが手を組んで静かに呟いた。
彼女もシオリっちも直接の被害者だから、それらの事実に思うところはいくらでもある。
「当時はわからなかったから、調べたんだよ。後方に潜り込んでいろいろと。……そしたら全部本当だった。あたしの友達も【聖母】なんてモンに変えられちまっていた」
「……!」
「今だからこそもっとやりようがあったと思うんだけど、そのときのあたしはカッとなってさ、根回しもせずにそのまま弾劾しちまった。それで異端認定されて……家も家族も焼かれちまって、それからずっとコイツと二人で根無し草さ」
『神に誓って道義に悖る行いはしていません。まぁダークサマナーの類からはちょいと路銀を頂戴はしましたけど……ワタシが堕天してないので多分セーフです!』
「困ったことに本当だわ……全然眼が疼かない」
『だからって根掘り葉掘り詰められるとやっぱり後ろめたさがあるのでどうか程々に! 程々に流していただけると助かります!!』
不良天使の主張はさておき。まぁ、そういうことならやっぱりセーフでいいかな。
情状酌量の余地は十分にあるし……というかあたしらのアウトラインに掠りもしてないし、ほんとにただ元メシアンってだけで罪状は潔白そのものだしなぁ。
本当のことを言ってるかどうかはあたしらレベルなら見ればわかるし、一緒に証言してる不良天使が十戒プログラムを突破してる以上そもそも嘘の吐きようがない。
「しかしそうなると今まで名乗り出なかったのはなぜです? そのような経緯があるならこちらとしても配慮できましたのに」
「ガイア連合のメシアン嫌いは有名だったから、元とはいえメシアンだった身では信用されないだろうと思ってたから。……それにここ、修道院だったろ?」
「……まさか」
カレンちんが息を呑むと同時、杏子は神妙に頷いた。
「――ここの所属だったんだよ。なのに大勢の犠牲があったことに気付きもせず、何もできないまま逃げるしかなかったあたしが……どのツラ下げて戻ってこれるってんだよ」
「…………」
「だからあんたらがここを制圧したって聞いたとき、嬉しかった反面、複雑だった。結局犠牲者は犠牲になったままだったのかって。一人だって助かったなんて話も聞いたことないままガイアの拠点になったから……戻れも逃げ出しもできずにフラフラしてたら、このザマだ」
そういって俯く彼女に、あたしは何も言えなかった。
言えるとしたらそれはあたしじゃなく――この二人だろうからね。
「――里町あんな」
「……?」
「呉ほのか。木村えり。清水こよね。尾形かれん。日下れな――」
「……まさか、それって」
その後何名かの名が続き、挙げられる都度に杏子の目が見開いて。
「――美樹さやか」
「あんた、その名を――!!」
「全17名。
最後に呼ばれた『美樹さやか』の名を挙げた瞬間杏子は跳ね上がり、カレンちんに掴みかかった。
それを振り払いもせず受け止めシオリっちに目配せすると彼女は頷いて――言の葉に力を乗せて宣言した。
「【宣誓】――我が力【サリエル】と、我が名【宮古シオリ】に誓って是が真実であると誓う」
『、やはり……!』
「――
「…………本当、なのか?」
シオリっちの宣誓に杏子はそう呟き、それが紛れもない真実であると理解すると膝から崩れ落ちた。
高位の異能者が力ある言葉で立てた誓いは決して破れず、違えばその全存在は喪われる。
霊能に関わるものならば疑いようもない不文律で証明された真実に、彼女は堰を切ったように落涙した。
「うあ、わあああああぁぁぁぁ……!! あああああああ――!!」
『おお、主よ……どうかかの者らの魂を慈しみ給え――』
泣き崩れて喚く杏子をカレンちんが抱き留めて、十字を切る天使にシオリっちが透明に涙した。
そしてそのまま泣き疲れて眠ってしまった杏子をシオリっちが受け取ると、そのまま客室のベッドへ寝かせにいった。
残された三人でしばし沈黙していると、不良天使が真面目な顔をして口を開く。
『ありがとうございました、御三方。ようやくあの子も泣くことができました……』
「……いいえ、こちらとしても得難き出会いでした。少なくとも
『……そのようなことを救いとしてしまう同胞の至らなさを不甲斐無く思います。まったく、どうしてこのような真似をしでかしているのか……ワタシも大概不良だという自覚はありますが、これじゃああちらは罪人ですよ』
「実際
『さて……ワタシは見ての通りはぐれものですから、昨今の情勢はなんとも。ただ幾名かの大天使がお隠れになったと噂される一方、ガブリエル様を除く三大天使が活動的とは聞いていましたが……下級の分際で推し量れるものではありませんので』
「そうですか……」
『しかしあの宮古シオリなる御令嬢の力は紛れもなくサリエル様のもの。それがメシア教の天使を咎め、なんら沙汰が下らないのであれば……それが主の御心に適うことであるのは間違いないことかと』
そっか。できれば少しでもあちらのことが知れればいいなと思ってたけど、そう都合良くはいかんか。
けどやっぱり謎が多いね。結局四文字はどこまで見通してるのか――ショタオジという紛れもない超越者の存在をどう捉えているのか。
転生なんていう不可解なプロセスを経てメガテンなんていう
『けれどまぁ、案外なんとかなるんじゃないかなって気はしますけどね。貴方がたを見ていても人間は逞しい……というか逞しすぎますし、自信を持って歩んでいかれて良いと思いますよ。というか貴方がたでダメならメシアンはもっとダメですし』
「それでええんか不良天使」
『大昔じゃあないんですから、今の人間なんて見守ってりゃそれでいいんですよ。技術に法律に行政に……わざわざ口を出さなくったって勝手にしぶとく生きていきます。長い事覗き見――げふんげふん見守ってたワタシが言うんだから間違いないです。まぁ、キョウコのことは長い付き合いですし、今後もそれとな~く口出しさせてもらいますけどね。あの子好き嫌い激しいですから』
「そんなだから今の今まで出世できなかったんじゃね?」
『出世なんていいもんじゃないですからね、ただでさえ
そう言い残して不良天使はあんこのとこまで飛び去っていった。
……すげーナチュラルに自由行動していったけど、まぁアイツならいっか。あれが演技ならもう人類は二度と天使を信用できんくなるわ(クソデカ主語)
「……なんともはや、珍妙な天使もいたものですね」
「だねぇ……あれもう【天使】じゃなくて【珍獣】じゃねって思った」
残されたあたしとカレンちんで食事の後を片付けながら、なんとも奇妙な思いで言葉を交わす。
なんつーかあたしもカレンちんもシオリっちも、すっかりあの二人に絆されてるっていうか……なんかもう既に囲う気満々でいるのは気の所為じゃないよね、きっと。
あんな事情を聞かされちゃあはいサヨナラするのもあまりに人の心が無いし、そもそも棄教してるなら在留して良しと言ったのはこちらだ。
そしてカレンちんにはそれだけじゃなくて――
「そういやさぁ……あたしが最初あの子を処理しようとしたときにさぁ、庇ってきた人達がいるんだよね」
「そうらしいですね。あの子から聞きました」
「亡くなった娘さんとよく遊びに行ってたからって五稜郭公園に出かけたら巻き込まれて、そこで頑張ってるところを見て放っておけなかったんだって」
「……人好きのする子ですからね、彼女は」
「……尾形さん、って言うんだってさ」
「…………」
食器を洗っていたカレンちんの手が止まった。
剛力を発するとは到底思えない白魚のような指。式神技術の粋を結集した人工にして人外の美貌。
だけどこうしてよく視てみると――その魂の形質は驚くほど良く似ていた。
「名乗り出ても良かったんじゃねーの、
「……やはり、貴方の仕業でしたか」
あたしを見下ろす彼女の顔は、嬉しそうにも悲しそうにも、怒っているようにも喜んでいるようにも見えた。
いつもの冷静な鉄面皮を崩して、渦巻く感情がそのまま表に浮かび上がろうとしては沈んで――こんなカレンちんの姿はあたしとシオリっちくらいしか知らないだろうね。
「まったく……本当にお節介なんですから。貴方でなければ手が出てましたよ、それもグーで」
「偶然見つけちゃったんだから会わせてやるのが人情ってもんでしょ。それに今なら戸籍の改竄もどうとでもなるし、家族を取り戻してもよかったんじゃん?」
「……でも、今の私は」
――かれん?
――ごめんなさい、人違いよね。どうしてかしら、顔も年齢も違うのに……ああでも表情が! ほらあなた!
――申し訳ありません、私の妻が……ほんとだ、真面目なときのあの子にそっくりだ
――っとごめんなさいね、勝手に盛り上がっちゃって。お役所のお偉いさんなんでしょう? 若いのに立派ねぇ
――改めてありがとうございました。自衛隊の方々にもよろしくお伝えください
「…………」
「本気で余計なお世話だった?」
「いいえ……ただお節介焼きだな、と」
そう答えたカレンちんは不機嫌そうではなかったから、多分そう悪くはなかったんだろう。
シオリっちは家族との折り合い悪いし、あたしは今も昔もみなしごだからねぇ。
そう思って気を利かせたつもりなんだけど……やっぱ慣れないことはするもんじゃねぇな!
「さーてあたしはもうちょっとだけ仕事してから上がるわー。カレンちんはもう休んでていいよー」
「そうさせてもらいます。……貴方にばかりこんなことを任せるのも気が引けるのですが」
「いーのいーの、適材適所ってやつだからこれも! それじゃあまた明日ねー」
さーて、っと。
◇
目覚めとは異なる心地を覚えながら司教は意識を取り戻した。
しかし全身は金縛りに遭ったように身動きが取れず、首から上が僅かに左右へ振れるのみで口も開けない。
視界に映り込むのは打ちっぱなしのコンクリートに覆われた窓のない密室――それこそ扉一つとて無い完全な密室で、侵入の手立てが無い場所だった。
「んじゃ次、名前と国籍と年齢と――」
「――――」
その密室の中にぽつんと置かれた文机には、髑髏姿の人形が着席していた。
等身大をして羽ペンを握る、文官のなりをした【筆記人形】。その名を彼は知らなかったが、独特の風体からその正体はすぐに知れた。
その答えとなる"人形遣い"が、同じく身動きの取れない部下に問い質しているのを見て、彼は己が虜囚となったことを理解する。
「……あれ、もう起きたの? さすがにレベルがあるとそれなりに回復も早いね。まぁいいや、五月蝿くないならそのままで。もうすぐ出番だからちょい待ってな」
「――――」
状況から察するに拷問か、しかしそれで音を上げる私ではない――そう覚悟した彼だったが、どうにもそうした様子ではないことに気付く。
それらしい器具は見当たらず、苦悶に喚く声も響いていない。血や排泄物の匂いすら僅かたりとて臭わない
そも口を割らせるならば声を封じる理由が無く、ただ部下達へ一方的に問い質すだけの奇妙な光景に司教の背は薄ら寒くなった。
「ふーむやっぱ下っ端は何も知らんか。情報管理が徹底してるというか、疑わず死ぬまで戦ってくれる部下たぁ便利なもんやね。生きた人間でよくもまぁやるわ」
「――――」
「んじゃ最後の質問ね。――
その問いに、声は上げられずとも気配が縋るように揺れたことに気付いた。
声ならぬ声を聞いた人形遣いは特に興味を示さずに部下から視線を切ると、その異名が如く部下を人形のように操って黒衣の陰へ収めた。
「んじゃラストの司教さん、アンタは情報持ってるかなーっと」
「――――」
「ああ、別に答えなくていいよ。
そうして人形遣いは幾つかの質問を投げかけた。
此度の作戦に纏わる諸々から、所属部隊の拠点所在地、構成、その他の目的等々。
彼は知る由もないが、この世の誰よりも
ただ掌の上に魂を乗せられ、問われるままに全てを白日の下に晒した。
「やっぱ修道院が目当てか。随分念入りに霊地整備してたからそうじゃないかとは思ってたけど……こりゃ今後も襲撃があると思っとかないとやね。少なくとも諦めるつもりはなさそうだし」
「――――」
「おっけー、もういいよ。聞きたいことは全部聞けたから。んじゃま最後の質問だけど――
その問いに司教は、最後まで屈しないことを示した。
たとえ死すとも異教の悪鬼には恭順しない――それが正義に殉じる者の責務と彼は確信していたから。
不甲斐ない部下のことは惜しく思うが……どうかその道行きに幸あれと祈りながら彼は死を覚悟して。
「それじゃあ飛丸、それは食べてよし」
『結局ヒトリダケ、カ!』
――目の前で獣に貪り食われる己を見た。
仮面の貌をした悪魔の獣が顔を埋め、血に塗れて臓腑を貪る姿を彼は正面から見てしまっていた。
食われているのは紛れもなく自分の身体――ならばそれを見ている今の自分は?
その答えを彼は、自分を吊り上げた人形遣いの瞳に見て――それは刑死者の如く吊り下げられた髑髏人形の姿をしていた。
「――――」
「――あ、もしもしスカリエッティニキ? 実は引き取ってもらいたいものがあってさぁ……こっちでの連絡はそう、活きの良いのが手に入ったから。ああ、連中もいい使い勝手してたよ――うん、礼美姉にもよろしくねー」
人形遣いは携帯端末でどこぞに連絡したあと、もう一度別の連絡先へと電話を繋げて。
「――ぜっちゃん今大丈夫? 一人だけだけど高レベルの魂が確保できてさー、そっちなら使い道あるんじゃないかと思って。――うん、うん、オッケー、ならこのあと持ってくわ。……えっ、新作できたん? ならそれと交換で――
そうして連絡を終えて
決まった段取りを確認するように、独り言ちるようにして声を掛けて。
「そういうわけだから、まぁあとはがんばりなー。祈りが通じれば神サマが助けてくれるんじゃない? しらんけど」
そうして彼は人形遣いの懐へ収められ――
・カス子
道南支部の暗部担当なダークギャザリング系女子。
死は状態異常の一種に過ぎず、労働をやめる理由にはならない。
・邪視ネキ
一周回ってあんこコンビにダダ甘な天使殺し筆頭。
肥溜めの中にきらりと輝く一粒のダイヤモンドを見つけてすごく嬉しかった。
・魔人ネキ
本名尾形かれん。あんこコンビに一番救われた人。
個人的な恩義がめちゃくちゃデカくなったので、なにくれとあんこを目にかけるようになる。
・あんこちゃん
このあとうちの子になった。
境遇を知った者からめちゃくちゃ可愛がられてよく餌付けされるようになる。
道南支部の金札筆頭として三人娘から弟子扱いされるが、命の危機的にはこれからのほうが大変。
ちなみに幻術への適性が高い。
・不良天使
十戒プログラムを余裕のスルーして【エンジェル】から【パワー】に昇格した出世頭。
本人的には「こんなんで昇格できるとかFラン大学の入試ですか?」っていう微妙な気持ち。パワーはブラック業務なのであんまりうれしくない。
あくまで助言者との立場から固有の名前を持たなかったが、これからも長い付き合いになりそうな杏子にいよいよ観念して名付けられることになる。
・犠牲者となった少女たち
さやかちゃんにはすまんかったと思っている(
・過激派の皆さん
出荷よー (´・ω・`)
・スカリエッティニキ
出荷先その1。生きたい方のルート。
アビャゲイル氏のとこでとんでもねぇキラーパスをもらった結果、カス子とKSJ組には深い因縁ができている。
詳しくはあちらのスレを見よ。
・ぜっちゃん(脳缶ニキ)
出荷先その2。死にたい方のルート。
馴れ馴れしく愛称呼びしてるほどには仲が良い相手。
どっちも魂が視えて悪魔との付き合いが深く、連合への帰属意識は強くいろいろと貢献しつつもやらかすカスという共通点がある。
空前のカオ転ブームきてる……きてない?
っぱカオ転はいつまでも擦れて味のする完全栄養食だぁ……