【カオ転三次】今更転生ごちゃまぜサマナー   作:ふーじん

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43話:母なる大地

 開戦と同時、三者は散開して戦闘態勢に入った。

 

 無尽蔵に天の奈落から零れ落ちる邪鬼(ネフィリム)には命子が対応。

 人形軍団を展開し、即座に甲縛式O.S.【月蝕人形劇場】を切ってヴェールの如く霊糸を棚引かせ接続。

 極限まで加速した戦闘思考の中でその全てを制御し、多数対多数を一手に引き受けて戦場の大勢を掌握に掛かる。

 

 図抜けた巨体を誇る魔人(ネフィリム)十二柱にはシオリが応戦。

 大鎌【月禍美刃(チャンドラハース)】を手に巨体を駆け上がり、()線を張り巡らせ牽制していく。

 命子の意を受けた【死想の魔人人形(サンタ・ムエルテ=アルレキン)】も魔人の対処に当たり、遊撃戦力二名を以て特記戦力の排除に動いた。

 

 そして最大戦力の降天使(ウリエル)にはカレンが対峙。

 白翼を以て自在に空を舞うウリエルをその脚で追って、炎獄と利剣に対し五体のみを用いて交戦。

 傍目には幾何学模様をなぞる流星の如き戦闘軌道を描いて激突する。

 

 三者とも当たり前のように海上で自在に機動し、足場無き戦場に適応していた。

 命子は霊質からなる自在飛行を以て戦場を俯瞰し、適切な兵力を適切な戦場へ配置。

 シオリは死天使(サリエル)の白翼をはためかせ完成体ネフィリムの暴虐の合間を縫って飛び、立体機動を以て戦場を撹乱。

 カレンは黒札上位陣(修羅勢)が当然の嗜みとして習得してる空中歩法*1を以て跳び回り、時に降り注ぐ有象無象のネフィリムを足場にしてウリエルを追撃していた。

 

 海中、海上、上空の三場面で戦闘が展開され、その様相は混沌を呈している。

 その中で最も緊急性の高い脅威は最大戦力であるウリエル――ではなく。

 

『事前の作戦通りに後始末よろしく! 数は多いけどマジがんば!!』

 

 この戦場において最も格の低い、数ばかりの有象無象(【邪鬼 ネフィリム】)だった。

 命子達の力量からすれば木っ端にも等しい、片手間に滅ぼして尚余りある弱兵達。

 数十……否数百が集まったとて、範囲攻撃をも各々得意とする彼女達であれば、一つも取り零さず殲滅も可能。

 だが――千を数えれば話は変わる。

 

 ガイア連合の常識において霊格(レベル)は絶対的な指標。

 数レベルの差であれば小細工で対抗し得るが、十以上も離れればその戦力差は絶望的。

 修羅(Lv50)の領域に至れば権能も交えるため話は変わるが、そうした例外を除き原則としてレベル差というものは残酷に勝敗を分かつ。

 しかしその中で唯一その法則を覆し得る暴力こそが、数だ。

 

 地上における主戦場、中華戦線で奮戦する英雄達の脅威は天使達。この世から過激派を駆逐するまで絶えることのない天兵の攻勢。

 一握りの修羅達の主戦場、修行場深層における最大級脅威の一つは【無限回廊】。その名の通り無限に湧き続ける悪魔達の波状攻撃。

 いずれも対する強者たちからすれば数十も霊格で下回る雑魚の群れに過ぎないが、それが絶え間無く続けば波に呑まれて呆気なく散る。

 

 同じく数を強みとする命子は、故に奈落()から降り注ぎ続けるネフィリムを最大限警戒する。

 ここは日頃死闘を繰り広げている修行場(異界)ではない、神主(ショタオジ)の庇護届かぬ地上だ。

 一匹でも取り逃がせば地上は大きな混乱に見舞われ、連合の掲げる理念に大きく反することになるだろう。

 

 海上では数百からなる銃撃スキル特化型の【魔弾人形】が弾幕を張り、同数の【魔法人形】が範囲魔法を展開して爆撃する。

 それでも尚海中に逃げた群れは水中戦闘に長けた【水雷人形】が迎撃しその数を減らしていく。

 その全てを【魔神(悪魔)達の動向を全て監視している】逸話からなる権能でリアルタイムに観測し、最大効率を発揮するよう指揮し続けていく。

 

 しかしそれでも取り零しはどうしても生まれる。

 深層とは異なりMAG濃度の低い地上ではスキルを構成するMAGの飛散が著しく、特に広範囲に影響を及ぼす魔法ほど減衰が顕著だ。

 せめて異界程度のMAG濃度であれば取り零しもなく殲滅し続けられるものを、法則(レギュレーション)の違いが故に叶わず弱らせたりとはいえ逃亡を許してしまっている。

 

 だが、だからこその総力戦。

 命子からの【念話】が沿岸に配置した戦闘員へ伝わり状況が知らされると、彼らは銘々得物を構えて。

 

「きたきたきたきたァ!!!!」

「っしゃおらボーナスタイムじゃあ!!」

「お溢れだろうが知るかっ、殺せ殺せ!! ラスアタ余裕な格上とかうま味しかねぇぞ!!」

「うまあじ派は馬鹿だなぁ! おらっ、ちんたらしてると巻き込むぜ!!」

 

 向こうからやってくる鴨ネギ(経験値)に獰猛な笑みを浮かべ、意気軒昂(ヒャッハー)して迎え撃った。

 命子の軍勢によって散々に削られ、その傷を癒やすべく更に食欲を増したネフィリムが、眼の前のごちそう(ニンゲン)を無視して逃げるなどありえない。

 一方でそれはこちらも同じで、戦闘員達にとってもネフィリムは格好の獲物だった。

 数だけを強みとした量産型に状況の不利を理解するだけの判断力などなく、飛んで火に入る虫とも知らずに欲望に目を眩ませた黒札(バカ)達の餌食となっていく。

 

「まるでタワーディフェンスだな……かくれ奈、位置情報の取得(マーキング)に専念して随時情報を共有してくれ。大まかな群れは彼らに任せてオレは取り零しを片付ける」

「了解しました。マスターの護衛も最低限に留め観測に徹します」

「外からのお客さんは佐倉くんが対応してくれている。オレ達は作戦に専念するぞ」

 

 全体を見渡せる位置から状況を俯瞰してそう判断したマタギニキの意を受け、式神のかくれ奈が取得した情報をCOMPを通じて共有していく。

 高位天使のMAG、あるいは戦いの気配に釣られて集まりつつある悪魔達は、ブラッドジャケットとデモノイド部隊を引き連れた杏子が迎え撃ち戦場への介入を阻止していた。

 上陸までに命子の手によって散々に削られ、置き土産のように呪詛に侵されたネフィリム達の怪力は著しく衰弱し*2、強気の攻勢に出ることを可能としている。

 

 ウリエルが喚んだ量産型ネフィリムは今尚投入され続け、その総数は計測不可能。

 しかし喚ばれた端から人形軍団に迎撃され、ウリエルとカレンの激突の余波に巻き込まれ、戦場を飛び回るシオリの魔眼にも囚われ、ついでに姿を隠して奇襲を繰り返す飛丸の牙に掛かり、その大半が為す術もなく散っている。

 千を越えて投入され続ける兵力も地上に辿り着く頃には十分の一以下にまで数を減じ、その命もあと一刺しで散るまでに弱っている。

 であるならば待ち受ける戦闘員達の敵ではなく、戦場となった函館湾は問題無く封鎖できていた――今のところは。

 

 この拮抗はあくまでも敵主力に応戦する三人の力ありきの状況だ。

 運命的に結びつけられた両者の戦いに縁持たざる者は介入すること能わず、精々が舞台袖で端役同士潰し合うが関の山。

 無論周辺被害の阻止を念頭に置く道南支部戦力からすればそれも重要項目ではあるが、勝敗を決するのは彼らではない。

 戦端を開いて僅かな時間ではあるが、主戦場は早くも混迷の色を見せ始めていた。

 

 

 ◆

 

 

「とりま雑魚処理は安定したな、ヨシ! つってもあんま余裕ねぇんだけど! シオリっちそっちはどう?」

「困ったわね……こいつら()()()()わ。いえ、死んでも時間経過で蘇るのが正確か。状態異常も同じくそのうち自動回復してる」

「なーる、()()()()()()()()()

 

 並列し、高速で思考を巡らせる疑似人格の一部を割いてシオリに状況を問うと、返ってきたのはそんな荒唐無稽。

 それを証明するようにシオリが手近な完成体ネフィリムの首を刎ねるも、暫くの間を置いて落ちた首が生え変わると痛苦に藻掻くように雄叫びながら下手人のシオリを巨腕で追い払った。

 彼我の体格差だとか質量差だとか、そもそも一撃で樹齢幾千の巨木にも等しい太さの首を落とすだとか、そういう常識外の挙動は今更なのでさておき。死を司る天使の力を持つ彼女が当然具えてある()()()()の一撃すら越えて蘇るその生命力は尋常ではない。

 

『紛れもない神の奇蹟だ! 我が神兵は大敵を悉く滅ぼすまで決して斃れず、然して最期は神の慈悲によって滅び去り新世界の礎となる!!』

「っせーな勘違いヤロー。何でもかんでも奇蹟だの愛だの嘯きやがって、口を開けば開くだけ価値が落ちるぜ!」

『不遜な口を――ぅオ!?』

「余所見をしている余裕があるとでも? 逃げてばかりでは戦いになりませんよ――魔女()を殺すのでしょう?」

『ッ、いい気になるなよ下郎!!』

「命子、乱暴になるけどごめんね!」

 

 快哉し神の奇蹟を謳ったウリエルの横面を、カレンの【デスバウンド()】が数度強かに撃ち抜いた。

 鳴り響く鐘の音。音色は衝撃波となって降り注ぐ雑兵を巻き添えにして、派手に吹き飛んだウリエルが復帰ざまに【サンライズ】*3を放つが、それをカレンは純粋なタフネスで受け止め更に拳を振り抜いた。

 彼女の【全体攻撃】は権能の域に達しており、その射程範囲は剛力に依存する。その範囲内にある者には等しく鐘の音が届き、音色は衝撃となって五体を打ち据える。

 血反吐を吐いて再び飛翔するウリエルを追ってカレンが跳び、更にそれを追って完成体ネフィリムの巨腕が幾つも振り回される。

 それを察知したシオリが命子を蹴飛ばし、迎え撃つ刃でそれを切り落とす――が、やはり数秒の間を置いて巨腕が生え変わった。

 蹴られた勢いのまま飛翔しポジションを変えた命子はその光景を具に観察して推測を重ねる。

 

 権能を駆使する彼女の不死殺しを乗り越えられるものは、同じく権能によってしかありえない。

 卓越した降霊術(ネクロマンシー)の真髄を以て存在の起点を魂に寄せ*4、無数の術式によって厳重に魂を保護(プロテクト)し、その上で更に存在情報を転写した【分霊人形(ソウルドール)*5という保険すら用意して不死を実現した命子は黒札(転生者)特有の規格外の霊質と才能に飽かした例外中の例外であり、高位悪魔とはいえ今の地上でそれに準じる不死性を有するのは極めて困難だ。

 近しい事例にかつてKSJ研究所の三人が討伐した【無限回復反則ドミニオン】なる特異個体がいたが、あれもあくまで擬似的な不死であり権能による不死には程遠い。

 

 しかし十二体の【完成体ネフィリム】が見せた不死性は、命子が確認した限りやはり権能によるものだった。

 極めて困難ではあるが実現不可能ではない。費用対効果は劣悪極まりないが、今や地球全土の地脈の九割を掌握し無尽蔵のリソースを誇るメシア教ならばあるいは可能だろう。

 命子はその推測を是としながら――しかし真相はそれだけではないことを悟って、上空で戦うウリエルを悪罵した。

 

「やっぱテメーか、猿真似野郎。神の奇跡だのと嘯きやがって、徹頭徹尾借り物の仕掛け(ギミック)じゃねーか」

『ほう、貴様如きが何を気付けたとでも?』

 

 カレンの追撃をいなしながら律儀に応えるウリエルへ命子は中指を突き立てながら、得意気な彼を嘲笑って続ける。

 

「すっとぼけてんじゃねーよ。神の奇蹟による不死だとかいって、偶然の産物でしかないくせによくもまぁ得意満面に言えたもんだなぁオイ!」

『何を言う、これはれっきとした信徒達の努力の結晶。真なる献身の賜物――』

「神以外に為し得ないから奇蹟っていうんじゃねーのかよっていうツッコミはさておき……当ててやるぜ。――テメェら、二度とこれと同じモンを作れなかったんだろ?」

『ッ、……何を、』

「同じ素体を何十何百も費やして、()()()()()()()()()()()()。それ以上は()()()()()()()()()()()()()……そうだろ?」

『――――』

 

 苦々しげに口を閉ざすウリエル。命子の言はまさしく正鵠を射ていた。

 図星を突かれ目を剥くウリエルを命子は殊更に嗤い、己の未熟を奇蹟の二文字で取り繕う無様を論う。

 

「なんなら不死性すらも素体――母胎頼りだ。テメェらにできたことと言えば、死なねぇだけの素体に諸々ごちゃまぜ(チャンポン)してハリボテを造っただけ。素材頼りの素人仕事、それをよくもまぁ神の奇蹟だの特記戦力だのと――みみっちぃったらねぇなぁ!」

『知った風な口を――』

()()()()()()()()()言ってんだろうがよぉ! なぁ――カレン!!」

「――やはり、そうでしたか……」

 

 名を呼ばれたカレンは心から痛切に表情を歪ませ、憐れむように十二体の完成体ネフィリムを見遣った。

 初めて明確に意識され、その視線に晒されたネフィリム達は首を揃えて振り向き。

 腕を……縋るように手を伸ばして――

 

MA(おかあ)……MA(さん)……』

 

 ――犠牲となった見知らぬ誰か(子供達)の最期の無念を、唯一残された血の繋がりを辿って呟いた。

 

『まさか――そうか、そういうことなのか……? 貴様が……聖母――大聖母だったとでも……!?』

「――――」

 

 奪われた温もり()を求めて伸ばされた手をカレンは振り払えず、されるがままにその手中に収まった。

 象と蟻ですら比較にならない体格差、指の間から僅かに顔を覗かせてネフィリムの手に囚われたカレンを十二体のネフィリム達が興味深そうに取り囲む中、それを見たウリエルが信じ難いように言葉を漏らす。

 

『ハ――ハハ、ハハハハハッ!! なんということだ、よもや喪われたはずの大聖母が生きていたとは!? これこそまさに天の配剤――主の思し召し! 天からの贈り物に違いない!!』

 

 ウリエルは狂喜して天を仰いだ。

 彼と本霊を同じくする【大天使 ウリエル】の主導の下進められた【聖母計画】。

 その最大の成功例とも言える【大聖母】。それを安置していた極東の修道院が"人形遣い"の手によって陥とされ、それと同時に喪われたものとばかり思っていた最高傑作が――今、この眼の前に!

 望外の奇蹟に彼は一頻り快哉し神の名を讃えると、隠しきれない上機嫌で憎き仇の命子("人形遣い")を見遣る。

 

『感謝するぞ、人形遣い。よくぞ私に報せてくれた! ますます以て負けるわけにはいかなくなったが――今の私は気分が良い。今なら苦しまずに死なせてやるが?』

「はっ、お優しくて涙ちょちょぎれんね――冥土の土産になんで上手く行ったか知りたい?」

『ほう? 面白いぞ、貴様。神の奇蹟を否定するか……だがさっきも言った通り今の私が気分が良いのでな、聞いてやろうではないか』

 

 曰く、ネフィリムは天より訪れた天使達(グリゴリ)と地上の娘達が交わって生まれた巨人であるという。

 彼らは獰猛にして食欲旺盛であり、地上の作物はおろか、鳥や獣、人間達を喰い尽くし、最後には仲違いして共食いすら始めて神の怒りに触れ、地上を大洪水で洗い流す一因となった。

 

 ネフィリムは、天使()人間()が交わって生まれた巨人(怪物)である。

 だがそこに完成体ネフィリムに不死を齎す根拠は無く、ウリエルの謳う神の奇蹟を解明する理由にはならない。

 

 異なるのは――母だ。

 かつてグリゴリは人間の娘と交わり、貪食の怪物を生んだ。

 ならば人間ではないものと交わったならば、果たしてどのような怪物が生まれるのか。

 ――その答えが此処にある。

 

「少しだけ、お行儀よくしていなさい」

『…………?』

 

 カレンは優しくそう語りかけ、ネフィリムの拳を両腕でこじ開けた。

 比較することすら烏滸がましい体格差。如何な剛腕を誇れど、質量(スケール)の差によって太刀打ちできるはずもない巨いなる魔人の手から強引に抜け出して落下――()()()海面に立つ。

 荒れ狂う海原をものともせず、そこが揺るぎない大地であるかのようにしっかと両の脚で立つと、そこから一歩、二歩と進み出て――その都度に彼女を中心として()()()()()()

 

「領域展開――」

 

 それは極一部の高位霊能者が可能とする、現実を己が法則で塗り替える絶技。

 そしてその法則は多くの場合、己が魂に根差した神性に起因し――カレンのそれは果てしない地平。

 無窮の大地を往くカレンの影は、歩を進めるごとに(おお)きく、(おお)きく、ひたすらに巨大(おお)きく膨れ上がり――

 

「――【原初の大地】」

 

 ――十二体のネフィリム達を子供のように見下ろす巨神となった。

 

 シルエットはそのままに、波打つ銀髪には花々が咲き、巨体を繁茂した蔓草が覆って礼装(ドレス)と化す。

 爪は神話鉱(アダマス)の輝きを放ち、大地を踏み締めた足跡からは木々が芽吹いた。

 

 その威容、その母性。

 遍く伝承に語られる地母神の系譜において、尚も格段の知名度を誇り、遂には星とも合一して語られるその神性に気付けぬウリエルではない。

 だが、それでも――あまりの高位存在の出現に現実を俄には信じがたく……彼は渾身の敵意を振り絞ってその名を呼んだ。

 

『貴様――――地母神(ガイア)か!!』

 

 完成体を造り上げるために厳選された、類稀なる資質を持つ子供達。

 最終的に成功に漕ぎ着けられたのは、その中から唯一適合できた男女六組のみ。

 それ以上は幾ら費やしても完成に至らず、時に成功例に用いた個体をも遥かに凌ぐ素材(子供)を費やして尚十三体目が現れなかった理由がこれによって明らかとなった。

 

 道理で怪物が生まれるわけだ。

 道理で不死が与えられるわけだ。

 

 古の昔、ギリシャ世界を席巻した最初の神々。

 かつて黄金時代を築き上げ、後に雷霆(ゼウス)率いるオリュンポスに取って代わられた古き神格。

 降して尚滅ぼしきれぬ不死性故に奈落(タルタロス)へと幽閉された、男女六柱ずつ存在する十二の巨神。

 

 その名を【ティターン】――母を通じて受け継いだその形質こそ、彼らが不死たる理由であり。

 それを産んだ世界で最も有名なる原初の地母神――【ガイア】こそが、カレンの魂に根差した神性の名だった。

 

「ちゃんと理解し(わかっ)た? んじゃ冥土の土産も持たせたしそろそろブッ殺すね」

『貴様……私に勝てるとでも――』

「逆に聞くけど――まだあたしらに勝てるとでも思ってんの?」

 

 天を衝く巨神が静寂を湛えた眼差しで見下ろした。

 死を司る天使が悲憤に血の涙を流して睨めつける。

 不死の軍勢を引き連れた人形遣いが呵々と嘲弄し。

 

 ウリエルは、これが受難であることを遂に認めた。

 

『――いいだろう! 事ここに至り、最早我が身は不退転!!』

 

 広がる大地の上に投げ出された量産型ネフィリムを集結させ、その喰らい合うように積み重なる異形の群れへその身を投じたウリエル。

 折り重なったネフィリムの体が融け合い、その中枢に宿ったウリエルの霊核が変異を統制し、さながら蛹から羽化する蝶の如く新生する。

 無数の巨体を喰らって生まれ出た影は、巨神と化したカレンに伍する程に巨大。

 蠕動する魔肉で形作った不自然な美貌を必滅の戦意に歪ませ、陽光を孕む灼熱の剣を振り翳して彼は吼えた。

 

『異教の地にて斃れるとも、貴様を連れ帰れば同胞達は更に飛躍しよう。魔女に堕ちたかつての聖母よ、その全存在を以て我らの礎となるがいい――!!』

 

 ――Lv100【魔人 天魔合体魔人】

 

 かつて天使(ウリエル)だったものの成れの果てを前に、巨神(カレン)は静かに口を開き。

 

「皆さん、お覚悟を。――ここからは反撃()の時間です」

 

 共に天を衝く巨神と魔人。

 両者が真正面から激突する一大決戦が幕を開けた――!!

*1
瞬間的にMAGの力場を形成して足場とする汎用技術。近接型はこれがないとお話にならない。

*2
D2ネビロスの専用スキル【死霊の呼び声】と【栄光の手】のシナジーコンボ。ざっくり言うと呪い状態の敵は与ダメが60%減少する。

*3
D2スキル。敵全体に防壁貫通を得た火炎属性または破魔属性の魔法型ダメージを威力130で与える。属性は状況によって自動で選択される。

*4
ここまでは同格以上の修羅勢に見破られている。誰が呼んだか「ジェネリック第三魔法」。

*5
誰にも明かしてない奥の手中の奥の手。ざっくり言えば後遺症の存在しない分霊箱。総数は企業秘密。




あと二話か三話で終わります。
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